ブラック・ブレット[黒の槍]   作:gobrin

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……お久しぶりです、gobrinです。

報告とか色々は後書きでします。

では、どうぞ。



第十八話

 

光が追加の分も含めて武装を新しくしてもらえてほっくほくになった二日後。

 

光は社長室に呼び出されていた。

 

 

「お父さん、話って何?」

 

「ああ。第二回の警護計画書を入手した」

 

「……お父さん、誰かからもらったの?」

 

「いや?普通に痕跡を残さずに色んなところにハッキングしてきただけだぞ」

 

「……………」

 

光が無言になる。樹のやっていることが犯罪以外の何物でもない。まあ、今更ではあるが。

 

 

「……まあそれはいいや。なんでハッキングしてまでそれを手に入れたの?」

 

「光なら理解できてると思うが……」

困惑顔で樹が言ってくるが、光にもちゃんと考えがある。

 

「認識が食い違ってたらよくないでしょ。こういう確認は習慣づけておかないと」

 

「それもそうか。んじゃあ説明するが、これを俺が手に入れられたということは、すでに相手側にもリークされている可能性が高いってことだ。その推測を把握した上で相手の行動を読み、こちらの行動を決定する必要がある。俺が考えてるのはこんなところだ。光は?」

 

「ボクも一緒かな。じゃあ、それを話し合うために呼ばれたってことでいい?」

 

樹が頷く。

 

「ああ。お前一人でも適切な行動を考えられるとは思うが、他者の意見があるだけで違うからな」

 

「そうだねぇ……。ボクは今の話を聞いて、一応これからやることのプランは練ったけど……お父さんの意見を聞きたいな」

 

「いいぞ。まず相手の行動だが、俺達の情報も摑んでいると見てまず間違いない。そうすると、俺達護衛の民警を潰しに来るだろう。エイン・ランドの持ち駒は――っと、言い方がまずかったな」

 

光を慮って樹が言い直そうとするが、光が頭を振ってそれを押し止める。

 

「気にしなくていいよ。お父さんがそういう意味で言ったんじゃないことはわかってるから」

 

「すまん、いつもの癖でな……エイン・ランドが動かせる人材はティナ・スプラウトだけだ。ならば、少なくとも片方は潰そうと考えるはずだ。里見君たちの情報は国が管理していて、聖居内にいると思われる内通者程度が調べられる情報じゃないし、ウチをハッキングできる奴なんていないだろう。いたら会ってみたいもんだ。つまり、俺達に関する詳しい情報を手に入れることは難しいと考えるのが妥当だ」

 

光は気にしないでいいと言ったが、樹は律儀に言い直した。いい父親である。

そこで樹は光のことをチラリと見た。光は理解していることを示すために軽く頷く。

 

 

「なら、そこで注目すべきは民間警備会社に勤めている民警の数だ。ウチは現在三ペア。それに対し天童民間警備会社は一ペア。単純に考えて、民警の数が少ない方が潰しやすい。ってなわけで、俺がエイン・ランドなら、天童民間警備会社にティナ・スプラウトを送り込んで天童木更の抹殺を命じるな」

 

樹の考えの半分を聞き、光が大きく頷く。

 

「ボクも同じ意見。多分ティナは、近いうちに木更さんを殺しにかかる」

 

「だろうな。それでこっちの行動だが、木更ちゃんのところに行ってティナ・スプラウトを迎え撃つのがいいだろう。恐らく向こうは木更ちゃんが一人の時を狙ってくるはずだ。その裏をかく」

 

「あ、そこはボクとは違う」

 

「え、マジ?」

 

樹が意外そうな声を上げる。光はしっかりと頷いて、自身の考えを述べる。

 

「うん。ボクならティナを泳がせる。天童民間警備会社が入ってるビルの上で待ち伏せて、暗殺に行った帰りに――ティナが成功するにせよ失敗するにせよ――声をかけるかな。ちょっと話がしたいからね」

 

「……木更ちゃんは見殺しにする気なのか?」

 

 

樹が訊くと、光は狂気を湛えた笑みで答えた。

 

 

「うん。だってボクはあの人がどうなろうとどうでもいいから」

 

 

「…………」

 

今度は樹が沈黙する番だった。

 

「ボクにとって、あそこにいる人の中で大切なのは延珠ちゃんだけだよ」

 

「……そうだな。光はそういう考えだったな」

 

「うん」

 

