・作者は、ssは素人です。
・この作品はご都合主義満載です。
・捏造ありです。
・主人公(魔王)慢性です。
・Fateと某ゲームとの時系列が合わないと思う方もいるでしょう。
・ハッピーエンドにするつもりも更々ありません。
以上のことが気に入らないと思う方は戻っていただいた方がいいかもしれません。
また注意に書いてあったことに対する批判も受け付けません。
新しい年を向かえて一ヶ月、凍てつく風の当たりながら″魔王″は思いをはせた。
魔王には宿願があった。実行されれば間違いなく、この国を震撼させる大きな計画が、だがそれを成功させるためには、準備が不十分であり、まだ時期ではない。
今は雌伏の時―――――戦いの時はまだ少し遠い。
× × ×
-199:24:38
日本、冬木市湾口、魔王は小さくなっていく船を見ながら一息ついた。あの船には魔王が扱っている
(そういえば)
魔王は先日手懐けたある坊やから、『魔王様に献上します!!』と言って渡された古書を思い出した。内容は悪魔やら式神やらを呼び出し殺し合いをするだの願いがかなう杯など荒唐無稽な内容であり・・・
(いや、私のコードネームもう十分荒唐無稽だな。)
フッと自嘲した。
(まぁ何の因果か、その霊脈の地とやらに来たんだ。悪魔が呼ばれた所を見に行くのも一興か。)
と、暇潰しがてら古書に載っていた拠点跡に足を向けた。
× × ×
「ここで100年以上前に悪魔をねぇ」
冬木市新都、新興住宅街そこが古書に書かれていた大まかな場所だった。魔王は呆れ気分で街を歩いて行った。そもそも信憑性の欠片もない。ただの暇潰し、適当に回って切り上げよう。そう思い少し散策していたら、市民会館の近くで数人の小学生が走り去って行った。それを見送った後、建物の裏に回るとそこには様々な落書きがあった。その中で一際大きなモノに目がいった。
「魔法陣というやつか?しかし偉く歪だな」
そこにあったのは六望星の魔法陣だった。直ぐそばの窓ガラスに月が映っており神秘性が増していた。魔王は魔法陣に右手を置き古書に綴られていた一節を口にした。
「我は常世全ての善となる者、我は常世全ての悪を敷く者・・・・・抑止の輪より来たれ・・・だったかな」
手を離し立ち去ろうとする魔王、その時猛烈な激痛が右手を走った。
「うがぁぁぁぁぁぁ!」
手首を押さえながら掌を見ると一つの柱に二匹の蛇が交差しているような模様が刻まれていた。
「・・・・・・・・」
痛みが引いた右手を見ながら、何が起きたかと考えを巡らせようとした。それも束の間突然旋風が巻き起こり、正面の魔法陣が光り始めた。凝視しながらも状況を把握しようと思考を止めなかった。
眉唾物と一蹴した話が綴られていた古書、そんな非常識を認めなければならないと思う一方、早計は禁物もとい認めたくないという常識論がせめぎあっていた。
そうこうしている内に風と光は激しさを増し、やがて光の粒子の中から紫色のローブを纏った何かが現れた。その瞬間、風は止み落書きだらけだった壁は焦げたように黒ずんでいた。
「問うわ」
凛とした声、どうやら女性それなりに若いようだ。月明かりで見える肌は白く日本人ではないようだが、それでも日本語に違和感はない。
「キャスターの座を拠り代に私を召還したマスターはあなたかしら?」
そこには静かな殺意が込められていた。この瞬間、魔王は非常識を認めたと同時に悟った。目の前に居るコレは自分がその世界の住人でないことを分かっている。返答を誤れば殺されるか、それに準ずる事をあっさりやると。
そして、思考を切り替えて対応策を模索した。古書によるうろ覚えの知識は逆効果になりかねない。ならば使えるカードはただ一つ、それを切り出し話術で打開する。結論を出すのに一秒、魔王は意を決し右手を掲げた。
「そう私こそが貴殿を呼びし者。
