「ん~?」
「どうかしましたか、レヴィ?」
「うん、王様に作ってもらった服、ちょっとキツくなったかも」
ディアーチェお手製の服を着たレヴィがあちこちを引っ張ったり動かしたりしながらそう言う。
その姿を見てシュテルが『盆踊りのようです』と思ったのは本人には秘密である。
「む、我らは成長期ゆえ仕方あるまい。測り直すとするか……こちらへ来い」
「はーい」
「では私はその間買い物をしてきましょう」
ディアーチェがレヴィのサイズを測り終えてからしばし後。
「…………むう」
「ただ今帰りました……どうしました、王?」
「いや……レヴィを測り直した結果だが……ブラがそろそろ必要やもしれんようでな」
「なんと」
「それはよい。だが、それを聞いたレヴィがブラもあの変態に作ってもらうと言って飛び出していきおってな……」
「…………今からでも『焼き』に行きましょうか?」
「無駄であろう。我は諦めた。まあ、あの変態の理性が屈伏したならその時はこの手で始末をつけるが、な。ククク」
わきわきと手を動かして恐ろしいことをのたまうディアーチェだった。
「……で、何ゆえ貴様がここに来る?」
「焼かれに来たなら跡形も無く焼き払ってあげますが」
レヴィと共に表れた彼に厳しい目線を向ける二人だが、彼は真剣な表情で二人に一歩も引かずいい放つ。
『ブラが必要になったなら、成長速度の観点から全身の整合を取る必要がある。つまり下着だけでなく、衣服とのコーディネートも重要だ。そこでレヴィの衣服を作製しているディアーチェ、君の協力が欲しい』
もはやオーラの如く全身から炎と燃え上がる気迫。その凄まじさに二人も気圧されるが…………ディアーチェの『王』としての意地がそれを踏み留めた。
「……ほう、我のセンスに目をつけるとは面白い。良かろう、貴様の度胆を抜く一品を仕立てて見せようではないか!」
「流石です、王。私も微力ながら手伝います」
「おお、王様が燃えてるー」
かくして、当のレヴィを置き去り気味に三人のクリエイター魂のぶつかり合いが始まった。
「みんなー、おやつですよー……?」
ユーリが皆を呼びに来ると、そこには白熱する三人と、着せ替え人形にされて目を回すレヴィの姿があった。
『ピンクのビスチェとショーツ!』
「黒レースの白ワンピース!」
『イエローストライプの黒スポーツブラとパンツ!』
「ライトグリーンのキャミソールとデニムのミニスカート!」
彼の手でただの布地が繊細な細工の施されたパンツへと姿を変えれば、ディアーチェの描いた型紙からシュテルが即座にパーツを切り出し、縫製する。
色とりどりの鮮やかな布地が宙を飛び交い、レヴィの衣装が次々に変化を見せる。
「にゃわわ~僕、ぐるぐる~」
その光景をユーリは目をまんまるにして(いつも通り、とも言う)傍観していた。
「はわー……レヴィが一人ファッションショーですー。それじゃあ、おやつは後で……」
「いただきまーす」
「「「「速っ!?」」」」
どんなに目を回していようが食欲の前にはすべてが些事。
それがレヴィ・ザ・スラッシャーなのだった。
『ふくらみかけ』
……クるだろ?