僕は麻帆良のぬらりひょん!   作:Amber bird

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第4話

 頭上に輝く月を見上げながら、夜の眷属とその従者は歩く。

 

 見事な満月だ……

 

 先程まで、麻帆良学園のトップたる近衛近右衛門の所に。楽しみにしていた、束の間の自由を手に入れる為にジジィの屋敷を訪ねた。

 

 行き先は京都……

 

 日本に来てから、日本の文化に触れて行きたいと思っていた古都だ!3日間の約束が実質半分になってしまったが、それは仕方ないだろう。

 この時期に私を麻帆良から出す事の意味は、十分理解している。それはジジィが同行するから可能な話だ。

 

 ジジィは……

 

 関西呪術協会と近衛本家に行くと言った。先の大戦から、関東魔法協会と関西呪術協会は仲違いしている。

 原因の一つが魔法世界の戦争に、此方の世界の連中を巻き込んだから……それを行ったのは、確かにジジィだ!

 

 しかしジジィと言えども、本国の意向には逆らえない。増援を送れと言われれば、従うしかないだろう……

 極東の島国の呪術士・魔法使いを束ねる立場と言えども、彼らに逆らうのは無理だから……

 しかし関西呪術協会の連中はジジィを憎しみの対象として、その先のヤツらを見ていない。

 

 本当の原因たるヤツらを……

 

 ジジィが言った、謝罪と補償。謝罪し、責任を取る為に職を辞する。補償とは、金銭的な物だろうか?

 働き手を大戦で亡くした遺族達の生活は、困窮しているそうだ。

 だが西の連中は、救済には力を入れず復讐に心血を注いでいる……彼らは受け入れるのだろうか?ジジィの謝罪を。

 

 私は……

 

 同行し、跳ねっ返りがジジィに危害を加えない様に護衛するのが仕事か。やはり喰えないジジィだ。

 仕事の報酬が、次の仕事絡みなどと冗談ではない!

 

「しかし……しかし、だ。ジジィに雇われたからには、ヤツを守ってやろうではないか。

闇の福音が親善大使の護衛とは笑い話だな、全く」

 

 独り言の様に呟くが

 

「はい。学園長の行動は、昔からは考えられない事です。

闇の福音と言われたマスターが同行する事は、賞金が取り下げられた今でも良く思っていない連中に対して楔になります。

正義を掲げる彼らに取って、付け入る口実を減らせますから。気休め程度ですが、表立っての行動は抑えられるでしょう。

仮に何か仕掛けてきた連中を返り討ちにしても、正当防衛の理由が立ちます」

 

 寡黙な従者が答えてくれた。

 

 果たしてジジィは、そこ迄考えていたのだろうか?贖罪に同行させる事によって、私の立場を固めるつもりか……

 でも、それは本当に私に取って幸せなのか?このまま正義の魔法使い側に取り込まれて良いのか?

 悪の魔法使いを自負している私が?

 

 分からない。分からないが、昔の私なら突っぱねただろう。

 

 フザケルナ!

 

 私は闇の福音、ドールマスターと数々の異名を持つ悪の魔法使い。偽善者とは、正義の魔法使いとは馴れ合わない!

 しかしジジィに悪意は無く、私を心配しての事だ。自分なりの答を探す為にも、暫くはジジィに付き合おう。

 ジジィの本心を確かめる為にも……

 

「これが人との絆なのかな?面倒臭いし悩ましい。1人の方が断然楽だ!しかし……悪い気はしないのが又悔しいな」

 

「学園長が最終的に私達をどうするのかは不明です。しかし着実に表の世界での立場を固めています。闇の世界の私達が、です」

 

 でも、このままジジィの言いなりは……やはり癪に触る。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 エヴァと茶々丸は帰って言った。美少女と美幼女とお酒を飲むとは楽しい事だな。食器や空の酒瓶が散乱するテーブルを見て思う。

 しかし途中でお手伝いさんが、追加のお酒と料理を持ってきてくれた時は驚いていた。1人で飲むと言ったのに、女性が居たのだから。

 

「ほほほほほ……ごゆっくり、明日の朝に片付けに参ります」

 

 そう言って出て行った。アレは完璧に勘違いをしている目だった……考えてみれば、夜に自宅に女生徒を……

 いや今は学校をやめて学園の職員だから、部下の女性を自宅に呼んで酌をさせるエロジジィか!

 しかも茶々丸はメイド服だったし、エヴァはゴスロリだった。まるでコスプレコンパニオン、15歳以下バージョンじゃないか!

 

 通報されたら逮捕だよね?青少年育成条例的に?

 

 この悪の大幹部の爺さんが、性犯罪として扱われるなんて事も有り得る?

 

 通報されたら、即逮捕!

 

 しまった、失敗した……明日の朝、お手伝いさんと顔を合わせるのが怖い。

 

「良い年をして、益々お盛んですね?」何て言われたら、恥ずかしくて死にたくなるぞ。

 

 エヴァと茶々丸が真剣にこれからの事を悩んでいる同時期に、全くくだらない事で此方も悩んでいた……ゴロゴロとローリング悶える見た目は爺さん。

 しかし、お手伝いさんは三人が居る部屋がガタガタし始めた音を聞いて、とんでもない勘違いをしていた。

 

「老いて益々お盛んなんですね。しかもあんな幼女を相手になんて……」

 

 お手伝いさんは見た!勤め先の主の禁断の性癖を……

 彼女の勤め先、お手伝いさんの派遣会社の同僚達に面白可笑しく話し、ちょっとした噂話になる。

 勘違いなのだが、金持ち爺さんの爛れた性活を。この噂話が魔法関係者の耳に入ったら、大変な事になるだろう。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 今朝はネギ君が訪ねてくる。少し早起きをして、昨日の事件の報告書を読む。大事にはならなかった。

 しかし一般人への被害は甚大だろう……関係ないのに頭の中を弄られたのだから。

 薄い報告書を読み終えて、執務机の引き出しにしまい込む。どうしたものか?

 

「旦那様、お客様です。ネギ・スプリングフィールド様がいらっしゃいました」

 

 お手伝いさんが呼びに来た。朝起こしに来てくれた時は、普通の態度だった。

 

 これが某ドラクエの宿屋みたいに「夕べはお楽しみでしたね……」とか言われたら最悪だろう。

 

 幸いにして、彼女の態度は普通だ。まぁ枯れ果てた爺さんだから、精々が若い娘と飲みたかったんだろう。程度に思ってくれたのかな?

 

「分かった。客間にお通ししてくれ。それと2人分の朝食をお願いしますじゃ」

 

 固い話は少しにして、食事を一緒に食べるか。机の上の時計を見れば、丁度7時を差していた。

 

 

 

 爺さんの屋敷に来たネギ君を見て、正直に言おう。驚いた!

 僕の周りでも絶滅した、今では手に入れる事すら難しい洋ランにドカン……報告書には、こんな奇天烈な格好をしているとは書いて無かったよ。

 応接室のソファーに座って下を向いているネギ君は、80年代に流行?した不良ファッションに身を包んでいた。

 

「ネギ君や……その格好は何じゃい?」

 

 話し掛けられて、パッと此方を見るネギ君。何故か目が輝いている。

 

「学園長の送って頂いた漫画の中に有りました。魁る男の塾の衣装です。

日本人は、郷に入っては郷に従え!物事は形から入る!ですよね?だから頑張って探したんです。大変でした」

 

 何を「えへへへっ」て可愛く照れてるのかな?紅茶のお代わりを持ってきてくれたお手伝いさんも、微笑ましく見てますよ。

 そう言えば報告書に有った被害者は、皆さん美女・美少女の若い女性だったな……

 彼のラッキースケベのスキルって、もしかして発動に年齢制限が有るのかな?

 今もお手伝いさんには発動せず、にこやかにカップに紅茶を注いで貰ってるよ。中年とは言え、立派な女性なんだけど?にこやかに会話もしてるし……

 

 いや、考え過ぎだ。10歳の少年が、被害者を選り好みする訳ないか……偶然だよね。

 

 思考を先程の学生服の件に戻そう!確かに僕は漫画を送った。しかし教師として来るのに、何故学生服なの?

