ブラック・ブレット[黒の槍]   作:gobrin

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マジでここ最近書く時間がない。

お久しぶりです。
gobrinです。

ちょっとやっちゃった感があるなぁ……。

まあ、どうぞ。




第七話

光が延珠を送り届けた二日後。

 

 

昨日は嫌な空気が教室に広がっていたな、今日もそうなってしまうのかな、と光が内心舌打ちしながら登校すると、驚きの光景が広がっていた。

 

延珠が登校していたのだ。

 

「え、延珠ちゃん!?」

 

「延珠!?」

 

「みゅ。延珠が来てる」

 

三人は延珠が座っている席に駆け寄る。

そこに辿り着くまで席が密集していて動きづらかったが、延珠の席の周りは誰の机もなかった。

 

「おお、光。舞も和もおはようなのだ」

 

笑顔を作っているが、いつもの元気はない。

さすがにこの対応が応えているのだろう。

 

「………延珠ちゃん。それが、君の選択なんだね?」

 

「うん。妾は、負けない」

 

「…………わかった。舞、和ちゃん。席を持って来よう」

 

「うん!」

 

「みゅっ」

 

「お主ら………ありがとう」

 

 

 

光は自分の席をしっかりと手に持つと、持ち上げようとした。

そこへ話しかけてくる者がいた。

クラスメイトのうちの一人だ。

 

「お、おい。あいつは『呪われた子供たち』なんだぞ」

 

「……だから?」

 

光は冷めた目でその少年を見た。

殺気は放っていない。

そんなモノをここで出すわけにはいかない。

 

「だ、だからって………。近づくなってことだよ」

 

「なんで君にそんなことを決められなきゃならないの?」

 

「なんでって………うっかり触っちまって感染したりしたら困るだろ?」

 

「はぁ………これだから知識のない奴は嫌になる。いい?たとえガストレアウィルスを保有している彼女たちからそれを感染(うつ)してもらおうと考えたとしても、彼女たちから大量の血液を輸血してもらうとかじゃないと土台無理な話なんだよ。触ったら感染する?なに言ってんの馬鹿じゃないの?彼女たちは僕らよりも回復能力がすさまじいだけの人間だ。差別する必要も理由もありはしない」

 

「な、なんでそんなことが言えるんだよ!」

 

「確かな研究結果が出てるからだ。それを知りもしないで『呪われた子供たち』ってだけで差別、差別………。ホントに芸がないな。まるで馬鹿の一つ覚えだ。そんな人間が今の時代を生きる人間のほとんど。まったく嫌になる。確かにガストレア自体は恐ろしい奴らだ。得体の知れない化け物だ。『奪われた世代』の人達はその恐怖もひとしおだろうね。でも何故それでガストレア=『呪われた子供たち』になる?ホント馬鹿でしょ。彼女たち全員が何か悪さでもした?そんなことないのに迫害してさ。親から『呪われた子供たち』は悪い存在だって教え込まれてそれを鵜呑みにして。親も馬鹿なら子供も馬鹿だな。そんなだからいつまでたっても平和にならないんだよ」

 

光は遠慮をやめた。

自分が考えていることをただ捲し立てた。

周りにいる『馬鹿共』に聞こえるように。

お前らがそんなだからダメなんだ、と。

 

 

 

光がこうしたのには理由がある。

 

一つは延珠を擁護するためだ。

といってもほとんど意味をなさないだろうが、やらないよりはマシだろう。

 

もう一つはこの場を自分たちが居づらい環境にすることだ。

クラスメイトが今の自分の訴えをしっかりと咀嚼できるのならそれでいい。

自分の意見が受け入れられたということに他ならないのだから。

それならばこのまま延珠もこの学校で学ぶことができるだろう。

 

