庄司
今回のプロアマの全国大会は院生も参加する事が決められて俺も参加した。その一回戦の相手が可愛い車椅子の女の子だった。手付きも碁になれていないみたいで、石をことことと置いていく。これは楽勝かと思った。でも、手が進むうちに全然違うと思った。俺が打つ手打つ手対応されていく。何なんだよ、こいつ!
最初は最後まで全力で行こうと思いましたが、ヒカルとの約束があったので序盤で相手の力を測って数手目から指導碁に切り替えました。そのお陰で勝負は一進一退を繰り返しています。でも、最後に勝つのは私です。この勝負は数十手目で終わりです。しかし、今回は碁を打つだけではなく、棋譜を書く事を義務付けられているので、書きながらやる事になるので少し大変です。
「まっ、負けました……」
「ありがとうございました。それじゃあ棋譜を確認しましょうか」
「ああ」
勝負は3目半で勝ちました。次の試合も全て指導碁にして僅差で勝利していきます。しばらくして、お昼ご飯になったころ、迎えが来ました。
渡辺
大会も午前の試合が終わり、休憩に入る。私は職員用の所でご飯を食べながら集計されたデータを見る。今回の大会は全て棋譜を集めて間違いがないかを調べて負けた方にはこうした方がいいなど、書き込んでいく。しかし、あの進藤君が連れて来た車椅子の女の子は連勝しているのか。どれも僅差で勝っているようだが、相手は院生も居るのか。
「どうだね、渡辺君」
「桑原さん!? どうしたんですか?」
「何、緒方君や塔矢の奴が楽しみにしておったからな。特に緒方君の笑い方は何かを隠しておった。それとわしの観が何かあると思っての。それよりも、ちと見せてくれんかの」
「は、はい。どうぞ」
私は棋譜を桑原さんに渡す。すると桑原さんが車椅子の女の子の棋譜を見て止まる。
「ふぉっふぉっふぉ。これはこれは……面白いのぉ」
「どうしたんですか?」
「これを見て違和感が無いのかの?」
「接戦みたいですが……」
「これは指導碁じゃよ」
「そんな馬鹿な……彼女はせいぜい中学生くらいですよ。わざと接戦にしながら指導碁なんて事ができるのなんてトッププロくらいの実力がいりますよ」
「まあ、そうじゃの。しかし、これで何故あやつ等が参加しおったかわかるの。後でからかいに行ってきようかの」
桑原さんが帰っていく。その後、もう一度棋譜を見る。確かに違和感があるが、あまりわからない。
「渡辺さん、午後の組み合わせはどうしますか?」
「そうだな。車椅子の子が居るから、彼女を動きやすい場所でかつできる限り動かなくていい席にして、後は……いや、そうだな。こうしようか」
「棋院の人が多いですね。他にもプロレベルと噂されている人ですが……」
「早く終われば彼女の負担は少ないだろう。それに進藤君が教えて居るんだし、ひょっとしたら勝つかもしれない」
「そうですか。分かりました」
桑原さんの言葉が気になるからな。これで彼女の実力がハッキリするだろう。