 

「ネギ君……君は勘違いをしておるぞ。

魁る男の塾は、熱き漢達の友情・努力・そして戦いの漫画じゃ。それを学んで欲しかったのじゃが……

君は教師として、麻帆良学園に赴任した筈。何故、学生の改造制服を着てるんじゃ?」

 

「……あっ!しっしかし、あの漫画での先生方は旧日本軍の軍服でしたし。学長は和服でしたし……」

 

 ネギ君なりに苦労して探したんだね。でも消しきれなかった噂に、80年代の不良ファッションを着た少年のストリッパー伝説とか何とか……

 変な噂が出回っているから、その格好は駄目だよ。カンの良い連中にバレるかも知れない。

 そんな格好なんて、麻帆良学園だって居ない……いや、何だろう?爺さんの記憶には、同じ様なツッパリ君が居るらしい。

 

 豪徳寺……うーん、世界って広いな。居るんだ、まだツッパリ君が。

 

「ネギ君……普通なら、今回の不祥事で試練は中止。イギリスに帰る位の騒ぎじゃった。でも、儂らはそれをせん。分かるかい?」

 

 試練が中止と聞いて、真っ青になる。順風満帆だった今迄の人生で、初めての挫折なのかな?

 

「ぼっ僕は……女の人が怖くて。でっでも好きでやった訳じゃ」

 

 何か言い訳めいた事を言い出したネギ君を止める。

 

「済んだ事じゃ……儂らもナギの息子を落第させる事は出来ないのじゃ。分かるかの?」

 

 黙って首を振る。

 

「大人の事情じゃよ。これから先も、君が失敗してもフォローされるじゃろう。

確かに君には才能が有り、努力もしている。だが何故、魔力が暴走するなら制御を学ばなかったんじゃ?」

 

「僕は……魔法を沢山の魔法を覚えたかったんです。父さんに追い付く様に……」

 

 捨てられたも同然の扱いを受けても、周りの影響と劇的に助けられた事実が、ナギへの憧れになっているのだろうか……

 

「ネギ君、麻帆良学園に居る間は魔力制御だけを学ぶのじゃ。それと女性恐怖症の治療を行おうかの……なに、儂らが付いておるから平気じゃよ。

全てはこれからじゃ。しかし女性恐怖症が治るまでは極力女性に近付いては駄目じゃぞ。それだけは約束して欲しい。

それと昨日の事を反省するのじゃ。女性が怖いと言って服を脱がすのは最低じゃよ。理由はどうあれな。

君だって、知らない人が沢山いる場所で裸にはなりたくないじゃろ?

同じ事だよ。さて、難しい話は此処までじゃ!朝食でも食べようかの。まだじゃろ?」

 

 黙って頷く彼を見る。反省している様だ……話してみれば素直だし、年相応な感じだ。

 もう会えない甥っ子達も、こんな感じだったな……しかし何故、彼の行動はああなるのだろうか?

 何か原因か理由が分かれば良いんだけど……そもそもラッキースケベって何なんだ?

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 イングリッシュブレックファースト。ネギ君に合わせて、洋風の朝食を用意した。

 料理が不評なイギリスでは、朝食を三回食べれば良い!そう言われる位に人気が有るメニューだ。

 僕の感覚で言えば洋風な朝食だとトーストと珈琲なのだが、お手伝いさんの用意した物は気合いが入っていた。

 

 ミルクティーに一皿に盛られた料理。ソーセージ・オムレツ・焼きトマト、それにいんげん豆のトマト風煮込み……

 これはベークトビーンズと言ってイギリスでは一般的な家庭料理らしい。

 それと食パンを揚げた物。こちらはフライドブレッドと言うそうだ。ボリュームも有る!

 

 朝から重すぎるかな?しかしネギ君は美味しそうに食べている。祖国の料理だし、口に合うのだろう。

 

「ネギ君は、メルディアナの魔法学校では友達は居たのかな?」

 

「はっはい!アーニャと言う幼なじみが居ます」

 

 アーニャ?ああ、報告書に有った女の子か……

 

「他には誰か居たかの?」

 

「えっと……ネカネお姉ちゃんに……アレ?他の友達……アレ?」

 

 ネカネさんも年上の美人さんだよね。美女と美少女としか交流が無いのか、ネギ君?

 

「その……なんじゃ……麻帆良学園の男子中等部は男の園じゃ。教師と生徒と言う垣根は有るが、沢山友達を作るのじゃよ。

ネギ君は限られた社会に居たから難しいやもしれんが、それがコミュニケーションを養うのじゃ」

 

 小さい頃から美女・美少女と暮らしているんだよね?ネカネさんとアーニャちゃんは、ネギのラッキースケベの被害には合わないのかな?

 

「分かりました!僕、頑張ります」

 

 フォークにソーセージを突き刺しながら、前向きに答える彼を見て一抹の不安を覚える。

 しかし男子中等部エリアには、そうそう女性は入らない。居るのは仕事関係が殆どなんだけど……

 

 美味しそうに料理を食べる10歳児を見て思う。

 

 何で本人はエロい事をしても怒られずに、周りが被害を押さえなければならないのさ?

 これが主人公属性って奴なのかな……稀代の女運を持つ子供、ネギ・スプリングフィールド。

 

 それが女難なのかは謎だが……

 

 

 

「おはようございます!今日から、このクラスの副担任になるネギ・スプリングフィールドです。イギリスのウェールズから来ました」

 

 廊下から窓越しにネギ君のクラスデビューを観察する。隣には、この男子中等部の校長も居ます。それと弐集院・瀬流彦両先生も……

 

「幾らテストケースとは言え、未だ若い彼に教育の現場を任せるのは少々不安ですな」

 

 此方の校長は一般人であり、ネギ君の事は深くは知らない。ただイギリスの姉妹校とのテストケースとして、彼を短期で受け入れた……

 そして、彼の親が学園のスポンサーの1人だと嘘をついた。多額の寄付金を貰ってるから、ネギ君の扱いには注意する様に言い含めて。

 普通では、こんな説明では納得出来ないだろう。認識阻害の魔法やら何やらで誤魔化してはいるが、やはり言葉にはトゲが有る。

 

 不満に思っているのだろう……

 

 しかし次年度の予算に色を付けると言って、納得はしなくとも受け入れはしてくれた。やはり金の力は大きい。

 校長と大人の都合の話をしている内に、ネギ君の質問大会になっていた。中々会話が弾んでいるみたいだ……

 

「予算の件は了解しておるぞ。代わりに彼の事はくれぐれも頼んだぞ……大切な大口スポンサーの息子じゃ。

故に世間知らずな所も有るから、フォローは頼むぞ」

 

 利害が一致すれば、何とかなるのが大人の世界。ネギ君の修行は3月一杯だ。彼が、クラスと打ち解けられれば試練達成。

 

 イギリスに凱旋だ!

 

 トラウマの治療と魔力制御は、出来るだけ行う。僕に出来るのは、此処までだろう。努力家の彼なら、それなりの成果を上げるだろう。

 

「お任せ下さい。既に彼の為に教師2人も受け入れています。最大限の配慮をしますよ」

 

 横に黙って立っていた2人をチラリと見ながら答える。慇懃な校長を置いて、彼のクラスから立ち去る。

 

「瀬流彦先生、弐集院先生……頼みますよ、本当に」

 

 先にこの学校に赴任させた、2人の教師に声を掛ける。直接苦労をするのは彼らだ!

 手当金も付けている。苦労を強いるなら見返りは必要だ。それで責任感が高まれば安いものだし……

 魔法使いとしては、比較的まともな彼らだから大丈夫だろう……

 考え事をしながら歩いていたら、送迎のリムジンまで辿り着いた。お抱え運転手さんが、降りてきて扉を開けてくれる。

 

 流石は金持ち!リアルお抱え運転手なんて夢の様だ!

 

 昔はチャリンコか徒歩だったからな。車に乗り込み、フカフカの本皮シートに体を埋める。

 

「本校女子中等部まで行ってくれ」

 

 静かに走り出すリムジン……窓の外を見れば、今にも雨が降りそうな暗い雲が立ちこめている。

 

「一雨来そうじゃな……」

 

「はい、学園長。降水確率は午前中60%、午後80%。雨は夜半まで降り続くと思われます」

 

 キリリと髪を結い上げ、伊達メガネに秘書ルックの茶々丸が応えてくれる。

 

「ジジィ、大変だな。アレのお守りか……くっくっく、まさかナギの息子があんな子犬みたいな奴とはな」

 

 此方はエヴァ……約束通り幻術で10歳程年をとっている。つまり二十歳前後の美女だ……美人秘書(兼護衛)を従えた金持ち爺さん。

 これが僕への周りからの評価でしょう。

 朝迎えにきた車に、彼女らが居た時のお手伝いさんの顔は忘れられない。

 昨夜はロリだったのに、今朝はアダルトなのね?彼女の目が訴えていました……口止め料として給金を弾まなければならないかな?

