楽しめるか否か。それが問題だ。   作:ジェバンニ

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そう言えば前回の投稿で二次創作歴二年目だったわけですが「まるで成長していない」と某先生に言われそうですね。ですがさにあらず(後書きに続く)。


アズカバンの囚人
準備


正直な話見込みが甘かったと言わざるを得ない。

そう、何時だって私はそうだった。

良かれと思ってしたことが思いもよらない大失敗の元だったり、万全を期したはずなのに自分じゃどうにもならないような偶然でご破算になったり。

今回の事だってそうだ。

準備を整え、これで完璧だと思っていたら盛大なぬか喜びをさせられたわけである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まさか魔法薬で変身してブラが吹き飛ぶだなんて……。

 

 

 

 

切っ掛けはと言えばそろそろ換金しに行きたいなと思っていたことだろう。

ロックハート先生から「譲り受けた」ブツ、それに必要の部屋で過去のホグワーツ生の持ち物だった宝探しをした結果、私の元には幾らかお高い品物が集まっていたのだ。

しかし幾ら「金目の物は換金しないと意味がないよ!」と言われたところで、このまま素直に金に換えに行くのは大いに問題があることは分かり切っていた。

客観的に見れば今の私はと言えば未だ学生、しかも低学年の身。

お金に換えられるのか、また換えられるとしても足元を見られたり、見くびられたりして二束三文になったりはしないかが激しく心配だったのだ。

ならどうするか?

解決方法はと言えば魔法薬を調合し、それで自身の本当の姿を偽ることだったのだ。

そして準備に幾らか掛けた結果私は見事自分の姿を変えることに成功した。

使った薬は勿論――

 

 

 

 

 

 

皆大好き「老け薬」である。

……何故ポリジュース薬ではないかと言うと、あれの作成とか今の私にはレベルが高過ぎるし、そもそも作成面以外でもそれなりにリスクのあるあれができたとしても、基本的に私は大根役者なので自分ではない誰かの演技なんてできそうにないからだ。

それ以前にあれで一番重要なのは「他人の一部」を用意しなければならない点だろう。

文字通り誰かの爪の垢を煎じて飲んだりしなければならないとか私は御免被る。

そうでなくとも良く考えて欲しい。

例えば、の話ではあるのだが、デブで禿げている脂ぎった中年男性の数少ない頭髪を入れた飲み物を飲みたいと思う人が居るだろうか?

死ぬくらいならいっそ飲み干すかもしれないが、手段を選べるならそういう趣味を疑うようなことをしたいとは思わない(勿論特殊な趣味の人は除くし、探せばそれよりはまだましな「材料」が手に入るかもしれないが……)。

そう、それにそもそも基本的に叔母様の家に引きこもっていた私に他人の一部を手に入れるような機会は無いのだ。

ホグワーツで先生方の一部を手に入れる(大抵の場合と同じように髪の毛について述べている)ことも考えたがほとんどの先生に接点がなかった。

ダンブルドア校長はあまりにも有名で偽物だと一発でバレるだろうし、マグゴナガル先生やスプラウト先生のマネができるとも思わない。フリットウィック先生とハグリッドには変身することができないし、スネイプ先生は何か嫌だった。ビンズ先生は材料にはなってくれない(念のために言っておくと禿げているわけじゃない)し、ロックハート先生は入院中だと広く知れ渡っている。

映画版の胸毛一杯悪夢一杯のブラ男なハリーが凄まじく印象的だった私には、他人に変身するのは色々と抵抗があったのだ。

……まあ、実は他の手段で直接手に入れる機会も無くは無かったのだが、その時はこのことに思い至らなかったし、これ以外にも色々とリスクを考えてみたら止めておいた方が賢明だったのだろう。

さて、そろそろ話を戻すことにしようか。

 

