楽しめるか否か。それが問題だ。   作:ジェバンニ

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二か月以上も間を空けると話の内容を忘れて困りますよね。





私が。
これにて「秘密の部屋」編終了です。


誓いと類似について。

杖が運命を選ぶのか。運命が杖を選ぶのか。

 

ユースティティア・ドゥルーエラ・レストレンジ。

彼女について知ったのは、育ての親に当たる彼女の叔母、アンドロメダ・トンクスからの手紙が切っ掛けじゃった。

どうか私の姪の入学を認めて欲しい、という文言から始まる真摯な内容の手紙は心を揺さぶられる物であったし、書かれていた彼女の家での過ごし方の詳細から、育て方にも充分配慮してあるという内容もしっかりと読み取ることが可能ではあったのじゃ。

両親が死喰い人であったからと言って、将来必ず危険極まり無い存在にはならない。

かつて闇の魔術にどっぷりと浸ってしまった、才能に溢れていたかつてトムと呼ばれていた男の子については未だに残念でならないが……過ちを糧として彼女がそうならないよう見守ることはできる。

手紙を読み終えた時点でのわしは未だそう確信しておったのじゃ。

それが変わったのはオリバンダー老からの手紙を受け取ってからの時じゃった。

 

「ミス・レストレンジは何時の頃からか我が『オリバンダーの店』に在った古く、とても強力な杖を買っていかれました。イチイの木にセストラルの尻尾が芯となった物です。この杖は今まで買い手がいなかったのですが……」

 

彼女が選んだ杖(勿論あの老人らしく、杖の方が彼女を選んだという表現を彼はしておったが)に関する記述を読んだわしの心に一抹の不安が過った。

そうそうあり得ることではない。

たまたま古い時代に作られた杖が、今になってようやく自らに相応しい主人を見つけただけのことかもしれん。

だが生き残った男の子が入学する年と同じ時に、そのような杖が持ち主を見つけるとなると、それは偶然では無く必然なのかもしれんという可能性をわしは捨てきれなかった。

気になったわしはその後オリバンダー老人の元に直接赴き、そして彼女が杖を手に入れた時に関する「記憶」を手に入れることに成功したのじゃ。

 

 

店の中で複数の杖が散らばっておった。

ところがオリバンダー老人はそれを満足気に見て、笑っておったのう。

「気難しい客のようですなあ。しかし心配召されるな、必ず貴女様にあう杖が見つかることじゃろう」

あの老人は客に合う杖が、判明する時間が長ければ長い程嬉しがると言う奇癖を持ち合わせている以上、仕方のないことではあったのじゃろう。否、どちらかと言えば

「ええ、私も自分に合う杖がどんな物なのか、とても気になっています」

とまるでそのことを気にした素振りも見せない少女の方が、その時のわしの最大の関心事であった。

勿論オリバンダー老人の目の前に居る、ホグワーツ入学前のミス・レストレンジその人のことじゃ。

その後ろに居ったのがアンドロメダ・トンクス、彼女の叔母であり髪の色とその質、そして年齢を除けばまるで「双子の呪文」を使用したかのようにそっくりな二人じゃった(何も知らない者が二人を見たら確実に母娘じゃと判断するじゃろう)。

彼女が控えており不安そうに、しかしその一方で姪に対する慈愛が抑えきれないかのように彼女の杖選びを見守っておったのう。

対してユースティティアはその年頃の少女にしては凄まじく落ち着いた表情で、彼女が選び損ねた杖の一つ一つを見下ろしておったのじゃ。

まるで動揺というものが無い。

彼女が選ばれた時もそうであった。

ただその時とても奇妙なことが起きたことは此処に記しておこう。

 

