・資料室
リコル「やっぱり、私の予感通りか…全く、嫌な予感ってのはどうして当たるのかしら」
ティア「お疲れ様です、リコルさん。調べものですか?」
リコル「ああ、ティアせんせ。ちょっとね…前にレイフが私たちに使っていた謎の鉱石で出来た腕輪を覚えてる?」
ティア「はい、その腕輪について何かわかったんですか?」
リコル「ええ、まずあの腕輪の鉱石についてだけど、あれは悪魔石(デビルストーン)と呼ばれる謎につつまれた鉱石よ」
ティア「悪魔石(デビルストーン)…古代遺物(アーティファクト)の1種ですねかね?」
リコル「ええ。詳しいことまでは解らないけど、古い文献によれば生き物に対し魅了させる効果がある。とある国ではその鉱石を使ったブローチを身に着けた婦人が多くの異性を魅了したと言われるわ」
ティア「ですが、ただ魅了するだけという訳ではないんですね?」
リコル「ええ。個人差はあれど、精神を徐々に汚染していく効果があると伝わっているわ」
ティア「精神汚染。私たちが腕輪を破壊しないでいたら…やがては廃人同然となる。いえ、人として形を保てるだけマシなのかもしれませんね」
リコル「どちらにしろゾッとしないわね、悪魔石(デビルストーン)の魔力とマーズでの科学力を融合させたのがあの腕輪よ。レイフが戦前に渡したのが最後でない可能性もあるわ」
ティア「恐らく、人体実験が狙いだったのでしょうね…強い力を持った4人に使うこと」
リコル「あくまでもこれは仮定の話よ。レイフは改良をして、またあの腕輪を使うかもしれない」
ティア「そして、その使う相手は…ソシエちゃんですね?」
リコル「レイフは用心深い性格よ、再び対面した時にどう仕掛けてくるかをあらかじめ予想するしかないわ」
ティア「となると…当然、ソシエちゃんを狙ってくるはず。彼は目的の為に手段を選ばないでしょうしね」
リコル「十二星座の烙印(ゾディアックスティグマ)…といったわね、彼が求めている力」
ティア「一体、何なんでしょうね?世界中を巻き込むほどの事に見合った成果があるという事でしょうか?」
リコル「そこまでは解らないわ、ただ1つ言える事は…このままレイフを見逃せば世界中を巻き込んだ大きな出来事が起こるわ。それこそ…第二次星魔戦争が勃発するくらいの規模にね」
ティア「そうですね、何としても止めなければなりません!」
リコル「そうね、じゃあ私は十二星座の烙印(ゾディアックスティグマ)について調べてみるわ」
ティア「もう、リコルさんそう言って昨夜から徹夜していたんでしょう?」
リコル「私なら平気よ、こういう作業も情報屋時代から日常茶飯事だったからね」
ティア「どうか無理をしないでください、甲板にでも一緒に行きませんか?」
リコル「気分転換にはなるかもしれないわね?いいわ、一緒に行きましょう」
・作戦室
ケイル「相談があるんだが」
テイザー「俺にか?」
ケイル「お前がなんだかんだで冷静そうだからな…レイフの野郎を追いつめる。ここまではいいが、その先はどんな罠が待ち構えているか解らない。命の優先順位を決めておかなくちゃならない」
テイザー「なるほど、いかにもここの皆が怒りだしな奴が多そうな話だな」
ケイル「ソシエは死守しなけりゃならない、でも…アジトに潜入して残す訳にもいかない」
テイザー「同行をさせるというのだな?」
ケイル「レイフの力は計り知れない。奴に一泡吹かせる為には」
テイザー「ソシエの中に眠る双魚の烙印(ピスケススティグマ)を覚醒させない事」
ケイル「ああ、烙印(スティグマ)は禁忌の力だ…ひょっとしたら取り返しのつかない事が起こる事も考えられる」
テイザー「1つ訪ねておこう…お前がやろうとしていることは唯一の肉親を死に追いやる事だぞ?」