嬉しそうに光が笑う。樹が自分の考えを真の意味で理解していないことは解った上で光は笑っている。自分の考えなど、他人に理解されなくともよい。自分がそれを理解し貫けていれば。そう考える光は、確実に壊れていた。

 

「……俺は、今回のことに関してはお前に任せると決めたんだ。だからお前のやることに口出しはしない。好きなようにやれ。手助けできる範囲で助けるから安心しろ」

 

「ありがとう、お父さん。大好きだよ」

 

「………こんな時だけ言うのは反則だろうが………」

 

結構マジに嫌いだと言われたこともある樹にとっては、その言葉をもらえることは大きな意味がある。光が、ニヤリと笑った。

 

「だと思うよ。だってそれを狙って言ってるからね」

 

「てめっ、確信犯かよ!?」

 

「あははっ。じゃあお父さん、お休み。ボクは明日から張り込んでみるよ」

 

「おう、お休み。あんまり無茶はするなよ」

 

「いざとなったら全力を出して逃げるよ。まあ、そんな機会は来ないと思うけどね」

 

 

光はヒラリと手を振って部屋を出て行った。

部屋に残った樹が、呟きを漏らす。

 

「……なんであんな子供が、復讐に生きなきゃいけないんだ……。俺が不甲斐ないばっかりに……。光はすでに子供らしさを捨てて、自分なりの方法で復讐相手を見つけようとしている……俺がもっと早く復讐相手を見つけ出して殺せていれば、こんなことには……クソがっ!!」

 

ダンッ!と机を殴る音が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふわぁぁぁあああ~~。……暇」

 

 

光は、大欠伸をかましていた。場所はビルの屋上。実は屋上は侵入禁止なので不法侵入である。

 

耳に耳栓型通話可能イヤホンを差し込み、双眼鏡を目に当てて下の道路を眺めていた。正確に言えば、その歩道を眺めているのだが。

 

「来ないなぁ……意外と情報を仕入れるのが遅いんだね……」

 

現在学校に行っていない光は、樹に話を聞いた次の日の朝から木更が事務所にいる時間はずっと張り込んでいる。

今日は二日目。昨日は何もなかった。

余りにも暇すぎて、素振りをしていたくらいだ。昨日の夜はここで寝た。寝袋は有能だ。

 

 

光がぼーっと眼下の街並みを眺めていると、イヤホンに着信があった。

こんなタイミングで連絡を取ってくる人物は一人しかいないだろう。

 

「もしもし、お父さん?」

 

イヤホンのボタンを押してから、服の袖に付いているマイクに口を近づけて話しかける。イヤホンから樹の声が聞こえてきた。

 

『ああ、光か。ティナの姿を監視カメラが捉えた。そっちに向かっている。そろそろ現れると思うぞ』

 

「あ、了解。情報ありがとう。ハッキングはよくないよー」

 

光は双眼鏡を用いて歩道に注目する。樹に礼を言ってから、一応注意しておく。まあ――

 

『いいんだよ、バレなければ。じゃ、切るぞ。なんかあったらいつでも連絡していい』

 

――こう返ってくるのは光もわかっていた。立花家に常識などない。そんな(しがらみ)、必ず復讐すると誓った時に捨てた。

 

「はいはーい。あ、ティナ発見」

 

『マジかよ。ま、健闘を祈る』

 

「うん、それじゃ」

 

イヤホンのボタンを押し、樹との通話を終える。双眼鏡を覗き込んだまま、ティナの姿を追う。彼女は大きなガンケースを持っていた。相当な重量がありそうだ。かなり分厚い。アレの中身はショットガンかガトリングガンだと光は予想した。

ティナは天童民間警備会社が入っているビルの前まで来ると、周囲のビルを見渡し始める。

光は慌てて身を潜めるが、ティナは他のビルの屋上付近を見やるだけだった。

 

(……あ、そっか。ここは射界が確保できなくて狙撃には向かない場所だもんね。それを事前に教えられていて、今見て実感したってところかな)

 

スナイパーであるティナの考えをトレースし、今の行動の理由を推察する。それが当たっているかはともかくとして、光はティナの観察を続けた。

 

ティナは持っているケースを地面に落とす。重い音と共にケースが左右に開き、中から巨大な銃が現れた。

 

(アレは――――ゼネラル・エレクトリック社のM134か。『苦痛を感じる間もなく死ぬ(ペインレス・ガン)』の異名を持つ旋回機銃。……銃身(バレル)を切り詰めるカスタムがしてある。室内戦闘用ってことだね)

