ワンピースをテンプレで生きる   作:楯樰

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今回のテンプレ・無し



別れ

 この金髪幼女。名前はマリアで歳は今年で四歳。家族も居ない帰る場所もないという、助けてなかったら人生終了に王手かかってた。

 

 その境遇は、……うん、有りがちだけど凄く悲惨な話で聞くに堪えない。

 

 黄金の鎧(スヴァルナ・カヴァーチャ)に乗せてはいるが、電磁波が常時飛び交っているこの空間に生身の人間がいるのはあまりよろしくないはず。

 

 娘みたいな、癒しの存在が欲しいとは思っていたけれど、育児経験なんて皆無だから、勝手に助けて連れてきたのに無責任な話だが、男の自分が育てていくのは教育上よろしくない。それに加えてメンタルケアもしないといけないとなると、恐らくまともな教育を行うことができない。

 

「……そういうわけだ。私の知り合いのお姉さんたちの所へ」

 

「いやだ!」

 

「……」

 

 ……だというのにえらく懐かれてしまった。

 

 どうせいと? どないせいっちゅうねん!

 

 マリアの出身の村を襲ったっていう海賊が、態々売るために連れていった理由もわかる。

 

 美幼女なんだ。それも将来魔性の女になりそうな雰囲気を持ったとびきりの美人さんなんだ。

 

 文化的に育児経験豊富なシングルマザーしかいない女ヶ島に預けようと提案しても瞳に涙を浮かべて断られる始末。

 

 無理に言う事をきかせる、というのもこの子の境遇も含めてやりたくない。

 

 ……でも此処はこの子の将来をちゃんと考えてハッキリと…!

 

 

 

「おとうさん、アレなに?」

 

「ああ、あそこはウォーターセブンという。船大工がたくさんいる島だ」

 

 

 

 おとうさん呼びには勝てなかったよ……。

 

 内心嬉しさのあまり泣いていたというのに、仕方がないなと頭を撫でる自動変換さんマジ万能。

 

 でも中二言動は止めてください死んでしまいます。

 

 ……と、まぁ、そんなことがあって。来たのはトムさんご存命のウォーターセブン。

 

 全ては娘になったマリアのため。

 

 最寄りの島でアルミナのような物質を見つけたので、大出力の雷でアルミニウムに精錬加工した。

 

 何に使うかというと、この子の生活空間をつくるため。電磁波を通さない物質で部屋を囲ってしまえばいいんじゃないか、と思いついてだ。

 

 早速造った部屋に取り付けたが、こどもを金属で囲まれた空間に住まわせるのってどうなん? と思い直し此処、ウォーターセブンに木材を買いに来たわけで。

 

 それにしても雷の電磁波と見聞色の組み合わせが最強すぎる件について。自然界の物質では最も伝導性の高い銀も見つけたという。

 

 ……アレ? これで宝探しすればよくね? これで定期的な収入元が出来るやん。

 

 やったね、エネル! かぞ――

 

「ねぇ、おとうさん。あれたべてみたい」

 

「ううん? ……ああ、あれか? どれ、一つくれ」

 

 水水肉だったけか。とろけるように美味いとかなんとか。

 

 表情を顔に出す事が少ないこの子も顔をとろけさせているから相当なのだろう。

 

 それに娘だと思ったら可愛くて仕方ない。

 

 きっと外伝の某野菜の王子様も娘にはこんな気持ちだったに違いない。

 

 ……あれ、なんかすごい名案思いついたんだけど、なんだったけ?

 

 まぁ、忘れるくらいだからどうでもいいことなんだろうさ!

 

 金を手に入れたときと同じように、手に入れた貴金属を電気分解で精錬して売り払ったので、それなりのお金が手元にある。

 

 それにしても雷の電磁波と見聞色の組み合わせが――

 

「おとうさん、おとうさん」

 

「……うむ? どうした?」

 

「ううん、よんでみただけ」

 

 なんですか、この生き物は。ちょっとうちの娘がかわいすぎて死ねそうなんですが!

 

 抱きしめようと思っても自動変換=サンが頭をなでるだけにとどめてしまうのが憎い…っ!

 

 おんぶか! それとも肩車がええんか!