だが、光はそこまで楽観していない。

このままでは十中八九、延珠はひどい迫害を受けるだろう。

そうなれば、彼女が学校をやめる可能性は高い。

延珠が嫌でも、蓮太郎が延珠を守るために心を鬼にして半ば強制的にやめさせる可能性もある。

光はその時に、自分たちもやめるに値する理由を作っておきたかったのだ。

恐らくあんな奴を擁護して、といった感じで自分たちも居心地が悪くなるだろう。

光自身がそうなるようにしているのだから問題はない。

光としても、延珠を――『呪われた子供たち』を――こんな目に遭わせた学校とはおさらばしたい。

舞と和には相談していないが、彼女たちなら納得してくれるだろうと考えている。

 

延珠は蓮太郎と一緒にいるためか明るい娘だが、学校では彼は延珠を守ることができない。

そんな彼女とここで出会ったのも何かの縁。

光は常々、できる限り彼女を助けたいと思っていた。

……もしこんな状況になったら全力で庇おうと。

その決意を今、実行に移した。

 

 

 

「ってな訳だから。どいてくれる?」

 

そう言って光は席を持ち上げて、言い負かした少年を押しのけるようにして延珠のところへ歩いて行った。

 

 

 

「光………。あんなことを言ったら、お主まで………」

 

「いいんだよ、延珠ちゃん。それが狙いだから」

 

「狙い………?何を言っておるのだ……?」

 

「気にしないで。それより、席の配置どうする?」

 

光は側にいる舞と和に尋ねた。

 

「はいはーい!あたし延珠の隣ー!」

 

「みゅ〜。和も隣がいい〜」

 

「なら僕は後ろかな。可愛い三人を視界に収めて目の保養だね」

 

「あはっ♪光に可愛いって言ってもらえた♪」

 

「みゅう〜♪」

 

「光は素直でいいな!それに比べて蓮太郎は……」

 

舞と和は光の言葉に相好を崩し、延珠はぶつぶつと蓮太郎に対する愚痴を言っていた。

長閑で平和な、しかしいつ終わるかわからない時間だった。

 

 

一時間目と二時間目の間の休み時間中、舞たちの会話を穏やかな面持ちで聞いていた光は、ふと気配を感じて教室の後ろの扉を見据えた。

正確には扉にはまっている窓を見て、その先にある人物をとらえた。

――蓮太郎だ。

光が気づいたことに蓮太郎も気づき、二人は暫しの間視線を合わせた。

そして蓮太郎は一緒にいた担任に何かを渡した後、光に頭を下げて帰っていった。

光は蓮太郎の思いを受け取り、しっかりと頷いた。

 

(……いつ崩壊するかわからないけどそれまでは、ボクが……いや、ボクらが、延珠ちゃんを守る。だから安心してください、里見先輩…………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――そして、平和な時間の終焉は、思いの外早く訪れた。

 

今までは延珠のいるクラスでしか言われていなかったことが、学校中に広まった。

 

 

「………だからさぁ。自分と違うからって迫害するって君たち何様?

『呪われた子供たち』に関する大した知識もないくせに偉そうに」

 

光は今、延珠を背中に庇って周囲に冷めた目を向けていた。

 

(これはもうダメだよね……。こいつらに考えを改める気はないだろうし……)

 

そのため、殺気を出してもいいんじゃないか?と割と真剣に考えている。

 

「うるさい!そんな化け物を庇ってるお前達も同類だ!化け物共め!」

 

そう。延珠を庇っているのは何も光だけではない。

舞と和も延珠を背中に庇っていた。

舞は明らかに苛立ちを見せ、あの和でさえも嫌悪感を隠そうとせずに周囲の人間を睨みつけていた。

 

「うるさいのはあんたらでしょうが!延珠のことをよく知りもしないくせにふざけたこと言ってんじゃないわよ!」

 

「みゅ。自分たちと違うっていう理由だけで人を迫害しようとするあなたたちの方がよっぽど化け物じみてる」

 

「うるせぇ!そいつみたいな化け物がいなけりゃ世界は平和だったんだ!!」

 

さっき叫んだのとは違う少年が叫んだ。彼は光たちと同じクラスだ。

彼の叫びに賛同する声が上がる。

 

「妾たちだってこうなりたくてなったわけではない!」

 

延珠が叫ぶと一転して場は静まり返り、延珠に冷めた視線が送られる。

 

その少年が続けて叫んだ。

 

