ご愁傷さま金剛くん   作:やじゅせん

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第二章 冴えない酢豚の育て方
第一話  酢豚をプロデュース 1


 

 

 

 ここはどこだろう。

 瞳を開けてまず第一に思った感想が、それだった。

 見たところここはどこかのログハウスのようで、窓の向こうには海が見えた。

 俺は窓の隣に備え付けられた戸を開け、バルコニーへと出る。

 

「お、おおー……」

 

 夜の帳が視界に広がる。雲一つない夜空には、きらきらと星々が輝いていた。

 バルコニーから周囲を見たところここには他に建物がないようで、ログハウスの後ろの方には木々が茂っていた。

 どうやらここは前方には海が、後方には森が隣接している地形のようだ。

 

(……つーか、ここどこだよ。ほんとに)

 

 見覚えのない地形に、ますます困惑する。

 てかなんでこんなとこにいんの、オレ?

 考えても埒が明かないので、ちょうどバルコニーに備え付けてあった椅子に腰かけ一休み。

 なんだかちょっと身体がだるい。

 

「金剛、こんなとこにいたのか。探したぞ」

 

 と、そこで俺に声をかけてくる人物が。一夏だ。

 

「夜はあんまり外に出るなって言ったろ? 身体に障るから」

 

 一夏はそう言ってオレの真後ろまで来ると、自分の着ていた服をオレに羽織る。

 

「あ、ありがとう」

 

 別にありがたくもなんともないが一応お礼は言っておく。

 てかこいつもここにいるってことは、ここはIS学園の施設かどっかか? 

 

「一夏。ここどこ?」

 

 オレがそう言うと一夏は、一瞬ポカンとした表情になったあと、

 

「ははは、何言ってんだよ。俺たちの家じゃないか。寝ぼけてるのか?」

 

 と笑い出した。

 

「は?」

 

 どういうことだ。

 オレたちの家? わけわからん。

 

「金剛が言ったんだぞ。ISなんてどうでもいいから俺たち三人で静かに暮らしたいって」

「三人?」

 

 オレそんなこと言った覚えないぞ。

 しかも三人ってなんだ。三人って。

 一夏とオレのほかにもう一人いるのか? この家に。

 

「ああ、もうすぐ産まれるだろ。新しい家族が」

 

 一夏はそう言ってオレの大きくなったおなかを優しくさすった。

 なんだこいつ。妙に馴れ馴れしいな。そう思い一夏の手を払おうとしたが、寸でのところで止まる。

 って……ん? 大きくなったおなか?

 

「もうお前ひとりの身体じゃないんだしさ。気をつけろよ」

「え?」

 

 おそるおそる視線を下ろし、自身の腹を見る。

 見ただけでわかるようにぽっこりと膨らんだおなか。

 俗に言うボテ腹というやつだ。ってなんでオレの腹がこんなになって……。

 

 ぞくり。

 

 嫌な汗が背中を伝う。

 

「一夏」

「ん、なんだ?」

「オレたちってその、……やったのか? え、ええ、えええ、エロいこと」

「フッ、何をいまさら。あんなによがってたじゃないか、お前。自分から腰ふってたくせによく言うぜ」

「ファ!?」

 

 ま、マジかよ。ってことは……。

 まさかまさかまさか……まさか。

 

「も、も、もも、もしかしてオレって妊し――――」

 

 

 

 ピピピ、ピピピピ、ピピピピピピ――

 

「……朝か」

 

 目覚ましの音で、目が覚めるオレ。

 全身にぐっしょりと汗をかいていることに気が付く。

 ……内容は覚えていないのだが、なんだかすごく恐ろしい夢を見ていた気がする。

 全身から滝のように流れ出る汗から察するに、凄く凄く恐ろしい夢だったのだろう。

 オレはベッドから起き上がると、隣のベッドで寝てる一夏を起こさないように静かに立ち上がりシャワー室へと向かう。

 

「ん、んん……金剛。あ、、いいぞ。そう、、、そこ、、、、気持ちいい」

 

 その途中聞こえてきた一夏の気持ちの悪い寝言は聞こえなかったことにした。

 

 

 

「あ、島崎さんおはよー」

「おはよー」

 

 教室に入り、クラスメイトの鷹月さんたちといつものように挨拶を交わす。

 今日は一夏がいないこともあってか、彼女たちとはいつもより自然に挨拶が出来た気がする。

 

「珍しいね。コーちゃん今日は織斑くんと一緒じゃないの?」

 

 そう言って笑いかけてくるのは、我らが一組のマスコット。のほほんさんだ。可愛い(確信)

 

「ああ、今日は一夏が寝坊してたからね。置いてきた」

 

 ほんとのところ、今日はなんだか一夏と顔を合わせるのが気まずいから先に来てしまっただけなんだがな。

 

「えー、起こしてきてあげたらよかったのにー。コーちゃんに起こしてもらったらオリムー絶対喜ぶよー」

「ははは、なにそれ」

 

 のほほんさんの言葉を軽く受け流しつつ、窓際の席をちらりとのぞき込む。

 篠ノ之さーん。殺気が漏れてますよー。頼むからそんな目で見ないでください(懇願)

 

「あ、そういえば島崎さん知ってる?」

「ん、なに?」

「今日、二組に転校生が来るらしいよ」

「へーそれは初耳」

 

 転校生かぁ。

 オレも日本の学校に始めて転校してきたときは緊張したっけなあ。

 と、朝からなんだか感慨深い気持ちになってくる。

 

「ふん、わたくしの存在を今更ながらに危ぶんでの転入かしら」

 

 と言ってツカツカとオレの横に歩いてきたのはセシリア。

 金髪の縦ロールが印象的な可愛い女の子だ。

 

「ははは、そーかもね」

「ええ。そうに決まってますわ」

 

 オレの返答に満足したのか、セシリアはうんうんと満足そうに大きくうなずく。

 こういう風に一夏が絡まないとセシリアは基本いい奴なんだよなあ。

 そんなことを思いながら、オレは小さくあくびをした。

 

 

 

 


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