それは何十本目かの杖が彼女に合わないことが分かった時の事じゃった。

釣り合わない杖の一つから放たれた、制御の失敗した魔法が杖の入った箱の幾つかに当たったのじゃろう。

より多くの、今まで試された以上の箱が棚と言う棚から落ち、しかして偶然その内の一つが開いたと思ったらごく自然にミス・レストレンジの掌に収まったのじゃ。

「これは……?」

僅かに眼を今まで以上に見開いた後で杖を軽く振った。

その直後、金色の輝き、そして強大な力が辺り一帯に放たれるのをわしが確かに感じたのじゃ。

今までばら撒かれておった杖が元ある場所へと戻っていったのを確かにわしは目撃した。

わしは二重の意味で驚かされたと告白しておこう。

一つは大方の魔法使いや魔女が初めて杖を手にした場合、放たれる魔法の力は輝きや変化と言う形で見られるのに対し、それだけに留まらず明確な「使用」の様相を示したこと。

もう一つはまるで全てが初めから決まっていたかのように、あるいは金属が磁石に引かれる様な「不自然な動き」で彼女の手に杖が収まったことじゃった。

確率の上で起こり得ることでは無い。わしとしても何かの人ならざる力の存在を感じざるを得なかったのじゃ。

 

故に仮定した。あの杖は最悪の場合、わしの今使用している杖に対抗するような恐るべき魔力を有するのだと。

……もしも彼女が闇の陣営に着いた場合恐ろしい事態に発展してしまうことは予想がついておった。果たして彼女の両親と同じようにスリザリンに入るのか否かが気になり、注意深く組み分けされるところを見て居ったが、幸いなことに杞憂で終わったようじゃ。後に帽子に聞いたところ彼女はグリフィンドールとハッフルパフのどちらかを薦められた、とのことではあったのじゃが……まるで異邦人のようだと言う不可思議な意見も言っておった。気になるのは自らの意志で勇気よりも優しさを選んだという話じゃったが、あの寮に関しては行き場の無い者をも受け入れると言うことではあるし、彼女にとっては妥当だったのかもしれぬ。

さりげなくポモーナから聞き出した話の中では、その後彼女はその寮においては珍しいスター性(良い意味でも悪い意味でもじゃ)があったものの、親しい寮生を何人か作ることに成功しておったし、本当に楽しそうにしておったとのことじゃ。

……もっとも「ミスター・スミスは時折彼女に近づいては、毎度毎度とんでもない目に遭っているようです」とのことじゃったが。

 

しかし去年のトロール、そして賢者の石の時の彼女からは彼女自身の説明不可能な力の一端を再び思い出させてくれるに相応しい事件であった。

セブルスと同じように幼い頃から高度な閉心術を使え、同じ年齢の誰よりも魔法の力その物を操る術に長けておる。わしにはそれが幼い頃のトムように思えて仕方がなかった。

更に極め付きは数秒前のことじゃ。

ハリーやロンと共に秘密の部屋に降りて行ったのは未だ納得ができる。

しかし死の呪文を立て続けに二度も使い、魔法界においてもとりわけ強力な魔法生物を二つも僅かな時間で仕留めたとあっては最早一刻の猶予も無いことは明白じゃった。

すぐさま杖の事実に関する真偽を確かめなくては。

故にわしはただ彼女に一言

「何でも良いのでわしに対し一番得意な魔法を使って欲しい」

という言い渡し、何でも一つ願いを聞こうという対価、あるいはわしの目的について気になったのかは分からないが彼女はそれに応じたわけじゃ。

彼女が魔法を使い、わし自身が彼女の杖が本当にそうなのかを確かめるようにそれに合わせるように武装解除術を放った時。

真に重要なのはその後のことじゃった。

彼女の瞳に宿った知性の光は目の前の現象に対し最初こそ驚いたものの、それ自体に対して明確な理解を示して居ったのじゃから。

魔法の光による絆が結ばれている時に「これが何なのかを知っておるのか?」というわしの疑念は次の一言で驚愕へと姿を変えていたのじゃ。

 

「まさか私の杖がかの『ニワトコの杖』と『兄弟杖』だったなんて思いもしませんでしたよ」

 

と。

 

あり得るのだろうか?

