のび太のBiohazard[The Nightmare]-Reconstruction-   作:青葉郷慈

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Area7[疑惑と虚偽]

 のび太と聖奈が保健室の戸を開けると、スネ夫がいの一番にのび太に話し掛ける。

「のび太、大体の事情は健治さんから聴いたけど、宝石の件はどうなったんだ?」

 スネ夫がそう尋ねると、のび太は答える。

「青色の宝石を取れたよ。これが何かの役に立てばいいけど」

 すると安雄が話す。

「しかし、月光を弾いて手に入れたのが、用途不明の宝石か。ますます解らなくなったな」

 健治は安雄のその言葉に答える。

「だけど、わざわざあんな所に仕舞ってあったんだ。何か使い道があるはずだ」

 健治がそう言うと、ジャイアンは全員に呼び掛ける。

「とにかく気になることも済んだことだし、調査を再開しようぜ。安雄はさすがに無理だとして、それ以外で調査を進めようか。あと残ってるのは三階と四階と屋上か」

 ジャイアンがそう言い掛けると、スネ夫が口を挟む。

「そのことなんだけど、シャッターのプロテクトが堅くて四階と屋上は行けないよ。制御室からなら何とかなるかもしれないけど。あと、南舎三階はシャッターが閉まっているせいで、北舎三階から渡り廊下を通って行くしかない」

 スネ夫がそう言うと、ジャイアンが話す。

「てことは、調査する場所も残り少ないってことか。北舎三階と南舎三階でそれぞれ二人から三人程度で大丈夫か?」

 ジャイアンがそう提案すると、聖奈が意見を話す。

「いや、ちょっと待ってください。安雄君の話では、北舎三階には理科室にカメレオンの怪物がいたはずです。今もそこにいるかは解りませんが、北舎三階の調査は危険すぎます」

 聖奈がそう言うとジャイアンは賛成する。

「確かに、それは一理あるな。ただ、理科室からどこかに移動している可能性もある。三階の調査は今まで以上に危険になりそうだ。取り敢えずは、南舎三階を調査して、裏里に行く方法を模索しよう。今度は二人か三人だけで南舎三階の調査をしよう。そうだな、のび太と健治、あるいは俺が行くのが適任だと思うんだかみんなはどう思う?」

 ジャイアンがそう言うと、全員は賛成していたが、のび太は少し反論した。

「反論ってほどじゃないけど、何でそのメンバーなの?」

 のび太がそう尋ねると、ジャイアンは答える。

「さっきも言った通り、三階は今まで以上に危険な場所だ。今いるメンバーの中で一番ゾンビとの戦闘に慣れている人が行ったほうがいいだろう」

 ジャイアンがそう言うとのび太は更に言う。

「いや、僕なんかが行っていいのかな? ていうかそんなに戦闘に慣れてるとは思えないんだけど」

 のび太がそう言うと、聖奈が話す。

「私は適任だと思います。のび太君は今まで何度も戦って無傷で生き残っていますし、私たちの危機を何度も助けてもらっているので、のび太君なら安心して任せられます」

 聖奈がそう話すと、ジャイアンが言う。

「ああ、俺もそう思う。ただ、調査開始当初からずっと動いているから、休憩なしで疲れてないかが心配だな。それに、この中で銃を一番巧く扱えるのはのび太だしな」

 すると、健治がジャイアンの言葉に補足するように話す。

「俺としては、剛田とのび太の二人で行くのがいいように感じるな。俺ものび太と何回か調査しているからのび太の強さは大体解る。だから調査を任せられるのは最もだと思っているが、のび太としては、俺よりも付き合いの長い剛田の方が相棒として適任だと思うぜ」

 健治がそう言うと、のび太は納得する。

「まあ、学校の探索もあと少しだし、取り敢えずそれで反論はないかな」

 のび太がそう言うと、ジャイアンはのび太を連れて保健室から廊下に出る。保健室の戸を開くと、のび太とジャイアンは周囲を確認する。周囲に危険がないことを確認すると、渡り廊下を通り、北舎中央部一階に移動してから、北舎西階段を昇って北舎中央部三階に移動する。そこから正面に進み、渡り廊下につながる扉を開けた。扉を開けると、渡り廊下にはおびただしい量のゾンビがいた。

