ブラック・ブレット[黒の槍]   作:gobrin

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ご無沙汰です、gobrinです。

最近時間が全然取れなくてまた開いてしまいました。

閑話です。
ちょっと菫のキャラが崩壊してます。ご注意下さい。

では、どうぞ。


第十三話

『立花民間警備会社』の全員が認識を共有した次の日。

 

 

 

朝の稽古で、光は荒れていた。

 

 

「ハアアッ!!」

 

「おおっと!?光、気合い入ってんなー」

 

短槍をいつもの一・五倍くらいのスピードで突き出し、樹を狙う。

樹はそれを軽々躱し、のんびり感想を述べた。

 

「昨日、ちょっと苛つくことがあってね!」

 

「ん?そんなのあったか?」

 

「うん!昨日の晩、影胤さんから電話がかかってきてさ!ウザかったんだよね!」

 

「電話?携帯にか?番号教えてたのか」

 

軽い気持ちで言った樹だったが、次の光の言葉で余裕が消え去る。

 

「違うよ、イヤホンの方!わざわざ番号調べてかけてきたみたい!黒幕さんが教えたみたいだけど!その時におちょくられてね!」

 

「んなあっ!?イヤホンの番号だと!?あんっのクソじじい……!」

 

樹が珍しく完全な敵意で天童(なにがし)を罵倒する。

樹は回避を止め、光の攻撃を迎撃し始めた。

 

「んでさ!ちょっと苛ついてるから、今日の稽古はさっさと終わらせて気持ちを落ち着かせようと思ってるんだよ!」

 

「奇遇だな!俺も同感だ!」

 

二人はヒートアップしたまま会話を続ける。

 

「ならちょうどいいや!ボク、全力で打ち込むから迎撃してもらっていい!?

お父さん、ボクに怪我を負わせないくらいの手加減はできるでしょ!?」

 

「おう、任せとけ!!でも、俺もちょびっと苛ついてるから、打撲くらいは勘弁な!」

 

「了解!大怪我じゃなければそれでいい!なら行くよ!

立花流槍術二ノ型一番『双頭之龍撃』!!」

 

「来い!立花流槍術三ノ型一番『分水嶺』、立花流槍術一ノ型三番『弦月(げんげつ)(じょう)』!」

 

 

光は手数の猛威を振るい、樹はそれを迎え撃つ。

 

樹は両手に持った連結長槍で、別々の技を使う。

左手の連結長槍で光を自身の右側に受け流し、右手の連結長槍を振り抜いて光を短槍ごと弾き飛ばした。

『分水嶺』を調節し光が短槍を二本とも身体の前に持ってくるようにしたため、危険はほとんどなかったはずだ。

 

『弦月・上』は、長槍の軌道で半円を描くようにする技だ。

上弦の月が基になっている。

 

 

「うわあっ!?」

 

樹の結構遠慮のない一撃をもろに受けとめた光は庭を飛んでいき、壁にぶつかる手前で地面に落下する。

短槍を二本とも投げ捨て、見事に受け身を取る。

樹は壁の位置も考えて光を吹き飛ばしていたため、光も安心して吹き飛ばされている。

 

もちろん、光をあしらったのは樹の実力だ。

光は樹をめった打ちにするつもりで攻撃していた。

 

 

「くそう、やっぱり強いねお父さん。まあいいや。今日の稽古、ありがとうございました!」

 

「そりゃあ、まだまだ稽古じゃ光には負けねえよ。はい、ありがとうございました」

 

「うん、頑張ろう。それじゃ、ボクはお風呂入ってくるね」

 

「おう、行ってこい。それにしてもあのじじい……どうしてくれようか」

 

「舞ー!ボクは先にお風呂入ってるねー!」

 

 

稽古をパパッと切り上げ、光は風呂場に走る。

珍しく、樹が調子に乗らずに稽古が終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うあ〜〜、汗をかいた後のお風呂は格別だなぁ〜〜」

 

 

光は風呂場に駆け込み、速攻で汗を流した後で湯船に浸かっていた。

熱すぎない温度がとても気持ちいい。

 

 

「それにしても、昨日は苛ついたなあ……お風呂にゆっくり浸かって、気持ちを切り替えよう」

 

前向きな意見を出し、新たな一日を楽しめるように努力する。

あんな些事で気分を害されるのは面白くない。イライラの時間は、さっきまでで終わりだ。

 