知らない人々の為に老け薬について説明しておくと、このヤクは自身の年齢を飲んだら飲んだ分だけ年を取る魔法薬である。

記憶が確かならばホモォの……もとい『炎のゴブレット』の時にフレッドとジョージが飲んでいた代物だ。

ポリジュース薬よりも幾らか調合が楽で、なおかつ解除方法もしっかり分かっているこれを選んで調合したわけだが、予想もしないようなことが起きてしまったのである。

一応安全その他の条件を考えて家の中で、下着以外の服を脱いでから服用したのは不幸中の幸いだった。

勿論ある程度は成長するとは分かってはいたのだ。

だからこそ自身の成長を見込んで下着は、少なくとも上に関しては魔法でサイズを調整して置いたし、現時点の私より身長が高いドーラのローブも一着借りておいた。

入念に準備を完了させ、薬を一気飲みしたらご覧の有様だというわけである。

文字通り大きく変わってしまったわけだ。

より簡潔に言えば想像以上に胸が育っていた。

内側から何かの寄生生物が飛び出していくかのように、布の千切れる炸裂音を立て、気に入っていたブラが派手に吹き飛んでいった時には私も思わず呆然としてしまったさ。

……バランス的に気持ち悪いほど大きくは無く、しかし恥ずかしいほどには小さくないのは良いのか悪いのか。

現時点でも同学年の中でも大きい方なのに、数年後にはここまでになるのかと感心を通り越して呆れはててしまったのも無理は無いだろう。

ベラトリックスお母様が大きいのは十年以上前に近くで拝見したことがあったから知っていたのだが、予想のベースとなるそれよりも遥かに大きくなるとか完全に想定外である。

とりあえず試しにそのままドーラから(無断で)借りたローブを着てみたのだがバストとヒップがきつすぎるし、ウェストはゆるゆるだった。

全くもって頭痛が酷い。

いや、胸に関していえば前世の私も決して小さい方じゃなかったが、ここまでのサイズでは断じてなかった。

一体将来の私に何が起こると言うのか……。

凄まじくやるせない気持ちで下着とドーラのローブにサイズ補正の為の、はっきり言って二度手間の魔法を掛けつつ、最終確認を終えた私は前世で掛けていたような黒縁の眼鏡(度無しの所謂伊達眼鏡ではあるのだが)を掛けて私は煙突粉を片手に暖炉へと向かっていった。

というのも去年度の『ホグワーツ功労賞』を受賞されたが故か、ドロメダ叔母様から日がある内はダイアゴン横丁に自由に行って良いことになったからだ。

そして――

 

ノクターン横丁なう。

危ない所へは近付いちゃ駄目よ、というドロメダ叔母様の小言は最近では口にされることがなくなったので、きっと問題無いのだろう。

いや、実際はもう言わなくても分かっているだろうという信頼を、それが言われなくなった傍から破るのは少し心苦しいが、バレなきゃジャスティスである。

前世で住んでいた安全な国と違って、外国と言うのは通り一つ違うだけで危険度が一ランクも二ランクも跳ね上がるので叔母様の懸念は尤もであるのだが、この私には幾つかの目的があるのだ。

虎穴に入らずんば虎子を得ず、使い古された言葉だが的を射ている。

リスクを敢えて冒してみる必要がこの私にはあるし、それに何より普段入ったことのない通り道に入るのもひょっとしたら楽しいかもしれないと、その時の私には思えたのだ。

ノクターン……ムーンライト……うっ、頭が。

いやいや、いかがわしい場所の話ではなく、危険なことに巻き込まれる可能性のある場所の話だったか。

というわけで煙突粉を使用してダイアゴン横丁経由で生まれて初めて此処に侵入してみた。

……みたのだが実に嫌なところなのであることが判明。

薄気味悪い空気で、まるで昔某漫画で見た食屍鬼街と同じくらい危険な場所なのではないだろうか?