「俺の父さんは、戦時中ガストレアに足を食われてからずっと酒浸りで母さんに暴力振るうようになったんだ!お前らが所構わず殺しまくったせいで俺の家は………ッ」

 

「違う、それは妾じゃない。妾は人間だ!」

 

延珠が首を振って叫び返すが、

 

「気持ち悪ぃんだよ人間のフリすんなよッ」

 

聞きやしない。

 

「妾は人間だ!」

 

「黙れ化け物!」

 

「妾は人間だッ!」

 

「しつけぇッ!」

 

「うるさい、黙れよ猿が」

 

 

―――場が静まり返った。

先ほどの延珠のときとは違い、言葉を発した人物に呑まれたためだった。

 

場が静かになった所で光は続けた。

 

「話を聞きもしないで喚き散らしやがって。お前、話を聞くための耳とそれを理解するための脳味噌持ってる?僕の目には耳らしき器官は見えるんだけど、実は別物なのか?

あと思考能力持ってる?お前の親父さんがガストレアに足を食われた?それはこの娘たちのせい?ハッ、なに言ってんの?頭おかしいんじゃない?『呪われた子供たち』はガストレアウィルスの体内浸食率が五十%を超えると形象崩壊を起こしてガストレアになる。それは事実だ。でも形象崩壊を起こしたら元の姿には戻れないんだよ?お前らからどう見えてるのかは知らないけど、どう見ても延珠ちゃんは人だ。その彼女たちがお前の家をめちゃくちゃにした原因?馬鹿も休み休み言え。そもそもお前の父親が足を食われたのが原因だろうが。しかも暴力を振るうようになったのはお前の父親が弱い人間だから。お前の父親が勝手にそうなっただけだろ。それなのに―――」

 

「ひ、光、もういい。もういいのだ」

 

周囲の人間と同じく光に呑まれていた延珠が我に返り、慌てて止めに入った。

 

「………ああ、ごめん。ちょっとイラッとしちゃった」

 

………光はこれでイラッとしただけらしい。怒り狂ったらどうなるのか。

 

「……延珠」

 

そして、延珠と少年の言い合いの時点からこの場に居て、光に等しく呑まれていた者が延珠に声をかけた。

 

「れ、蓮太郎………」

 

蓮太郎の登場に、人垣が割れる。

光が作り出した沈黙とは別種の沈黙が場を支配する。

 

蓮太郎は延珠の側まで歩み寄ると、延珠を抱きしめて言葉を発した。

 

「延珠、学校を移ろう」

 

「妾は、負けたく………ない。友達もたくさんできたのに」

 

「もう友達じゃない」

 

蓮太郎の言葉に、光が反応した。

 

「それは聞き捨てならないなぁ、蓮太郎お兄ちゃん。僕らは友達のつもりなんだけど?」

 

舞と和も頷いている。

 

「………そうだな、悪かった。光たち以外は、もう友達じゃない」

 

蓮太郎のバツの悪そうな訂正に延珠は一瞬笑みを見せたが、すぐに暗い顔になる。

 

「……妾は、もう駄目なのか?やり直せないのか?」

 

「ああ、もう終わりだ。世界がお前を受け入れるまで、まだ時間がかかる」

 

「それでも妾たちは、戦わなければならないのか?」

 

「………………そうだ」

 

その答えを聞き、延珠はしばらく泣いた。

蓮太郎は顔にハンカチをあてがい、自由に泣かせていた。

 

延珠が立ち上がったとき、光は声をかけた。

 

「延珠ちゃん。僕らも一緒だから。一緒に戦うからね」

 

「延珠には蓮太郎だけじゃない。あたしたちもついてる」

 

「みゅ。だから、元気出して?」

 

「そうだな。延珠には、こいつらもいるんだ。さ、退場の時ぐらい胸張んぞ」

 

「こいつら呼ばわりはひどいなぁ」

 

「うっせ。ほら、行くぞ、延珠」

 

「でも、教室に鞄が」

 

「そんなもん、もうどうでもいいじゃねぇか」

 

「う、うむ!そうだな!」

 