 

「ネギ君は……話してみたが、素直で真面目じゃな。それ故に周りの影響を受けやすい。父親に傾倒しておるせいか、正義や正しい行いとかに敏感じゃ。

勿論、その反対の悪や悪い行いにも……正義感の強い天才児じゃな。しかし、彼は無意識に周りにエロい事をする癖?が有る。

ラッキースケベと言う笑い話みたいなスキルじゃ。此方の対策の方が大切な気がするのじゃが……」

 

「心配しすぎだろ?ただのエロガキじゃないのか?」

 

 エヴァは、その目で見てないから呑気なんだよ。アレは、そんなチャチな物じゃなかった!

 

「無意識で美少女を脱がし、美人の胸にダイブする。この目で実際に確認したからこそ、彼の厄介さが分かるんじゃ。

悪気が無いのも最悪だ……叱られても、怒られても、本人が注意しても発動するらしい。

直接話を聞いたが、イギリスでもネカネと言う姉の着替えを覗いたり、胸を触ったりは日常だったそうだ。

アーニャと言う幼なじみも同様に……彼女らはネギ君に好意を抱いていたのだろう。騒ぎにはしなかった。

しかし、麻帆良の女性達は果たしてそうかな?」

 

 どうなの、その辺?知らない子供から、そんな悪戯をされたら?

 

「前言撤回しよう。なんだその不条理なスキルは……幾ら厄災の魔女の息子とは言え、周りの迷惑が半端無いではないか!」

 

「私もガイノイドで有り、羞恥心は無いのですが……彼に関わりたくはないと思います」

 

「…………いや、本人は至って真面目な良い子なんじゃよ」

 

 ネギ君が可哀想になってきた……僕からすれば羨ましいスキルだが、女性恐怖症の彼からすれば苦手な者が寄ってくるんだよね。

 例えば、ガチムチのホモが……

 

「ジジィ?真っ青だが、平気か?」

 

「学園長?血の気が引いた症状が見受けられますが……若干の震えの症状も。風邪の初期症状と思われます」

 

 違うんだ……昨日の事件を女性とガチムチのホモと置き換えて想像したら……ダメだ、また想像したら吐き気が……

 

「おい、ジジィ?平気か?運転手、病院に向かってくれ!ジジィが変だ」

 

「学園長。リバースするなら、此方のエチケット袋へ!さぁ我慢せずにドバッと!さぁさぁ」

 

 何故だろう?エヴァがマトモで茶々丸がヘンに思えた。ホモをグッと思考の外へ追い出して、深呼吸をする。

 

「すーはーすーはー!もう平気じゃ。茶々丸、そのエチケット袋はしまってくれ」

 

 残念そうにエチケット袋を畳む茶々丸さん……何が残念だったのかな?グダグダの内に学園長室の有る、本校女子中等部に着いた。

 さて、茶々丸に裏金の処理と支払い方法とかを相談しよう。彼女はこの手の処理が得意そうだしね。

 

 

 

 学園長室は女子中等部の中に有る。男子関連の校舎より全般的に設備は整っている。この学園長室もそうだ。

 調度品も内装も品良く纏められている。

 窓の外では、絶滅危惧種のブルマを着た女生徒達が運動を……アレの伝統は、後世に伝えねばならないと思う。

 

 スク水も……

 

「何を女子中学生を見てニタニタしてる?ジジィ、春が来たのか?」

 

「マスターの言葉を聞いて、学園長の心拍数が跳ね上がりました。若干の発汗も認められます。

確かに学園長は、女子中学生を見て興奮していたと思われます」

 

 茶々丸さん……科学的に僕が女子中学生を見て喜んでいた事を検証しないで下さい。

 

「ちっ違うぞい!彼女らを守らねばならないと、考えていたのじゃ。決して嫌らしい目で見てはいない!」

 

 確かに僕だって可愛い女の子は好きだ。特に、この学園には前の暮らしでは一寸見れない位の美少女が沢山居る。

 それこそアイドル顔負けの娘達が……気を取られるな!と言う方が無理だよ。

 でも爺さんの記憶でも、毎日窓から外を眺めて楽しんでいたんだよ。爺さんは、ブルマとスク水を守るつもりでいた。

 だから絶対にスパッツに変えて欲しいと言う要望書には、判を押してない。僕もそれには賛成だ!

 多分年頃の男子なら分かる筈だよね?

 

 

「ジジィ、黙り込むな。気持ち悪い」

 

「マスター、学園長の心を抉り込む仕打ち……ハァハァ流石です」

 

 この新人秘書は、雇い主を敬う気持ちが無いらしい……

 

「ウオッホン!それで?どうなんじゃ、引き継ぎは問題有るのかの?」

 

 しずな先生と、引き継ぎ業務をしている茶々丸に訪ねる。エヴァはソファーで本を読んでいる……フリーダムなロリめ!

 ああ、今は幻術で美人秘書だけど。

 

「問題有りませんわ学園長。しかし、良いのでしょうか?絡繰さんを秘書にするなんて……」

 

 先週まで中学生だったからね。

 

「問題有りません」

 

「まぁ本人が言うのでしたら、私は気にしませんが……」

 

 そう言って彼女は、ファイルを抱えて学園長室を出て行った。しずな先生も本業の教職が忙しい筈だから、引き継げる部分は茶々丸に引き継いで貰った。

 

「茶々丸、お茶をくれ!玉露が良いぞ」

 

「分かりました、マスター。学園長も淹れましょうか?」

 

 茶々丸の問いに、湯のみを持ち上げて答える。センサーで温度管理が出来る茶々丸の淹れてくれたお茶は美味い。

 そしてお茶を飲みながら、自分の机の上に有る書類と格闘する。知識は爺さんの記憶から引っ張ってこれるが、やはり時間が掛かる。

 昨日の騒ぎで仕事をしてなかったから、今日は夕方まで事務仕事で終わりそうだ……

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 2-A教室内

 

 

 担任で有った高畑先生が、急遽移動となり学年主任の新田先生が変わりに受け持つ事となった。麻帆良学園で一番のイロモノクラスだ。

 

「なぁ明日菜。最近お爺ちゃんが変なんよ」

 

 授業の合間の休み時間。クラスメートとの他愛ない話で終わってしまう。普通なら……

 

「学園長がヘン?何時も変じゃない?」

 

 一般的な見解として、近衛近右衛門の評価とはこんな物だった。掴み所の無いヘンな老人……

 表の世界も裏の世界も、彼の評価は変わらない。ヘンな老人が一番しっくりくるだろう。

 

 外見的にも……

 

「んー確かに変なんだけどな。この二週間、見合いの話をせえへんのや。週末になると五月蝿い位に勧めてたのに……」

 

 確かに木乃香は毎週必ずと言って良い程、見合いをさせられていた。本人に、その気は全く無いのにだ。

 

「ふーん……確かにヘンかな?でも私は高畑先生が担任じゃなくった方が大変よ。

学園長、何を考えてるのよ。しかも変わりが、新田先生なんて……」

 

 机に突っ伏して、憧れの高畑先生が移動になった事を嘆く。恋する乙女が此処に居る。

 ツインテールがピコピコ動き、うなだれた。彼女の心情を表している……

 

「高畑先生、何処に移動になったんかな?お爺ちゃんに聞いてみよか?明日、一緒に食事するんよ」

 

 ガバッと起き上がり、木乃香の腕を掴む。

 

「ホント?お願い聞いてよね!」

 

 ブンブンと両手を握り振り回す、現金な明日菜。

 

「うん、ええよ」

 

 親友の頼みを快諾する。

 

「木乃香さぁ、序でに聞いて欲しい事が有るんだけど良いかな?」

 

 そんな友人2人の他愛ない話に割り込む。

 

「朝倉?何よ?ヘンな噂話とかはお断りよ」

 

「まぁまぁ明日菜、落ち着いて。実はさ、男子中等部に変わった先生が赴任してきたらしいのよ。何でもアダナが子供先生らしいんだ」

 

「子供先生?子供店長じゃあるまいし本当に子供じゃなくて……童顔とか背が低いとかじゃないの?」

 

 明日菜がマトモな事を言った!

 

「んー、どうやら先生達に聞いてもタブーみたいな感じなんだわ。だから学園長なら知ってるんじゃないかな?頼むよ、木乃香!」

 

 両手を合わせ、拝むようにお願いする。

 

「ええよ。子供先生……可愛い感じなのかな?」

 

「それと……ちょっと気になる事も有って。いきなり炎上して、直ぐに沈静化した噂が有ってさ……

そっちも子供らしいんだよね。ツッパリ学生服を着た子供が、女性を脱がしまくるって噂の。

同じ時期に子供の噂が2つも……どうにも、ね」

 

 魔法関係者が躍起になって揉み消したのだが、朝倉のアンテナには引っ掛かっていた。

 

「ツッパリ学生服?子供先生は先生なんだから、学生服は着ないでしょ。関係無いんじゃない?」

 

 明日菜がマトモだ!バカレッドを返上出来るぞ!