「ここは通りたくないが、今はここしか通る道がない。俺が突っ込んで奴らと肉弾戦する。のび太は銃で後方から援護を頼むぜ」

 ジャイアンはそう言うか言わないうちにゾンビに向かっていく。のび太はベレッタM92FSを構え、ジャイアンの側面から接近するゾンビを優先的に射撃した。ジャイアンは側面から近づいてくるゾンビには目もくれずに正面のゾンビに右ストレートを放つ。ジャイアンの右ストレートはゾンビの顎に命中し、ゾンビの顎を粉砕した。その後、ジャイアンは近くにいるゾンビに同じように右ストレートを放つ。ジャイアンの横にいるゾンビがジャイアンに腕を延ばすこともあったが、その都度のび太が、ゾンビが延ばした腕を的確に撃ってゾンビの動きを封じた。それを繰り返す内、渡り廊下にいるゾンビは一体残らず倒れて動かなくなった。

「よかった。何とか無事に終わったねジャイアン」

 のび太がそう言うと、ジャイアンはのび太の方を振り返る。

「ジャイアン様にかかればこんなもんよ。まあ、心の友であるのび太の援護がなかったら危なかったけどな。助かったぜ」

 ジャイアンがのび太に笑いかけながらそう話す。すると、のび太も照れながら笑い返す。その後、のび太たちは渡り廊下を通り、南舎中央部三階に続く扉を開ける。扉を開けた先にはゾンビはいなかった。

「ここは五年生と六年生の教室がある所だから、四年生の僕たちにとってはあまり見覚えがないね」

 のび太がそう言うと、ジャイアンは応える。

「でも、パソコンの授業するときにこの階のパソコン室には何度か行ったことあるだろ。取り敢えず、制御室を探してみようぜ」

ジャイアンがそう言うと、ジャイアンは目の前の丁字路を右に曲がりさっさと進んでしまう。のび太はジャイアンを急いで追いかける。丁字路を右に曲がり、そこから三メートル程進むと、突き当たりにぶつかり、廊下は左に延びている。そこを左に曲がると、廊下は十メートル程直進して延びており、その先では突き当たって、左に廊下が延びていた。その直進した廊下の右側には五年生の教室が並んでおり、その直進した廊下の左側には手前から見て、南舎西階段、制御室、南舎東階段の順で並んでいた。また、南舎西階段と南舎東階段の南舎中央部二階と南舎中央部四階に続く階段は、シャッターによって閉じられていた。

「スネ夫の言った通り、シャッターのせいで四階以上は行けないみたいだな。取り敢えず制御室を見てみようぜ」

 ジャイアンがそう言うと、のび太とジャイアンは制御室に向かう。制御室は他の扉とは違う金属製の扉をしていた。のび太はその扉を開けようとしたが、まったく動かなかった。

「予想はしていたけど、どうやら錠が掛かっているみたいだね」

 のび太がそう言うと、ジャイアンが尋ねる。

「でも、安雄の話だと、先生がここにいるんじゃないか?」

のび太はジャイアンのその言葉に答える。

「でも、もし先生がここにいるならわざわざ錠をかける? ここにはゾンビも大していないみたいだし。もしかしたら、鍵を持ってどこかに移動したという可能性もあるよ。……でも一応呼び掛けてみるか」

 のび太はそう言うと、制御室の向こうに向かって呼び掛けた。しかし、制御室からはなんの応答もない。

「やっぱり先生はいないみたいだよ。他をあたろう」

 のび太がそう言うと、ジャイアンは納得して、パソコン室に歩を進める。のび太も行こうとしたが、制御室の扉の付近に落ちている何かを見つけて、屈んでそれを確認する。そこにあったのは、横三センチメートル、縦五センチメートル程度まで折り畳まれた紙だった。その紙にはセロハンテープが付いており、セロハンテープの半分がその紙に接着していた。接着していないもう半分の部分は、埃や指紋のようなもので汚れていた。のび太はそれを開いて中身を確認しようとしたが、ジャイアンに呼ばれたので、確認は後回しにしてジャイアンについていき、パソコン室に向かう。パソコン室の扉をゆっくりと開け、中の様子を探るが、ゾンビの姿は見えないものの、何かが動く気配がしていた。

