[凍結中]魔弾の王×戦姫×狂戦士×赤い竜   作:ヴェルバーン

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このサイトを知り、皆さんの作品を読んで妄想が爆発してできた作品です。

転移の原因は? とか色々言いたいことはあるだろうけど、そこら辺朧気にしか考えてないんで期待しないでください。

DOD3はやってません。DOD1も手元にないので齟齬と矛盾が生じる可能性があります。

作者は素人なので批判はありがたく、謙虚な気持ちで聞きます。どこがダメだったか教えてください。現時点でも違和感は多数あるのですがどこがダメなのかもわからない状況です。
すぐに、とはいかないと思いますが、できるだけ取り入れていきます。

キャラ崩壊は気をつけていますが、あるかもしれません。

私の、アンヘルとカイムへの愛は不変です。


第一話

 

 荒れ果てた女神の城。

 18年前に女神の封印が失われて以来、封印騎士団の心ばかりの維持によって形だけは保たれていた朽ちた古城。

 

 此の両者にとって全ての『始まりの地』は今、両者の『最期の地』にも成ろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 18年前。

 世界は女神を守る連合軍と、その女神を奪い世界を滅亡させようと企む帝国軍との熾烈な争いが繰り広げられた。

 そして帝国軍の裏の顔、すべての首魁。天使の教会の司教「マナ」を追い詰めた折。

 喪った女神──フリアエ──の代わりにその身を自身の契約者である男の為、その為だけに封印に身を捧げた赤き竜──アンヘル──。

 

 各所に別れていた封印の負荷を一身に浴び、辛苦に身を焦がすアンヘルにとって、男の存在だけが心の支えだった。

 

 

 ──たとえ、その姿が見えなくても。

その手が己に触れず、温めてくれなくても。

男と過ごした日々が。

男の手の感触、幾度も温めてくれた温もりが──

 

 そして何より男の存在を感じるという事実が。

 

 

 それだけがアンヘルを癒し、心の拠り所だった。

 

 

 

 残された男──カイム──は半身を失った空虚な心と、元凶の少女マナを連れて各地を彷徨した。

 少女に己が為した罪の在処を見せつける為。半身に焦がれる心を持て余しながら、静かに朽ちていくような日々を送る。

 

 

 そんな日々を15年程続けたある日、焦がれる心が落ち着きはじめていたカイムは、半身の苦痛の思念を感じ取った。

 

 思念を感じ、動揺したカイムの隙を衝き、左目を潰され、少女──マナを逃した。

 しかし、そんなものはカイムにとって二の次だった。

 戸惑うカイムの声がアンヘルに聞こえているのか、いないのか。苦痛に苛むアンヘルの思念が次第に虚空に離れ去っていく。

 アンヘルの言では封印が組み換えられているようだ。

 理性を失う程負荷を重くし、封印の強化を。

 それも、カイムや当事者のアンヘルに何の相談もなく、即ち

 

 神官長──ヴェルドレ──の裏切り。

 

 空虚だったカイムの心が、──懐かしき、憎悪の炎で満たされた瞬間だった。

 

 ヴェルドレの護衛達を撫で斬りにし、ヴェルドレの命乞いを聞かず一閃。

 鍵となる男をも切り捨て、封印改変を阻止した筈だったが、

 しかし……封印は組み換えられてしまう。

 アンヘルの思念は苦痛に塗れ、消え去っていった。

 

 アンヘルを救うには封印の鍵を打ち砕き、最終封印から解き放つこと。しかし、最終封印を解き放てば世界は滅ぶ。

 

 世界か、己の半身たるアンヘルか。

 

 カイムにとって考える迄もなかった。カイムは世界よりアンヘルを選んだ。

 

 

 

 

 

 アンヘルは封印の負荷が倍増しその身が激痛に支配されていく中、カイムの存在を徐々に感じられなくなっていった。

 

 昏い闇の中で、痛みに苛まれながらアンヘルはカイムの存在を求めた。何度も、何度も。

 

 意識の端でカイムの声がアンヘルの名を呼んだ気がした何度も、何度も。

 

 カイムの存在を求めたアンヘルだが幾ら求めようとも届かず、痛みだけが変わらずその身体を支配した。

 

 次第に理性は摩りきれ、カイムの存在を忘却の彼方に追いやり、自身にこの様な責め苦を科した人間への、狂気と評していい程の憤怒と怨嗟が膨らんでいった。

 

 

 

 そして、解き放たれた最終封印。

 

 

 カイムは、破壊の限りを尽くし街々を焼き払った半身を城に呼び寄せ、アンヘルは今際の際で理性を取り戻し、両者は求め続けていた半身と再会した。

 

 

 

 

 

 二人は見上げる必要も、見下ろす必要もなかった。

 