この現象について知って居るだけなら百歩譲って未だ良いじゃろう。しかしわしの杖の正体、及び「死の秘宝」についての伝承に関する深い知識まで有しておるとなると話は別じゃ。

背中に何の前触れも無く、氷柱を入れられたような、その何倍も寒気のする感覚がわしを襲ったように感じたのも無理のないことだと思いたい。

どうやら天と地の間にはわしの哲学では思いも寄らない出来事がまだまだあるようじゃ。

いやはや、この老体になって有名な戯曲の一説を思い出すことになろうとは。

 

 

――という記憶や思考を彼女の言葉に動揺して数瞬の間に読まれてしもうたのじゃ。

やられた。言葉一つでわしをも脅かした後に、必要な情報だけは冷静に、動揺も無しに抜き取るその手口や見事と言う他無い。

彼女が善人であれ、悪人であれ、恐ろしく抜け目のなく、また油断のならない少女であることはもはや疑いなかろう。

「うら若い女の子の事をこそこそ嗅ぎまわるなんて……」

惚けたことを口にして居るが問題はそこでは無いじゃろう。

ハリーは一体どういうことなんだろうと言うような酷く困惑した表情でわしとミス・レストレンジの両方を見ているし、フォークスは今までにないほど厳しい表情を見せて居る。

わしの最近手に入れた少し穴熊に似て居るお気に入りの珍妙な生き物の置物でさえも、何も考えていないような表情でいつもと変わらずこっちを見て来おった。

思えば初めてこの像を見せた者は誰であれぎょっとした様子を見せたものじゃが、彼女はそこでも他とは違った対応を見せて居った。

……もしやこれが何の生き物なのか知って居るのじゃろうか。

「ええと、ティア。話が見えないんだけど」

おっと彼女がつい惚けたことを言うから思考が脇にずれてしまったが、それどころでは無かったのう。

「私から説明しましょうか?」

「お願いしよう」

そして彼女は兄弟杖についての説明を端的に、簡潔にハリーに説明しきった。

「……そんなわけで私が万が一の場合、ダンブルドア校長にも抑えきれないような危険極まりない存在であるが故に、私という存在について校長先生は不安に思っていらっしゃるようなのです」

概ねその通り。変に誤解させるようなことは無いまま、彼女はと言えばハリーに理路整然と話し終えた。

「まさか!ティアはそんな危ないことなんてしないじゃないか」

「ええ。ただ私もあの両親の娘でしたから……」

ハリーの方を向きながらも杖から手を離さないまま、こちらに対する警戒はまるで怠って居らなかった。

しかし、自らに与えられた状況を悲しんでいるように同情を誘うような話し方じゃ。

誠実さはあるが、利用できるものは全て利用する性質じゃな。

わしとしても望んでいた展開じゃが、ハリーを使うというその話の持って行き方が少々えげつないのう。多少嫌悪感すら生じて来るのじゃが果たして……?

「しかし心配するではない、二人とも。実はミス・レストレンジ、心苦しいことじゃが更にお願いがあるのじゃが」

「どのようなものでしょうか?」

そう。此処からじゃ。

「わしに一つ約束して欲しいのじゃよ。魔法界には『破れぬ誓い』というものがあることくらいは知って居るじゃろう?」

「それは……ええ、勿論です校長先生」

わしが何を言いたいのかを察したらしい。

「幸いにも此処にはちょうど良いことに一人『結び手』になってくれそうな人が居ますしね」

そう言って彼女はハリーの方へと再び向き直った。

ハリーは何が何だか分からないという顔をしておったが、その後直ぐにどういうことなのかを説明し、快く了承してもらうことになったのじゃ。

 