 

 

「ふうぅ〜〜〜〜」

 

「光ー、湯加減どう?」

 

「あ、舞」

 

湯船に浸かってリラックスしていると、舞が入ってきた。

 

「うん、気持ちいいよ」

 

「そ、いつも通りか。ちょっと待っててね」

 

「うん」

 

光の発言の意味を的確に把握し、舞が汗を流すためにシャワーのノズルを捻る。

 

 

「ふんふんふーん♪」

 

鼻歌混じりに身体を洗う舞は、どことなく機嫌がよさそうだ。

光は後で訊く事にして、今は可愛い歌声に集中することにした。

 

 

 

「おまたせー」

 

「ううん、大丈夫だよ」

 

舞が身体を洗い終わり、湯船に入ってくる。

華奢な体躯が湯船に浸かりきったところで、光は先ほどの疑問を解消することにした。

 

「今日は稽古で何かあった?気分がよさそうだったけど」

 

「そうなんだ、聞いて聞いて!あのね、今日ね、ママに一撃入れられたの!」

 

「へえ、すごいね」

 

光は驚きを湛えて賞賛した。

縁は光との戦闘との怪我がまだ残っているが、その程度で舞に一撃入れられる程の怪我ではない。

そもそも、縁は傷の手当をすればほぼ普段通りに戦える。

その縁に一撃入れたということは、舞が成長しているということだ。

 

「うん!ママも褒めてくれたし!今日はいい日だなあ〜」

 

全身で喜びを露にする舞を、光は微笑ましい心境で見守る。

そして、思ったことを告げた。

 

「舞もちゃんと成長してて偉いね。胸も少しずつだけど大きくなってるみたいだし」

 

「ホント!?あたしのおっぱい大きくなってる!?」

 

もの凄い食い付きだ。

 

「うん。ちゃんと身体も成長してるってことだね」

 

「そっかぁ。ママもスタイルいいもんね。あたしも将来はあんな風になりたい」

 

光の言い方に嫌らしさは感じられない。というか、感じられたらある意味で困るのだが。

舞は自分の母の身体つきを思い出し、自分もああなりたいと思いを馳せる。

舞の慎ましやかな胸が縁ほどに成長するのかどうかは、神のみぞ知ることである。

 

「そうだね、なれるといいね。さて、ボクはそろそろ上がるけど、舞はどうする?」

 

「うん、あたしも上がる。一緒に行こ」

 

「わかった」

 

光と舞は風呂場から出て、新しい服に着替える。

ドライヤーを使って髪を乾かすことも忘れない。

 

 

光はいつの間にか、昨夜のことを一切気にしなくなっていた。

光にとって舞は、癒しの女神でもあるようだ。

 

 

 

 

 

 

朝食を終えた直後、樹が全員に声をかけた。

 

「今日、皆の検査をしに行こうと思う。大して上がってないと思うが、念のためにな。夏世ちゃんも入ったことだし。

あとついでに、光の武器の依頼に司馬重工にも行こうと思ってる。誰か予定ある人はいるか?」

 

樹の質問に、誰も声を上げない。予定が入ってる者はいないようだ。

とはいえ、そこまで急を要するわけではないのでぶっちゃけどちらでもいいのだが。

 

「室戸先生かー。僕、あの人苦手なんだよね」

 

光が、誰ともなく言った。

光のことをよく知っている面々は苦笑いを浮かべるだけだが、夏世が反応した。

 

「光君、苦手な人っているんだ?」

 

「夏世ちゃん、僕のこと何だと思ってるの?苦手な人も、嫌いな人もいるよ」

 

「まあ、そのイメージもわからなくはないけどね。センセーの光への反応を見ちゃったら、そんなこと言えないよ」

 

光は夏世に苦笑を返し、舞もそれに賛同する。

夏世は、これから会う人間に対する不穏な評価を聞き、少々不安になった。

 

「……その、室戸先生でしたっけ?どんな人なんです?」

 

「変人。変態。あたしたちに対しては、光にだけ変態レベルが上がる」

 

「僕としては全く歓迎できないことなんだけどね」

 

「でも、そのおかげであたしたちへの被害はゼロ」

 

