ぼっちアートオンライン(凍結)   作:凪沙双海

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長らくお待たせしました!
今回からアインクラッド編の終わりにに向けて結構走り出して行く感じです。

ではでは、始まります。


Episode5,part4

「この辺りに来るのも久々だな」

 

 

「そうね。キリトくん達は……と」

 

 

アスナに連れられて俺は19層に来ていた。こっちには捜査に難航してるらしいキリトやサチがいるらしい。

リズベットは今回は店にいなくてはならないそうで、お休みだとか。

あちらも軍の妨害? と言うか介入に結構手間取ってるそうだ。

 

 

「にしても、言われてる程には見えないが」

 

 

19層の街の様子としてはそこまで異常にも見えない。確かにアインクラッド解放軍のエンブレムを付けた人間が多いが、一般の人間もそこそこ多い。

 

 

「うん、そこまでには見えないね」

 

 

アスナも同意して頷く。つーか、これなら俺いらなくね?

そもそも対人戦(交渉)は専門外だ。アスナ様にお任せするのが一番いい。

 

 

「……と、思いたかったんだけどな」

 

 

「どうしたの、ハチくん」

 

 

「なんでもない」

 

 

ぼっちというのは視線に敏感だ。こういったバーチャル空間だろうが、見られてる。というのには敏感だ。

だからこそ俺は隠蔽スキルもほぼ最上位まで振ってある。必要以上に見られるのは嫌だからな。そこ、自意識過剰とか言うな。

――話を戻す。そんな俺は見られてるわけではないだろうが、今回視線を浴びているのはアスナだ。見てくれは間違いなく美少女で、着ているのは血盟騎士団のユニフォーム。攻略組を引っ張っているって意味で顔も広く知られてる。そんなのが下位層に来て、見られないわけがない。単純に、こいつに視線が向くから普段通りにあいつらが動いてないってだけだ。

 

 

「皮肉なもんだな」

 

 

本来、軍がどう動くかアスナはしばらく自分の目で見ることはできないってことか。

……こういうのは美少女だとか美少年だとか、そういうのの特権て奴か。キリトや俺はヒースクリフやアスナに比べて下位層にまでは顔は知られてないだろうから、そのせいであいつも捜査が難航してるんだろうな。キリトがあのキリトだってわかればこうなるわけなんだから。

 

 

「ハチマン、アスナ」

 

 

「よう、サチ」

 

 

「二人とも、こっちこっち」

 

 

少し遠目からサチがこちらに手を振っている。

想像以上にキナ臭そうな事件は、まだ続きそうだ。

……帰っていい? だめか。

 

 

―――――

 

 

「ふむ、四強のうち三人が揃いぶみか、なかなかな光景だナ」

 

 

「お前も来てたのか」

 

 

サチに連れて来られた先のレストランには鼠のアルゴも来ていた。

こいつもトップクラスの情報屋として大活躍中のようで、レベルはともかく攻略組には欠かせない存在になっている。

俺の抜刀術を唯一知ってる人間でもある。口止めしてあるから口外はされてないが。

 

 

「アーちゃんに呼ばれてネ。軍について、だったナ」

 

 

電子音を鳴らしてアルゴはウィンドウを開いた。

何やらいろいろ漁ってるようで、珍しく真面目そうな表情だ。

こいつも、黙ってればそれなりなんだが話をさせると話し方がこれだし、情報屋っていうポジションからか、あまり人気はないらしい。

アスナ、サチ、シリカなんかは攻略組でも大人気だ。

最近リズベットも腕利きの鍛冶師かつ、あの見た目なこともあってか人気が上がって来てるそうな。

究極的にどうでもいい情報だった。

 

 

「実は俺っちもシンカーとキバオウについてはほとんど掴めなかっタ」

 

 

「アルゴでも、か……」

 

 

「そりゃ、出てこなくなっちまった奴の情報なんてさすがの鼠女でも無理だろ」

 

 

顎に手を当てて思案するキリトに答えて、俺は出された水を一口飲んだ。

しっかりと水分を採ったように感じる辺り、脳ってのは凄いんだよな、やっぱり。

 

 