 

光は自身の知識と照合してティナの得物を正確に理解する。確かにアレなら、かなりの確率で対象を抹殺できるだろう。

弾薬箱を背負い、ティナがビルに入っていく。通行人たちは、ティナが堂々と作業していたためか警察を呼んだり叫んだりすることはなかった。

 

光は、戦い(ドンパチ)が始まるのを待った。

 

 

数分後。

 

ガシャガシャーン!!と大きな破砕音を響かせて、三階の窓ガラスが全て砕け散った。言うまでもなく、ティナの襲撃だ。通行人たちが恐慌して逃げ惑う。光は冷徹な目でそれを眺めていた。

先ほど砕けた窓ガラスの破片の中に、血飛沫は混じっていなかった。ティナは初撃に失敗したのだろう。

 

そんな呑気なことを考えていた光の全身を、怖気が駆け巡った。咄嗟に短槍を構える。

 

(――――――うっわ何この強烈な殺気!?木更さんか!?あの人頭おかしいんじゃないのこんな殺気出せるとかヤバいよ!?ボクですらこんな強烈なのは体感したことがない―――!!)

 

木更がティナに向けたであろう殺気の余波が、屋上にいる光の全身をも貫いたのだ。天童民間警備会社が入っている三階と光のいる屋上の間に、四階があるのにも関わらず。

 

 

ちなみに、先ほどの光の心の叫びはほぼ反射で出たものだが、あくまでも()()したことがないだけである。この場所に樹がいれば、光も木更ちゃんに勝るとも劣らない殺気を放っているぞ、と言ったことだろう。

 

 

光が殺気を感じ取った直後、建物が軽く揺れた。光は警戒を解かずに体勢を低くする。もしかしたら今いる屋上が抜けて、階下に落ちてしまうかもしれない。

光が短槍を構えたままじっとしていると、ドンドゴォッ!!という鈍い音が轟き、また建物が揺れる。

その時、注意を怠っていなかった光は眼下の道を疾走する存在に気が付いた。

 

 

――蓮太郎だ。

 

 

蓮太郎は全力疾走のままビルに飛び込み、光の視界から姿を消す。

 

その数十秒後、抑えがたい怒りに震える声が光の耳にも届いた。

 

「天童式戦闘術二の型十六番―――――ッ!!」

 

身を焦がしてしまいそうなほど、怒りを持った叫びだった。

 

「『隠禅・黒天風』ッ!!」

 

 

――――無音。

今の一撃がティナに当たっていれば、何らかの音はするだろう。要するに、恐らく不意打ちだったろう一撃をティナは躱したことになる。

 

(……流石、単身で序列九十八位まで上り詰めた娘ってところかな)

 

その瞬間、階下から絶叫が聞こえてきた。

 

「――――どうしてなんですか、蓮太郎さん!!」

 

 

「ああ、そう言えばあの二人はあの後も結構頻繁に会ってたみたいだってお父さんが言ってたな……ハッキングして手に入れた情報によると」

 

ポツリと呟く。お互いに、知らない方がいいことだった。でも―――。

 

(ボクが教えなかったのも仲良くしてるならそれでいいかなって思ったからだけど……まあ、知ったんならそれはそれでいいよね。あ、でも、ティナはちょっと心配だな。里見先輩に心を許し始めてたみたいだし……お父さんによるとだけど。エイン・ランドはティナのことを駒としてしか見てないだろうし……拠り所を失った感覚に陥ってるんじゃないだろうか……)

 

光にとってはどうでもいいことだ。強いて言うなら、ティナのことが少々気がかりだが。

 

 

戦闘が再開したようだった。

ガトリングガンの掃射の音が聞こえ、次いで――――聞き捨てならない発言が飛んでくる。

 

「木更さんッ!床を………斬れえええええええ!!」

 

(えええええええええええ!?)

 

これには光もびっくりだ。慌てて屋上に伏せ、衝撃に備える。

 

轟音とともに、ビルが揺れる。

 

光は揺れが収まったことを確認してから、屋上から下を覗き込む。

その時ちょうど、ティナが二階の窓をぶち破って外に飛び出してきた――いや。

 

(アレは――蹴り出された、かな?)