 

「ええよ。両方聞いてみる。子供先生とツッパリ学生服の少年だね?うちも気になるから」

 

「それ、本当だヨ。私も見たよ、学ランを着た子供だよネ」

 

「珍しいわね?超が私達に話し掛けるなんて……」

 

「私も気になってたネ。あの学ランの少年、手品みたいに女性の服を吹き飛ばしてたヨ」

 

 超鈴音……

 

 此処で木乃香を唆し、学園長の反応を見る事にした。学園長が、大切な孫娘にどう説明をするのか、を……

 

 

 

 麗らかな土曜日の朝……基本的に土日は学校はお休み。

 殆どの学生は学校に行かないが、一部の部活は朝早くから活動をしている。

 まぁ殆どの学生が、ゆっくりと眠りについている。休み位は朝寝坊したいのは、誰でも同じだろう。しかし例外も居る。

 早朝の新聞配達を終えて部屋に帰って来た明日菜。彼女の帰りに合わせて朝食を作る木乃香。

 まだ殆どの寮生は寝ている時間だ……

 

「木乃香、今日だっけ?学園長との食事会って……」

 

 ゴソゴソと部屋着に着替える明日菜。朝食を食べたら、直ぐに寝るつもりだ。

 

「そうや。でも食事会とか大袈裟じゃなくて、たまには一緒にご飯でも食べて話をしよう!とかやな」

 

 フライパンを火にかけながら答える。今朝の献立は、目玉焼き・ソーセージ・サラダにトースト。それにホットミルクだ。

 普段、土日は時間が有るのでご飯を炊いて和食にしたりもするが、今朝は忙しい。故に簡単な料理だ。

 

「ふーん……でも高畑先生の事は絶対聞いてよね!」

 

 卓袱台を用意しながら、憧れの先生の行方の確認に念を押す。

 

「了解や……さ、食べよ」

 

 卓袱台の上に料理を運びながら、友達の初恋に協力しようと思う木乃香だった。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 此方は、その今日の食事会のお相手の方……体は爺さん、心は少年の方だ。久し振りに、木乃香ちゃんに会える。

 この体に憑依してから、癒やしは幽霊と孫娘だけと言う寂しさだ……2月とは言え今日は穏やかな陽気で有り、春が近い事が感じられる。

 のんびりと過ごすには、丁度良いだろう。のんびりと過ごせれば、だが……

 

「でだ、ジジィ。2月の京都と言えば、梅だ!北野天満宮の梅祭りに行きたいんだ。『東風吹かば、匂ひおこせよ梅の花。主なしとて春を忘るな』

大宰府に跳ばされた菅原道真を思い一夜で飛んだ飛び梅伝説さ。麻帆良に捕らわれた私の様ではないか?」

 

 何が飛び梅伝説ですか……見かけは洋風なロリの癖に、日本人より日本の文化に詳しいよな。

 

「エヴァよ……遊びに行く訳じゃないんじゃぞ。それに儂は同行出来ぬので、余り関西の連中を刺激するでない。観光も程々にな……」

 

 小脇に抱えたガイドブックの束には、付箋が沢山付いている。日本に来てから、殆ど自由が無かったのだ。楽しみで仕方ないんだろうね。

 朝からガイドブックを持ち込みで、訪ねて来たのも、そんな話が出来るのも僕だけだからだろう……

 

「マスターが、あんなにハシャぐなんて……ハァハァ、マスター素敵です……」

 

 壊れ気味の茶々丸が心配だ。コレはコレで危なくないかな?

 

「さて……儂は昼飯を木乃香と食べるでの。エヴァ達は、どうするんじゃ?」

 

 放っておけば、何時までも居残りそうな2人に話し掛ける。

 

「ああ、あの娘か……流石は近衛の直系だけあり、凄い魔力の内包量だな。キャパだけなら、小僧より上だろう?」

 

「…………気付いていたか。魔法の知識無く、才能はネギ君を凌駕する。

あの娘も身の振り方を考えさせねば危険じゃからな。儂と一緒に関西へ帰るつもりじゃ。今日は、その説明じゃよ」

 

「あの娘に、魔法の存在を教えるのか?」

 

 彼女は良いにしろ、悪いにしろ魔法の事を知らなければ駄目だと思う。自分の立場を知らずして、この先暮らしてはいけないだろうから……

 

「今は教えるつもりは無いの……向こうに帰ってから、ゆっくり教えるかの」

 

「ふん!孫娘に対しては流石に慎重か……ある意味、ネギ以上に利用されやすい。精々注意する事だ!」

 

 憎まれ口調だが、彼女なりに心配してくれているのだろう。

 

「エヴァも木乃香には気を掛けてやってくれんか?元クラスメートじゃし、これも儂の護衛の延長じゃ。報酬は用意するでの」

 

「ついでだ。面倒はみてやるが、付きっ切りは無理だぞ」

 

「それで構わんよ」

 

 イマイチ信用出来ない魔法先生より、明確に利益で結ばれているエヴァの方が安心だ。付きっ切りでは魔法先生達を刺激するが、気に掛ける程度なら構わんだろう……

 

「それで、京都行きは何時にするんだ?」

 

「来週末にしようかの……それまでに根回しをせねばならぬからな」

 

「そうか!来週か……準備が間に合うかな……」

 

 楽しそうにブツブツと呟き始めたエヴァに、何時もの如くマスターを熱心に録画する従者。

 

「エヴァよ。儂は、そろそろ出掛けるぞ。お主等はどうするんじゃ?」

 

 ん?と言う感じで首を傾げる幼女は魅力的だった。これで爺さんの数倍。本来の僕からなら、数十倍も長生きなんだから不思議だ……

 

「これから茶々丸は定期検査だ。超のラボに行ってくるぞ」

 

 超鈴音、か……定期検査と言う事は、茶々丸のデータは向こうに渡るとみて良いだろう。

 なので裏金操作の相談は出来ずにいる……バレたら業務上横領で逮捕されそうだし。敵か味方か分からない相手に弱みは見せられない。

 

 今更だけどね……

 

 未だに沈黙する彼女だが、何か動きは無いのかな?

 

「エヴァよ。最近の超はどんな感じじゃ?」

 

「んー、何か悩んでいたな……女の敵を育てて迄、達成しなければ駄目だとか何とか?ヤツにしては、悩む姿を見る事自体が珍しいのだがな」

 

 女の敵?育てる?女の敵と言えば、ネギ君だよね?育てる?彼を、か……超鈴音の育成計画とは?

 

 彼女は魔法使いではないのは、確認済みだ。爺さんの記憶でも、念入りに調べていた。

 つまり魔法使いへの教育の線は薄い。なら、天才少女が天才少年に教える事って何だ?

 

「エヴァよ……女の敵とは、ネギ君絡みじゃないかの?その辺をそれとなく聞いてくれんか。出来れば、彼女とは敵対したくないのでな」

 

 彼女もネギ君を利用して何かを企んでいるならば……僕に取って迷惑以外ではない筈だ!

 幾ら責任を取って辞任を表明したけど、被る罪は少ない方が良いに決まっているからね。

 やるなら彼がイギリスに帰った後か、僕が辞めた後にして欲しい……

 

「相変わらずジジィは超鈴音を警戒してるな。分かった、それとなく聞いてみよう」

 

 そう言って、茶々丸を連れて出て行った。軽く頭を下げながら出て行く茶々丸を見て、本気でメイドロボが欲しくなった!

 控え目で礼儀正しく料理が上手で美少女だ!アレを欲しがらずに、何を欲しがれば良いのかな。

 そんな彼の物欲しそうな目線を茶々丸はしっかりと録画していた……

 

 

 

 木乃香ちゃんとの食事会の場所へと向かう。勿論、お抱え運転手にお願いして車を出して貰っています。

 

 高級車って凄い!

 

 静かだし、振動が少ないし……フカフカのクッションに埋まりながら外を見る。

 最近見慣れてきた、日本なのにヨーロッパみたいな街並み。そして溢れる少年と、それ以上に沢山の少女達……

 幾ら学園都市ては言え、誰がこのコンセプトを考えたのかな?などと考えていたら、今日の会場のホテルへと着いた。

 

 見上げる程の、高層で高級なホテル……此処は外部からの来客用に用意したホテルの中でも、最高級のランクだ。

 爺さんは、このホテルの最上階の会員制レストランの会員でも有る。相当なブルジョワだ……

 木乃香ちゃんと此処で食事するとエヴァに話したら、行きたがっていたな。彼女も相当な食通なんだろう。

 茶々丸の料理の腕をみても分かるけどね。アレに文句をつけるんだぜ!

