ぼっちアートオンライン(凍結)   作:凪沙双海

22 / 56
さぁ、本エピソードの大筋。
あの子の登場です。彼女も原作より出番が多い予定です。
ではでは、始まります。


Episode3,part5

「……ふー」

 

 

35層、迷いの森と呼ばれるこの場所で俺はポリゴンとなって消えた刀を見つめていた。

コモンの刀じゃ、俺の使い方じゃすぐに壊れてしまう。軽い問題だな、これは。

 

 

「スキル自体はだいぶ習得できてきたし、階層を一気に引き上げる意味も込めて武器を新調するか」

 

 

雷切丸はレアドロップではあるものの魔剣クラスの武器ではない。

そろそろ新しい刀が欲しいとは思っていたし、今度鍛冶屋巡りでもするか。キリト辺り、腕利きの鍛冶屋でも知ってるといいんだが……

 

 

「とりあえず今日は戻るか。もう夜だしな」

 

 

こんなに動き回って、俺現実に戻ったら反動でヒッキーにならないよな?

つーか、学校とかどうなるんだろうな。

 

 

「……あ?」

 

 

うっすらと、悲鳴みたいなものが聞こえた。

とりあえずそちらへ走ってみると、モンスターに囲まれるプレイヤーが一人。

座り込んで、涙を流しながらじっとモンスターを見ていた。

 

 

「ちっ……雷切丸じゃ間に合わねぇ」

 

 

念のために帰り敵と遭遇したら熟練度上げるかくらいに装備していた刀の鍔に手をかけて、俺は一息で駆け抜けた。

 

 

「そらよ……っと」

 

 

抜刀術による中位の範囲ソードスキルでまとめて薙ぎ払う。

俺とこいつらとじゃそもそも勝負にすらならねぇ。当たり前のようにモンスターは消滅した。

 

 

「おい、生きてるか……?」

 

 

体力はレッドゾーン。かなりギリギリだったみたいだ。

けど、このプレイヤー……ずいぶんと小さな女はそれどころではないようで、小さな羽を手に持っていた。

 

 

「ピナが……私の友達が……」

 

 

泣きじゃくるように、そいつは俺を見上げたのだった。

 

 

―――――

 

 

「あの、ありがとうございます。私、シリカっていいます」

 

 

「ハチマンだ。それで、どうしてあんな状態に?

悪いがステータスは勝手に見せてもらったが、レベル的にもやれるレベルだろう」

 

 

一通り泣いて、落ち着いたらしい女の子のプレイヤー――シリカは目を伏せていきさつを話し始めた。

つまり、この子は男プレイヤーからいい感じに持て囃されて、同じパーティにいた女と揉め事になった。で、喧嘩別れしたのはいいものの、モンスターとエンカウント。こいつは珍しいビーストテイマーらしく、連れていたペットをやられてしまったと。

……災難、とも言いたいことだが、その前に。

 

 

「あのな、お前とパーティ組みたがる連中なんざ性根腐った奴らが多いに決まってるだろ。攻略終わってるこんなところでいいとこ見せたいだなんてバカか。

お前も、ちやほやされてるからっていい気になりすぎるなよ。一歩間違えてたら死んでるんだぞ」

 

 

「……はい……」

 

 

……言い過ぎたか? 見たところ、小町よりも年下っぽいし、子供に酷なことを言っちまったか。

震えて、今ごろ恐怖が来たんだろう。……あー、くそ。こういうの、本当に苦手だ。

 

 

「……まぁ、わかればいい。で、そのピナってのは復活させたいか?」

 

 

「え?」

 

 

「だから、復活させたいのかって聞いてるんだよ。

俺もリアルでペット買っててな。そいつが死ぬことはちょっと考えたくない。気持ちはわかるつもりだ。

蘇らせる方法があるから意思があるなら手伝ってやる」

 

 

雪ノ下辺りに罵倒されそうだが、さすがにこれくらいの年齢の奴が泣いてるのは堪える。……そもそも、女が泣いてるのとかそれだけでトラウマ刺激されるからやめてほしい。

 

 

「どうすればいいんですか?」

 

 

「47層のある場所で、プネウマの花ってアイテムを使う。期限は三日しかないから、悠長に決めてられないぞ」

 

 

「47層って……わ、私、レベルが全然足りてない……」

 

 

「俺が代わりに戦闘は請け負ってやる。一応攻略組の人間だ。47層くらいの奴には負けねぇよ。お前の装備もいくつか揃えておいてやる」

 

 

これだけお膳立てすればいいだろう。……はぁ、マジで雪ノ下がいなくて良かったわ。絶対ロリコンだのなんだの言われる。

 

 

「あ、あの、どうしてそこまでしてくれるんですか?」

 

 

「言ったろ、俺も猫飼ってるし、動物は好きなんだよ。あとは……これでもリアル職業がお兄ちゃんでな、まぁ、そういうことだ」

 

 

「……はいっ! あの、その、よろしくお願いします!」

 

 

ようやく笑ってくれたシリカに、俺は心からホッとした。泣かれてるところを誰かに見られたらほんと通報されかねないからな。

 

 

「あれ、ハチマン?」

 

 

「あ? なんだ、サチか。どうしたんだこんなところで」

 

 

「え? あ、えっと……ハチマンこそどうしたの? というか、その子は?」

 

 

「俺はちょっと野暮用でな。こいつはさっきモンスターに襲われてるところを助けたんだ。ビーストテイマーだそうで、明日かそこらに47層でプネウマの花を取ってくる」

 

 

「47層って、レベルは?」

 

 

「あそこは平均よりレベルが低いし、俺が戦闘は請け負う。っとそうだ、要らなくなった防具とかないか?

多少保険はかけておきたいんだが……」

 

 

「……ハチマンって、ロリコン?」

 

 

「やめろバカ野郎」

 

 

雪ノ下みたいな声で言うな。お前に近寄りたくなくなっちゃうだろうが。

 

 

「……そうね、その方がいいか。わかった、ハチマン。明日ギルドのホームに来てもらえる? 多分、キリトが何かしら持ってるから」

 

 

「なんでキリトが?」

 

 

「要らないアイテムとかも溜め込んでるんだって。おかげでストレージが一杯だって」

 

 

「あいつ……エギルのとこに売りに行けばいいのによ。それか結婚でもしてストレージ共有すりゃいいのにな」

 

 

「もう! と、とにかく明日ギルドホームに来て! いい?」

 

 

「わーったよ。んじゃ、明日な」

 

 

サチは結局何が目的だったのか。探し物があったみたいだが転移結晶で移動していた。

俺もそろそろ戻るとするか。

 

 

「念のため、街までは送ってってやる。

……あ、それと俺の戦ってる姿は誰にも言うなよ?」

 

 

「はい! えっと、ハチマンさん? ハチマンお兄さん?」

 

 

「……好きに呼んでくれ」

 

 

ちょっと、お兄さんて響きにいいなとか思ってない。思ってないんだからね!




この件は原作との大きなズレにより、この件自体も大きくズレます。
サチが迷いの森をさ迷ってたりしたことがそれの顕著な理由ですね。

シリカについては、ハチマンがキリトよりも更に年上な為、原作よりも少し幼く、妹要素強めです。
ですのでその辺りはご容赦くださいませ。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。