 

ティナは窓の真下に停めてあった車のボンネットに背中から落下、それをを凹ませて着地し、そのまま脱兎のごとく駆け出した。その瞳から輝く物が零れ落ちる。

ティナと話をするために待っていた光としては、ここでティナを見失うわけにはいかない。

 

 

「ほっ、と!」

 

光は屋上から身を躍らせると、隣のビルと今いたビルの壁を交互に蹴って衝撃を和らげ、安全に着地する。

そして、すぐさまティナを追って駆け出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐすっ……ぐすっ……」

 

路地の暗がりに誰かがすすり泣く声が響く。少女はとても悲しげに泣いていた。

 

「……そっか。そんなに悲しかったんだね」

 

そんな彼女――ティナに、声をかける存在がいた。

 

「ッ!?誰!?」

 

いきなり声をかけられたティナは、声が聞こえてきた方向を向いて警戒心を露わにする。

声をかけた人物は勿体ぶるでもなく、すぐにティナの目の前に出てきた。

 

「そんな警戒しないでよ。……僕だよ」

 

「……なんだ、光君ですか……」

 

ティナがホッと息をつき――――すぐに、おかしいことに気づく。慌てて構えを取る。

 

「……いえ、おかしいですよね?なんで私がここにいるって知っているんですか、光君?」

 

「簡単なことだよ。ティナ、君がさっきしたことの一部始終を見ていたからさ」

 

あっさりと答える光に拍子抜けした表情を浮かべるティナだが、即座に思い直した。この少年は、私を追って来れるほどの手練れなのだ――。

 

「……それで、私はどうすればいいんですか?光君と戦えばいいんです?」

 

「いや、別に僕はティナとここでやり合いたいわけじゃないし、そのつもりもない。ちょっと話がしたかっただけなんだよ」

 

「……話……?」

 

とても訝しそうに光を見つめるティナ。光はその視線を受けて苦笑し、自分の考えを述べた。

 

「いやね?ティナがウチにも襲撃をかけようと考えてるならそれは阻止しなきゃいけないし……あとは、普通に話をしたかった。里見先輩とあんなことになっちゃって傷ついてるみたいだから今は余計にね」

 

「なっ……」

 

ティナが絶句する。無理もない。光は、明らかに自分の敵である人間とあろうことか普通に話がしたいと言ったのだ。それに、蓮太郎云々のくだりは最早悩み相談のレベルである。

 

「だから、まずは質問。ティナは、ウチを襲撃する気はあるのかな?もしくは、ウチを襲撃しろって誰かから指示を出されたりしてる?」

 

「え、あ、えっと……」

 

ティナは混乱していて答えられない。光はティナが落ち着くのを待つことにする。

ちなみに今、エイン・ランドの名前は意図的に出さなかった。樹の情報収集能力の高さを無闇に教える必要がない。

 

 

ティナは深呼吸を二、三回繰り返して、気持ちを落ち着かせる。

 

「……私が、あなたたちのところを襲撃するかどうかを、あなたに教えると思うんですか?」

 

「ああ、やっぱりそうなるか……。あのね?君が僕の家を襲撃するのは自由だけど、無意味だよ?」

 

「……はい?」

 

ティナは自分の耳を疑う。今、彼はなんて?

 

「例えティナが遠距離から狙撃してこようとも、ウチに被害が出ることはないよってこと。ウチの皆は強いからね。だから、無意味。でも、手は煩わされることになるから、交渉したいんだよ」

 

「交渉……?……私がそれに応じると思いますか」

 

「ううん、思わない。だから、どうしてもって言うなら力づくでやるしかない」

 

「力づく?プロモーターの光君が、イニシエーターである私に?本気ですか?」

 

ティナは臨戦態勢に入る。いつ光が襲い掛かってきてもいいように―――。

 

「と思ったけど、やっぱりやめた。じゃあいいや。ウチを襲撃するのは自由にしていいよ」

 

今度こそティナは拍子抜けした。この少年はあっさりとし過ぎだとティナは思う。

 

「じゃあさ、ちょっとお話しようよ」

 

「……話すことなんて、ありません」

 

「そんなことはないんじゃない?まあ、ティナになくても僕にあるんだけどさ」

 

光はやけに自信があるようだ。ティナも不思議に思い、その真意を光に問う。

 

「……どうしてそう思うんですか?」

 

「どうしてって……さっき里見先輩が木更さんを助けに来た時、ティナは里見先輩と話そうとしてなかった?見てはいないから確信はないんだけど……違った?」

 

光が聞いていた限りだと、蓮太郎が現れてからティナのガトリングガンの銃声が聞こえるまでに間があった。さらに、あの掃射は天井に向けられたものだったと感じた。以上のことから、あの時のティナは機関銃を打つつもりはなく、何かのはずみ――例えば蓮太郎とガトリングガンを奪い合っていたとか――でボタンを押し込んでしまっただけではないだろうか。

