ころしやものがたり   作:ちきんなんばん

10 / 13
今回は最早切嗣が出てきません。主人公(笑)


第9話 束の間の平穏なの。

§side恭也§

 

 俺はあの後すぐさま家に帰ってきた。

 

 義弟(切嗣)が銃を所持していて、尚且つ、自分の目の前からまるで"魔法"でも使ったかのように消えてしまった。

 

 何も知らない人からすれば何を言っているのかと馬鹿にされるだろうが、これが真実なのだ。一刻も早くこの事を伝えなければ。俺は玄関に靴を脱ぎ捨て、リビングへと向かった。

 

「父さん!」

 

 扉を開けるとリビングで父さんは椅子に座ってゆっくりしていたが俺の様子を見ると、悲しそうな……自嘲するような表情を浮かべた。

 

「……。

切嗣がいなくなったんだね。」

 

 既に想定していたような、そんな冷静な返事が返って来た。俺がその時の状況を伝えようと口を動かそうとしたが、父さんはそれを遮って話し始めた。

 

「そんな気はしてたんだよ。あの子の目には狂気に似たようなものがあったからね。」

 

「父さんはそれを分かった上で……?なんでなんだ。父さんは昔……。」

 

父さん昔、ある狂気…爆弾テロによって大切なものを沢山奪われている。普通の人なら、そんな目にあって、目の前に狂人が現れたとしたら、ほとんどの人は八つ当たりと分かっていても当たらずにはいられないだろう。

 

「ああく、それでも救いたかったんだ。なのはと変わらないくらいの歳の男の子がなんでこんな目をしなけばならないんだって思ってね。」

 

 だけど、父さんは違った。逆に愛を注ぎ、狂気からアイツを救い出そうとした。

 

 強く、優しすぎる。どうしてこんなにも父さんは強いのだろう。

 

「私としては目一杯の愛情を注いだつもりだったんだけど……。子ども一人幸せに出来ないなんて、"正義の味方"ってものは、本当に難しいね。」

 

 父さんは本当に悲しそうに笑った。

 

 このことを、母さんやなのはにどうやって伝えればいいんだろう。

 

 俺は、言葉を紡ぎ出すことすら叶わなかった。

 

 

 

§sideなのは§

 

 下でバタバタという音が聞こえたけど、一体なんだったんだろう?そんなことを考えているとユーノくんが喋り出した。

 

 

「それじゃ、改めて自己紹介しようか。

僕はユーノ・スクライア。遺跡発掘を生業にしてるスクライア族の出身だ。」

 

「あたしはアルフ。狼を元にしたフェイトの使い魔さ」

 

「わたしは高町なのは。聖祥大付属小学校三年生なの」

 

「フェイト・テスタロッサ……です。」

 

 流れで自己紹介をすることになったけれどフェイトちゃんの自己紹介だけものすごく簡単なものだった。まだ緊張してるんだろう。優しく見守ってあげるのがきっと一番だ。

 

「フェイトさん、あらかじめ説明しておくけれど、ここはなのはの家で、なのはの家族は魔法のことについて知らないから魔法についての色んなことは隠していてくれると助かるんだけど……」

 

「……うん、わかった。

ところで、バルディッシュ……私のデバイスは何処に……?」

 

 フェイトちゃんはバルディッシュ……フェイトちゃんのデバイスのことを心配そうに尋ねた。やっぱり優しいなぁ。

 

「あ、そこでレイジングハートと一緒に自己修復をしてるよ。もう後は細かな調整だけだから持ち歩いても大丈夫だと思うよ。」

 

「あ、わたしが取ってくるね。」

 

 ユーノくんが指差した方からレイジングハートとバルディッシュが入った箱をわたしは取ってくる。二つともヒビはもう跡形も無くなって、新品みたいになっている。

 

「レイジングハート、もう大丈夫?」

 

「バルディッシュ……どう?」

 

≪≪No problem≫≫

 

 レイジングハートとバルディッシュは同時に答える。……あれ?なんか仲良さそう。わたしと同じことを考えたのか、フェイトちゃんはバルディッシュに話しかけている。

 

「バルディッシュ、なにかあった?

