ぼっちアートオンライン(凍結)   作:凪沙双海

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なんとか投稿できましたその2!
まだ導入編ですが、八幡とヒースクリフの会話をさせるのが楽しくて仕方なくて困ります。
では、どうぞ。


Episode6,part2

――side アスナ――

「こんにちは、アスナ」

 

 

「ケイタさん、どうも。キリトくんもこんにちは」

 

 

血盟騎士団のホーム、その中の大きな一室に月夜の黒猫団のリーダーであるケイタさん。そしてこのゲームで三人しかいないユニークスキル持ちのキリトくんが入ってきた。

二人は既に部屋の中で椅子に座るハチくんに手を振って、その近くに座る。

ここのところハチくんは凄く話しやすくなった。別に優しくなったとかじゃないけれど、なんとなく、変わった気がする。

以前のハチくんは、きっと前の私のような感じだったのかな。余裕がなかったんじゃないかって思ってる。

ハチくん、自分を隠すのが上手だから断言できないけど。

 

 

「月夜の黒猫団もすっかり攻略組に必要なギルドになっちゃったわね」

 

 

「そりゃ、キリトを擁してるし、全体的にハイレベルプレイヤーが多いしな」

 

 

私の言葉にハチくんが返してくれた。こういうところは変わらずで、どうでもいいと思ってることにはひどく素直なのは同じだった。ハチくんにとって、ギルド間のバランスとかは関係ないからなんだろうと思う。

 

 

「ふん、我々ほどではないがな」

 

 

「はいはいそうですねー」

 

 

「……野良風情が……」

 

 

「クラディール、静かにしてください」

 

 

私のトラブル防止の為にと付けられた護衛だけれど、それがトラブルの元になってる気がする。ハチくんは本当に気にしてないのか変わらずぼぅっと天井を見て、クラディールはハチくんを睨んでいた。

この人は腕もそこそこ立つし、悪い人ではないんだけど、ゲームに入れ込み過ぎてる気がする。みんな、リアルに戻れば一人の人間なのに。

 

 

「けどよ、ついぞハチマンはソロのままここまで来ちまったな」

 

 

ハチくん同様先に来ていた風林火山のリーダー、クラインさんが話題を変えるように言った。

そこは、ちょっと私も気になる。一人がいいって言っても、ここまでソロのまま来るのも珍しいかなって。

私もソロってだけでは限界があったからここに入ったんだし。

 

 

「別になにも困ることはないからな。こうやって顔を合わせるのはまだいいとして、カースト内に入ってまでどうこうするのは無理。絶対無理」

 

 

相変わらずの人間嫌いでした。でも、顔を合わせるのはいいってことは、少しはよくなったのかな?

――ハチくんと話す度、もっと彼のことを知りたくなる。不思議というか、彼と話すと何故か素直に話せてしまう。それは多分、ハチくんが人の負を肯定できる人だから、かな。捻くれてるけど、相応に許容の範囲が広い。

最初から人嫌いな彼は、だからこそよっぽどのことがないと人を嫌わない。そもそも、元々どうでもいいから。

恐ろしいまでに感情を排他した考え方。でも、ハチくんが望むのは"本物"。それは、居場所なのか関係なのか人なのか。ハチくんにとって、それほどまでに焦がれる人がいるって知って、私はその人に嫉妬した。

好きか嫌いかで問われれば間違いなく好きだと言える。けど、それが好意かって言われるとわからない。

本当の彼が見てみたい。可能なら彼の"本物"の一人になりたい。けど、それは恋愛感情を含んでいるわけではない……と思う。

 

 

「やぁ、お待たせしたね」

 

 

「団長」

 

 

やってきた団長――ヒースクリフさんの言葉で私の思考は止められた。

定期的な攻略会議。それは攻略組の各ギルドのトップ、そして現状最強クラスのプレイヤーによって行われる。モンスターのアルゴリズムの変化などに合わせて、必要以上に被害を出さない為に。そして、最近は更にもう一つ、軍についても話す必要があって、こうして集まるようになっている。