 

ティナが話し合いを望んだのではないかと光が考える根拠はまだある。

()()()()()()()()()()()()()ことだ。

蓮太郎が入ってきた時、ティナは叫んでいた。どうして――と。

つまり、蓮太郎が敵だったことはティナにも予想外のことだったのだ。

しかしそれでも、ティナは蓮太郎と木更を殺そうと思えば殺せたはずである。

 

序列百番以内というのは、かなりの戦闘力を有する。

動揺を抱えたままでも、ガトリングガンを使えなくても、ダメージを受けた女一人と序列千番のプロモーター一人を殺す程度のことは容易いこと。

それをしなかったということはつまり、ティナにその意思がなく、何か他の意思があったということだ。

あの状況で考えられるのは、話し合いをしようとしていた――光には、それ以外考えられなかった。それに、(樹が調べてきた)事前情報もある。

 

「え、それは……」

 

「まあそうじゃなくても、僕がティナと話したいんだよ。……ダメかな?」

 

「……ダメじゃない、です、けど……」

 

「よかった。なら、場所を移ろうよ。こんな場所にいたら気分が悪くなる」

 

そう言って、光はティナに背を向けて歩き出す。その様子はティナを警戒しているようには見えない。

しかし、ティナはその背中を攻撃する気にはならなかった。トボトボと光の後をついていく。

 

 

 

 

 

「あ、そうだ」

 

少し歩いた後、光が思い出したといった様子で声を上げた。

 

「ティナ、君が付けているヘッドセット、今どこかと通信してる?」

 

「え、いえ……」

 

「予備は?」

 

「ありますけど……」

 

ティナは困惑しながら光の質問に答える。

ティナには、光が何を言いたいのかわからない。

光は顎に手を添えると、思案顔で提案する。

 

「うーん……ならさ、それ壊しちゃって大丈夫?それとも、そのままにしておいて通信があった時に誤魔化す方がいいかな?どっちがいい?」

 

「え?……え、え?」

 

その提案は、ティナをさらに混乱させるだけだった。

 

 

「それなら……後者の方がいいですね。破壊した場合、すぐに予備を取りに行かないのはおかしいですから」

 

「そっか。なら、よろしくね」

 

「はい」

 

光が言っていることはこうだった。

ティナに指示を出している者からの通信が入った時、ティナが困るだろうという配慮だったのだ。事前に対応を決めておけば、負担も少ないだろうというティナのことを考えたものだった。

 

妙なことになったものです、とティナは考える。

何故か成り行きで話すことになってしまったが、この少年は何を考えているのだろうか。ティナはそれが気になってきていた。

 

「――はい、到着」

 

「――――え、ここって……」

 

「――――そう。立花民間警備会社、第十四区支部」

 

表札には、立花民間警備会社支部、と書かれていた。

 

 

 

 

 

 





とまあ、こんな感じでした。

とりあえず、お久しぶりです。
色々忙しかったのに加えて、ちょっと書き方の方針を変えて先に他に書いている作品の一つを区切りのいいところまで書き上げてからになったもので……すみません。
詳しいことは活動報告に書いてあります。気になる方はそちらをどうぞ。
これからは、ブラブレを区切りまで書き進めます。神算鬼謀の狙撃兵が終わるところまでですね。連日更新、とはいかないと思いますが、これまでよりは格段に早いペースで次話をお届けできると思います。待ってくださっていた皆さんのためにも頑張ります。


さて今回の話ですが。
内容が薄いですね……。我ながら悲しくなってきます。
ブラブレを書くのは久しぶりなので、リハビリも兼ねてという感じだったんですが……面白いんですかね、この話?僕は嫌いではありませんが……話的にも結構重要な要素ありますし。

次回は、ティナと光がお話する話です。もしかしたら、二回目の会談まで行けるかもしれません。書くことは決めてますが、細かくプロットを組んでいないので……どうなるかわかりません。二次創作ですしね。プロットを組まなくても結構書けてしまうのです。

まあというわけで、これからはブラブレの更新を続けていきます。
光たちと、ティナの戦いがどうなるのか!?お楽しみいただければ幸いです。

感想など、お待ちしております。
更新遅いんだよ馬鹿野郎などの文句でもいいです。甘んじて聞きます。

では、また次回。

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