 

……No.(いいえ、特には)

 

 バルディッシュはどうやら無口でシャイなタイプらしい。これじゃ分からないからわたしはレイジングハートに尋ねてみた。

 

「レイジングハート、なにしてたの?」

 

There were with him throughout the day.(一日中彼と一緒にいたので)So I was able to talk quite valuable(中々貴重な話ができました。)

 

「そっか、羨ましいなぁ」

 

 どうやらわたしたちにより先にレイジングハートとバルディッシュの方が仲良くなってたみたい。ちょっと先を越されちゃった。……悔しくなんてないよ?

 

 ……そうだ。わたしはフェイトちゃんに聞いておきたいことがあったんだ。こんな機会を逃すわけにはいかない。

 

「フェイトちゃん。話は変わるけど、わたし聞きたいことがあるの。」

 

 フェイトちゃんはわたしの声を聞くと、スッと真剣な目つきになった。どうやらわたしが真面目な気持ちになったのをわかってくれたんだろう。

 

「なんで……ジュエルシードを集めてるの?」

 

「……それは……」

 

 フェイトちゃんは少し嫌なところをつかれた顔をした。心苦しいけど、これだけはちゃんと聞いておかないと。

 

「この前も言ったけど、わたしは理由も分からないのに戦うのなんて、絶対にいやなの。」

 

 まあ、戦わないっていうのが一番なんだけどね。

 そう思っていると、フェイトちゃんの口が僅かに動いた。

 

「……が」

 

「え?」

 

 小さくて聞き取れなかったからわたしが聞き返すと、こんどはハッキリした口調で話し出してくれた。

 

「母さんがジュエルシードを求めてるから。……それだけ。」

 

 その瞬間、フェイトちゃんの目がいつも見る、悲しい目をしていた。

 なんで?なんでフェイトちゃんはお母さんの話をして悲しい目をするの?

そんなわたしの考えを知るはずも無いユーノくんがフェイトちゃんに質問した。

 

「フェイトのお母さんが?

ロストロギアを集めているだなんて……違法行為だよ。」

 

 ユーノくんの言う通りだ。この前のような爆発が起きるような危険な物を管理するのが一人じゃダメなのは、わたしでも分かる。

 

「それになんで自分の娘にそんな危ない作業を任せているんだ?僕が親の立場だったら絶対に行かせないけど……。」

 

 ユーノくんが言うのももっともだ。わたしのお母さんやお父さんも、わたしがこんな危険な事してるって分かったら、止めるんだろうなぁ。なんて考えているとフェイトちゃんはハッキリと答えた。

 

「私も詳しくはわからない。

でも、私は母さんに喜んでもらいたいんだ。」

 

 本心なんだろう。

 しっかりと前を見据えている。けれど、どうしても悲しそうな目は消えない。わたしは、耐えきれなくなってしまった。

 

「どうして?」

 

「?」

 

「どうして、そんな悲しそうな目をしてるの?」

 

「……」

 

 フェイトちゃんは黙ってしまった。わたしの考えは外れてはいなかったみたいだ。わたしは続けて話す。わたしの正直な気持ちを。

 

「言いたくないなら言わなくていいよ。でもフェイトちゃんが悲しんでるのを見ると、わたしもなんだか悲しくなっちゃうの……。」

 

 フェイトちゃんがこっちを少し驚いたような表情で見る。そんなに驚くようなことかな?特別な事は言ってないんだけれど。

 

「だから約束して。これから先、何かあったらわたしに相談して。苦しい時は助けを呼んで。わたしはフェイトちゃんの味方だから。」

 

「……うん、ありがとう。」

 

「にゃはは。」

 

 フェイトちゃんは少し微笑んでくれた。その笑顔が眩しく感じて、わたしは少し照れ臭くなっちゃって、笑ってしまう。

 

