十二星座の烙印 -ゾディアックスティグマ-   作:bani

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核心

・ブリッジ

アリウス「エルザ様、紅茶をお持ちしました」

エルザ「ありがとう、アリウス」

アリウス「今でも…夢を見ているようです。裏切り者である私が再びエルザ様と共に戦う事になるとは…」

エルザ「あのね…アリウス、1つ言いたい事があるわ」

アリウス「ハッ、何なりと仰(おっしゃ)ってください」

エルザ「貴方が負い目を感じる事なんてないわ、御父様の遺言に従い義姉様(おねえさま)を連れ出してくれて感謝の言葉しか出ないわ…戦う事を嫌っていたのにさぞ辛かったことでしょう?」

アリウス「ですが、元はと言えばヘスティアを…あっ、いえヘスティア様をお守りする事の出来なかった私の責任でもあるのです。エルザ様がお許しになっても私が許される事ではございません」

エルザ「ハァ…全く、アリウスは昔と変わらずに生真面目なのね?別に義姉様(おねえさま)の事を呼び捨てにして構わないわ」

アリウス「でっ、ですがエルザ様!ヘスティア様は次期王女候補の御一人で!」

エルザ「それと、私の事も様付で呼ばなくて結構よ」

アリウス「でっ、ですがそれだと!?」

エルザ「これはお願いなの!いつまでも様付けだと恥ずかしいし、何よりアリウスは私たちの仲間でしょ?遠慮しなくてもいいわよ」

アリウス「もっ、申し訳ございません…私には恐れ多くもそのように呼ぶことは出来ません」

エルザ「もう、しょうがないわね。わかったわ。全くこれくらい常識の範疇に入れておいてほしいわ」

アリウス「やはり…今からでもここの環境を変えるべきです!」

エルザ「忘れたの?ここのリーダーはリオンよ?あいつが身分(みぶん)をなくそうって言ったから従っているだけ。それに、今の私は王女ではないわ」

アリウス「そのお言葉は誠でございますか?」

エルザ「勿論、復興をあきらめた訳ではないわ。だけど、今の私はここのクルーの1人として全力を尽くす」

アリウス「リオンという青年…彼はとても不思議ですね」

エルザ「そうね、最初に会ったときは意見が合わなくて喧嘩ばかりをしてたけど、それでもリオンは間違った事をしないって信用しているから」

アリウス「エルザ殿…」

エルザ「なにかしら?」

アリウス「もしやリオン殿に惚れているのですか?」

エルザ「ゲホッゲホッ…なっ、ななななな!?」

アリウス「先ほどの言動を拝聴した結果、リオン殿に対する絶大な信頼が見て取れます」

エルザ「りっ、リオンとは…別にそういうのじゃないわよ!あいつを仲間にした理由だって。唯一手に入れた烙印(スティグマ)を持つ者って情報からだし、国の復興の為に必要な戦力としか思ってなかっただけよ!そうよ、きっとそうよ!いつもいつもソシエが心配なのはわかるけど、私のこと少しでも女性として意識してもいいんじゃないかって思ってたりもしなかったりで…ごっ、ごめん…紅茶おかわりちょうだい…」

アリウス「はい。先ほどの事は私個人として、とても楽しませて頂きました…親交が深まるといいですね?」

エルザ「ちょっとアリウス!仮にも王女の!」

アリウス「ここでは身分(みぶん)の関係をないようにしようと仰いましたよね?」

エルザ「うぅ…」

アリウス「ご安心ください、他言無用とさせていただきます。最も…うっかり口にださないように注意した方がいいかもしれませんよ?」  

エルザ「違うんだってば!アリウス!リオンは関係ないんだから~」

アリウス『変ですね?雲の動きに違和感が…私の勘違いであればいいのですが…もしや!?』

・訓練室

リオン「へっくしっ!」

メロス「おや?風邪でも引いたかな?」

リオン「んな訳ねえだろ?病気になる程、軟な身体じゃねえんだからよ」

メロス「それとも…誰かが君の噂でもしているのかな?」

リオン「相変わらず楽しそうにしやがって、そんなに人をおちょくるのが好きなのか?」

メロス「こればかりは止められなくてね。不快に思ったなら謝るよ?」

リオン「はぁ、もういいよ…お前には大した悪意がないってのは知ってるし」

メロス「所でリオン。君はこんな話を聞いたことがあるかい?二兎追うものは一兎をも得ず。」

リオン「欲をかかずにどっちか選べって事だろ?けど、2匹手に入らないって決まったわけじゃない」

メロス「その結果、1匹を逃すリスクを背負ってでもかい?道中に怪我をして狩りを続行できるかもわからないんだよ?」

リオン「なら、大丈夫だな俺は怪我をすぐに治せる。なにより二兎追うものが二兎を得るんだからな!」

メロス「ふふ、ふはははははははは」

リオン「なんだよ?おかしな事でも言ってるか?」

メロス「いや、ごめんごめん…本当に君らしい答えだよ。確かにそういう考えもあるよね?」

リオン「なぁ、メロスよ…お前は後になって核心に迫ることを言ってくる。何が言いたいんだ?」

メロス「君がリスクを顧みないのはその不死身の体である事を前提にしている?もし、目の前で2つのウチ1つしか選べない状況に遭遇したら、君はどうするんだい?」

リオン「…」

メロス「不死身であるという事は死力をいつでもつけれる、だからキミは死ぬことを前提に考えている。それゆえに僕たちが思いもしない奇跡をやってのけた…だが、奇跡は何度も起きない」

リオン「そん時はそん時だ、細かい事はあとで決める」

メロス「乗り込むまでにちゃんと覚悟を持っておいた方が」

リオン「それにな俺は奇跡が起きるものとは思っていない。奇跡ってのは自分で起こすものだってな」

メロス「意外とロマンチックな答えだね?」

リオン「今まで理不尽に亡くなった人を俺はたくさん見てきた…死ぬ気でやって助かる命が目の前にあるなら、俺が全力を注ぐだけだ」

メロス「…わかった、僕からは以上だ。忘れるんじゃないよリオン…1人で出来る事は限界がくる。僕らが危険な目に合う事を危惧しているとしても。僕らの事を信じてほしいんだ」

リオン「言われなくても、そのつもりさ」

メロス『空気の流れが変わった?何者かがウィンガードに近づいてきている?』

リオン「どうしたメロス?」

メロス「いや、なんでもないよ…少し制御室にでも行ってくるよ」

リオン「相変わらず、ウィンガードのことを大切に思ってるんだな。さてと、ソシエの様子を見に行くか」

 


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