 隻眼の男──カイムは壮年をそろそろ過ぎる齢だろうか。

 解れ、血が滲みボロボロになった赤い縁取りの黒い装束は土埃りに塗れ、何処を視ても傷だらけ。

 疲れ果て、体力も底をつき、膝を折っていないのが他者から観ても不思議なくらいのその身体。

 

 そのカイムの隻眼が向ける先、

 

 赤き竜──アンヘルの体躯は平常では観るものが賛嘆を挙げるだろうその身から血を流し、裂傷や打撲痕、煤や泥混じりのその身を石畳に投げ出していた。疲弊しきり血を流し過ぎたその身体では、僅かに頸をもたげるのが精々だ。

 

 丁度、目線が同じ高さになり、万感の思いで二人の視線は交差した。

 

 共にボロボロの身体が眼に写る。

 

 それでもカイムとアンヘルは此の結果と結末に満足していた。

 もう二度と別離の苦痛を味わいたくなかった。

 

 カイムはアンヘルの顔を優しく撫で、温める。両者の脳裏を共に過ごした日々が、走馬灯のように駆け巡る。

 

「……もう良いのか、カイム」

 

──ああ。行こう、共に……。

 

 アンヘルの瞳から光が消え、もたげていた頸が力なく石畳に落ちた。体躯からは炎が灯り、カイムの身体に燃え広がる。

 

 

 二人の意識は虚空に途絶え……、そして……

 

 

 

 

 

 物語の幕が開く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 首筋がチリチリと焼けるような感覚にティグルは飛び起きた。その際、弓と矢筒を携えて起きたのは、我ながら大したものだと思った。

 

 日はとうに落ち、日付が変わって一刻半(三時間)程経った時分。自身の領地アルサスと隣国ジスタートを隔てるヴォージュ山脈の間の鬱蒼と生い茂る森の中の少し開けた所にティグルはいた。

 

 唯一の光源は星明かりのみという暗い森の中で、漸く青年に入ろうか、という年頃の赤毛の狩人ティグルは、仮眠を含めた休息を取っていた。

 此処からもう少し山脈に近づけば、狩りの目的である獲物が、喉を潤す湧水まで歩いて半刻程といった場所だ。

 

 狩りはティグルの唯一と言っていい趣味だ。物心つく前から弓に興味を示し、ティグルの亡き父──ウルス──も、優れた狩人であった祖先の事があってか、興味があるならと手解きしてくれた。

 今では、弓の腕はティグルにとって唯一と言っていい特技だ。

 

 

 

 だが、此のブリューヌという国では弓を使う者は蔑視される。

 

 

 

 かつての戦で弓を使う者を、

──弓は敵の剣や槍に身をさらせぬ、臆病者の武器だ──

または、

──安全な後方から矢を放っていた者より、誰よりも前で敵を食い止めていた者にこそ価値が在る──

と貶めた者がいた。

 

 事実、その時敵国との戦いで多大な戦果を挙げた弓兵部隊は、報酬どころか労いの言葉一つ掛けられなかった。

 

 それ以来、弓兵の功績は評価の対象にすらならない。

 

 それ処か、弓という話題を出すだけで、話の空気ががらりと変わることもある。

 

 

 ティグルも過去、弓を使うという事で苦い経験をした事は一度や二度ではない。軽蔑や嘲笑の声は当前の事、露骨に名指しで侮辱する者すら居る。

 ティグルが普通の狩人であったならばもう少し風当たりも良かったのかもしれないが、ティグルはアルサスの領主。貴族だった。

 山と森、町が一つに村が四つという田舎と言っていい程の辺境の領地だが、貴族は貴族。蔑如の視線は避けられなかった。

 

 それでも、ティグルは弓を使うことを辞めなかった。

 他の武器の扱いが人並み以下で、捨てようにも捨てられなかったのも一因でもあるが、やはり狩りが好きだった事が最大の理由だろう。その趣味が過ぎて、公私を忘れることもしばしばだが。

 

 そして昨日から、泊まりがけで森に入り、開けた場所にポツンと立っている枯れた大樹の根本に身を預けながら身体を休めていた。

 

 そんな時、嫌な予感と共に首筋を焦げ付きそうな感覚に襲われ飛び起きた。

 

「……何だっ!」

 

 何かは判らないが、良くないものだけは確かなようだ。ティグルは此の感覚に覚えがあった。

 前回、此の感覚に襲われたときは七十チェート(六、七メートル)程の地竜と遭遇した。逃げながら──自分でも未だに信じられないが──何とか倒したが、今回はそれほどの脅威ではないと思いたい。

 

 しかし、その感覚の鋭さに喜べばいいのか、予想と外れなかった事を嘆けばいいのか。

 

 それほど遠くない所で、はっきりとした遠吠えを耳にした。

 

「狼か……っ」

 

 その遠吠えに答えるように別の方角、かなり近い処から遠吠えが上がり、ティグルは恐怖した。

 

