リアルが忙しくてなかなか投稿出来ませんでした。
文も安定してないし、これからも不定期ですがよろしくお願いします。
§side 切嗣§
清潔に保たれている病室のベッドで僕は横になりながら情報を整理する。
現在ロストロギア・ジュエルシードを収集しているのは、なのはとFの遺産。Fの遺産の目的はこれから調べていくことになるが、なのはは優しいから、困っている者を見捨てておけなかったのだろう。魔法技術に関しては見たところ十中八九あのフェレットとの接触が要因だろう。そこでデバイスも手に入れたのだろう。
「ッ……」
傷が痛む。もう少し治癒の魔法を練習するべきだったと僅かながらに後悔したが今更遅い。
しかし、少し根を詰め過ぎただろうか?いや、そんなことはない。まだまだやらねばならないことは山積みなのだ。
そうして考えていると、病室に誰か入ってきた。僕はベッドにキチンと寝直す。
「切嗣、お見舞いに来たぞ。」
「ああ、ありがとう兄さん」
この声は恭也だ。一人でお見舞いに来るのは少し珍しいが、何かあったのだろうか?そう考えていると恭也が話しかけてきた。
「体調はどうだ?」
「うん、少し痛むけど大丈夫」
「そっか、ならいいけどな」
他愛もない話。少し息抜きには丁度いいだろう。以前は警戒されていたが、ここ最近はそういうのもない。気を楽にして話そう。
「ところで切嗣、お前今さっきまでなにやってた?」
これまた他愛もない話。外でロストロギアの回収をしていたとは当然ながら言えないので適当にはぐらかすことにしよう。
「ああ、前に持ってきてもらってた本を読んで……」
そう言いかけた時、ギラリと鈍く光る刃が突如現れ、僕の喉に向かってくる。僕は反射的に隠していた拳銃を刃を突きつけてきた恭也に向けてしまった。果物ナイフが僕の喉に、ザ・ジャッジが恭也の額に突きつけられる。
「……何のつもりだい、兄さん」
なんだこの状態は。流石に僕でも理解が追いつかない。こうなっしまった以上、どう言い訳も出来ない。僕は威圧を込めて家族に銃口を向けたまま言葉を口にした。
「見ての通りだ切嗣。前々から怪しいとは思っていたけど、今回の件でハッキリしたよ。」
「今回の件……かい?」
「ああ、お前は知らないだろうけどうちに一人の女の子が運び込まれてきた。金髪でツインテールの女の子だ。」
「!」
僕はその女の子を知っている。Fの遺産だ。まさか、なのはちゃんはあの子を家に運んだのか。まさか敵対している人物を助けるなど、そこまでのお人よしだとは流石に思わなかった。
「なのははちょっと気を失ってるだけと言っていたが、その女の子からは僅かに硝煙の香りがした。撃たれたのは確実だと分かったよ」
武術をしていることは分かっていたが、まさか裏の方だったとは予想外だ。だが、これだけならまだ余裕で反論出来る。
「それで?それだけで僕を犯人扱いかい?幾らなんでも情報が」
「ああ、幾ら怪しいとしても情報がなさ過ぎる。そう思っていたんだけど、常人には出来ないことを君はやっていたんだ」
常人に出来ないこととはなんだろう?僕は気付かれないように行動していたはずだが……。
「……全く見に覚えが無いね」
「忘れたとは言わせないよ。切嗣、君は月村邸に行っただろう。なのはと一緒に」
「……」
そうか、しまった。僕はあの時の行動を今更ながら悔いた。無意識になるまで習慣づけていたことがまさかここで裏目に出てしまうとは。
「察しはついたみたいだな。そう、君は通った道に隠してあった監視カメラを全て見つけた。一流でも見つけるのが難しいものを君はなんの苦もなく息をするように見つけた。そんな子が普通だと君は思えるかい?」
「……当然疑うね」
「で、君の病室に来てみたら、ほんの僅かに硝煙の香りが残ってる。可能な限り消したのだろうけど、ここまで近寄れば分かるよ」
やはり、恭也はこっち側の人間。あの家系は一体どうなっているのだろう。そんなことは今、どうでもいい。ここを切り抜けなければならない。
「それで?僕をどうするつもりだい?」
僕は少し笑ってみるが、恭也は顔の表情を一切変えず、寧ろナイフに力を込める。
「茶化すのもそこまでだ。
答えろ。何の目的で俺たちに近付いた。お前は一体何者だ。」
時間を稼ぐ。少しでいい。その少しの時間で。
「何の目的もないさ。僕こそ理由を知りたいくらいさ」
「だから…!」
