十二星座の烙印 -ゾディアックスティグマ-   作:bani

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発端

・ウィンガード着地時に傾く

ソシエ『またこの場所…誰か、誰かいませんか?』

少女『また会えたね』

ソシエ『あなたは確か前にも会った。あの、出口については見つからなくて』

少女『ねぇ、貴方はいつまで現状に甘えているつもりなの?』

ソシエ『えっ?それってどういう?』

少女『貴方は力を開花させつつある。圧倒的な治癒能力。この力は人間ではありえないのよ?貴方の今の姿は只の蛹(さなぎ)にしか過ぎない。これから貴方は成虫になるべく真実の姿を晒すことになる』

ソシエ『確かにこの力は記憶喪失の時から持っている力だった。不思議な力で傷を治したことは認めます。だけど、私はこのまま人間として生活をしても良い筈です!いえ、したいんです!』

少女『そう、それが貴方の出した答えなのね?』

ソシエ『あの、名前を教えてください!次に会った時でお互いに分かり合えないのは辛い事だから』

少女『私の名は―――』

・ソシエ夢から覚める。

レクス「大丈夫かい?」

ソシエ「りっ、リオン!」

レクス「怪我はないか?どこも痛くないかい?」

ソシエ「はっ、はい…大丈夫です。すみません。あれ?ない…ない?エゼルフィアレスが…」

レクス「ひょっとしてこれの事かい?」

ソシエ「あっ!ありがとうございます!…それにしてもここはウィンガードじゃない?」

レクス「もしかしたらあの艦の事かな?」

・ウィンガードが森奥で横転している

ソシエ「みんな!」

レクス「ダメだ!1人でこの森には入っちゃいけない!」

ソシエ「離してください!仲間があの艦にいるんです!」

レクス「落ち着くんだ!簡単にはいかない、この森は普通の森じゃないんだ」

ソシエ「どういう事ですか?」

レクス「ここは『夢想の森』と呼ばれている。一度踏み入いれると、人々は泡沫の夢を見せられる。そうなる内に森に迷い込んでしまう。君は運が良かったね…恐らくあの艦が傾いた際にここまで飛ばされたのだろう」