 

 有り得ないだろう……

 

 次の報酬は、このレストランに招待するかな。ホテルの前に車を横付けにすると、直ぐにドアマンが開けてくれる。

 このVIPな対応には、元々が小市民な僕には慣れません。

 ホテルマンの案内で最上階迄向かい、レストランの前からはウェイターが個室まで……チップとか必要なのかな?

 爺さんの記憶では、特に渡してはないみたいだけど……用意された個室に入り席に着く。勿論、ウェイターが椅子を引いてくれる。

 

 暫く木乃香ちゃんを待つ……

 

 テーブルは六人座ってもゆったりするサイズ。クロスはシルク?みたいに輝いているし、食器はクリスタルっぽい素人目にも高級品と分かる物が並んでいる……

 室内も落ち着いた感じだ。

 

「ファミレスと段違いだよね……最もファミレスも何回しか行った事ないし、前はラーメン屋か定食屋が殆どだったし……」

 

 住む世界が違います。

 

「爺ちゃん、お待たせな」

 

 ウェイターに案内された、木乃香がやって来た。普段のお見合いは着物だが、今日は淡い桜色のドレスを着ている。

 

「良く似合っとるよ。着物も似合うが、洋服も似合うの……」

 

「いややん!お爺ちゃん、うち恥ずかしい」

 

 素直に誉めたのに、何処からか取り出した小槌で殴られた!

 

「イタタタタ……これ木乃香?何をするんじゃい」

 

 殴られた場所をさすりながら、一応抗議する。爺さんの記憶でも、無理強いすると殴られてた。でも今回は、誉めただけなのに……

 こうして、老人と孫娘の食事会が始まった。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 未来人のラボ……

 

 メンテナンス中の茶々丸から、色々なケーブルが伸びて機械に繋がってる。

 それらはモニターに繋がり、彼女の状態を表示していた。その間、茶々丸は黙って目を閉じている。

 まるで眠っている様だ……

 

「超よ。ジジィが随分と警戒しているぞ。まるで何かするのが分かっている様にな」

 

「決め付けは良くないヨ!私は無実ネ」

 

 パソコンに向かい、何やらカタカタと打ち込んでいる超にエヴァが話し掛ける。

 学園長から、それとなく聞いてくれと頼まれた筈だが、直球だ!

 

「それで?私と茶々丸は、ジジィに買収されてるぞ。敵対するのは面倒臭いのだが……」

 

「学園長が、辞めるって本当カ?」

 

 何を?とは言わない。超は魔法使いではない。だから、関東魔法協会の事を表立って聞く事は出来ない。

 

「ああ、本当だよ。4月には職を辞するそうだ……どちらも、な」

 

 麻帆良学園の学園長も、関東魔法協会の会長も、どちらも、だ。

 

「何故?学園長が今、辞めるのカ?面白い子供も来たのに、何故ネ?」

 

 超は、ネギ・スプリングフィールドの存在を知っていた……やはり彼女は、何かを企んでいるのか?

 

「あの小僧は4月にはイギリスに返すそうだ。面白い?はた迷惑な子供だぞ?ジジィも頭を抱えていたな。

最悪の問題行動を自然とするヤツだ。私は関わり合いになりたくはないな」

 

 公衆の面前でストリップなどお断りだ!

 

「かっ返すのカ?4月……バカな、そんな事は知らないネ!」

 

 ネギの試練は、日本で教師として働く事。与えられたクラスと打ち解ければ、試練達成!イギリスに凱旋だろう。

 

「まぁ男子中等部に居るからな。超が知らなくても仕方ないだろう?」

 

 ネギはあくまでも男子中等部に赴任した教師。よって2-Aの、超達との接点は限り無く少ないから……

 

「そうだネ。私とネギ・スプリングフィールドとの接点は無い。

しかし気になるネ。英雄の息子を簡単に返すなんて……あの学園長がカ?」

 

 今迄の学園長なら、こんな楽しい駒に手出しをしない筈がない……お祭り大好き企み大好きな、それでいて謀略が一番好きな暗躍ジジィだ。

 

「さて、な。ジジィは変わったよ……

もう年だからな。余生を穏便に暮らしたいのだろう。解決出来る問題は解決し、難しい物には手を出さないんじゃないか?

ジジィは4月には学園を去る。それまでは大人しくしているが良い。穏便になっても、ジジィはジジィだ。

逆に刺激すると思わぬ反撃をするやもしれん。人間は、自分の平穏を乱す奴に容赦ないからな……」

 

 人間はささやかな生活を乱される事を最も嫌う。

 

「それは、永きに渡り生きてきたエヴァだからの忠告カ?」

 

 600年の齢を重ねたエヴァだからこその言葉……それには説得力が有った。

 

「ふん。そうかも知れんな」

 

 そう言って、椅子に深く座り目を閉じてしまう。寝た振りだが、これ以上話す事は無い!そんなアピールだろう。

 ヤレヤレと顔をしかめて、茶々丸のメンテナンスに戻る。しかし彼女のデータから、学園長の関連部分を抜き出す事は忘れない。

 

「歴史と違う麻帆良学園の流れ……原因は私カ?それとも資料と一番違う学園長カ?

彼は何を考えているネ……

ネギ・スプリングフィールドが2-Aの皆と絆を結び魔法世界に旅立たないと大変な事になるネ。私は世界の為に、敢えて悪になるヨ」

 

 どうしても、自分の望む未来にしなければならない。でなければ、此処に来た意味が無い。

 

「先ずは一番の異端な人物を徹底的に調べるネ。学園長……貴方は怪し過ぎるヨ。一体何を考えているのネ?」

 

 麻帆良の最強頭脳は、世界の歪みの原因に思い当たった!

 

 

 

 麗らかな土曜日の昼……

 

 普段の悩み事を忘れる為に、孫娘たる木乃香ちゃんを昼食に誘った。兎に角、癒やしが欲しい。

 確かに憑依してから、金と権力は腐るほど手に入いった……特別待遇を受け、高価で美味しい物も食べれた。

 しかし、それは自分の寿命50年分位と交換に、だ!

 

 しかも死亡フラグ満載。問題事も満載。そして寿命は、後僅か……

 

 確かに向こうでは死んでしまったのだから、生きてるだけでも幸せなんだろう。

 向こうで50年頑張っても、この地位になるのは不可能だろうし……暫しトリップして考え込んだが、気を取り直して現状で出来る事をしよう。

 先ずは、目の前の美少女との食事を楽しむ。彼女は慣れた手付きでコース料理のスープを飲んでいる……

 んー、女の子の食べる仕草をマジマジと見るのは初めてだ。

 

 あの口の動きは……何かグッと来るね!

 

「お爺ちゃん、どないしたん?じっと私を見て……」

 

 彼女は不思議そうな顔で僕を見る。

 

「いっいや、アレじゃ?ホラ?久し振りに会ったから、良く顔を見ておこうと、な……」

 

 はははっと誤魔化す。まさか君の物を食べる口がセクシーだったから、見惚れていました!

 なんて孫娘を対象に言ったら、変態だ!最低な爺さんと思われるだろう……

 

「木乃香や……大事な話しが有るのじゃ。儂は3月中をもって、麻帆良学園の学園長を辞める事になる。

まだオフレコじゃよ。それに伴い関西に戻る。木乃香もじゃ……」

 

 そう言って、彼女をじっと見る。木乃香ちゃんは、ビックリした顔をした後に……悲しそうな、泣きそうな顔になる。

 

「それは……何故なん?お爺ちゃん、私の中学卒業まで待てないの?」

 

 仲良くなった友達と一緒に卒業したい。友達と離れたくない。理由は沢山有るのだろう。

 

「木乃香や……すまんな。近衛本家の直系跡取りは、木乃香だけなんじゃ。

関西でお前を狙う連中が居て、危険なので関東に非難したんじゃが……何とか目処がたった。儂が直接話をつけに行く事でな……」

 

 本当に危険なんです。無防備な魔力タンクなんて、魅力的過ぎるから……

 

「お爺ちゃんが見合いを勧めなくなったのも、関係有るん?」

 

 お見合いは、ただ僕が嫌だったんだけどね。

 

「木乃香の関東での地盤を固める為に、関東で有力な者達への顔見せも兼ねてじゃったが……それも意味をなさなんだ」

 

 無理矢理な笑顔をしながら

 

「それなら仕方ないなぁ……うち、関西に戻る。セッちゃんは、どうなるん?」

 

 セッちゃん?刹那……桜咲刹那……ハーフ……烏族……オデコちゃんな美少女の情報が浮かび上がってきた。

 

 桜咲刹那……

 

 木乃香ちゃんの父親が遣わした、彼女の護衛。烏族とのハーフであり、幼なじみか……

 

「勿論、一緒に関西へ帰るよ。まだ彼女には伝えてないのじゃが、問題無いじゃろう……元々、木乃香の護衛の為に麻帆良学園に来たのじゃからな」

 

 魔法の世界から遠ざける為に、魔法使いの街に来たんだよ君は。そして護衛は、彼女だけ……どれだけ危険か分かるかい?

