ヤンデレの友人に監禁されて墜とされた   作:ふぅん

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1日目終了

「ごめんね。ごめんね。でも、私後悔はしてないよ。八重のファーストキスの相手になれて凄い嬉しい。八重はどう?私も初めてだったんだよ?」

 

「(もう嫌……)」

 

 目隠しとボールギャグを着けられて答えることすらできない八重はしくしく泣いたまま体を捩った。

 覆い被さり、彼女の汗と自らの唾液が混ざったうなじの匂いを執拗に嗅ぐあやせの腕が背中を回って脇腹を撫ぜる。

 咽び泣いてキスを拒んだ後から、あやせは宥めすかすかの様にそうしていた。

 うなじにキスマークをつけ、それを舐め、犬のように奉仕することで恋心を伝えるかの如く。

 

 しかし、肌を重ねている八重には絡みつく脚に感じるものからあやせの欲情が分かり、恐怖を感じていた。

 十代の性欲を持った子供がいつその爛れた欲望を剥き出しにされるか分からない。

 その証拠に、体をまさぐる手は無意識に臀部や乳房を触ってはそそくさと誤魔化すことがあった。

 

「(誰か助けて!お母さん!お父さん……!)」

 

「はぁ、はぁ、八重?はぁ、はぁ、どうして震えてるの?私はここにいるよ。愛してる。大丈夫だから、ね?ちゃんと傍にいるよ」

 

 八重の頬にキスの雨が降り注ぐ。

 ちゅ、ちゅ、とリップノイズを立ててバードキスをするあやせは心底心配して必死に安心させようと囁きながら繰り返し唇をつけた。

 視界を塞いでしまったから寂しいに違いない。

 そんな考えに至ったあやせは強く抱き締めて頭を優しく撫でることもした。

 

「私がいるから大丈夫。八重には私がいるから。私がずっと傍にいるよ。ずっと守るからね。愛してるよ、八重」

 

「ぁふぁぇ!ンンっ、ぁぇ!」

 

「なぁに、八重!」

 

「ぷぁ、はぁ、は……もう放して、お願いだから……」

 

 私も愛してる、の一言が聞けると全く疑っていなかったあやせは怯えきった懇願を聞いても理解ができなかった。

 何故愛が伝わらないのか、何故愛してくれないのか。

 そればかり頭の中に回っていた彼女は努力が足りない、もっと愛を伝えないといけないと結論着けた。

 

 ぞっとするほど浮かない表情の彼女は八重の唇を甘噛みし、その柔らかさを堪能してから舌を伸ばす。

 少し乾いてしまった八重の唇をチロチロと舐め、潤いを分け与える。

 体を硬くさせた八重の下唇をリップを塗るように舌を這わせ、何度も何度も行き来させた。

 時折歯列も舐めてみたが、八重はあやせを受け入れない。

 そのことに落胆するも、あやせは気を取り直して上唇にしゃぶりついた。

 こちらは唇の内側でねっとりと舌を当てて味わう。

 

「やえ、おいしいよ」

 

「お願い……やめて……!」

 

「分からず屋!」

 

「んふぅッ!」

 

 噛み付くように唇を重ね吸いついたあやせは故意に大きな音をさせて唇を離した。

 驚き、縮こまった八重は指を入れてこじ開けられた口にギャグボールを噛まされ、荒々しく首に痕をつけるあやせのされるがままだった。

 あまりの恐怖に手錠に繋がれた手を青くなるまで握り込んでしまう。

 

「(やめて、新垣さん!)」

 

「ンゥッ!チュゥッ、ヂュ!はむ……ぢゅる!」

 

 願いは届かず、あやせの狂乱は首を真っ赤にするまで続いた。

 鼻息を荒らげた彼女が落ち着く頃には八重はくたくたになり、時計の針は午後三時を回っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご飯作ってくるね。寂しいと思うけど少しだけ待ってて。愛情一杯込めて作るから」