端的に述べられた評価を聞き戦慄するが、最後の舞の言葉を聞いて安堵する。

光の顔の苦みの割合が増したのを見て、賢い彼女がそれを表情に出すことはなかったが。

 

「……そうなんですか。ちょっとだけ、覚悟しておきます」

 

「僕が被害者だってことを理解してくれてれば、何でもいいよ」

 

光がとても疲れた表情で言ったのを見て、夏世は本格的に不安になった。

 

「未織ちゃんにアポ取ってから、時間を合わせて行くぞ。司馬重工が先になるか検査が先になるかは、未織ちゃんの予定次第だ」

 

樹が会話を締めくくり、各々が出掛ける準備に向かった。

 

 

 

 

 

「未織ちゃん、夕方には時間取れるみたいだから、先に検査しに行くぞ」

 

「「「はーい」」」

 

樹が運転する車に乗り込み、勾田大学に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

目的地は正確には大学ではなく、大学に隣接している附属病院だ。

 

受付を顔パスで通り抜け、集団で奥に向かう。

人気もなくなってきたところで、床に開いている穴を発見した。

穴の中に据えられた急な階段を降りていくと、見た目はかなり恐ろしい悪魔のバストアップが刻まれた扉が現れた。

――ここが本当の目的地だ。

 

 

「入るぞ」

 

一言だけ断って樹が扉を開けて中に入る。

皆が後に続くが、光は早くも逃げ出したくなった。

 

「こんにちは。っと、どこだ、室戸先生?」

 

「その声は樹さんか!?光君は、光君はいるかね!?」

 

この部屋の主は来訪者を声で瞬時に判断、自らの欲望のために突き進む。

 

「ああ、いるよ」

 

「ひぃやっほおおおううう!!久々の検査かい!?これは楽しみだ!!」

 

奥からいつもの怠そうな感情を全く伺わせない爛々とした表情の女性が出てきた。

伸び放題の黒髪に、床に引き摺るほどの丈の白衣。

肌は青白く、目はギラギラしている(注:最後のは光を相手にする時だけです)。

この人が舞や和の担当医を受け持っている、新人類創造計画の元最高責任者、室戸菫だ。

 

「やあやあよく来たね光君、さあ早速検査をしようか!!」

 

「ちょ、待って!待ってください先生!今日は新しい子もいますから!ちょっと抑えて!!」

 

両手を前に出して光の肩を掴もうと迫ってくる姿は、もはや犯罪者だ。光は全力で菫を抑えて近づけさせない。

幼女に声をかけてよからぬことをしようと考えている男性と似た輝きを目から放っている。正直言ってかなり恐ろしい。

 

いつも見慣れているメンバーは苦笑だったり目をそっと逸らしたりするだけで済んでいるが、夏世は違った。

 

「え……?あ、あの………何ですか、アレ………!?」

 

ドン引きしていた。この場にいる菫以外の全員が、当然だと思った。

 

「ほら、先生!自・己・紹・介!!」

 

「む……仕方ない、今はそうしよう」

 

光が全身全霊をかけて菫を抑えながら、真面目にやれと促す。

菫は渋々ながらもそれに従った。

 

「初めまして、私は室戸菫だ。ガストレア研究者をしている。

医者でもあるから、複数の呪われた子供たちの担当医をしている……と、こんなところでいいかな?」

 

最後の言葉は光に向けられたものだ。菫は光のことを調べたくて(この表現は的確ではないが)堪らないため、ある程度光の言うことは聞く。

まあ、光の方も菫に借りがあるのでお互い様だが。

 

「……まあ、いいでしょう。夏世ちゃんも、自己紹介よろしく」

 

「あ、うん。えっと、私は千寿夏世です。この度、立花縁さんのイニシエーターになりました。これからよろしくお願いします」

 

「ああ、よろしく。ところで樹さん。今日は検査ということでいいのかな?」

 

夏世の自己紹介を聞き終わった菫は、樹に今日の来訪の目的を訊いた。

 

「ああ、そうだな。舞、和ちゃん、夏世ちゃんの浸食率検査と、光の健康診断してくれ」

 

「健康診断?」

 

夏世が疑問の声を上げる。

樹がすぐに答えた。

 

「ついでだけどな。光なら大丈夫だとは思うが、検査しといて損はない」

 

「皆と来たときは毎回やってるんだ。恒例行事みたいなものかな」

 

「へえ……」

 

夏世が納得の声を上げたところで、菫が動いた。

 

「なら、子供たちは全員検査ということだね?君はどうする?」

 

菫の視線が捉えたのは、一緒に付いてきていた華奈だ。

華奈は即座に首を横に振った。

 

「いえ、遠慮しておきます!」

 

ちょっと声が震えているような気もする。

 

「そうか?わかった。なら、三人は検査室に向かっていてくれるか?