「のび太、テーブルでよく解らないが、何かが動く気配がする。慎重に調べようぜ」

 ジャイアンが小さい声でそう囁くと、のび太は無言で頷いた。何かが動く気配から遠ざかるように移動すると、やがてその姿が見える。

「ジャイアン、あいつらは給食室で遭遇したやつらだ。六本の脚を使って移動を行い、掴み掛かってくる習性があるみたいだ」

 のび太は小声でジャイアンにそう言う。

「しかし、やつら三体もいるぜ。大丈夫なのか?」

 ジャイアンがそう尋ねると、のび太は答える。

「あの時交戦したのは一体だけだから、三体となると厳しいかもしれないよ。だけど、見る限りあいつらは統制が取れてないみたいだ。全く違う所を行ったり来たり、他の怪物とすれ違ったり、怪物同士で連携は取れてないように見える。何かで気を逸らして一体ずつ相手できれば何とかなるかもしれない」

 のび太はそう答えると、周囲を見回す。するとマウスパッドが目に入り、マウスパッドを慎重に取った。

「これを投げて音を立てて引きつけよう。とりあえず一回目を部屋の端付近に投げて様子見しよう」

 のび太はジャイアンにそう言うと、マウスパッドの部屋の端にあるパソコンに投げてぶつけた。その瞬間、六本脚の怪物は一斉に音がした方に向かった。三体とも六足歩行の態勢をとり移動をした。音がした方に向かうと、三体の怪物は二足で立ち上がり、周囲を見回す。

「驚いたぜ。まさかあんな移動をするとはな。しかし、今の感じじゃ三体を引き離すのは厳しそうだぜ。ここは一発俺がぶん殴って来るぜ」

 ジャイアンがそう言うと、のび太はそれを制止する。

「いや、待ってよ。確かにこうなったら囮作戦でいきたいけど、準備は進めよう。僕がテーブルの下に陣取ってやつらを撃つ。動きが止まったらジャイアンはやつらに攻撃してほしい」

 のび太がそう提案すると、ジャイアンはそれに賛成した。のび太はテーブルの下に匍匐前進で移動し、ジャイアンは部屋の端に移動する。のび太がジャイアンに合図すると、ジャイアンは近くのテーブルを蹴って大きな音を出した。大きな音に気づいた三体の怪物は六足歩行に移行し、ジャイアンに急接近する。のび太はテーブルの下に伏せ撃ち状態で待機している。三体の怪物がのび太の前を通過する瞬間、のび太は怪物の後ろ足の膝を片足ずつ射撃した。唐突な衝撃にその怪物は三体ともバランスを崩して動きを止めた。ジャイアンはその隙を逃さず、怪物に一気に接近し、怪物の頭を踏み潰した。のび太もほぼ同時のタイミングで、別の怪物の頭をベレッタM92FSで数発発砲して撃ち抜いた。しかし、一番後方にいた怪物はジャイアンの方を向き、口から何かを吐き出した。ジャイアンは身を翻し、飛んできたそれをすんでのところで回避する。怪物が吐き出したそれはジャイアンの後方の床に落ち、その部分から煙のようなものが発生した。のび太はテーブルの下から素早く出てきて膝撃ちの体勢になり、後方にいる怪物に照準を合わせて三発発砲する。三発全てがその怪物の頭部に命中し、その怪物は倒れた。

「相変わらずの腕前だなのび太。それにしてもあの液体は酸か? 危なかったぜ」

 ジャイアンがのび太に近づきながらそう言う。するとのび太はゆっくりと立ち上がる。

「うん、僕もびっくりしたよ。最初に出会ったときはそんな攻撃はしてこなかったから完全に意表をつかれた」

 のび太がそう言うと、ジャイアンは話す。

「しかし、まさかあんな怪物までいるとはな。今後の調査で気をつけないといけないな。なんにせよここは安全になったから探索を済ませようぜ」

 ジャイアンがそう提案するとのび太は肯定し、二人で探索を始めた。のび太は教卓側、ジャイアンは反対側を探索する。のび太は教卓のデスクの中に何かがないかを調べる。デスクの中には授業に関する資料ばかりで特に役に立ちそうなものは無かった。するとジャイアンは何かを見つけてのび太を呼ぶ。のび太がジャイアンの元に向かうと、ジャイアンは虹のようなものが描かれた絵画を指して言う。