 

 驚くべきことに、あやせは何時間もただ肌を擦り合わせて過ごした。

 ずっと八重に愛を囁きながら抱き締め、撫で、五感を使って感じ合うだけで半日過ごせてしまう。

 尋常な精神の八重は濃密な“新垣あやせ”だけの時間で既に疲労困憊だ。

 あやせの声が頭の中で延々と反響し、鼻腔にはあやせの香りが染み付き、肌もあやせの肉体の感触がべったり残っている。

 目隠しのせいで五感が過敏になり、見えないが故に脳はあやせの姿を異常に際立たせて再生するのだ。

 良くも悪くも八重の中には新垣あやせしかいなくなっていた。

 

「(やめて、新垣さん……新垣さん……新垣さん……)」

 

「私がいない間、これ聞いてて?八重に聞かせたくて何回も何回も録り直してやっと満足行くのができたの。感想聞かせてね」

 

 返答できない八重にヘッドホンを着けたあやせは最新型の音楽プレーヤーに繋いで何かを流すと、夕食を作りに部屋からでていった。

 残された八重は訳も分からず流れ出したものに耳を傾ける。

 もう耳に染み付いたあやせの声がした。

 

[おはよう、八重。よく眠れた?]

 

「?」

 

[もうっ!お寝坊さんなんだから……フーッ]

 

「ひんぅっ!?」

 

 突然耳に息を吹き掛けられ、ぼんやりしていた八重は霰もない呻きを上げた。

 それは優れた音響機材によって再現されたあやせの吐息だったが、半日開発紛いのことをされた八重には生きた愛撫と同然だった。

 体をくねらせた彼女はくすくすと笑うあやせの声に混乱する。

 あやせの身体の感触がないから音声だと理解できるが、逆にそれしか違いがないとも言えた。

 

 どうやら、音声データは愛し合う新垣あやせと天海八重はずっと同棲しているという体で録音された一人芝居らしい。

 今は目覚めの挨拶代わりに濃厚なキスをするところ。

 くちゅくちゅと舌を絡める擬似音声は、むしろ八重には耳を舐り尽くされたことを思い出させた。

 真っ赤になった彼女は首をいやいやと振るが、どういう訳かヘッドホンはズレすらしない。

 

[まだ欲しいの?仕方ないなぁ……あーむ]

 

「ぉっいぃ!ぃーぁっ!」

 

 あやせという直接的な恐怖がない分、八重は受け入れている自分を強要してくる音声データの方が羞恥を感じた。

 どういう心境で録音したか想像もつかないが、ヘッドホンから聞こえるあやせの声音は八重の大好きな友人のあやせのものなのだ。

 怖いあやせではなく、優しいあやせに口説かれてしまうと、八重も弱った。

 三十分もすると、八重は音声に助けを求めて涙を流していた。

 

 いつものように“あーん”をするあやせと朝食を食べ、デートのプランを練りながらいちゃいちゃとし、一緒に昼食を作り、と擬似生活を刷り込む音声データは続いた。

 内容は、もしもあやせと生活したならば、というifが凄まじく精緻に考えられている。

 それが八重には堪らなく恐ろしかった。

 

[八重、何?そろそろご飯だよ]

「今日も世界一の愛情込めたんだから。味わって食べてね」

 

「んぅ?」

 

 ぼんやりしていた八重は少し声が変わったことに首を傾げたが、それより優しいあやせの声が聞きたかった。

 

「っしょと」

 

 ギャグボールが外され、オムライスの優しい匂いがした瞬間、八重は現実に帰ってきた。

 怖いあやせがいる、と分かって条件反射で涙が出そうになるのを堪え、彼女は歯を食い縛って未知の恐怖に備える。

 

「八重、ご飯だよ。オムライス」

 

