シノンと共にガンゲイル・オンライン   作:ヴィヴィオ

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30話のシリカの部分ですが、時系列に問題があるとの感想を頂きましたので、修正させて頂きました。
SAOクリア時による死亡ではなく、クリア後に不法侵入してきた男達から逃げる為にアミュスフィアをかぶった状態のままパニックで窓を突き破って落下し、崖下に転落して死亡からの再生した事にしました。
なので、クリア後、少ししてからの事件となります。ご迷惑をお掛けして申し訳ございません。


第33話

 

 

 研究所にある実験室。そこれで俺はシリカと対峙する。やる事は簡単だ。全力のシリカと戦って勝利する。ただし、相手は人の領域に存在しない。だが、勝つしかない。この戦いによってシリカは俺が自分が何をしても殺せず壊せないという事を知る事になる。そうすれば彼女も安心できるだろう。まあ、問題があるとすれば()()事なのだろう。

 

『さて、両者準備はいいかな?』

「こっちはいい」

「“大丈夫”」

『というか、和人は素手だけどいいの? 刀か剣を使わないで』

「シリカを傷つける訳にはいかないだろ」

『馬鹿でしょ』

『うむ、馬鹿だな』

『死んでも知らないから』

「っ⁉」

「問題ない。死ぬつもりもないし」

 

 ゆっくりとシリカを見詰める。彼女もこちらを見詰めてくる。

 

『精々死なないように頑張ってよね。始め』

 

 リタの言葉と同時にシリカが駆ける。その速さは凄まじく、一瞬で接近されてしまう。そこから小さな拳を突き出してくる。俺は首を傾げて避ける。突風が吹き抜けた後には頬にうっすらと線が出来て傷ができる。シリカは一旦下がって、スケッチブックを構える。

 

「“止めよ? 無理です”」

「……面白い」

 

 ポケットから紐を取り出して、髪の毛を後ろで纏めてくくる。そして、意識のスイッチを切り変える為に、拳銃をイメージして自らに叩き込む。意識を切り変えれば、やる事は単純だ。銃弾を避けるのと同じだ。ただ、避けるのに合わせて反撃するだけ。ならば簡単だ。シリカに手で来い来いと伝える。

 

「っ⁉」

 

 シリカはスケッチブックを捨てて、駆けて来る。今度はちゃんと直撃コースだ。だが、俺はしゃがみながら彼女の突き出される手を掴んで、勢いを利用して投げる。そのまま地面に叩き付けるのではなく、途中で手を離して殴りつける。シリカは両手をクロスさせてガードしてくる。しかし、殴ると同時に身体を回転させて回し蹴りを叩き込む。空中に居たシリカは吹き飛んでいく。壁に激突する直前に方向転換をして、壁を蹴ってこちらに突っ込んで来る。

 

「ただ速いだけだ」

 

 身体を傾けて移動し、シリカが元の場所を通り抜ける直前に肘と膝で挟み込む。位置をわざとずらして、回転させて地面に倒す。そのまま、足で手首を踏みつけて首に拳を叩き込む直前で止める。

 

「っ⁉ !???!」

 

 混乱しながら、暴れるシリカの頭を両手で挟んで、微かな隙間で左右に揺さぶって脳震盪を起こさせる。

 

『そこまで』

『これはないわね。もう人じゃないわ』

『人外同士だねえ』

「失礼だな」

 

 シリカが蹴ったりした場所は陥没している。強化壁を見なかった事にして、シリカを膝枕にして寝かせておく。

 

『いや、彼女の速度は381m/sまで出ていたのだが……』

「そんなもの、9mパラベラムと同じじゃないか。どうとでも対応できるさ」

『無理無理っ! アンタがおかしいだけよ!』

『うむ。人類には対応できない速度だ』

「そうか? 詩乃は対応しているし、闇風さんも……」

『闇風とやらはアバターだろう。朝田君は……どうなんだ?』

『ひょっとして、この馬鹿に犯されてるから? 色んな意味で』

『興味深い。少し調べさせてくれないかな?』

「却下。大切な詩乃をお前達のようなマッドに渡せる訳ないだろ」

『『ちっ』』

 

 舌打ちしやがった。何をする気だ。

 

『彼女なら、和人君からのお願いや命令だったら素直になんでもさせてくれただろうに、非情に残念だ』

「ちょっとOHANASHIしようか」

『ん? 何かニュアンスが変なのだが……』

『私は関係ないからね! じゃあねっ!』

『待ちたまえ!』

「んっ、んんっ」

 

 そんな事をしていると、シリカは目覚めたようで起き上がってきた。それから、すぐに抱き着いてきた。

 

『ちなみに、素朴な疑問なのだが……和人君が剣や刀を持っていたら、どうなってたね?』

「誰に物を言っている。そんなもの、最初の一撃で切断している」

「ひっ⁉」

 

 がくがくと震えるシリカを抱きしめて、あやしてやる。

 

『うん、人じゃないね』

「というか、シリカぐらいなら直葉でも勝てるだろう」

『待ちたまえ。君の妹も勝てるのか!』

「シリカは技術がろくにできていないからな。その分、予測も誘導も容易い。ならば、後は相手の力も利用して切断するのみ」

『君の家系は何処かの戦闘民族かね』

「否定はしない」

『まあ、これでシリカ君は安心できただろう。なにがあっても、彼が止めてくれるさ』

 

 こくこくと頷くシリカ。これで安心できるならそれはそれでいいだろう。

 