「のび太。この絵画が横に動かせるんだが、これを見てくれ」

 ジャイアンはそう言いながらその絵画をスライドする。すると、壁には何かをはめられる窪みが二箇所あった。

「二つの窪み……もしかしたら青と赤の宝石をはめればいいのか? しかし、どの順番で入れればいいんだろう?」

 のび太がそう呟くように言いながらスライドした絵画を観る。

「この絵画、虹をテーマにした絵画のようだけど、これは後ろの壁の窪みと関係しているのか? 窪みの位置を絵画の位置に当てはめると、一つの窪みは太陽の位置になっているようだけどもう一つの窪みは解らないな」

 のび太が自分の考えを話すとジャイアンも自分の考えを話す。

「もしかしたら、もう一つの窪みは雨を表しているんじゃないのか? 太陽が赤の宝石で、雨が青の宝石だとすると丁度当てはまると思うぜ」

 のび太はジャイアンのその言葉に納得し、ジャイアンの言う通りの場所に赤の宝石と青の宝石をそれぞれの場所にはめ込んだ。すると、のび太たちがいる場所の少し右の位置の天井が開き、奥から梯子が降りて来た。

「うまくいったみたいだが、どうする?」

 ジャイアンがのび太にそう尋ねるとのび太はジャイアンに答える。

「僕が一人で行ってくるよ、ジャイアンはここを見張っててくれ。また廊下側からゾンビや怪物が来ると大変だから」

 のび太がそう提案すると、ジャイアンは賛成した。そしてのび太はゆっくりと梯子を昇る。梯子はそれほど長くなく、梯子を昇った先は暗い小部屋だった。のび太は梯子を昇り切ると照明のスイッチが無いかを手探りで探した。照明のスイッチはすぐに見つかり、燈色の薄暗い明かりが付いた。のび太がいる小部屋は人が五人入るのがぎりぎりの空間であり、のび太の正面には少し大きい金庫のような物があった。のび太はゆっくりと金庫のような物に近づく。その金庫のような物は上に開くタイプの蓋が付いた箱型であり、錠は掛かっていなかった。のび太は蓋を開けて中を調べてみた。その中には少しの資料しかなく、その資料は警備員及び警備に関する資料のようだった。その資料を取ると、のび太は制御室の扉の下に挟まっていた紙を思い出した。その紙を懐から出して開くと、整った字でこう書かれていた。

〈親愛なる教え子である野比へ

この手紙を読んでいるのは野比かそれとも他の誰かかはわからないがこれをのこす。まず、ススキヶ原がこのようなじごくになったのはじんい的なものだ。くわしいことはわからないが私が想ぞうするよりもきょ大な組しきであるだろう。私は制御室でかんしカメラのえいぞうを見ている最中、首ぼう者らしき人物を発見した。これからせっしょくをこころみるつもりだが、おそらく殺されるだろう。名前まではわからなかったが、電話での会話内ようから察するに、野比たちとせっしょくする目的であることがわかった。その者はスーツ姿の中年男性だ。ただ、このじょうほうだけではまったくわからないと思われる。パソコン室の絵画を横にスライドすると小さなくぼみがある。そこに青と赤の宝石をはめこむと、はしごが下りてきてかくし部屋に入れる。その部屋には一つの箱があり、その箱は二重底になっていて、その下にMOディスクを置いておいた。そのMOディスクの中身はかんしカメラのえいぞうと音声データだ。ただ、MOディスクをさい生できるたんまつはこの学校には無い。すまないが自分で探してくれ。最後に一つ、野比は他の生ぞん者と共に行動しているかもしれないが、無じょうけんで信用することだけはやめたほうがいい。

