イカレタ男は愛を知らない   作:Yuusha S

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蟷螂の斧(無謀な勝負)

巨大蜘蛛がこちらを見た。

その瞬間、頭が真っ白になった。

 

「ひひ」

 

でも俺は不思議と笑ってる。

死を目の前にしたせいなのだろうか

俺の体は震えもしないし

すごく冷静だ。

 

さて冷静な頭で1秒で決めよう、それ以上の時間は死しかないだろう

偏差値40点の頭で必死に考えた。

結果、俺は1秒で3つの選択肢を絞り出すことができた。

 

① 全力で逃走

 

② 立ち向かう

 

③ 隠れる

 

頭の悪い俺には上々の考えの方だと思う。

可能性としては

まず、① 

当然、相手の方が俺の移動速度より速いだろう、だが障害物を盾にしながら逃げれば、可能性は0じゃないかも?

 

次に、②

いや無理、不可能、可能性無い、なんで俺はこんなのを選択肢に選んだんだろう謎だ。

 

次に、③

気づかれた状態で隠れるのは不可能に近い、それにここらへんは、ビルばかりの地形だ隠れている場所の近くを荒らされたりしたら俺はビルの瓦礫に押しつぶされて即死だろう

 

①と③、これのどちらかしかない…

 

 

俺は①にした…

 

 

 

既に巨大蜘蛛はかなりのスピードでこちらに向かって来ていた。

俺は追いつかれるより前にすぐコンビニを出て

ビルとビルの間の細道に全力で逃げ込んだ。

これで少し巨大蜘蛛と俺の距離は開いただろう

このまま細道を抜けて、回り込まれるより前に新たな細道へ入れば、また距離を離せるはずだ!

俺はそう思いながら細道を抜けた瞬間

 

視界を遮られた。

降ってきた物によって

形は蜘蛛…

 

「なんで!チッ!!!なんでだ!」

 

予想と違う!

てっきり回り込んでくるか

ペタペタとビルを上がって来るかと思った!

 

そんな、まさか…冗談だろ!

 

「飛び越えたとかじゃ無いだろうな!」

 

いや、それしかないだろう、それ以外ありえない

ビルはおおよそ50、60mぐらいあったはずだ。

それを飛び越えるってことは

俺の予想の5倍以上身軽ってことか…

 

こんなことなら③の選択肢にすればよかった。

そしたらまだ希望はあったかもしれない

逃げ切るなんて考え方が甘かった…

これで逃げ切る可能性は0、不可能だ…

 

俺は………自分の運命を決める選択肢を間違えた。

 

もう生き残れる可能性など微塵も無い、俺の未来は①を選択した時点で終わってたのか………

 

 

 

 

 

 

 

 

はぁ~~~…

 

も…いぃ

もういい!

もういい!!

もういい!!!

 

「もういい!!!」

 

「知るか!」

 

「何が選択肢だ!」

 

「こんなん有っても無くても死んでんだろぉーが!」

 

「なに未来に希望、持ってんだ!」

 

「希望なんて持てるような人間じゃ、ねぇーだろ俺は!」

 

「俺はただ!」

 

「死に物狂いで!」

 

「血反吐、吐いて!」

 

「生に縋るだけだろ!」

 

もう選択肢なんていらん

立ち向かってやる

生きて、あの野郎(中年の男)を見下してやる!

 

 

 

叫び終わった直後、奴はこっちに飛びかかってきた。

相変わらずの巨体である、近くで見るとより大きく強く見えた。

足がすくむ、腰を引きそうになる

ここにきて初めてこの巨大蜘蛛に恐怖した。

これが捕食される側の、恐怖なのだろうか

それでもまだ、俺の底の方までは、怯えてない

 

俺はとっさの判断で、なるべく距離が出るように力の限り前へ前転した。

勢い余って2回転してしまったがギリギリやつの腹を潜ることに成功した。

あまりの恐怖に心臓はバクバク振動している

 

すぐに立ち上がり全力で前へ前へ走る。

後ろを振り向くと…

奴はまるで標準を合わせるようにこちらを向いて口を開けていた。

走りながら背中に悪寒が走る

おそらく奴は狙いを定めて口から何かを射出しようとしている。

射出されてから動いては、間に合わない、その前に行動しなければ

やつの様子を走りながら観察すると

巨大蜘蛛の膨らんだ腹が少し脈打つ様に動いているのに気づいた。

急いで方向を横へ変えて当たらないよう祈りながら全力で走る

俺が方向を変えてすぐ口から白い液体を射出した。

 

(間に合うか!)

 

 

 

だが

俺は少し気がつくのが遅かった。

 

俺の左足に巨大蜘蛛が口から吐き出した白い液体が付着した。

俺がいくら足を動かそうとしても地面にくっついてびくともしない

最悪である

 

「嘘だろ!!!」

 

そこら辺にいる蜘蛛の糸の比じゃない

まるでコンクリートで足を固定された気分である

 

 

 

万事休す

 

 

 

これを解く手などあるはずがない

焦り必死で蜘蛛の糸を引き剥がそうとする俺に巨大蜘蛛は飛びかかってきた。

 

いや…万事休すじゃない

 

まだ、ある

 

まだ…

 

 

 

 

巨大蜘蛛の口が俺に迫る

直ぐに俺は、固定されている左足の方向へなるべく体を寄せる

そして、俺の体を喰らいに来る巨大蜘蛛の口が間近に迫った時

右へ飛んだ。

 

 

 

俺の作戦はこうである

巨大蜘蛛が飛びかかって俺を喰らおうとするのを利用して喰われる寸前まで近づかせて巨大蜘蛛の口を右に躱し、勢いの付いた巨大蜘蛛の体を、俺の体に体当りさせて

俺の吹き飛ばされる勢いで左足の蜘蛛の糸を引き剥がすというものだった。

 

だが、現実は違う、そんなのうまく行くわけがない

 

「っがぁぁぁかっああああああああぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああ」

 

当然…喰われる


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