 

「セッちゃんが?私の護衛なん?友達なのに……そんなの知らなかった……」

 

 確か、木乃香ちゃんと桜咲刹那は距離を置いていた。多分、ハーフで有る事に負い目やコンプレックスが有るんだろう……

 

「じゃから木乃香と距離を置いていたんじゃろう?護衛対象と近過ぎては、護衛は務まらんからの……

儂からも話しておくぞ。向こうに帰れば、昔の様な関係に戻れるじゃろう」

 

 桜咲刹那と話す必要が有るだろう……彼女が木乃香ちゃんの護衛なのは確かだが、爺さんに良い様に使われていたし……

 護衛の者を対象から離して、警備をさせるとか。彼女も疑問に思わなかったのかな?

 大切な幼なじみとの復縁の可能性が見えてきたからか、食事を楽しむ余裕が出来たみたいだ。

 

 暫くは料理を楽しむ……老人と美少女に合わせてか、量も味付けも丁度良い感じで久し振りの外食を満喫した。

 

 うん。最初、関西に帰るって言った時は泣きそうな顔だったけど……今は心底楽しそうに微笑んでいる。やはり美少女の微笑みは素晴らしい!

 

 食後の紅茶とデザートを楽しんでいる時に、思い出した様に木乃香ちゃんが爆弾を落とした……

 

「お爺ちゃん、あのな……私達の担任だった高畑先生って、何処に移動になったん?」

 

 思いもよらない名前に、咽せてしまう。

 

「ケホケホ……タカミチ君じゃと?何故じゃ?」

 

「明日菜がな……高畑先生と会えないって、寂しがってるんや。何とかならへんかな?」

 

 確か明日菜ちゃんてタカミチ君に憧れていたんだっけ……オジコン?年上好み?年齢二倍位有るけど……

 

 ん?待てよ、爺さんの記憶だと彼女もネギ君や木乃香ちゃん並みに扱いが難しい娘だった……亡国の姫君・完全魔法無効化能力者。

 大戦時にナギ達に保護され、タカミチ君と共に麻帆良学園に来た。過去の全て忘れる事により、平穏を得た少女……

 

 少女?アレ?大戦時に?20年も大戦時に幼女?アレ?今の彼女は、女子中学生だよね?

 

 確かに見た目は、それ位の感じだが……長寿の一族?若作り?王族の血筋?

 でも何故爺さんは、二十歳過ぎの女性を中学生扱いにしてるのかな?……ああ、そうか!

 ネギ君と絡ませる為に木乃香ちゃんや他の特殊な少女達と合わせたのか……

 爺さん、明日菜ちゃんが全てを無くしても平穏を求めたのに、最初からネギ君に……

 自らが育てる英雄に関係を持たせるつもりだったのか……

 

「お爺ちゃん?黙り込んで、どうしたん?」

 

「木乃香や……明日菜ちゃんには内緒じゃが、タカミチ君は心の病なんじゃ。

真性のロリ・ペドじゃ。年下が大好きなんじゃよ。だから明日菜ちゃんにもチャンスは有るかもしれん。

しかし彼は若ければ、若い程大好きなんじゃよ。彼女が成長すれば捨てられるやもしれん。

エヴァをクラスから離したのも、そのせいじゃ……彼は幼女なロリが大好物じゃからな。

悲しい事じゃが、彼の心の病が治るまでは距離をおくのじゃぞ……そして秘密じゃよ、コレは。

まだ彼は犯罪者ではないのでな。更生の道を閉ざしてはならん」

 

 すまん、タカミチ君!君が悪いんだよ。

 

「……びっくりやな!高畑先生が、そんな変態さんなんやて?」

 

「そうじゃ!暫くは男子中等部の方に送り込む予定じゃ。男臭く、男塗れになれば良いのじゃイケメンめ!」

 

 木乃香ちゃんはブツブツと何か考え込んでいる……流石に、嘘とバレるかな?

 

「なぁお爺ちゃん。もう一つ聞きたいんや」

 

 木乃香ちゃんの質問には、なるだけ答えてあげよう。色々と考える事も有るだろうから、疑問を解決してあげよう。

 答えられる範囲だし、真実を教えられるかは分からないけど……

 

 

 

 心の癒やし……ストレス塗れの現代人には必須項目ですよね?

 体は老人、中の人は少年の僕……近衛近右衛門と言う妖怪ぬらりひょん?に憑依した今となっては、美少女孫娘との触れ合いが一番です。

 

 後は……美少女幽霊・美少女ロボ・美幼女吸血鬼と、可愛いのに変な付加価値が付いた娘ばかり。

 

 普通の娘との出会いは有りません!

 

 まぁ爺さんだし、男としての自信を取り戻すには頭とナニを何とかしないと駄目なんだ……

 

「なぁお爺ちゃん。もう一つ聞きたいんや」

 

 彼女の……木乃香ちゃんの質問に我に返る。食後のデザートを食べ終えたのか、口元をナプキンで拭いている彼女を見る……

 

「なんじゃ?」

 

 タカミチ君の事を聞かれて、関係を持って欲しくないから……彼をロリでペドな変態に仕立てたからな。次はどんな質問なんだか?

 

「巷で噂になってる子供先生と子供性犯罪者なんだけど……お爺ちゃん何か知ってるん?」

 

「なっ?」

 

 思わず黙り込んでしまう……ネギ君の事だ!しかし……隠蔽はしていたのに何故?何故、木乃香ちゃんが知ってるんだ?

 手に持つカップがカタカタと揺れて……

 

 いかん!落ち着かないと……

 

「黙ってもうた……お爺ちゃん、何か知ってるんだね?」

 

 飄々とした爺さんと違い、僕は動揺してしまった。これは肯定と同じだ。カンの鋭い彼女の事だから、何か有るとバレたか?

 ここは事実を少し曲げて説明するか。

 

 しかし……

 

 どのルートでバレたんだろう?隠蔽工作は上手く行った筈なのに……

 

「そうじゃな……確かに子供先生は知ってるぞ。麻帆良学園の学園長の儂が知らない先生は居ないからの。

木乃香や……誰から聞いたんじゃ?男子中等部の話じゃし、接点はないじゃろ?」

 

 彼女は可愛らしく首を傾げながら「クラスの友達からだよ。お爺ちゃんと食事するって言ったら聞いて欲しいって……良くない話なの?」少し不安げに此方を見詰めてくる。

 

 この表情と仕草は……イケナイ魅力が溢れてますね!

 

「木乃香や……これは大人の事情が有る話なんじゃよ。

子供先生……確かに本校男子中等部の副担任として、1ヶ月間だけテストケースとして受け入れたんじゃ。

彼は大口スポンサーの関係者でな……儂ですら断れなかった。

だから一年生のクラスの副担任にしての。学生の将来には影響が少ない様にしたんじゃ」

 

 ふーっと息を吐き出しながら言った。如何にも困ってる風に……本当に困ってますが!

 あの信じたくないラッキースケベ君にね。

 

「学園長のお爺ちゃんが断れないの?影響って、そんなに問題有るん?」

 

 アレ?子供先生でも問題無いと思ってますか?認識阻害の効果なのかな?

 

「受験や進学を控えた三年生は論外。一年生なら、去年迄は小学生だったし勉学にも影響は少なかろう。

いきなり自分達と変わらない外国人が、副担任になっても……どの道騒ぎになるなら、せめて学業が大変でない一年生が良いじゃろ?」

 

 彼女は、何か感激しているみたいだ。両手を胸の前で合わせて……「お爺ちゃん、やっぱり教育者なんだね!ちゃんと生徒の事を考えてるんや」そう言ってくれた。

 

 可愛い娘に尊敬されるなんて、初めての経験だ!

 

「それでも迷惑を掛けてしまうんじゃ。だから、なるべく周りに知らない内にイギリスへ返したいんじゃよ」

 

 早くウェールズに送り返したいんです!