「囲まれてる……!」

 

 狼は持久力がある、今から逃げても疲れきったところを必ず喰い付かれるだろう。自分の不注意と間抜けさを呪いたいが、その時間も惜しい。こうなれば、この枯れた大樹の上で迎え撃つか、大樹の上で一晩明かすしかなくなるだろう。

 迎え撃つ場合、問題となるのは狼の数と狼の引き際だ。矢筒にある矢は8本。それより多くいた場合と、素直に退くかどうかの問題がある。

 大樹の上で一晩明かし、運良く退いてくれたとしても、帰りは夜通し歩いても一日掛かるだろう。その道中に待ち伏せでもされたら目も当てられないし、ティグルを追って近隣の村々に被害が出てもいけない。

 

 そんなことが脳裏を駆け巡る中、大樹に登って十秒も経たぬ頃。樹上から狼の姿が見えてきた。

 

 数は見える範囲で9匹。しかし、まだ姿を見せず潜んでいる狼もいるかもしれない、とティグルは仮定する。

 

 9匹以上の狼。数が多い、矢が足りない。恐怖と焦燥感に駈られながら、ティグルは二日前に自身を見送ってくれた少女を思い出した。

 

──ティッタ……。

 

 今も、ティグルを心配しながら待って居るだろう妹分兼侍女の少女を想像し、沈痛な表情を浮かべながら、如何にしてこの状況を打破するか考えを巡らせ始めたその時。

 

 

 

 

 

 樹上のティグルのなお上から、大気が震える程の雄叫びを聞いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 近くで水の流れる音がする。

どうやら己はうつ伏せに倒れているようだ。その事を自覚した時、何故と思う拠りも先ずアンヘルと己の最期を思い出し、跳ね起きた。

 辺りを見回す。生い茂る草木に、苔むした岩、森の動物達の足跡の残る地面に、細いが力強さを感じられる沢。

 

 何故こんな場所に、と思いながらも視線を八方に向けると視界の端に亡き父の形見が光った。

 24年前から使い続けている愛用の剣だ。

 その剣の方向に歩みながら、辺りを見渡して見るがアンヘルの姿は見えない。だが見えないというのに、近年身を焦がしていた熱い衝動と、喪失感は鳴りを潜めている。

 

 何故か。

 

 近くに感じるからだ。その存在が、その思念が。

 

 どんなに声をかけても、返って来ることのなかった己の──半身の声が。

 

 

━━カ……ム、……こ……?

 

 聞こえた。

 

━━カイ……、我……声が……えて…………か?

 

 今度は少し長く、困惑を滲ませて。思わず懐かしさが込み上げる。

 

━━カイム……、……こ……に……る?

 

 半身が、己の名を呼んでいる。ならば──

 

━━カイムよ! 何処にいる? 応えよ!

 

 もどかしげなアンヘルの声に応え、剣を手に取り鞘に収めながら、己の身体は暗い森の中へ駆け出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 先ず、感じたのは身を切るような風の感触だった。次いで、その風の音。

 墜ちる体躯を整えて翼を拡げたのは、空を生きるものにとって、何ら難しくない反射的な行動だった。

 そこから風を捕まえて、辺りの暗い山々を俯瞰したのは、念願叶って再び出会えた、己の半身を見付ける為。

 

「案ずることはない。我等の契約は途切れていない」

 

 思わず口に出た言葉に動揺した。自分で自分を安心させるかのような言葉を吐くなど、人間でもあるまいに。

 そんな自嘲が洩れるほど自分の心は弱っているようだった。

 

 そんな思いを振り払うべく、半身たるカイムに声を飛ばす。

 

━━カイムよ、何処だ?

 

 返答はない。声が届いていないのか、或いは飛ばせぬ状況に陥っているのか。もう一度……。

 

━━カイム、我の声は聴こえていないのか?

 

 カイムの思念が洩れてきた。どうやら絶えて久しいやり取りに、思う処があるらしい。

 ……まあ、悪い気はしない。

 

━━カイムよ、今何処にいる?

 

 以前返答はない。……全く! いい加減にせよ! と言いたいが気持ちは分からんでもない。だが、そろそろ本当に返答してもらわねば、無為に飛び続けることになる。此れで応えねば少々の小言を覚悟せよ、という微量の苛立ちを込めてもう一度声を飛ばす。

 

━━カイムよ! 何処にいる? 応えよ!

 

四度の呼び掛けに漸く答えが返ってくる。やれやれやっとかという思いと、小言を回避したか相変わらず悪運の強い奴め、という思いがない交ぜになりそれすらも懐かしい気持ちになる。

 

 翼をはためかせ、咆哮を挙げる。

 

 カイムはすぐそこだ。逸る気を落ち着かせ、咆哮が木霊する山々を尻目に、暗鬱たる森が拓けた場所に降り立った。

 

 

 

 




次は、ちと長い

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