ケイル「あいつはすでに死んだ身だ。どうやって蘇ったかは知らないが、引導を渡すのが俺の役目だ」
テイザー「そうか…覚悟があるようなら俺からは何も言うまい」
ケイル「それでよ、ものは試しでもう1つ相談にのってもらいたいんだわ」
・ケイルがテイザーに耳打ちする。
テイザー「なんだと!?そんなふざけた約束!」
ケイル「勝手なのは承知だ。こうでもしねえと全滅だってありえるんだ。お前の力を見込んでの頼みだ」
テイザー「そんな約束なら却下だ」
ケイル「お前は借りは必ず返す主義なんだろ?」
テイザー「チッ…やはりお前はどこかレイフに似ているな」
・艦内全部屋のモニターが映りだす
テイザー「なんだ!?」
レイフ「一週間ぶりですね。ごきげんよう。烙印(スティグマ)を刻まれし者達よ」
テイザー「レイフ!?」
ケイル「わざわざモニター越しからとは随分とご挨拶だな?」
レイフ「不快に思わせたのなら、謝りますよ?」
ケイル「いや、お前のペースに飲まれるのはゴメンだ。要件はなんだ?」
レイフ「皆様をとある場所に招待しようと思いまして」
テイザー「そうやって貴様は俺達の事を道具のように…!?」
・艦内が揺れだす
メロス「どういう事だ?ウィンガードが進路を変えている!?」
ルセナ「おい!メロス!やべぇぞ!舵が効かねえ!」
アリウス「私とした事が…違和感に気づくのが遅れたというのか!?」
エルザ「アリウスのせいではないわ。今はこの状況を改善させないと」
シェズ「目の前に断崖絶壁!このままだと激突する!」
クリオス「やっ、やばい!ぶつかる!!」
メロス「くっ…!間に合え!!」
・甲板
リコル「まさか…空気を吸いに外に出たらこんな状況とはね?」
ティア「リコルさん!」
リコル「目の前の絶壁。あれを壊す威力とすれば…ティアせんせ!力を貸しなさい!」
ティア「わかりました!咲き誇れ!守護の絶花(ぜっか)」
リコル「穿て!神の岩石!」
リコル&ティア「バザルトブルーメ!」
・2人の力が合わさり、断崖絶壁は破壊される。
ティア「いっ、今のは!?」
リコル「二重(デュアル)詠唱(スペル)…烙印(スティグマ)の魔力を持つ2人が繰り出せる、とっておきの威力を持った魔法よ。最も、火と水。風と地みたいな相反する属性同士は使えないけどね…」
ティア「私の「花属性」とリコルさんの「山属性」の互いの属性は地が関係している、相性も良くて繰り出せたという事ですか」
リコル「そんな所よ、即席とはいえ…何とか目の前のピンチを脱する事には成功したようね」
レイフ「ほぅ…まずは私の用意した余興を楽しんでいただけたようで何よりです」
クリオス「何が余興だ!しっ、死ぬかと思ったぞ!」
アリウス「さっきのは…私とクリオス殿が出した二重(デュアル)詠唱(スペル)と同じものですね」
ルセナ「間一髪だけど、助かったぜ~ありがとうな2人とも」
ケイル「レイフの野郎、派手な出迎えするじゃねえか!」
レイフ「逃亡中の私が、まさか攻めに転じるとは夢にも思ってなかったようですね。そういう慢心がミスを生むんですよ」
エルザ「どういうこと?」
レイフ「いえ、気づかないのでしたらそれで結構です。それと…夢より醒める為には己が弱さを認める事がきっかけとなるでしょう」
・突然、艦内警報が鳴りだす
アリウス「不味いです、先ほどの破片が機艦にぶつかったようです」
テイザー「くっ…レイフめそこまで計算済みだというのか!このままでは不時着するぞ!?」
シェズ「ちょっと待って!お姉ちゃんやリコルもまだ甲板に!」
メロス「くっ…全員!対ショック!」
レイフ「では、良い夢を…」
ケイル「レイフーーーーーーーー!!」