 

 

「攻略は順調みたいだね。皮肉にも、軍の人海戦術が功を奏しているようだ」

 

 

「……が、そのうち迷宮でも死人が出るぞ、あれは」

 

 

ハチくんが団長に視線を向けた。この攻略会議、団長が来るとハチくんはよく喋る。普段は全然話さないで聞いてばっかで、たまに横槍入れるだけなのに。団長とは親しいのかな……なんだか、ずるい。

 

 

「同意しよう。ソロプレイヤー視点から見ても危ういかね?」

 

 

「あいつらとパーティ組みたくはないな。次の死者は俺になりかねん」

 

 

「言わずとも、君を彼らと組ませることはないよ。このゲーム最速にして最大の単発ダメージを誇る影纏いに、周囲の処理を任せるなんて役不足だろう」

 

 

「過剰な評価でもあるがな」

 

 

「こほん、いいですか、二人とも」

 

 

いつもこうだ。こうやって言葉のやり取りを楽しんでいるみたい。

団長もハチくんくらい不思議な人だけど、だからこそ二人は何か共感することでもあるのかな。団長も、現在の軍を指揮するオウルさんには辛辣だ。

曰く「彼は本物にはなりきれず、偽者すら不可能」らしい。意味がわからなかったけど、このゲームをまるで異世界のように扱って、現世と隔離して考えすぎてるようなあの人の言動は私も苦手だ。

 

 

「軍に対しては、静観を貫くしかないだろう。なるべく、無理はさせないようにする」

 

 

リンドさんの言葉に、みんなが頷いた。どこかで綻びが出るのを狙うしかないのが辛いところだけど、問題は山積みだから仕方ないのかもしれない。

ハチくんは、「最悪クリアすれば全部おしまいだ」って言ってたし。

 

 

「こちらの話もしていいか? 先日、ラフィンコフィンのメンバーを三人ほど捕まえた」

 

 

リンドさんのギルドは自分のメンバーが襲われたのもあったか今ラフィンコフィンを追っているみたいで、これも私達の抱える問題の一つだ。人殺し集団を捨て置くわけにはいかない。

 

 

「ここに来て、奴等の人数も増えている」

 

 

「……PoHめ」

 

 

あのリーダーの包丁使いと少し面識があるらしいキリトくんが低く唸った。

ラフィンコフィンのようなギルドになんで入ろうとするんだろう。私には理解ができない。

 

 

「そしてだが、軍はこちら方面にも人員を割いているようだ。何が狙いなのかはわからんが……」

 

 

「大方、手柄が欲しいのだろう。ここで名声を得れば一瞬にして成り上がりだ。私だってそうだったろう、神聖剣でね。あれは狙ったものではなかったが。キリト君やハチマン君も同じだ。そもそも、オウル君は二振りの剣を使うとの話だったが二刀流はこの通りキリト君の物だ。彼は本物足り得ない」

 

 

「概ね同意してやるが、どうしたよ。よく喋るじゃねぇか」

 

 

「私とて、人の子だよ。ハチマン君」

 

 

……だからもう、この二人は。

 

 

「へぇ、てっきり天才タイプかと思ったがな」

 

 

「ふむ、その心は?」

 

 

「言ってることが正論しかないんだよな。気味悪いくらいに正しいの、お前。毛色は違うが似たようなのが身近にいたから、なんとなくな」

 

 

そう言って笑うハチくんは、どこか作ったような笑顔で団長のことを見つめていた。




不穏な影がちらほらと。ラフィンコフィン討伐戦は結局やる予定でやってますが、完全にオリジナル展開からとなりますのでご容赦ください。
ヒースクリフもここにきて、キャラを成立させつつ違和感を出させるという難しい立場にさせなきゃでなかなか悩みます。
ではでは、また次にて。

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