ソシエ「そんな…それだと皆は…?」

レクス「君の他に仲間はあと何人いるんだい?」

ソシエ「はい、男性が6人と女性が5人です」

レクス「計11人か…わかった。捜査に協力しよう」

ソシエ「私、ソシエって言います。よろしくお願いします…えっと」

レクス「僕はレクス。ここで調査をしている騎士の1人だ。よろしくね?ソシエ」

・朦朧とした意識の中、父親が見える。

リオン『ダメだ…父さん!逃げてくれ!俺の事なんてもういいだろ?これ以上、誰かが犠牲になる必要はない、だから…』

・父親がゆっくりと微笑みながらリオンに触れる。

リオン「逃げてくれッ!!」

少女「きゃっ」

リオン「はぁ…はぁ…ゆっ、夢…?」

少女「目が覚めた?」

リオン「えっ?なんで…涙が?」

少女「大丈夫!?ほら、このタオル使いな?」

リオン『ソシエ!?いや違う、そっくりなだけか?』

少女「悪夢でも見てたの?ずっとうなされていたのよ?」

リオン「俺はどれだけ眠っていたんだ?」

少女「半日はくらいね。覚えてる?森で倒れていたのよ?」

リオン「確か…ウィンガードが不時着して…そうだ!みんなは!?」

少女「仲間についてだったら、貴方以外の人間は見てないわ」

リオン「そっか…」

少女「はい、これ」

リオン「これ…薬か?」

少女「そっ、良く効くわ」

リオン「んぐっ…うげぇ、苦ぇ」

少女「我慢して、苦い薬ほど効果はある」

リオン「こりゃ、ハブハーブとバイオシードか?植物独特の匂いで覚えてる。その2つを混ぜたのか?」

少女「へぇ、よく解るわね。そうよ2つを煎じた薬だよ。貴方は何者なの?」

リオン「俺は冒険家だ、野草の知識だってそれなりにある。この苦さ…人生で一位だわ」

少女「それだけ無駄口叩けるなら、もう心配なさそうね」

リオン「なぁ、ここってどこだ?」

少女「ここは『幻想の森』よ…冒険家なら聞いたことあるでしょ?」

リオン「噂程度だけどな、1度踏み入れた旅人は夢を見せられ、目が覚めたら見覚えのない場所に置き去りにされているって」

少女「幸い、貴方は倒れてる所を私が通りがかって発見したのよ」

リオン「言うなれば命の恩人か…ありがとうよ」

少女「どういたしまして、貴方…烙印(スティグマ)を持ってるのね?怪我の治療の時に見せて貰ったよ」

リオン「…ッ!」

少女「そう怖い顔をしないでよ、別にどうもしないわ」

リオン「怖くないのか?」

少女「人が目の前で死ぬ方が夢見悪いのよ」

リオン『似ている…顔がソシエとそっくりだ…言動は本人と違って尖がってる気がするけど…』

少女「ここで行方不明者は続出している。ここの番人をやっているから夢の気配を感じる事が出来るんだ」

リオン「夢の気配?」

少女「人間ってのは生まれながら罪の意識やトラウマが心の奥底に眠っている。そういう人は悪夢人(ナイトメアー)として、目を覚ましてあげるのが番人としての仕事」

リオン「悪夢人(ナイトメアー)か…まるで烙印(スティグマ)を持ってる俺らにも通ずる者があるな」

少女「それにしても貴方、さっきからジロジロと人の事みて…失礼よ?」

リオン「いや、悪い…仲間と顔がそっくりでさ」

少女「仲間?」

リオン「ソシエってんだけど」

少女「!?」

リオン「そいつも俺が怪我して倒れてる時に助けてくれたんだ」

少女「…そう、優しい子なのね」

リオン「お節介なだけさ…」

少女「それで、その彼女さんと私を重ねていたのね?」

リオン「悪い…命の恩人に対して失礼だよな?ごめん!!」

少女「別にいいわよ、それでそのソシエって子はどこに?」

リオン「そうだ!皆の事が心配だ!」

少女「待って!もう日が落ちるし。1人で出歩くのは危険よ」

リオン「そんな事を言ってられるか、仲間達と早く合流してレイフの野望を打ち砕かないと!」

少女「忘れたの?ここはただの森じゃない。一歩踏み間違えれば遭難してしまう。夜になれば霧も出て視界―が遮られてしまうわ」

リオン「だったらなおの事、仲間達が遭難する可能性も高いって事じゃねえか!」

少女「仕方ないか…私もついて行く。ただし、絶対に勝手な行動はしないことこれが条件」

リオン「わかった…名前がまだだったな、俺はリオンだ」

・森林内

ソシエ『この人…本当に優しい人だ。捜査の協力についても嘘は言っていない』

レクス「それにしても、ソシエの持っているそれは楽器かい?」

ソシエ「はい、エゼルフィアレスという楽器らしいです。なんというか…身近にあると落ち着くんです」

レクス「へぇ、変わった楽器だ古代遺産(アーティファクト)の一種だろうね」

ソシエ「多分、そうだと思います。今までこの楽器を見たことがなくて。それに…記憶喪失の時からずっと持っていたので」

レクス「記憶喪失?すまない、辛い事を思い出させてしまったね」

ソシエ「あっ、でも今は気にしていませんから」

レクス「それだけ思い入れが強いんだね。その気持ちはよくわかるよ…僕もこの剣を大切にしている」

ソシエ「なんでしょう?見たことがない形をしていますね」

レクス「これは太刀と言って古代遺産(アーティファクト)の一種だ。子供の頃に家族と冒険をしていた時に手に入れたお宝さ」

ソシエ「レクスさんの職業って冒険家さんですか?」

レクス「その通りだ。僕はある人物を探している」

ソシエ「もし、差支えなければ教えてくれませんか?」

レクス「僕が探しているのは弟なんだ。病弱な弟でね…4年前の星魔戦争の時に行方不明になった」

ソシエ「あの、私の仲間にもリオンっていう冒険家がいるんです」

レクス「ああ、その通りだがリオンを知っているのか?」

ソシエ「はい!」

レクス「そうか…弟は元気にしていたかい?」

ソシエ「はい、とても元気ですよ。私の大切な仲間です。いつも優しくしてくれて、戦うときは前線に立ってばかりで、いっつも傷だらけになって帰ってくるんですよ」

レクス「傷ついて…?そんなことは弟は満足に歩くことも出来ないはずだ」

ソシエ「えっ?」

レクス「リオンは生まれつき身体が弱くてね…行方不明になった時に最悪、死んでいるとすら考えた」

ソシエ「でも!リオンは生きていて」

レクス「すまない。ソシエが嘘をついているとは僕も思っていない…まるで夢のようだよ諦めずにここまで来れたのは正解だったようだね」

ソシエ「夢か…あっ!」

レクス「どうかしたのかい?ソシエ?」

ソシエ「私、最近同じ夢を見るんです…そっくりな顔をした女の子がいて…その子の名前を今ならハッキリ言えるんです」

ソシエ&少女「私の名は―――フレア」

ナレーション「出会いと別れ、人はそれを繰りかえす。いつどこで誰と会うかという未来は目に見えるものではない。それが運命の人なのか、はたまた一期一会でしか出会わない人なのかはわからない。だが、物語に絶対はない。これは悲しい序章の幕開けとなる悲劇の発端」

 


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