その時、蓮太郎が携帯を耳に当て、電話し始めた。

その表情が変わっていくのを見て、光は仕事だと判断した。

 

 

蓮太郎は通話を終えると、光たちに向き直った。

 

「光、あと、えっと………」

 

「あたしは舞。この子は和」

 

「みゅ。よろしく」

 

「あ、ああ。光、舞、和。本当に助かった。延珠を守ってくれてありがとよ。それと光、仕事だ。感染源ガストレアが見つかったらしい。きっとお前の親父さんの所にも情報が行ってるはずだ。俺たちはこのまま向かう。どうやって行くのかは知らねぇけど」

 

仕事の話は光にだけ耳打ちしていた。

実際は二人も関係者なので全く問題はなかったのだが。

そして、蓮太郎と延珠を迎えに来たドクターヘリが到着し、蓮太郎たちは駆け出していった。

 

「舞、和ちゃん。仕事だよ。聞こえてた?」

 

二人は光の言葉に頷く。

それと同時に、光のイヤホンに通信が入った。

 

『光、俺だ。感染源ガストレアが――』

 

「うん。聞いてる。今すぐ帰ります」

 

『そうか、わかった。足は用意してある。急げ』

 

「了解」

 

すでに校内に戻っていた三人は、自分たちの鞄を引っ掴み、自宅に向かって駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

「お父さん!ただいま帰りました!」

 

「おう!すぐに装備を整えて裏に回れ!知り合いのツテでヘリを用意してある!」

 

「わかりました!いくよ、舞!」

 

「うん!」

 

「和も行く」

 

「えっ?ダメだよ、今回は行かない約束……」

 

「みゅう!和だって延珠ちゃんの力になりたい!」

 

「………和ちゃん。わかった。一緒に行こう。お父さん、いいですか!」

 

「……しゃあねえ。許可する。全員無事に帰ってこいよ!」

 

「もちろんです!」

 

 

装備を整えた三人は、ヘリに乗り込んだ。

 

「状況は光に知らせる。二人は光から聞いてくれ」

 

「了解!パパ、行ってきます!」

 

「みゅ。社長、華奈に伝えておいてください、お願いします」

 

「任せとけ。光、無理はするなよ」

 

光はコクリと頷いた。

そして、ヘリが飛び立つ。

 

 

 

『――以上が、今の状況だ。二人に伝えといてくれ』

 

「了解。じゃあ、お父さん」

 

『おう。きっちり仕事してこい』

 

光は通信を終え、二人に状況を伝えた。

 

「感染源ガストレアは空を飛んでるらしい。他の民警も駆けつけてるみたいだ。場所は三十二区」

 

「あれ?感染源ガストレアってモデル・スパイダーじゃなかった?」

 

「みゅ。和もそう記憶してる」

 

「変異体かもね。そうだとしたらかなり厄介だけど」

 

会話が途切れた。

そこで光が言おうと思っていたことを告げる。

 

「舞、和ちゃん。多分影胤さんもこの情報を掴んでる。向こうで出くわすかもしれない。彼らは強い。気を付けて。彼のイニシエーターは蛭子小比奈。モデルはマンティス。小太刀を持っていたことからも恐らく斬り技主体だ。相性的には和ちゃんがいい。もし出くわしたら僕は影胤さんと戦うから、二人は小比奈ちゃんを頼むよ」

 

二人は表情を引き締めて頷いた。

再び通信が入った。

 

『木更ちゃんから連絡があった。蓮太郎くんのGPSの反応はお前らが向かってる方向にある島で止まってるらしい』

 

「了解。それならもうすぐ着きます」

 

『雨足が強い。地面に注意しろよ』

 

「わかってます。では」

 

通信を終えた光は操縦士に目的地を伝えた。

 

 

 

 

「もう少し高度を下げてください!」

 

島の上空に着いたヘリの中で、光が指示を飛ばす。

 

「まだ、まだ……。ここでいいです!僕たちが降りたら即時離脱してください!」

 

そう言うと、光はヘリのドアを開け放った。

 

「じゃあ二人とも。僕の抜刀の邪魔にならないようにしがみついてて」

 

「刀じゃなくて槍でしょ〜」

 

「そんなことはわかってるよっ」

 

舞のからかいに光は少し語気を強くしながら返した。

 

「じゃあ……行くよっ!」

 

掛け声と共に、光は空中に身を投げ出した。

頭からもの凄い速度で落下していく。

 

(あと五秒、四、三、二……今っ!)

