イカレタ男は愛を知らない   作:Yuusha S

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つけ

神の空間にて…

 

色も物も何のない場所に目が死んでひん曲がっている少年がぽつんと一人立っていた。

(ここは何処だ、真っ白だ)

(いつ俺はこの場所に来た?俺以外何もない、何処だここ)

(俺は確か深夜ゲームしてる途中に気絶したんだ、その後何があったんだ)

(まさか…)

(誘拐されたのか!)

(誰に?俺はこの人生、動物か死者にしか恨みや喧嘩を売ってないはずだ。)

(じゃあ誰に)

 

 

 

 

「誰に?とぼけんじゃねえよ、俺にだよ、お前が俺の墓にションベンかけたの忘れたか」

俺の後ろから声が聞こえた。

振り返るとそこには、漫画のように顔を真っ赤に染めた中年の男性がいた。

何やら怒っているうだ。

「申し訳ありません、どちら様でしょうか、人違いではございませんか?」

これ以上怒らせないために腰を低くして対応する。

「はぁ!何言ってんだお前は!とぼけてんじゃねえよ!!」

中年の男性はそう言いながら近づいて俺の胸ぐらを掴み上げ、腕を最大まで引き、俺の右頬を殴った。

「ごぅお!」

口と歯に激痛が走る。どうやら今ので犬歯が折れたようだ。ジンジンするだけで思ったより痛くない

「わからねんだったら教えてやるよ…

 

 

お前は!お前は!!お前は!!!俺の墓にションベンをかけて、その上、唾を吐き捨てやがった。場所は香川県の高松市…思い出したろ!」

 

 

 

何言ってるんだコイツ…頭大丈夫か?

 

 

いや、あったな

確かにしたことがある

 

今年の10月に…ダメなこととはわかっていたが、俺はどうしても幽霊は本当にいるのかどうか知りたくて好奇心で墓にションベンをかけたことがあった。

 

そんなことを考え黙っていると

「おい!なんか言ったらどうだ!」

黙っているのが気に食わなかったのか

こんどは左の頬を殴ってきた。胸ぐらを掴まれているので、手で防御できない

「ガァ!」

運がいい、今度は歯が折れなかった。最近運がいいな

 

この程度の痛み、まだ耐えれる。

でもこれ以上はやばい、いつもの癖が出ないことを祈る、自分が怒り狂わないことを祈る

「申し訳ありません、申し訳ありません、申し訳ありません、お許し下さい」

必死さを最大限に表現しながら許しを請う

 

 

でも俺は謝りながらこんなことを思っていた

 

(たまんねぇなホント、清々しい、気持ちいい、この絶望感がたまらない)    

 

 

 

「なんで!なんで!!お前、笑ってんだよ、イカレてんじゃねえか?、気色悪い」

 

まただ…まただ…どうしてだ、どうして俺は殴られて笑ってんだ………Mじゃないと思うんだが

 

俺は昔からあまりに辛い出来事にあうと微笑を浮かべる癖があった。どうしても口の端が釣り上がるのだ。何故だろう16歳になってもわからない

 

 

 

「そうだ、良いこと思いついた。このまま殺すのは、つまんねぇ」

「お前にイカレタ奴にぴったりな世界があるんだ、ちょうどそこに一つだけ空きがあってな?どうだ喜べ!」

「俺が転生させてやるよ絶望しかない世界に、お前みたいなやつにはぴったりな、ドブのような世界だ」

「そこでもお前は笑っていられるか?せいぜい泣き喚いて俺の許しても請いてろ」

そこで俺は殴られたわけでもないのに気絶した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目を覚ますと灰色の空が見えた。アスファルトの上で寝ていたのか体中が少し痛い、起き上がり辺りを見回す。

 

「今度はなんだ…」

 

そこは日本の様なところだった。目を横に向けると、建物にかすれた字で日本語が書いてあったから、直ぐに分かった。

 

 

 

だが…街はまるで大震災の次の日のような有様である。店のほとんどが半壊していて、まともに営業いる店なんて無いだろう。誰も住んでないのは一目瞭然、一体何があったんだ

俺はここは日本じゃない、すぐにそう思いたかった。俺の生きている世界は、もっと綺麗で美しいはずなのに、こんなのは夢だと思った。こういうことを現実逃避というのだろう

でも、そんな俺に埃っぽい風が頬を撫でて鼻についた。

そのせいで現実だと実感した。くやしいが認めざる負えない…現実に。

 

 

でも大丈夫だ、心配ない、ここは日本なんだから

とりあえず、とっとと人でも見つけて、ここの場所聞いて電車に乗って、家まで帰ればいい、金はATMへ行けば引き出せる。何の問題もない

 

そうして俺は人を探すために歩き出した。

俺はこの時まだ気付いていなかった。そこらじゅうに転がっている人であった物…白骨死体に

そして、この世界がブラック・ブレットの世界で

その上ガストレアがウヨウヨいる場所であることに

俺はそのことを数時間後に死ぬほど後悔することになる。

 

俺は中年の男が言っていた絶望しかない世界、の現状を知ることとなった。




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