 

「ふーん。その子ってイギリス人なんやね」

 

「そうじゃよ。木乃香や……誰かの?木乃香に子供先生と子供性犯罪者を教えたのは?」

 

 此処で犯人を知って釘を刺しておかないとマズい……ズルズルと噂は広まるだろう。

 

「うんっと……その、お爺ちゃん。教えても相手を怒らない?」

 

 上目使いに此方を見詰めてくる……優しい子だな。きっと彼女に教えた相手が叱られないか心配なんだ……なるべく優しい表情と声で応える。

 

「勿論じゃ!ただ事情が事情だから、周りに広げない様に注意するだけじゃよ……

それで朝倉君かな?麻帆良のパパラッチだったか?情報通らしいからの」

 

 問題ばかり起こすクラスの名簿は確認している。それに爺さんの記憶でも危険人物認定されてた。

 報道部で他人の秘密を嗅ぎ廻る奴なんて、魔法を秘匿しなければならない我々からすれば……

 迷惑以外の何者でも無いだろうし。記憶に浮かぶ容姿は、勝ち気で押しが強そうな感じがする……

 

 何だろう?ビッグな何かは、クラス№4って?

 

「うん、そうや!だから酷い事はしないでね。あと超リンが、女性を脱がし捲る子供を見たって言うてたよ」

 

 超だって?あの要注意人物が、ネギ君の事を知っていた?これは問題だぞ……

 

「お爺ちゃん、怖い顔をしてる……」

 

 木乃香ちゃんを怯えさせてしまったか。

 

「女性を脱がす?そんな危険人物なら、儂に報告が有る筈じゃが?未だに報告は無いぞ?まさかガセかのう……」

 

 子供先生なら、何とか誤魔化せる。しかし性犯罪は無理だ……常識的にみても、即警察へ通報だ!

 僕達が揉み消したなんて言える訳がない……

 

「でも不思議なんよ。普段は余り話さないのに、急にお爺ちゃんに聞いてくれって……でも本人は見たって」

 

 超鈴音……

 

 やはり彼女は魔法の存在を知っている。当たり前だ……エヴァと共に茶々丸を作製したのだから。

 そしてネギ・スプリングフィールドの事も……あの時、周りに居た一般の人達には記憶操作を施した。

 つまり無かった事になっているんだ、ネギ君のエロい騒ぎは……

 

 それを敢えて「私はネギ・スプリングフィールドの奇行を知っているんだぞ!」と、学園長たる僕に知らせて来た……

 

 つまり、何か行動を起こした訳だよね。交渉か脅迫か……どちらにしても友好的な関係にはならないし、不干渉も止めたのだろう。

 

「木乃香や……朝倉君と超君には、儂からも話をしておく。

だから、何か聞かれたら学園に無用の心配事を広めない様に言っておくれ。勿論、実際に子供先生を見に行こうとかは駄目じゃ。

彼も周りから騒がれたら嫌じゃろ?本人は良い子なんじゃよ。だから穏便にすませたいんじゃ……」

 

 木乃香ちゃんは頷いてくれた……美少女との楽しい食事会。

 しかし、新たな問題が発生してしまった……朝倉君は、何とかなるだろう。

 報道とは、時に無用な不安を煽らない為に自主規制する事も有る。

 それでも調べたり無闇に話したりするのは……報道者では無く、たちの悪い噂好きだ。

 木乃香ちゃんを女子寮に車で送る時に、何気ない会話をしながら考えている事は問題を起こしそうな2-Aの事だ。

 既に彼女達には、既にネギ君の事が知れ渡っていると考えた方が良い。

 

 朝倉に超か……何を企んでいるんだ?

 

 

 

 美少女との楽しい食事会……やはり木乃香ちゃんは可愛い娘だ。ストレスは随分と減った。

 しかし、新しいストレスの種も教えてくれたんだ……食事を終えて自宅に戻る。

 エヴァと茶々丸は、メンテナンスの為に超一味の所に行っている……茶々丸に記録させた、僕のメッセージを見ている頃だろう。

 不干渉を願ったが、相手は事を構える様な……木乃香ちゃんを使い、此方に揺さぶりを掛けてきた。

 つまり、今迄みたいな不干渉では無くなったのだ。

 

 後は、何時の段階で接触を持つかだ……彼女達、超一味は……超鈴音を筆頭に、葉加瀬聡美。

 彼女は間違い無くマッドで有り、最後まで超に付くだろう……古君や五月君は、料理繋がりだが魔法の件はしらないから問題は少ない。

 

 やはり……超は魔法世界の人間で間違い無いだろう。

 

 此方の世界では過去の痕跡が分からなかった……でも魔法世界なら連合や帝国、我々と交流の少ない部族や種族も居る。 

 魔法に科学的アプローチをする天才だが、此方より彼方の方がしっくり来る。当然、魔法世界の何処かの勢力と繋がりが有るだろう……

 

「全く……1ヶ月位大人しく出来ないのかな?僕が引退するのは知ってる筈なのに、今のタイミングで接触するなんて……」

 

 僕はお手伝いさんが「夕食の準備が出来ました」と、呼びに来るまで薄暗い部屋で物思いに耽っていた……

 

 ネギ君の事、関西呪術協会の事……そして超一味と、序でに朝倉君の事を……

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 お昼を豪華なレストランで食べて来たが、このお手伝いさんの料理の腕も凄いと思う。

 今夜は鍋だ!1人鍋……しかも、スッポン鍋?

 

「あの……儂もう年寄りじゃし、スッポン鍋はちょっと……」

 

 食べた事なんてないが、如何にもな精力増強料理ですよね?生き血のお酒割りとかも置いてあるし……

 

「ほほほほほ……旦那様には必要ですよね?老いて益々アレですし……お盛ん?」

 

 呼び出しにパタパタと来たと思えば、とんでも無い事を仰りましたよ?

 エプロンで手を拭きながら、老人に精力増強料理を勧めるお手伝いさん……イジメですか?

 

「ははは……」

 

 と、誤魔化しながらスッポン鍋は下げて貰った。次に出て来たのはしゃぶしゃぶだ!

 薬味は、紅葉おろしに胡麻ダレにポン酢だ。断然ポン酢派です。肉と野菜をバランス良く食べてから、締めはうどん!

 これを生醤油とネギだけで食べるのだ!

 

「げふっ!御馳走様でしたの……」

 

 お腹をさすりながら、1人鍋を食べ終えた。少しだけ、本当に少しだけ寂しいと感じる。昔は家族全員で鍋を突っついたんだ。

 肉は少なく野菜や豆腐ばかり食べさせられたけと……不思議と高級食材を食べれる今より、美味しかったし楽しかったな。

 食後のお茶を貰い、デザートのカットフルーツを摘む。

 苺・キュウイ・パイナップルにブルーベリー……ブルーベリーを生で食べたのは初めてだ!

 それと柑橘の女王「不知火」一個何千円だか分からないけど、確かに美味しい。

 

 お腹も膨れた所で「御馳走様でした!」と言って私室に戻る。

 

 お手伝いさんは……エヴァと茶々丸の事を誤解しているのだろう。

 本当に何でもないのだが……どう説明したら分かってくれるのか?を悩みながら部屋の扉を開けたら、その元凶達が居ましたよ。

 

「ジジィ、邪魔してるぞ!」

 

「学園長、夜分失礼致します……」

 

 洋ロリとメイドロボが、寛いで居ましたとさ……

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 時間は少し遡り、メンテナンスの為に工学部にあるラボに来た。ここは、技術が10年位進んでいる感じがする。

 研究者達が、未だ二足歩行が可能なロボが最先端の筈なのに……遥かに進んだ技術を研究していた。

 その一角に、超と葉加瀬のラボが有る。

 

 茶々丸が生まれた場所……

 

 彼女は今、メンテナンスを受けている。幾つかのコードがモニターと彼女を繋いでいる。

 様々なデータがモニターの上を走る……それを眺める超と葉加瀬。

 

「特に問題は無いネ」

 

「そうですね……チェック項目は全て正常値です」

 

 茶々丸の創造者達が、彼女の状態が万全だと太鼓判を押す。それを椅子に座り聞いているエヴァ……手には珍しく缶コーヒーを持って。

 

「そうか……」

 

 缶コーヒーを弄びながら、気のない返事をする。そうこうしている内に茶々丸のメンテナンスが終了し、マスターたるエヴァの下に来る……

 

「お待たせ致しました……メンテナンスは終了です。問題は何も認められませんでした」

 

 律儀に報告をしてくれる従者を労る様に軽く手を上げる……

 

「世話になったな、超……」

 

「別に良いネ。それより2人して学園を辞めたのは何故ネ?」

 

 学園長に雇われた為に、中学生を辞めた2人……

 

「ん?ああ、このふざけた呪いを緩和出来たのでな。オママゴトな学生生活を終わりにしたのだ」

 

 登校地獄と言うフザケタ呪いは緩和されている……彼女は学園の関係者として正式に雇用された。

 勤務条件を記載すれば、有る程度は麻帆良学園内を自由に行動出来る。

 

「学園長が良く許可したネ?最近の学園長は大分変わったヨ……」

 

 自身のデータ……過去の学園長の行動とは、随分違っている。

 

「ジジィか……来月には、麻帆良の学園長の地位と関東魔法協会の会長職を辞するそうだ……」

 

「そっそれは本当カ?だって学園長は……」

 

「ああ……過去の大戦の責任を取る為に辞めるそうだ。今後は関西との関係回復に、力を入れるんだろう……」

 

 何を言ってるんだ?ネギが正式に教師となり、関西に修学旅行に行く理由の一つが関西との仲直りの筈……それをフライングして進めるだと?