 あやせが近付けたのか、ふわりとバターと卵の香りを嗅いだ八重のお腹がきゅるきゅると鳴った。

 可愛らしい音に破顔したあやせはなだらかなお腹を撫でる。

 ピクピクと震えるお腹を円を描いて撫で回し、最後にちょこんと窪んだ臍をつついた彼女はスプーンを手にした。

 

「あーん」

 

「……………………ぁー」

 

「(信じてくれた!ああ、小鳥みたいで可愛い……)」

 

 唇より先は許さないと決めていた八重は大分迷った後、おずおずと口を開けた。

 すると、慣れた手付きでオムライスを乗せたスプーンを差し込んだあやせは顔を綻ばせる。

 優しい八重は最後には必ず信じてくれると確信したからだ。

 

「美味しい?」

 

「…………うん」

 

「どのくらい?」

 

「どのくらいって……凄く美味しいよ」

 

「愛情込めたもん」

 

 憮然としている八重にまたオムライスを運んだあやせははたと気付いて目隠しを解いた。

 急に光を取り戻して目が眩んだ八重は固く瞼を閉じて慣れる時を待った。

 

「っ……?……」

 

「どう?勇気出してやってみたんだけど、八重はこういうの好き?」

 

 ゆっくりと広げた視界に入り込んだあやせの恰好を見た八重は表情を驚きに染めた。

 胸はハート型でピンク一色のエプロンをしたあやせは完全に裸で、俗に言う裸エプロンを見せびらかしている。

 くるくる回った拍子に形のいい桃尻や乙女の園をバッチリ見てしまった八重は恥ずかしさのあまり顔を逸らした。

 モデルをしているだけあってあやせの身体は完璧なプロポーションに仕上がっている。

 劣等感を覚えるほどの体を惜しみなく見せつけられ、同性の八重も思わず見惚れてしまった。

 

「こんな恰好するの八重の前だけなんだからね」

 

「……私にもやめた方がいいよ」

 

「ううん。八重にだったらいつでもしてあげる。だから、もっとじっくり、全部見て。よく見えるようにしたの」

 

 これ見よがしに揺らされるエプロンの奥に、シミ一つ無い花園がチラついて八重の目を奪った。

 羞恥で泣きそうな彼女の視線を釘付けにするあやせは精神的なエクスタシーから熱い吐息を零して身体をわななかせる。

 ジュンと蜜を溢れさせた彼女は胸一杯に広がる満足感を笑顔で表わして椅子に腰を下ろした。

 

「はい、あーん」

 

「あ、あーん」

 

 せめて冷めない内にと食事を再開したあやせは、八重が咀嚼している間ずっと彼女の身体を見ていた。

 モデルを職業にしている故の作り込まれた“商品”とは違う、少女の身体。

 削りきっていない肉感的な体に引き込まれていたあやせが生唾を飲み下す音がいやに大きかった。

 獸欲でギラギラ光る視線を向けられた八重は信じ難いという思いに恐怖や蔑みが混じった感情を顔に出して身を捩る。

 拘束されて隠すこともできず肢体を揺らす八重の辛辣な顔を見て、頭が煮立ったように興奮し始めたことを件名に隠したあやせは再びスプーンを差し出す。

 

「はい、食べて?」

 

「……ねぇ、もうやめよう?今ならまだ気にしないから、いつものあやせに戻ろ?私が好きなら幾らでもお話聞くし、デートにだって付き合う。だから、こんなことはもう……」

 

「……………………」

 

「新垣さん?」

 

「八重の分からず屋ッ!!八重には私が必要なの!どうして分からないの!?どうしてどうしてどうしてぇっ!!私より八重を見て!感じて!考えて!愛してる人なんかいない!御両親にだって負けないッ!!私しかいないのに!」

 

「あ、あ……」

 

「はぁ、はぁ……ダメなんだ……今じゃないとダメなんだね……本当は一週間で帰してあげるつもりだったけど……

 

 もう帰してあげない

 

 私と一緒になるまで逃がさないから」


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