先生英一郎〉

 それを読み終えたのび太は先程開けた箱の底を調べる。するとそこには一枚のMOディスクがあった。そしてのび太は先生からの手紙を読み返す。

 ――これは、先生からの手紙みたいだ。このMOディスクには首謀者らしき人物が収められているみたいだけど、今のところは詳細は解らないみたいだ。最後の一文――野比は他の生ぞん者と共に行動しているかもしれないが、無じょうけんで信用することだけはやめたほうがいい。――これは一体どういうことなんだ? 確かに今はドラえもんもいないし、敵が何かすら解らない。先生の言うことにも一理あるような気はする。まだ懸念はあるけど、僕たちの中に敵が潜んでいる可能性は十分に考えられる。『スーツ姿の中年男性』というと、金田さんが思いつくけど、特におかしな動きはしていないし、今のところはなんとも言えない。でもしばらくはこの手紙とMOディスクは僕だけが持っていた方がいいかもしれない。

 のび太はそう考えると、先生からの手紙とMOディスクを懐に仕舞った。二重底を元に戻すと、のび太は警備に関する資料を持って梯子を降りる。梯子を降りると、ジャイアンはのび太に話しかける。

「のび太、何かあったか?」

 ジャイアンがそう尋ねると、のび太は答える。

「役に立つかどうかは解らないけど、警備に関する資料ならいくつかあった。南舎中央部三階の調査はここで終わりだし、一応これをみんなで確認しよう」

 のび太がそう答えると、ジャイアンは納得した。ジャイアンとのび太の二人は警戒しながら保健室に向かう。

 ――さっき見つけた、先生が残した手紙とMOディスクはやっぱり隠しておいたほうがいいかな。さっきジャイアンと健治もしずちゃんに違和感を感じていたし、もしかしたら何か黒幕が僕たちの誰かに変装して紛れ込んでいるという可能性も考えられる。

 のび太はそう考えつつ、黒幕のことを考えていたが、結論が出ないまま保健室に到着した。保健室の戸を開くと、健治がいの一番にのび太たちに話しかけた。

「で、収穫はどうだった?」

 健治がそう尋ねると、のび太はパソコン室の隠し部屋にあった警備関係の資料を見せた。

「パソコン室の隠し部屋にはこの資料があったよ。あまり役に立つとは思えないけど。あと、制御室は錠が掛かってて開かなかった」

 のび太がそう言うと、安雄は疑問を話す。

「制御室には誰もいなかったのか? 先生先生がいたと思ったんだが」

 安雄がそう話すと、のび太は答える。

「誰かいないかと思って呼び掛けたけど、返事がなかったから多分いないと思う。先生先生が今どこにいるかは解らない」

 のび太がそう答えると安雄は納得した。

「じゃあ、北舎中央部三階の調査に向かいたいところだが、どうするか……」

 ジャイアンはそう言いよどんでいた。

「僕が一人で行ってくるよ」

 そう言ったのはのび太だった。

「のび太、行くのはいいけど、理科室には例のカメレオンの怪物がいるかもしれない。一人で行くのはまずいんじゃないか?」

 ジャイアンはのび太にそう尋ねる。

「でも、大人数で行ってもうまくいくとは限らない。安雄の話だと安雄たちを死角かつ遠くから奇襲していたし、頭も悪くなさそうだ」

 のび太がそう言うと、安雄が話す。

「ああ、おまけに体色を変えてこちらを惑わしてくる習性もある。奴の場合、かえって人数が少ないほうがいいかもしれない。警官隊十数人が戦闘したときはすぐに全滅したが、俺や出木杉など少数人で戦闘したときは善戦できていた。詳しい理由は解らないが、人数が多くなるとあのカメレオンの動きが変わるのかもしれない」

 安雄がそう話すと、健治が意見を話す。

「ならよ、のび太と俺が理科室に行く。取り敢えずそれでいこうぜ。体色を変える上に賢いんじゃ、ゾンビとは比較にならなそうだ。危険そうならのび太を連れてすぐに逃げるからそれで納得してくれねえか?」

 健治がそう言うと、ジャイアンは全員に話すように言う。

「とにかく、今はのび太と健治に行かせてみよう。その代わり、何かあったらすぐに報告しろよ。遅かったら俺も理科室に向かう」

 ジャイアンのその言葉で全員は一旦は納得した。すると、安雄はのび太に歩み寄った。

「のび太。これが理科室の鍵だ。十分に気をつけてくれ」

 安雄はそう言いながら、懐に入れていた理科室の鍵をのび太に渡した。

「わかった。気をつけて行ってくるよ」

 のび太は最後にそう言うと、健治と共に保健室から出ていった。


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