 

「そっそんな馬鹿な話は知らないネ!学園長は一体何を考えているネ?」

 

 思わず叫んでしまう……

 

「超よ……学園長から伝言だ。ジジィは来月には学園を去るから、大人しくしていて欲しい……とな。確かに伝えたぞ」

 

 そう言って、茶々丸を伴いラボを去った……超は彼女達に掛ける言葉が無かった。

 

「あと一月じゃ準備が間に合わないヨ。計画を練り直す必要が有るネ……私は諦めないヨ」

 

 エヴァ達を見詰めながら、一年近く掛けた計画が破綻した事を理解した。しかし軌道修正すれば良いと考えている。

 

「このままでは……このままでは、終わらせないネ……」

 

 

 

 まほネットでもしながら、夕食後の一時を楽しもうと思ったら……人外秘書コンビが先に寛いでいました。

 和室に座布団を敷いてだらしなく座るエヴァと、行儀良く座る茶々丸……和の雰囲気に金髪と緑髪の美少女&美幼女?

 

「えっと……何故じゃ?」

 

 せめて理由を教えて欲し……「お茶のお代わりをお持ちしました」お手伝いさんが、ナチュラルに盆に湯呑みを3つと茶菓子を持って来たよ……

 

「えっと……何故じゃ?」

 

「有難う御座います。後は私が……」

 

 茶々丸がお盆を受け取り、各人の前に湯呑みを置いていく。

 

「では、ごゆっくり……ニヤリ……」

 

 何事も無かった様に湯呑みからお茶を飲むエヴァ……食べれないので、自分の分の茶菓子もエヴァに渡す茶々丸……

 

「えっと……何故じゃ?」

 

 答えてくれる迄、同じ台詞を繰り返すしかなかった。

 

「何を呆けてるのだジジィ!普通に玄関から来たぞ。これから夕食だから共にと誘われたが、断って待たせて貰ったのだ」

 

 ああ、誤解されているな……だからスッポン鍋か!僕に彼女達をどうしろって言うんだよ?

 どう見ても無理なのに、無茶な誤解を受けている。

 確かにゴシックロリータ調のドレスを着込んだ金髪な洋ロリのエヴァ。

 髪の毛こそ緑色と奇抜だが、ロング丈の古風な感じのメイド服にメガネな茶々丸さん……

 確かに妖しい趣味が全開のコスプレプレイと言われても、反論が出来ない状況証拠が揃ってますね。

 明日の朝、誠心誠意に話し合う必要が有りそうだ。

 

 お手伝いさんと……僕の性癖、もとい爺さんなんだから土台無理なんだよ、ナニはと言う事を!それは置いておいて、再度問い掛ける。

 

「えっと……何故じゃ?」

 

 同じ問いを繰り返す。こうなれば自棄だ!

 

「ジジィに頼まれた超への伝言を済ませたのだ。有り難く思えよ」ふんぞり返って言われても……薄い胸板が強調されてますけど?

 

「超さんは……何故か困っていました。まるで予定と違う様な感じで……私の知っている……とは違う……とか。

呟き程度ですし後ろ向きだったので、それ以上は解りませんが……」

 

「ああ、そうだな。ジジィが辞めると話たら、馬鹿な……とか言っていた。まるで自分の予想が外れた様な……」

 

 なる程ね……爺さんは権力に固執するタイプみたいだったし。すんなり引退なんかしない程度は調査済みかな。

 だけど僕が辞めて後任が来る時期なら、学園はドタバタして不安定な筈だから……何か騒ぎを起こすなら、やりやすくないのかな?

 記憶の中で学園長の後任候補は何人か思い浮かぶけど、皆さん微妙な能力だ……悔しいけど爺さんは良く学院を纏め、対外的に睨みも効かせていた。

 

「なぁ……儂はそれなりに学園を纏め、対外的にも睨みを効かせていた筈じゃ。

儂が第一線を退く方が、何かを企む奴はやり易くないか?何故、超君は儂が辞めてしまうのが問題なんじゃ?」

 

 そう僕よりも超鈴音と付き合いの長い彼女達に聞いてみる。

 

「確かにジジィは食わせ物だし、引退するなら待つ方が有利だな」

 

「または……企みに学園長も必要だから……それとも学園長本人に何かしら企てたいのかも知れません」

 

 見た目によらず、結構毒を吐く茶々丸……しかし超鈴音の目的が、ネギ君でなくて僕か……恨みを買い捲っている爺さんだから、可能性は低くない。

 寧ろ、ネギ君と言う厄介者が居る今だから、対応に追われる僕に仕掛けるチャンスが有るからか!

 

「なる程の……確かに超君の狙いが儂なら、ネギ君と言う扱いの難しい者が居る今がチャンスだ。

彼の為に隙も多いし、動かす駒も少ない。

やはり彼女は大戦時に儂に恨みを持つ者の関係者か……復讐の相手が引退など、フザケルナと言う事か……」

 

 恨みを持つ相手が、呑気に引退じゃ納得しないわな。

 

「超が魔法関係者だと?アレ自身に魔力は感知出来なかったぞ。でも体捌きを見ると、何かしらの武術を収めていそうだな」

 

「科学的な方面に特化してますが、確かに旧世界なら……此方では個人データは必ず何処かに記録される物。

どんな小さな痕跡でも……それが全くないのは、魔法世界の住人と思った方がしっくり来ますね」

 

 幾ら調べても分からない筈だ……戸籍や個人データの管理と言う、概念の低い向こうなら有り得る。

 

「今日、木乃香から聞かれたんじゃ。超君から、子供性犯罪者……つまりネギ君の事を教えて貰ったとな。

超君は儂に対して揺さぶりを掛けて来た。つまり、もう静観はしない。儂に行動を仕掛けて来たんじゃ」

 

 一年も前から復讐の準備を進めて来ただろうが、相手が引退では話にならない。だから無理にでも行動を起こしたのかな?

 

「ジジィ、どうするんだ?」

 

「学園長……どうなさいますか?」

 

 2人は僕を爺さんを心配してくれてるみたいだ……素直に嬉しいと思う。しかし大戦の関係者なら、会って真意を聞くしかないよね。

 爺さんだけでなく、ナギ達にも恨みが有るかもしれないし。冷えたお茶を一気飲みして、無理矢理落ち着く……

 

「エヴァよ。済まぬが、超君にアポを取ってくれぬか?直接会って話を聞こう。儂に非が有るならば、一方的に攻める訳にはいかないて……」

 

「私も立ち会うぞ。今ジジィに死なれては、私達が困るんだ」

 

「確かに。今更学園長が亡き者になってはマスターと私の生活に問題が発生します。私も同行します」

 

 えっ?コレって、生き死にの問題まで発展するの?ただ会って話をするだけじゃないの?

 

「そっそうじゃな……魔法先生方に同行して貰うのは問題有りじゃな。エヴァと茶々丸に立ち会いを頼もうか。

しかし、あくまでも話し合いじゃ!武力で解決はしない、させないで頼むぞ!」

 

 本当に頼みますよ、エヴァさん、茶々丸さん!話の流れ的に会う方向にしたけど……超との対談をイメージしてみる。

 

 

「儂に恨みが有るのか?」

 

「当たり前ネ!死んで詫びるが良いヨ!」

 

「あっ……アーッ!」

 

「バッドエンド!嗚呼、近右衛門よ……死んでしまうとは何事だ?」

 

 

 そんな流れで殺されるのは真っ平御免だよ!

 

 


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