「念のために生存も確認して来たケド、二人とも死んではいないナ。石碑には書かれてなかっタ」

 

 

アスナとサチの安堵の声が聞こえた。まぁ、死なれてたら俺もさすがに後味悪い。

これは、俺も良かったと心の内で安堵しておくことにする。

 

 

「……ってそうか! その手があったのか!」

 

 

「キリト? どうしたの?」

 

 

「石碑だ、サチ。あの二人の名前を後で確認しに行こう。

俺の推理が正しければ、名前はないはずだ」

 

 

どうやらあちらはあちらで何かに行き着いたらしい。

興味ないって言えば嘘になるが、ただでさえ面倒なことに巻き込まれてる以上、キリトのことにまで首を突っ込むのは御免被る。アスナもまぁ何も言わないし、自分の抱えてる案件をはっきりわかってくれてるようでありがたい。俺を帰してくれたらもっとありがたい。

 

 

「そっちにもいい情報になったみたいで良かっタ。

で、ここからが本番だヨ、ハッチ」

 

 

「なんで俺に話を振るんだよ」

 

 

「暇そうだったからナ。軍の主導者だけど、全然知らない名前だったわりに、ずいぶん良さそうな装備をしてたヨ」

 

 

「なるほどな」

 

 

果たしてそれが、どこまで本物の実力が反映されてるかってのは考えものだが。

 

 

「それと――」

 

 

そこで話を切って、アルゴはチラとキリトを横目で見た……気がした。

 

 

「一説によると、二振りの片手剣を使うらしイ」

 

 

「つまりなんだ、二刀流ってことか?」

 

 

「二刀流!?」

 

 

遠回しな言い方を直球に変えてやったら、キリトが血相を変えて立ち上がった。

なんだなんだ、どうしたんだよいきなり。

 

 

「どうかしたのかよ、キリト。って、アルゴもずいぶん面白そうな顔してどうしたんだ?」

 

 

「いや、知るのは俺っちのみ、ってネ」

 

 

「……あ、そう」

 

 

ロクでも無さそうな雰囲気を感じ取ったのでここでこれはおしまい。ハチマン、虎穴には入らない。

虎児要らないしな。

 

 

「でも、二刀流を使うってことは……」

 

 

「まぁ、ユニークスキルってことだな。そんなの情報一切出回ってないし」

 

 

「そ、そうだよな。ユニークスキル……だよなぁ」

 

 

「キリト、どうしたの? いきなり変になって」

 

 

「いや、何もない……」

 

 

変なキリトはほっといて、しかし、ユニークスキル使いか。

これで俺を含めて三人目ってことになるな。

 

 

「……まぁ、本当ならな」

 

 

半信半疑。いや、一信九疑ってとこか。アスナに引っ張って来られた理由である軍の金の話と、あとはこれが階層を進んでいくネトゲだからってのが理由だ。

ヒースクリフや俺は最前線で戦っているから、レベルも高い。敵の討伐数も多いし、だからこそ条件こそわからないもののユニークスキルを得ている。

こんな下位層でちょこちょこやっててもレベルは上がらないし、そんな奴がトッププレイヤーの仲間入り出来ちゃうような武器を手に入れられるとは思えない。

まぁ、こんなところか。

 

 

「アスナ」

 

 

「どうしたの、ハチくん」

 

 

「鵜呑みにはし過ぎないようにな」

 

 

「わかってる。本当の話なら、なんでもっと早く来なかったのかってなるものね」

 

 

「そういうこった。そういうわけだ、鼠女。今回ばかりは悪いな」

 

 

「いいや、仕方ないナ。引き続き協力するヨ。

しかし、ハッチが急にやる気だしテ、どうしたんダ?」

 

 

「……別に、大した理由じゃねぇよ」

 

 

どちらに転んでも、下手に攻略を阻害されたら困る。

それに……ゲーム感覚過ぎるバカのようなら、痛い目見せて黙らせた方がいい。

……らしからぬ思考を出した自分にため息を吐いて、俺は水を飲んだのだった。




と、久々のアルゴです。
二刀流についてはまぁ、原作通りなのでご安心くださいませ。
これにより、ますます原作と時系列が変わることもございますがよろしくお願いします。

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