 

 

「立花流槍術二ノ型三番『十字創(じゅうじそう)』!」

 

 

光は凄まじい速度で左右の鞘に収まっている短槍を振り抜き、ぬかるんだ地面に叩き付けた。

強すぎず、弱すぎず――完璧な力の調整により、光たちの勢いは完全に相殺される。

三人はすぐさま地面に着地した。

誰もダメージはおろか泥の飛沫すら受けずに戦いの地に降り立った。

 

「二人とも、大丈夫?」

 

「うん」

 

「みゅ。問題ない」

 

「そっか、よかった。さて、感染源ガストレアはどこだ……?和ちゃん、匂いか音、わかる?」

 

「みゅ〜〜。……ダメ。匂いも音も雨のせいでよくわからない」

 

「そうか……。和ちゃんでわからないとなると普通にお手上げ――」

 

「ふみゅ!?今、銃声が聞こえた!」

 

「なんだって!?どっち!?」

 

「みゅ!こっち!」

 

言うや否や和が駆け出し、光と舞もそれに追従する。

 

 

森の中を駆け抜け、開けた視界に飛び込んできたのは――銃を構えた影胤と、それを向けられて血を流している蓮太郎だった。

小比奈は何か癇癪を起こしているようだったが、今は影胤をどうにかするのが先だ。

 

(この距離を潰すには、アレしかない!)

 

 

「立花流槍術二ノ型五番『一気通貫(いっきつうかん)』!」

 

 

光は身体を倒しながら右手に持つ短槍を自分の前に構え、左手の短槍を自分の真後ろに向けて短槍に付いたボタンを押し込む。

和と舞がその射線上から避けるのに少しだけ遅れて、左手の短槍から炸裂音が轟き、火薬の力を得て驚異的なスピードで光が飛び出す。

一気通貫は後ろに構えた短槍に一発だけ仕込まれたカートリッジを使った爆発的な突進力を以て、直線上に存在する敵をまとめて屠る技だ。

 

 

「ッ!イマジナリー・ギミック!」

 

攻撃に気づいた影胤が慌てて斥力フィールドを展開させる。

光の突進は斥力フィールドに阻まれたかに見えた。

 

が、一点集中突破の威力は甚大だった。

影胤の斥力フィールドをぶち抜き、影胤の脇腹を抉って反対側に通り抜けた。

 

「ぐぅっ………!光君か……ッ!」

 

「やあ、こんにちは影胤さん。今回は戦えますよ!」

 

 

 

 

 

 

「光ッ、斬るッ!」

 

小比奈の姿が掻き消えた直後に光の正面に現れ、小太刀を振るう。

 

「させないよっ!」

 

「みゅ!」

 

ほぼ同時に眼を赤く輝かせて現れた舞と和が小比奈の攻撃を受けとめ、反撃する。

 

「誰!?」

 

「あたしは光のイニシエーター、立花舞!モデルはカンガルー!」

 

「ふみゅう。和はある人のイニシエーター、穏田和。モデルはシャーク」

 

「蛭子小比奈。あんたの相手はあたしたちよ」

 

二人は宣言し、それぞれの武器を構えた。

舞は二本の短槍を。

和はトンファーを。

 

「……斬るっ!」

 

小比奈が飛び出し、和に斬りかかった。

和は二振りの小太刀を両のトンファーで受け止め、グリップの前に付いたボタンを強く押し込む。

何かを感じ取り飛び退った小比奈がいた場所を銃弾が通過していった。

 

「みゅ〜。初めて初見で躱されたの〜」

 

「ふーん。すごいね、あの子」

 

躱されたというのにニッコニコな和。

彼女の変化を気に留めることもなく舞が飛び出して二本の短槍を連続で突き出す。

それを小比奈も漏らすことなく迎撃した。

 