「もう一つの質問には答えられるよ」
脱出の準備は整う。
「僕は、正義の味方を目指した人間の成れの果てさ」
「っ?!」
僕を中心に魔方陣が展開する。色はお世辞にも綺麗とは言い難い不格好な黒。その光に驚いた恭也が僕から離れ、一瞬の隙が出来る。その隙さえあれば十分だ。あとは僕と必要な道具を遠く離れた場所へ転送すればいい。
「ま、待て!」
恭也が慌てて近寄るがもう遅い。しかし、この言葉だけは伝えておこう。でないと、もう言えないから。
「ごめん、さようなら」
別れの言葉と共に僕は別の場所へと飛んだ。
もう、あの頃には戻れない。
§side フェイト§
「フェイト、あなたに頼みたいことがあるの」
母さんが私に無表情で話しかけてくる。それを見て私は瞬時に理解した。
ああ、これは夢だ。
今見ているこの光景は少し前に見たものだと理解できたから。
夢は脳の記憶貯蔵庫から過去の記憶映像が再生されつつ、記憶映像に合致する夢のストーリーをつくってゆくもの……だった筈。まあその辺は正直どうでもいいけれど。私の前にモニターが現れる。そこには青いひし形の宝石が映っていた。この時は素直に綺麗だと私は考えていたなぁ。
「このロストロギア……ジュエルシードを21個全部集めてきてほしいの。場所は第97管理外世界よ。勿論出来るわよね?」
夢だから言っても意味のないことだけれど、私の口は勝手に言葉を紡ぐ。でも、それは私の本心からの言葉だ。母さんに、笑いかけてもらいたい。母さんに、褒めてもらいたい。
「はい……母さん」
そして景色は一変する。
目の前にいるのは白い魔導師の女の子。
「わたし■■■、■■■■■」
酷いノイズが走る。目が覚め始めているのか、それとも彼女の名前が分からないからか。ただ、私をひたすら真っ直ぐ見つめてくる。その瞳に、私の心の奥底を覗かれてしまいそうで少し怖くなった。
「話し合うだけじゃ、言葉だけじゃ何も変わらないって言ってたけど、だけど、話さないと、言葉にしないと伝わらないこともきっとあるよ!」
彼女の真摯で純粋な言葉は私の心を惑わせる。私の口は言葉を紡ごうと動き始めるが、口から出てきたのは出てきたのは言葉ではなく、赤くて苦い液体だった。
白い魔導師は目の前から何時の間にか消えていて、代わりにいるのはあの黒づくめ男だった。
あの眼差しは忘れたくても忘れられない。絶望に染まり切ったような黒。そんなもの夢の中でまで見たくなかった。
身体が震える。あの男への恐怖はもう身体に染み付いてしまっているらしい。
男は動けない私に銃口を向け、そして…………
******
「っ……!」
ガバッと身体を起こすと腹部を強烈な激痛が襲うと共に、また景色が変わった。可愛らしい家具が置いてある。私と同じ年代の女の子の部屋のようだ。
……どうやら私は生きているらしい。
この腹部の痛みが今ここに生きていることを示してくれている。
カーテンのかかった窓からほんのりと優しい太陽の光が差し込んできて、まだぼんやりとしている私の顔を照らす。どうやら夢から覚めたようだ。先ほどの夢のせいか、嫌な汗で体は少しじっとりしている。なるべく早めに着替えたい。
「……ここは?」
全く見たことのない部屋だ。少なくとも私が拠点としているマンションではない。
ともかく現状を知りたい。痛む腹部を抑えながら起き上がろうとすると、ガチャリという音と共に扉が開き、誰かが入ってきた。その人物に私は自分の目を疑った。
「っ?!」
「あっ……」
目の前に現れたのは、プラスチックの風呂桶を持った、黄色を基調としてオレンジ色の線が入った服を着た女の子……服装は違うが、あの白い魔導師の女の子だった。
私は咄嗟にバルディッシュを掴もうとポケットに手を入れたが……その手は何も掴むことはなかった。
「(バルディッシュが……ない……!)」
考えれば当たり前だ。敵である私に武器なんて持たせる筈がない。誰だってもし逆の立場ならそうする筈だ。
しかし、これは非常にマズイ。今、デバイスの補助無しで魔法を使える程回復しているとは到底思えない。私は逃走経路を急いで探す。それが無駄な足掻きと分かっているけれども、希望は捨てたくなかった。
白い魔導師の女の子は、そんな私の焦る気持ちを他所にパァッと明るい顔になった。
「よかったぁ!目が覚めたんだね!
アルフさーん!フェイトちゃんが起きましたよーっ!」
……え?