わしとミス・レストレンジの両方の手を結び終えた後で、最後に一つだけ気になることを聞いておこうとわしは彼女に問いかけた。

「その前にミス・レストレンジの方でわしに何か誓って欲しいことはあるかのう?」

「……何故ですか?」

質問の意図が分からないのか彼女は年相応な様子で首を傾げた。

「先ほどミス・レストレンジの願いを一つだけ聞くとわしは言ったじゃろう。君からの誓いをその願いにすることは可能かのう?」

ああ、なるほど。そう言って彼女は眼を瞑って悩み始めた。そして暫くすると

「願い、願いですか……。そうですね。ではダンブルドア校長は私に不利益を与える行動を取らないと約束していただけますか?」

どのようなことを願うのか興味があったのだが、身の安全を図るというつまらない願いであったか。その程度のことなら誓っても別に良い。別に良いのだが

「……これから誓うことは除いてもらえないかのう」

「ああ、そうでした。失礼しました」

うっかりそのまま誓って居ったら、わしの方の誓いをしたその瞬間にこちらが死んでいたかもしれないのだが、それは素で忘れていただけなのか、それともわざとなのか。

「ではダンブルドア校長は『これからする一つの約束事以外で私に不利益を与える行動を取らない』と約束していただけますか?」

「約束しよう」

炎がわしら二人の腕に巻き付いた。

「ではわしの番じゃのう。ミス・レストレンジは『闇の陣営に加わった上で闇の魔術を使わない』と約束してもらえるかのう?」

これで応じないようなら問題じゃが……。

「勿論です」

同じように炎がわしらの腕に巻き付いた。

さて、かねてからの計画通り上手く行ったがこれで一安心――

 

 

「私に対して不利益になるかもしれないことを他の人に指示しないと約束してもらえますか?」

 

 

 

 

 

一瞬何を言われたのかが分からなかった。

「今、何と言ったかの?」

「私に対して害になるかもしれないことを他の人に指示しないと約束してもらえますか?と言ったのです」

「何を馬鹿な――」

反射的に断りそうになり、それが先ほど結んだ誓いに反するかもしれない可能性にわしは思い至った。

「……誓おう」

三度、わしらの腕に炎が巻き付いた。

まさか気を抜いたこの瞬間に仕掛けてくるとは思いもよらなんだ。

第一の誓いでわしは彼女を害することができなくなって居ったが、わし以外の誰かに彼女の相手を頼むことまでは禁止してはいない。

しかし第二の誓いのせいで、彼女にそうすることができるという可能性まで潰してしまった。

彼女は満足そうにほほ笑むと手を離し、ハリーもほっとした様子で杖を下げた。

「ああ、第二の約束は校長先生に約束をする代価と言うことで」

いけしゃあしゃあとのたまいおったが、しかし二つ目の約束をする時の彼女の眼を見てわしは気が付いた。

紛れも無い緊張感と何らかの覚悟をつい先ほどまで持っておったし、顔は笑ってはいたものの眼は真剣そのものだったのじゃ。

この眼は……一途に、愚直なまでに何かを追い求めるこの眼は秘宝に取り憑かれておったわしと同じ眼だった、と。

身の安全では無く何か、そう何か譲れない物の為にこれを結んだとでも言うのじゃろうか?

だがわしの思考もそこまでじゃった。

慌ただしい様子が部屋の外で聞こえたかと思えば、彼女の伯父が部屋に入ってきたのじゃから。

ハリーは警戒した様子でマルフォイ氏に向き直り、ミス・レストレンジは無言呪文で自分に「目くらまし術」を掛け、一言も喋らずに居った。

彼は最後までその場に姪っ子が居ることに気が付かなんだのう。

 

やがて屋敷しもべ妖精と共にマルフォイ氏が去り、

「ああ、ハリー。少し良いですか?」

「何?」

そうして彼女の方を向いたハリーに対し、

 

「オブリビエイト 忘れよ」

 

ハリーの頭の中から今までのやり取りの内「兄弟杖に関する説明」、今まさに話して居った「実際に存在する兄弟杖に関する記憶」、そして「わしら二人の間で交わした誓いに関する記憶」だけを消してしもうたようじゃ。