攻撃が止んだと思った瞬間、和が現れトンファーが小比奈を襲う。

舞は短槍で援護に回ったようだ。

 

「やりづらい!斬りたい!」

 

「みゅふふふ〜。させないよ〜。みゅふふっ」

 

いつもの眠そうな顔はどこへやら、満面の笑みで小比奈を追い立てる和。

銃撃を交えてトンファーを振り、確実に小比奈を追い込んでいく。

そして何も考えていないように見えて、小比奈は影胤のフォローに行けず、彼からのフォローも受けられないような位置取りをしていた。

 

 

 

 

 

 

――そして、光は。

 

「どうしました影胤さん!小比奈ちゃんがピンチですよ!カバーに行かなくていいんですか!?」

 

「君が行かせないようにしているのだろうッ!『マキシマム・ペイン』!」

 

「無駄ですっ!立花流槍術二ノ型四番『旋風(つむじかぜ)』!」

 

影胤を押し切っていた。

 

 

影胤が斥力フィールドを膨らませ、光を吹き飛ばそうとする。

 

本来この技は相手を何かに押し付けた所をさらに圧迫し潰すというものだ。

だが、光が上手く立ち回るせいで、距離を取ることさえできない。

故に影胤は距離を取るためにこの技を使った。

 

だがしかし、光は自身の回転を利用して力技でマキシマム・ペインを押さえ込む。

 

「ほらほら、これで終わりですか!?なら僕から行きますよ!」

 

「くうぅぅっ!小比奈、ここは退くぞ!目的の物は手に入れている!」

 

光のテクニック重視の攻撃を斥力フィールドを発生させて何とか堪えながら影胤は声を張り上げる。

 

「えぇっ!?やだやだ!舞と和も斬りたい!」

 

「ダメだと言っているだろう愚かな娘よッ!この場で戦っていても我々にメリットはないッ!」

 

「退くなら早く退いてくださいよ。里見先輩がやばそうなんで」

 

「小比奈、退くぞ!」

 

「むぅぅぅうう〜〜!!今度こそ光を斬る!」

 

捨て台詞を残して蛭子親子は去っていった。

 

 

「舞、和ちゃん。追わなくていいよ」

 

「わかった。ほら、和!戦闘終わったよ!」

 

「みゅふふふふ………みゅ?終わったの?」

 

「うん、終わったよ。急いで里見先輩を!」

 

「あ、そうだった!」

 

「みゅう。和、助けを呼んでくる」

 

「うん、よろしく!舞、僕らは応急処置だ!」

 

「わかった!」

 

 

 

 

 

光たちは蓮太郎の応急処置をし、和が呼んできた応援の助けも借りて全員で帰還した。

 

 

蓮太郎は一命を取り留めたが、ケースは影胤に奪われてしまった。

 

そして、状況は大きく動く―――。

 

 

 

 




いかがでしたでしょうか。

はい、というわけで舞と和のモデルが明らかになりました。

舞はカンガルー。
実は舞の本領は蹴りです。
光、舞、和の三人が履いている、靴底がバラニウム製の靴で蹴る(原作で延珠が履いてる奴です)。
それが本領なのですが、それだけだと手数が少ないため、二本の短槍を持っています。
持ち前の脚力を活かして機動力重視で動き相手を翻弄しながら戦う。
それが舞のスタイルです。

和はシャーク。
もうお気づきだと思いますが、和は戦闘狂です。
普段はのんびりとしていますが、戦闘になると人が変わります。
武器は両手に持ったトンファー。
弾数は六発ずつ。
グリップの前のボタンを押せば短い方から、後ろのボタンを押せば長い方から弾が出ます。
和の履いてる靴は保険みたいなものです。

..........光がやっちゃってますねー。
ま、最初の不意打ちが響いたってことで。
一気通貫のときに使用したギミックですが、蓮太郎と同種のものです。
両手の短槍で一発ずつ使えると考えてください。


.......評価がものすごい分かれそうな気がします。

感想、意見、批評、質問その他、お待ちしております。


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