「ところで、ユウキは?」

『彼女なら服を買いにお使いに行って貰ったよ。もしもの場合、困る事になるからね』

 

 確かにそっちの方がいいだろう。

 

『では、こちらに戻ってきたまえ』

「わかった。行こうか」

「にゃぁ」

 

 猫語で返事したシリカを連れてドクターの下へと向かう。不覚にも萌えてしまったが、ばれないように手を引いていく。

 

 

 

 

 ドクターの下へと到着し、そこからシリカにチョーカー、アンクレット、ブレスレットをつけて、色々と試して貰う。

 

「これで問題ないはずだ。試してみたまえ」

 

 こくりと頷いたシリカは何を思ったのか壁を思いっきり殴りつけた。

 

「っ⁉ っ~~~~~~~」

 

 そして、痛がってしゃがみこんで、涙目で手をふーふーしていた。ちょっと可愛い。

 

「うむ。痛覚もちゃんと感じられるようになったな」

「感じなかったの?」

「うむ。基本的にアバターの痛覚はカットするか、鈍感にさせるからな。彼女も同じだ。だが、それでは力のコントロールなど覚えないのも納得できる。人は痛みを感じる事で理解し、繰り返さないようにするからな」

「痛い目にあったら覚えるって奴か」

「うむ」

「じゃあ、ドクターも痛い目をみないとな」

「なっ、何を……」

「ちょっと技の練習台になってくれ。大丈夫、刀語の技だから」

「それ、やばい奴だろっ!」

 

 そんな事をしていると、扉が開いてリタとユウキが入ってきた。

 

「ただいま~って、泣いているシリカにドクターを詰問している和人。うん……」

 

 ユウキは周りを見たわした後、何故か有った刀を掴んで引き抜いた。そして、それを持ってドクターへと近付く。

 

「待ちたまえっ、それは真剣だぞ!」

「五月蠅いっ、どうせお前がシリカに酷い事をしたんだろ!」

 

 振り下ろされる刀を避けるドクター。しかし、そこには高い機材があった。

 

「ぬぉおおおおおぉぉっ!?」

 

 真剣でたたかれた機械は切断されなかったが、壊れた。

 

「なにやってんのよ」

「うん、それはだな……いや、取り敢えずユウキは落ち着こう。大丈夫だから」

「そうなの?」

 

 あっさり俺のいう事を聞いたユウキは刀を仕舞う。流石は救世主様と言っていただけはある。ちゃんという事を聞いてくれる。

 

「これ、確か890万だっけ。修理費はドクターの研究費からね」

「まっ、待つんだ!」

「却下。それで、何を買って来たんだ?」

「猫耳のカチューシャっ!」

「……」

「アタシが頼んだのよ。これは外装」

 

 そういってヘッドフォンみたいな機械にとりつけていくリタ。

 

「なにそれ?」

「何って猫耳ヘッドフォン?」

「そうね。もっとも、チョーカーとリンクして喋ろうとした言葉を解析して、チョーカーに送って発生してくれるわ」

「つまり、ちゃんと喋れる?」

「ええ。むしろ、その為に開発した物だから」

「販売用をちょっと応用しただけさ。これは売れるよ」

「ちゃんとした物を作れよ……」

「作ってるじゃないか」

「そうよ。兵器とかいってるけど、それだって流用できるのよ? ドクターが馬鹿みたいに作ってるロボットとか、義手とかに使えるし」

「ロボット?」

「喋るならなんでもいいよ。セットすればいいの?」

「ちょっと設定しないと駄目よ。直ぐにやるわ」

「お願いっ!」

 

 リタが調整していく。直ぐに終わって、猫耳のヘッドフォンをつけた。

 

「ふむ。ALOと同じ耳か」

「当然よ。後は服装ね」

「ケットシーか」

「どうせならね」

「ほら、喋ってみなさい」

 

 こくんと頷いたシリカが声を発する。

 

「ユウキさん、和人さん」

 

 遅れてシリカの声が発せられる。

 

「やったぁ~~!」

 

 ユウキが感極まったようでシリカに抱き着いて頬ずりしていく。シリカは大人しくされるがままだ。

 

「後はカウンセリングを受けつつ、このまま経過を見るべきだろう」

「ありがとう」

「うむ。感謝したまえ。ところで、代金だがね」

「ああ、払うよ。いくら?」

「何、たったの一億六千万円だ」

「まじ?」

「まじだ。診察代や使用した特殊技術のオンパレードだからね。ましてや私とリタ君の時給も換算すればそれぐらいになる」

 

 リタとドクターは俺よりも桁違いに稼いでいるからな。まあ、稼いでもどんどん使っているのだが。

 

「社員割引で」

「五千三百万円だね。素材費だけにするなら八百万くらいだが」

「五千三百万でいいよ」

「では、そうしよう」

「あの、いいの? そんなに払って貰って」

「別に、いいですよ?」

 

 ユウキとシリカがそんな事を聞いてくれる。

 

「大切な人の為ならそれぐらいおしくないよ」

「和人……」

「和人さん……」

 

 喜んでくれているし、後悔はない。いや、資産運用をしてくれている詩乃がなんていうかだけど……多分、大丈夫だろう。きっと。

 

 詩乃に報告して支払いを終えた後。俺のスケジュールは殺人スケジュールとなった。取材やモデル、俳優業、はたまた歌手デビュー。それらと並行して三人とのローテーションでの仕事後のデート。休日はほぼ消滅した。

 

 

 

 

 

 


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