彼女がなぜアルフの名前を呼んでいるのだろう?いろんな事を考えて私が呆然としている間に、頭にフェレットを乗せたアルフが部屋に入って来て、泣きじゃくりながら私に抱きついて来た。腹部が痛んだけれど、一切気にならなかった。
どうしてこうなったんだろう。
§side なのは§
「フェイト~!よかった……よかったよぉ~!」
アルフさんはいろんな気持ちを抑えきれなくなったのか、わんわん泣いている。
あの日からちょうど一日が過ぎ、フェイトちゃんが目を覚ましました。ユーノくんは大丈夫と言っていたけれど、目が覚めるまではやっぱり心配だった。でも、フェイトちゃんが目を覚まして本当によかった。
「あ、アルフ……これは一体……」
よく見るとフェイトちゃんはオロオロしている。この状況は流石にフェイトちゃんも理解には時間がかかるみたいだ。それにしても、いつも見る冷静なフェイトちゃんとは違っていてなんか可愛い。
「あ、それは……」
アルフさんの頭から肩に移動したユーノくんが話そうとすると、アルフさんが手を出して制止した。
「いや、ここはあたしが説明するよユーノ。その方がフェイトも信じてくれるだろうしね。」
フェイトちゃん達からすれば、わたしたちは敵。フェイトちゃんは私やユーノくんが言ったって、絶対に信じないだろう。仲間で、大切な家族のアルフさんから話を聞けばきっと大丈夫。
……なんだか他人任せみたいで少し自分が情けないけれど。
「フェイト、あたしが今から話すことは全部本当のことだ。ちゃんと聞いてほしい」
アルフさんは真剣な眼差しをフェイトちゃんに向けた。フェイトちゃんはその目を少し見つめると静かに頷いた。
「……うん、分かった」
わたしとユーノくんはホッとため息をついた。その様子をアルフさんは苦笑いして見た後、フェイトちゃんに向き直って話し始めた。
「フェイトがあの黒づくめの男に撃たれた後、この子達が自分の魔力の全てをフェイトの治療のために使ってくれたんだ。」
その発言にフェイトちゃんがビックリしているのがこっちからも分かるくらい表情に出ていた。フェイトちゃんは一度こっちを見て再びアルフさんを見た。
「本当なの……?アルフ……?」
まだ少し信じられない、といったところなのだろうか。フェイトちゃんが確認をとるように話しかけるとアルフさんは素敵な笑顔を浮かべた。
「ああ、全部本当だよフェイト。この子達、本当はいい子なんだ」
そう答え終わると、アルフはわたしたちを少しだけ呆れた表情をして見ながら笑っていた。
「でも助けてもらっておいてあれだけどさー、この子達と私達はジュエルシードを奪い合う関係なのにこのフェレット、『人の命がかかってるんだ』の一点張りなんだよ。随分なお人よしだと思わないかい?」
そう言うとユーノくんの首根っこを指で掴んでブラブラ揺らして遊びだした。ユーノくんは抜け出そうとバタバタと暴れている。
「ちょ、ちょっとアルフ!酷くないかい?!僕は良心に従って……!というか、おろしてくれぇ!」
「にゃはははは!」
そんな光景を見ているとなんだか可笑しくなってきてしまって、笑いを堪えることが出来なくて、わたしは声をあげて笑ってしまった。
そしてチラとフェイトちゃんを見ると、フェイトちゃんが口を手で抑えてクスクスと笑っているのが見えた。
「あ!笑った!」
「っ!」
わたしは嬉しくなってつい声に出してしまった。するとフェイトちゃんは、ハッとしたような顔をして俯いた。でも顔が真っ赤になっていて、とっても可愛らしかった。その様子を見て、わたしと同じ年なんだなぁと改めて実感した。
「にゃはは、何はともあれ元気になってよかった!」
わたしがそう言うとフェイトちゃんは少しだけピクッと反応するとチラとこちらを見て口を小さく動かした。
「…り……う」
「ふぇ?」
あまりに小さい声だったから聞き取れなかったけれど、フェイトちゃんはもう一度小さな声を振り絞って喋ってくれた。今度はわたしの耳にしっかりと聞こえた。
「……ありがとう」
その言葉を聞いたユーノくんはわたしを見て、笑って頷いてくれた。
「……えへへ、どういたしましてフェイトちゃん!」
わたしに出来る精一杯の笑顔で答える。わたしがフェイトちゃんの名前を呼ぶと、フェイトちゃんは何か言いたげな表情をした。一体どうしたのだろう?フェイトちゃんはモジモジしながら、こう告げてきた。
「あの……出来ればなんだけれど……名前……教えてくれないかな……?」
フェイトちゃんから、わたしの名前を聞いてきてくれた。嬉しくて、嬉しくて、飛び跳ねちゃいそうだったけれど、その喜びを噛み締めながらわたしは告げた。お父さんとお母さんがつけてくれた、わたしの大切な名前を。
「わたしなのは、高町なのは」
狂い出した運命は、新たな道を作り始める。
それが吉と出るか、あるいは……
うん、今回は色々ひどいね。
展開が急すぎるし、地の文が全然書けない。
でもこれが私の限界なんです。
今回切嗣が使用した銃はトーラス社の散弾リボルバー”ザ・ジャッジ”
410番散弾のほか、45ロングコルト弾も撃てるリボルバーです。
では次回をお楽しみに。