夏世ちゃんは、二人に付いて行けば問題ないだろう。光君の検査はすぐに終わるからな。ここで終わらせる」

 

菫は矢継ぎ早に指示を飛ばすと、光の腕を引いて別室に連れ込む。

 

「はいはい。お手柔らかにお願いしますね」

 

光はすでに諦観の境地にいる。

 

 

夏世が舞と和に手を引かれて部屋から出る寸前、こんな会話が聞こえてきた。

 

『ふふふ……どうにかしてその澄ました表情を苦痛に歪ませたくなるよ……』

 

『わかってると思いますけど、家族に手を出したら承知しませんよ?』

 

『わかっているさ……だが、いつか君の顔が恥辱に塗れているのを見てみたいね』

 

『そうですかよかったですねーうわーすごいすごい』

 

『………光君、私の話を聞く気がないだろう?』

 

『何の話ですかね?』

 

………何があったのかは訊かないようにしよう。

そう強く誓った夏世だった。

 

 

 

 

 

検査が終わり。

 

「樹さん、これが検査結果だ。目を通しておいてくれ。いつも通り、結果は全員に伝えてある」

 

「了解した。いつも助かっているよ、先生」

 

「これくらい構わないさ。それに何より、光君に色々できるからねえ……」

 

「…………光、こればっかりは本当にすまん」

 

「ああ、お父さんのせいじゃないから。気にしないで。室戸先生が変態なのがいけないんだよ」

 

光は冷めた表情で菫をバッサリ斬り捨てるが、菫は意に介した様子もない。

 

光はため息を吐いて、舞たちの結果を聞くことにした。

 

「はぁ……。皆、結果はどうだった?」

 

「あたしは二十二・四%だったよ!」

 

「ふみゅ。和は二十五・二%」

 

「私は三十・一%だった。……やっぱりちょっと高めだね」

 

舞と和はそこまで変化がなかったため表情は明るいが、夏世の表情が少々暗い。

二人よりも数値が高かったことを気にしているのだろう。

 

「そっか。ま、それぐらいならどうってことないって。これから力の使用を抑えていくようにしよう」

 

「……うん、そうだね」

 

光の言葉で、夏世の表情に笑顔が戻る。

それを見て光も微笑むと、樹に話しかけた。

 

「それで、お父さん。僕はどうだった?検査の結果聞いてないんだよね」

 

「ああ、至って健康だったぞ。マイナス四九だ」

 

「そっか、よかった」

 

光が頷いて、早速帰りたいオーラを発し始める。

和は嬉しそうに華奈に報告に行っている。

夏世も縁に報告しているようだ。

舞はニコニコ顔で光の腕に引っ付いている。

 

「さあ、お父さん。早く帰ろう」

 

「まあまあ光君、そんなに急ぐ必要はないんじゃないかな。もう少しゆっくりしていきたまえよ」

 

「いえ、この後も用事があるので、これで失礼します。ほら皆、行くよ!」

 

菫の誘いをすげなく断り(当然かもしれないが)、光がさっさと部屋から出て行く。

この場にいる全員が光の心境を察して尊重し、早々に退散する。

人が急に減った部屋では、菫が項垂れてシクシク泣いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は打って変わって司馬重工本社ビル。

 

「皆さん、ようこそ。ほんで、今日はどんなご用件で?」

 

お互いに挨拶を済ませた後、未織がすぐさま切り出した。

 

「あ、今日は僕から武器の依頼です。長槍作ってもらえます?折れちゃって」

 

「………ん?長槍?光ちゃんがいっつも使っとる、あの長槍?」

 

「そう。あの長槍」

 

…………………。

 

一瞬の静寂の後。

 

「……ハアアァァァアア!?折れた!?あれが!?なして!?簡単に折れる様なもんやないで!?