つい先ほど見た生爪を皿一杯に持った気色の悪い笑顔の老婆は未だ良い。

悪い魔法使い、もしくは魔女に浚われた哀れなマグルの誰かが、手足から一枚一枚剥されて行ったと考えれば納得は行くからだ。

とても残酷だが、闇の魔術というのは大抵人間を材料にする忌まわしいやり方が多い。

拷問染みたやり取りで剥ぎ取りされたに違いないのだが、まあ魔法薬さえ使用すれば数時間で取り返しがつくものだ。

しかし、次に見た物で私の嫌悪感と危機感は最大レベルまで上がってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

何故なら見たのは人を痛めつけるのが好きそうな魔法使いの紳士が持ち歩いていた、保存液と共に瓶詰にされた大量の人の目玉だったのだから。

 

 

 

 

 

 

グロが平気な私でもちょっとどうかと思う。

それぞれ同一人物から抉り出した物では無い(明らかに一組一組が別の「持ち主」の物だった)し、それらの新しい所有者はと言えば、静かではあったものの、まるで待っていた新刊を手に入れた私のようなはしゃぎようだったのだ。

縮んだ生首が飾られた店が目的地の傍にあるが、おそらくあれは人間のパーツをバラで売っているとみて良さそうではある。

つい先ほどそこから遠く離れていない場所で断末魔のような叫び声が聞こえたような気がするが、多分そういうことなのだろう。

目玉商品とかそんなチャチな物じゃない。もっと恐ろしい物の片鱗を味わったぜ。

そんな心臓に悪い途中経過を経つつ、私は長居したくないこの危険極まりない場所で幾つかの「目的」を果たしていった。

 

……結論から言わせてもらえばやっぱり誰が知り合いかというのは大事だ。

フォイフォイの一年生の時の嫌味めいた手紙を無視せずに交流を持っておいて良かった。

前世の経験から言って、あの手の小物は自尊心を満足させつつ、適当に煽てておけばこちらの役に立ってくれるのだ。

加えてハリー達を通してハグリッドと交流を持てていたのも大きい。

そう、彼は幾つかの危険生物のお話に耳を澄ませつつ、相槌を打ちながら「そういえばノクターン横丁って○○のお店ってあるんですか?」と言うようにさり気なく従姉弟殿から聞いた店名を混ぜていくだけで、ドバドバ素敵情報をゲロってくれる素晴らしい情報源なのだ。

実にチョロ……頼りになる御仁だと改めて私は思った。

まあ予め見取り図を作成していても、私の方向音痴のおかげで全ての用事を済ませるのに予定よりも数時間ほど遅れてしまったのだが。

闇に携わる商品を数多く商っている『ボージン・アンド・バークス』での売却の他、幾つかの怪しげな「素材」や危険な魔法薬の「材料」、普通の本屋では手に入らないような黒い知識の書かれた数々の「書籍」の購入。

できるだけ金銭はゲットしたかったのだが、ボージンの禿げはと言えば、こっちが少し目を離した隙に積んでいたガリオン(私が差し出した商品の代価)をちょろまかそうとしたり、大分足元を見ようとしてきたり、はっきり言って油断がならない人物だった。

救いは私の名前を聞き出そうとせず、また閉心術の心得が無さそうだった点だろうか。

おかげで私には危険が無いのに対し、相手の手札が丸裸で正直ウッハウッハです、本当にありがとうございました!

利益を最大限まで貪りつつ、私は値切り交渉などで目的物の入手に努めることになる。

 