 

 と、肩車が出来たので肩車をしたら両親のことを思いだしたらしく、頭の上で泣かれた。

 

 自分には慰めることしかできないのが辛い。

 

 ……やっぱり自分には子育てはできないと分かった。

 

 やはり、こういった子たちへの扱いになれているだろうハンコックたちの所へに引き渡すのが最善なのかもしれない。

 

 

 

 Ξ-Ξ-Ξ-Ξ

 

 

 

「……ここにいるのが全員か」

 

「……うん」

 

 今のお父さんが、おはかを作ろうって言ってわたしのすんでた所へきた。

 

 言ってないのになんでむらの場所がわかったのかわからないけど、お父さんはすごい。

 

 ……わたしがあぶなくなった時に助けてくれたのが、今のお父さん。

 

 かみなりをあやつる事ができてすごいとおもう。

 

 ……むらで死んじゃったみんなには、むしがいっぱい集まっててすごい変なにおいを出してて。

 

 笑ったりおこったりしてたみんなの顔とくらべて、わたしはちょっと見ただけで目をそらししちゃった。

 

 野菜を売ってたおじさんが、お魚を売ってたおばさんがみんなすごいかおで死んでた。

 

 死んじゃうってこういうことなんだってわかって、かなしくなって。

 

 今のお父さんにたすけられなかったらわたしもあんな風になっちゃうのかなって。

 

 かなしくなって泣いたらおとうさんになぐさめられた。

 

「いつか人は死ぬ。それこそ雷にあたっても死んでしまうだろう。だが、だからといって死に囚われるのは愚かなことだ。……生きている者は生きることだけを考えればいい」

 

 そういってなぐさめてもらった。むずかしい言葉でよくわからないけど、死ぬことを考えるなって言われた気がする。

 

「私はな、マリア。人間は死んだら新しい人間に変わると思っている。……だからこれは死人を次の人生へ送り出す儀式だ」

 

 ――我はカミなり。

 

 ――天裂く雷鳴をマリアの父と母に。

 

 ――この村の鎮魂歌(レクイエム)としよう。

 

 お父さんは、そう言って『そらとぶふね』からかみなりを落とした。

 

 あめの代わりにかみなりがふっているみたいだった。

 

 みんながもえて、火が消えたあとには白いこながのこった。

 

 ふたりでがんばって集めて、お父さんが持ってきた四角い大きな石の下にうめた。

 

 おとうさんが文字を指でほっていく。

 

 わたしもやってみたけどかたくてできなかった。

 

 わたしじゃできないをふつうにやってしまうからお父さんはすごい。

 

「なにをほったの?」

 

「『マリアの父と母、村の人々。此処に生きた証しを残す』と掘った。……お前が大人になって、強くなったらまた訪れてみるといい」

 

「……うん」

 

「マリア」

 

「……なに、おとうさん」

 

 

 

 ――前に話した事、覚えているか?

 

 

 

 お父さんにはわたしをそだてるじしんが無いらしくって。

 

 だからわたしがもう少し大きくなるまで、知り合いのところへあずけるっていう話し。

 

 お父さんもほんとはいやだって言ってたから。

 

 だからわたしも、いやだったけどその知り合いのお姉さんのところに行くことにした。

 

 お父さんと会えなくなるわけじゃない。

 

 お父さんも「会いにいく」って言ったから、あっちに行ってもまたあえる。

 

 

 

 ……「にょうがしま」っていうところに連れて行かれて、お父さんが「マリー」って呼んでたきれいなお姉さんがでむかえてくれた。

 

 その人のかみの毛いがい、死んじゃったお母さんにそっくりで、思わずお母さんって呼んじゃったら、そのおんなの人てれちゃった。

 

 後ろにいた黒いかみの毛のこわそうなおんなの人と、緑色のかみの毛のお姉さんがくやしそうにしてたから、どうしたんだろうってお父さんにきいたら、こまった顔してた。

 

 それから、お父さんからせんべつにって『ユラユラの実』っていうあくまの実をもらった。

 

 こっそり教えてもらったら、『せかいの全てを生み出してあやつることが出来るようになる力』っていうのがつくみたい。

 

 おいしくないけどお父さんの目の前でぜんぶ食べきった。

 

 わたしはすききらいはしない、つよい子になるから。

 

 わたしがぜんぶ食べきったときのお父さんのびっくりした顔はおもしろかった。

 

 

 

 つぎにお父さんと会えるのはいつかな。

 

 

 




ロリっ子のオリキャラははご所望で無かった様子。
なんでや! ロリっ子にエネルのをお父さんって呼ばせたいやん…!

中の人がデレデレしちゃってるのに、いいお父さんにしか見えないエネルが見たかったんや!

誰に何と言われようと俺はこれを完結させるぜ(震え声)

9/13 ひらがな表記を漢字交じりに修正。

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