事実今まで一度も変えずに使ってこれたやないの!?」

 

「いや、そうなんですけど……お母さんに折られちゃって」

 

光が申し訳なさそうに言うが、今の未織には届かない。

 

「しかも故意かいな!!縁さん、なにしとん!?

何がどうなったら、あれが折れる様な状況になるんや!?」

 

「えっと……決闘での回し蹴り?」

 

光は真面目にその時の状況を答えた。

 

「いやそーゆーことやなくて!実際の状況とかどーでもええから!

うわああああぁぁ、あれ作んの結構大変やったのに〜〜!!」

 

嘆き悲しむ未織に、光は何も言えない。

長槍が折れた責任の半分は、光にあるからだ。

 

 

そんな未織を強引に立て直したのは、華奈だった。

未織の頭にチョップをかまし、無理矢理自分の方を向かせる。

 

「ほら未織、起きなさいよ。アンタは天下の司馬重工の社長令嬢でしょ?しっかりしなさい」

 

「んなことゆうても華奈ぁ〜。あれはホンマにキツかったんやて〜」

 

「泣き言言わない。他にも依頼はあるんだから、シャキッとする!」

 

未織の腕を引いて立ち上がらせ、背中を強めに叩く。

 

こんな気安いやり取りを行える理由は、華奈の学校での役職にある。

勾田高校生徒会長は、司馬未織。その補佐をする副会長の一人が、吉井華奈だ。

ダメな子のイメージがあったかもしれないが、華奈は意外と人望があるのだ。

 

「痛ったぁ……。ホンマ馬鹿力やな、華奈は」

 

「んなっ、失礼ね!」

 

「お互い様や。そんで?あと依頼ある人って、誰なん?」

 

「は〜い、私」

 

「……縁さんですか。どんな依頼で?」

 

「刀を作ってほしいのよ」

 

「刀、ですか」

 

「そう、刀。動きの阻害にならないような軽いものを三本ほど。できるかしら?」

 

ぶっちゃけかなりの無理難題である。

 

「中々難しいこと要求してきはりますね……」

 

「あら?未織ちゃんには無理だったかしら?そうね、ごめんなさい。

いくら天下の司馬重工でも、無理なお願いだったわよね。本当にごめんなさいね。忘れてちょうだい?」

 

言葉だけ見れば素直に引き下がる聞き分けのいい人かもしれないが……縁は大いに煽っている。

未織は無理難題を吹っかけても、煽れば意外と何とかする。

今回も、それを狙ってのことだった。

 

「……縁さん、おもろいこと言いはりますなぁ……。

ええ、できますとも。やったりますとも。ちょっとお時間頂きますが、よろしいですか?」

 

「ええ、それで十分よ。あ、光のもお願いね?」

 

「わかってますって。ちゃんとやるんでご心配なく。今日の依頼は以上ですか?」

 

未織は全員の顔を見渡すが、誰からも反応はない。

 

「了解しました。ほな、早速取りかかりますんで。今日はこれで」

 

「おう、頼んだぜ未織ちゃん。できたら連絡してくれ。引き取りに来る」

 

「はい、わかりました。ほな華奈、また学校でな」

 

「うん、またね。光君と副社長の武器、期待してるからね?」

 

「任しとき」

 

こうして、光たちは司馬重工を後にした。

ちなみに最後、華奈はさらっと未織を煽っている。

華奈は無意識だったかもしれないが、未織は確かに反応していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

家に戻る車の中で。

 

 

「うふふ、未織ちゃんは誘導しやすかったわ〜」

 

「いや、意図的に挑発するのはちょっと……」

 

光が嗜めるが、それを聞く人間はここにはいない。

 

「何言ってるの、光君。未織を相手にするなら煽るのが基本じゃない」

 

「いや、さらっとそんなこと言われても困るんだけど……。

って言うか、学校でもいつもそんな感じなの?」

 

「ええ、そうよ?」

 

「………未織さん、あれで結構苦労してるんだろうな……」

 

光は窓から外の景色を眺め、ため息とともに呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三日後。

 

 

未織は武器を完成させた。

縁もこれなら満足できると言い、光も馴染みの感覚を覚えた。

 

未織がドヤ顔をしていたのは言うまでもない。




菫がぶっ壊れました。

未織の喋り方ホント難しい。
変だったらごめんなさい。

感想等ありましたら、どんどんお願いします。

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