 

「ああ、未だハリーは知らない方が良いでしょう?」

「……その通りじゃ」

 

彼女がやらなければわしがやっておったとは言え、ごく自然に同い年の男の子にこうも躊躇いなく掛けられるとは。

そして今の時点で彼女は何を、どこまで知って居るのじゃろうか。

「さあ、ハリー。早く追いかけないとマルフォイさんが帰ってしまいますよ」

「ああ、うん。ダンブルドア校長、失礼します」

気が付いたハリーに対して「今自分は何もしませんでしたよ」とでも言うように声を掛けて、二人ともこの校長室を去って行きおった。

ハリーは慌ただしそうに後ろを振り向かずに。彼女は一礼して、何の動揺も見せないままという違いはあったが。

 

 

二人が退室した後でわしは暫く考え込まざるを得なかった。

つい先ほど彼女が結んだ誓いは、しかし勿論穴はある。

彼女が何か悪事を為した場合、それを例えば先生の誰かが独断で罰しようとした場合はわしが止める必要が無いことなどじゃ。

それに関する約束をしなかったということはそう言ったことをしないという自信か、あるいはしてもばれないだけの自信があるかのどちらかだけじゃろう。

安心できるようでもあり、逆に末恐ろしいようでもある。

それにしても一体彼女はどちらなのじゃろうか。

ハリーに掛けた、慈愛に満ちていると言っても良い言葉に嘘は感じられなかった。

じゃがわしと舌と術を用いて渡り合った時はそれとはまるで別の、いっそ狡猾と言っても良い物じゃ。

先ほど反芻したばかりの「杖」に関する記憶にわしは再び想いを馳せた。

オリバンダー老人は、わしがセストラルの芯を使った杖であることに注目しているのとは真逆じゃった。彼はむしろイチイの杖であることに多大な関心を寄せていたのじゃから。

 

「素材自体はおそらく昔の魔法使い、あるいは魔女の誰かが選んだ物なのでしょう。私の代になってからは売っている杖に一角獣のたてがみ、ドラゴンの心臓の琴線、そして不死鳥の尾の羽根しか使用していないのですからね。他の素材では相応しい力が出ることなどほとんどありえません。

 しかし私が気になっているのは杖の芯の方でなく、木材、即ちイチイで作られた杖が彼女を選んだと言うことなのです。

私の経験上、イチイの杖という物は平凡な人物や取るに足りない人物の手に渡ることはありませんでした。英雄か悪人、どちらかにしか所有されたことがありません。

勿論、我が店の杖が彼女を選ばなかったことに対する不満はありますが、イチイの木の上記の性質上、彼女が一体どのような年月を経るのかは杖作りとしても非常に興味深く思っております」

 

彼女がどうなるのか?それはもはやわしには想像もできないことじゃが……。

できれば先ほど結んだあの誓いが、いずれ良い結果を結ぶことを願いたい。

今のわしには、もう祈ることしかできなかったのじゃから。

 




小道具&魔法設定特集その①

超感覚呪文……感覚を強化する呪文。目に集中すれば透明になった魔法使いを見破り、眼以外だと周りを見ずとも飛び交う動きのある物や魔法の気配を察知できたりするようになる。原作において七巻最終章でロンが言及している魔法。運転免許の試験において「自動車で最後の確認を忘れたけど呪文使えるし大丈夫」という彼の台詞から見るに多分このような効果を持つ物と推察される。