そんなこんなで嫌な雰囲気漂う薄暗いノクターン横丁から、安全で日の当たるダイアゴン横丁に戻れてきたわけだが今更ながら体が震えてきた。

女のこの身だと別の危険性もあるわけだし、自分からあそこに踏み入るのはこれで最後にしたいと真剣に願う。

なるべく誰の眼もない所に行き、深い溜息を零す。

今行っている幾つかの「試み」とそれに対する「準備」。

それに関しては例によって例のごとく、上手く行く保証なんてまるでない。

付け加えれば、その新しい試みにしても結局のところ「彼ら三人」の手助けにより、実現の目途が立つ物であるというのは凄まじい皮肉だと思う。

それは今更ながら私が一人でやっていることが如何に難しいか、偶然性に頼らなければいけないかを暗示しているようだった。

彼らに対する借りばかりが積み重なり、何時しかそれで潰れてしまいそうだ。

それは私が選んだ道で、誰一人として頼ることができる人が居ない以上、そのような想いを抱くのは避けようが無いのだが。

……気を取り直して一応本来の身分たる「学生」としての準備を果たしていくことにしようか。

解除薬を呷り、数時間を掛け続けつつ、元の年齢に戻りながらも私は三年次の教科書その他の買い出しへと向かっていった。

イギリスの魔法界で出回る一般書籍のほぼ全てが購入可能な『フローリッシュ・アンド・ブロッツ』に着き、驚いた。

鉄の檻に入れられた『怪物的な怪物の本』が大量に暴れまわっていたからだ。

ふむ……素晴らしい。

中に入るとおっさ……店長さんが慌てて来た。

「いらっしゃい、ええと教科書ですか?」

ちなみに今の私はおそらく先ほどまでと違い、19歳くらいに見えているはずである。

伊達眼鏡を押し上げてやんわりと私は応えた。

「ええ、うちに三年生に上がる子が一人いまして」

「ま、まさかあの中の『怪物的な怪物の本』も!?」

イエース。

「本当にもう嫌だ! 今日はもうあれに三回も咬みつかれたのに」

そう言いながらもちゃんと獲ってくれるあたり、この人も高度に訓練されたツンデレなのだろう。

「インカーセラス! 縛れ!」

取り出された本は勝手に店長さんや私に咬みつかないよう、厳重に封がされた。

「はい、取り扱いにはくれぐれもご注意ください。……こんな本はもう二度と仕入れないぞ!」

フラグですね、分かります。

ティア知っているよ、来年以降もハグリッドが先生をやるってこと!

その後で聞かされた『透明術の透明本』を仕入れた時の愚痴を聞かされたことで、私は

一つの仮説を立ててみた。

多分、それはバカには見えない透明本、要するに詐欺に遭っただけなのではなかろうか?

そのことを話すと彼は更に不機嫌そうになった。しょうがないね。

「ケトルバーンさんはこんな本は頼まなかったのに。一体今年度からの『魔法生物飼育学』の先生はどんな人で何を考えているんだか」

半巨人のとってもアレな趣味を持つ傍迷惑なおっさんで、何も考えていないのではないだろうか?

「きっと色々な意味でスケールの大きい人なのでしょう」

私は嘘をついてはいない。

 

その後の私の夏休みはと言えば、ダース単位の百味ビーンズをハリーへのちょっと遅めの誕生日プレゼントとして購入して送り付けたり、怪物的な怪物の本の宥め方を結局涙目になっていた店長さんに教えなかったり(教えたとしてもどうせあの檻の中の本全てを撫ぜることは不可能なように私には思えた)、アイス屋の『フローリアン・フォーンテスキュー・アイスクリーム・パーラー』の全アイス制覇に乗り出したり、好きだった推理小説の「メルヘン小人地獄」を思い出しながら庭小人たちを使って『進撃の巨○』ごっこしたり、庭小人に服従の呪文を掛けつつ『○爆』や『パチンコ○陽師』を再現したり(庭小人たちに大うけしていた)、幾つかの悪巧みの自室でできる下準備をしたり、ドーラに小さい頃のように上目づかいで「怖くてたまらないから『守護霊の呪文』を教えてほしいの」とお願いしたり、要するに例年通り実に楽しく過ごしていた。

 




成長していないわけじゃないんです。成長しているんです↓な感じに!

エタるスライム(数週間に一度投稿する二次作家)

はぐれエタる(数カ月に一度投稿する二次作家) ←今ここ

エタるキング(数年に一度投稿する二次作家)。

そう、私はちゃんと悪い方向に成長できているんです!
……すみません、今年はもう少し真面目にやりますよ。はぐれエタるからエタるスライムへと退化して見せる、つもりです。

その上のゴールデンエタるスライムは何かって? 二次作家のライフがエタった場合ですね!

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