「ユーノ……あんたのとこのご主人様は、いい子だねぇ……」

 

「うん、なのはは本当に優しい人だよ。

というかアルフ。何度も言うけど僕は使い魔じゃないってば……。」

 

 アルフさんは涙を拭きながら感激していたけれど、ユーノくんは使い魔ってところを訂正することを忘れめない。すると、フェイトちゃんは少し驚いた表情をしてわたしに尋ねてきた。

 

「あの子って、使い魔じゃないの?」

 

「違うよ、ユーノくんはわたしに魔法を教えてくれた大切なお友達なの。」

 

 わたしはハッキリとした声で言った。その言葉に納得したのかしてないのかよく分からないけど、言いたいことは伝わったはず。

 

 ……ユーノくんが少ししょんぼりしてたのはなんでだろう?ユーノくんは咳払いをして話始めた。

 

「は、話を戻すけど、二人ともジュエルシードを渡してはくれないよね……。」

 

「うん、それだけは譲れない。」

 

 ユーノくんの問いにフェイトちゃんは明確な意思を持って答えた。どうしてもそれは避けられないみたいだ。それなら出来るだけ穏便にいきたい。

 

「じゃあ、こうしようよ。」

 

 わたしが話し出すと、三人がわたしの方を一斉に見る。

 

「ジュエルシードはとりあえず四人で探そう。見つけたらちゃんと連絡をすること。それならこの前みたいな暴走もないし、わたしたちは街の安全が守れるし、フェイトちゃんたちはジュエルシードをかなり早く見つけられるし……どうかな?」

 

 これなら安全だし、お互いの条件は互角のはず。するとフェイトちゃんはわたしに問いを投げかけた。

 

「もし……私達が全部のジュエルシードが必要だと言ったら?」

 

「フェイト……」

 

 わたしも考えていなかったわけではないけど、そんなことにはなって欲しくない。でも、十分にあり得る可能性だ。

 

 わたしは覚悟を決めて、口を開く。

 

「その時は全部のジュエルシードを賭けて、戦おう。」

 

「……分かった。」

 

 フェイトちゃんは少し考えた後、言葉を口にした。ユーノくんは先程からずっと考えていたみたいで、フェイトちゃんの返答が終わって、すぐに話し始めた。

 

「……僕としては全てを回収して管理局に保管してもらいたいんだけど……お互いの妥協点となるとこうなるよね……。」

 

「ごめんね、ユーノくん。勝手に決めちゃって。」

 

「なのはが謝ることじゃないさ。きっかけは僕がなのはに魔法を教えたことなんだから。」

 

 ユーノくんはそう言うと苦笑いした。部屋に嫌な沈黙が流れたのを見かねたのか、アルフさんが話し出した。

 

「そ、そうだ!フェイトも回復したんだしさ、一回アタシ達の拠点に来ないかい?これから一時的とはいえ、協力関係なんだしさ!いいだろう?フェイト!」

 

「え?あ……うん。」

 

「なのは達もいいかい?」

 

 ね?と言ってわたしたちに尋ねてきてくれた。わたしもこんな悲しい気持ちにずっとなったままなのは嫌だ。それに、フェイトちゃんの家はとても気になる。わたしは勿論OKを出した。

 

「じゃあ決まりだね!パパッと行こうか!」

 

「あ、フェイトさん。一応なのはの家族には黙ってるから、先に転移で外に出てもらえないかな?」

 

「……分かった。」

 

 そう言うとフェイトちゃんは転移魔法を使って外へ出た。さて、わたしも準備しないと。気持ちを切り替えて、わたしは服を着替え始めた。

 

大切な人がいなくなっているとも知らずに。




むむむ…話が進まない…。しかも薄っぺらい…。

はやくプレシアさんにも接触したいんですけどねぇ。そう上手くはいかないですねぇ…。

話は変わりますがデバイスはリリカルなのはのヒロインですね。レイハさんとかバルディッシュとかMCとか、もう大好きすぐる。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。