ユースティティアの杖……イチイの木にセストラルの尻尾の毛を芯とする。ニワトコの杖とは別のコンセプトで創られた。おそらく自分を特別視したい願望と杖の材料に関する深い考察故に創られた物と推察される。同じ木にドラゴンの心臓の琴線の組み合わせよりは放てる魔法の威力が高いはず。
一度「死を経験した者」にしか使えないと言う、死人を甦らせることのできないハリポタ世界での矛盾存在。杖に選ばれる運命になかったこれの創り手は、この杖を使ってもそこまで力が感じられないとして放置した。本来は何者もその力を正しく扱えないと言う、この世の果ての時まで無意味な杖だったはずだが、条件をこの世界で唯一満たしたティアが手に入れることで世にその姿を現した。
ニワトコの杖が優れた魔法使いを主として求めるよう無意識に自分の周囲に働きかけるのに対して、ユースティティアの杖は持ち主に「ある種の行動」を選ぶ場面に連れて行くように無意識に働きかける。その行動とは持ち主が英雄か悪人かを決定づけさせるようなそれである。
故にティアは良くそういう場面に杖の魔力によって無意識に誘導されているのだが、最期の時が過ぎても彼女がそれに気付くことは無いだろう。彼女の運命は彼女の杖と共に。

セストラルの尻尾の毛……ニワトコの杖、ユースティティアの杖の芯には同じセストラルからとったそれが使われている。おそらくは杖の木材の性質(ニワトコを材料とする杖は長年魔法界に語り継がれるような評判を持っていることから)を極端化させる、あるいはその素材それ自体が他の物と比べて長持ちするものと思われる。イチイの木の杖と言うのはオリバンダー老人に依れば「抜きん出た力の持ち主」しか選ばず、常に英雄か悪人に所有されてきたらしいが……?

ハリーの透明マント……イグノタス・ペベレルによって創られたとされる死の秘宝。ティアはそれが普通の透明マントと違っているのは「他と同じようにデミガイズを素材としているのではなく、セストラルの体毛を使っているからではないか?」と推測し、ホグワーツのセストラルというセストラルの体毛を毟り取り、後にハリーのそれに迫るような物を作成することに成功する。一応提供してくれたセストラルたちには生肉という美味しい報酬は用意した。

小鬼の眼……4色型色覚のこと、小鬼は全員生まれた時からこれを持っている。勿論捏造設定だが、多分こういった特殊な眼を持っているが故に小鬼は小鬼の作成した物を判別したり、魔法使いや魔女たちは合わなかったりするのではないかと思われる。きっと彼らと魔法族は物理的な意味でも見ている世界が違いすぎるのだ。ティアは前世でも今生でもそれを持っている。そしてこの眼がある故に「短剣」を見つけられた。

ユースティティアの短剣……ティアの手により、何となくと言う理由でティアにより魔法界の複数の毒薬や魔法薬が浸されてきた短剣なのだが、今回新たにバジリスクの毒が追加された。自身を刺したら危ないからと言う理由で普段は鞘にしまってあるが、彼女自身はこれを使うような事態が来ないことを切に祈っている。フィルチさんの没収品の中から「何か普通の金属」とは違うなと思ったティアがカーマスートラのコピーと引き換えに手に入れ、後に必要の部屋で魔法薬による幾つかの調査の結果何なのかを暴いた。

信楽ポン助さん……ティアが命名した普段は校長室に置いておかれていた一点ものの信楽焼のタヌキのことである。だが持ち主はマグゴナガル先生によりどこかにやってほしいと言う苦情を受け、名残惜しくも手放すこととなる(気に入ってはいるものの校長室の景観を無視しているという事実は否定できなかった)。その数日後、願い事が叶うタヌキという触れ込みでダンブルドア校長からシビル・トレローニ先生に渡される。トレローニ先生の願い事が叶った後で彼女の教え子の一人に無償で譲渡されたらしい。
以後は生徒や先生の元を渡り歩くタヌキの置物になったが、何人かの所有者は夜中にタヌキが実際に練り歩いているところを目撃したらしい。
作った人が匿名で教えてくれたところによれば、制作時に妙な呪文は一切掛けていないとのこと。薄暗いところで目が合うと非常に不気味であるものの、何処か奇妙な愛らしさがあったと言う。

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