その瞬間、右手にあった紋様から閃光が生じ、三つあった紋様の一つ、柱の部分が消えていった。
「・・・・・・・・・・・」
全く付いていけない現象の連続でありながらも気を張る魔王の前に、小刻みに震えながらも跪くキャスターと名乗った女性があった。
-196:06:11
冬木市新都――――――――
繁華街に近いアパートに一室、魔王の複数ある隠れ家の一つに魔王とキャスターが向かい合っていた。
「つまり話を整理すると、君は過去に死んだ魔術師の幽霊で、聖杯と言う願いが叶う杯を求め、その力でこの世に舞い戻ってきた。そして俺は君をこの世に呼び出し、繋ぎとめるための魔術回路と言う物を持ち合わせていたので、マスターとやらに選ばれてしまった―――――これでいいかな?」
「概ねその通り。理解が得られたようで嬉しいわ」
純粋な賞賛に聞こえたが、魔王はそっちのけで、ここまでを振り返り思案に暮れていた。
数奇な出会いから透明(霊体)化したキャスターに背後霊に憑かれた気分で隠れ家に来て、自分の質問に淀みなく答えてくれた。
七体のサーヴァントと呼ばれる過去の英霊とそれを使役する七人のマスターとの『聖杯戦争』と言う殺し合い、その勝者に与えられるどんな願いでも叶うという『聖杯』、そんなものに一切縁のない自分が選ばれた事については単なる人数あわせでないかと言う推論を、最後に何故すんなりと答えてくれるかについては掌にある紋様を指し、サーヴァントの意思を捻じ曲げても三回まで命令を強制させる『令呪』と言うものを使用したからと語った。
自分の目、耳、頭の全てを疑いたくなるが、現実逃避しても意味はない。出会った時に感じた殺意と死の恐怖は本物だった。そこまでの優位があるにも関わらず
そして全てを慎重に吟味して出した魔王が結論は、
「君には申し訳ないが、俺はこの
否定を受けたにも関わらず余裕の態度でキャスターは返した。
「一応、理由を聞いてもいいかしら。聖杯を手に入れればどんな願いも叶うのよ、すでに奇跡をその目にしたのに、あなたには何の願望もないとでも言うつもりかしら?」
「確かに奇跡は認めよう。だがそれでも何でも願いが叶うなどと言う話を鵜呑みにするほど俺は御めでたくない。仮に話通りの代物だとしても俺の宿願は俺自身の力で叶えてみせる」
自信満々に答える魔王に対し、キャスターは不敵な笑みを浮かべた。
「それがあなたの意思だというなら残念だけど私には逆らうことはできない。そして私にはあなたをこの
「見え透いた誘導は止せ。それはつまり貴様が今掛かっている縛りを解くと言うことだろう、命綱をわざわざ手放す馬鹿がいるか」
「これはとんだ失礼を。でも私も聖杯を求めこの世に降りた身、マスターはどうしても必要なの」
「それは理解できる。だから協力はしないが邪魔もしない、貴様がこの街で
譲歩と言いながらも、英霊それも魔女と呼ばれた自分に対して一歩も引くことなく接する魔王にキャスターは愉快な心持ちで応じた。
「ええ、それで構わないわ。考えようによってはすこぶる好都合でもあることだし」
―――――聖遺物のない召還は似たもの同士を呼び出すと言う。魔王と
「そういえばお互い自己紹介がまだだった・・・・いや必要ないわね。ただ私のことはキャスターでいいのだけど、あなたのことはマスターでいいかしら?」
この問いに魔王は数秒考え、
「別にそれでもいいが、とりあえず″魔王″と名乗っておこう。好きなほうで呼べばいい」
この名乗りにキャスターはより満足そうに微笑んだ。
同時にこの瞬間に第七の契約は完了し、第四次聖杯戦争の幕が切って落とされた。
だがこの時は ″魔王″とう名による奇妙な運命が大きな悪戯を引き起こすことになるとは誰も知る由もなかった。
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