のび太のBiohazard[The Nightmare]-Reconstruction-   作:青葉郷慈

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Area5[調査]

 スネ夫がゾンビの襲撃で資料室に逃げ込んだ頃、のび太は教材室の探索を終了したところだった。のび太がその教材室で見つけた物は、『Uzi』と云う名のサブマシンガンとそのサブマシンガンの予備マガジン、校章を模ったエンブレムのような物だった。

 ――この校章を模ったエンブレムは何の役に立つか解らないけど、重要そうな箱に入っていたし、何かの役に立つかもしれないから一応持っていこう。それと、このUziは最初からこの教材室にあったのか、それともこの事態が発生してから誰かが持ち込んだのかは解らないけど、これも持っていこう。ブレやすい銃だから僕には合わなさそうだけど、非常時には役に立つだろう。

 のび太はそう考えて資料室を出る。すると、懐に入れている通信機が鳴った。のび太は落ち着いて通信機の通信を繋ぐ。

「こちらのび太」

 のび太がそう言うか言わない内に、通信先の人物は慌てた様子で話す。

「のび太か! 実は今ゾンビに襲われているんだ。詳しい状況を話してる余裕はない。早く来てくれ!」

 のび太はそう言ったスネ夫の語調で只事ではないと感じる。

「解った。今すぐ行く! 場所はどこだ?」

 のび太はそう尋ねながら、急いで南舎に向かう。

「資料室だ。なるべく早く来てくれ」

 のび太はスネ夫のその言葉に相槌を打つと、通信機の通信を切って懐に入れつつ、北舎中央部一階西端と南舎西部一階を結ぶ渡り廊下を進み、南舎東部一階に急ぐ。やがて、南舎中央部一階と南舎東部一階を結ぶ扉を開けた辺りで異変に気付く。

 ――ここら辺、ゾンビの死体が集中して横たわっている。もしかしたらスネ夫はここら辺で交戦したのかもしれない。

 のび太はそう思いながら、廊下を急いで走る。すると、資料室の扉に着く前に床に落ちている【物】に気付いた。

 ――これは、スネ夫の持っていた猟銃か? ということはスネ夫は今丸腰か!

 のび太は急いで資料室の中に入る。資料室の扉付近からは資料室の奥は確認できず、スネ夫とゾンビの姿も確認できない。のび太は通路の曲がり角を曲がり、資料室の奥を確認する。すると、スネ夫が今にもゾンビに襲われそうになっている。

「スネ夫!」

 のび太は早撃ちの要領でベレッタM92FSを抜き、ゾンビに発砲する。弾丸はゾンビのうなじ辺りに命中し、ゾンビはその場に倒れる。のび太はゾンビが起き上がらないか警戒しつつもスネ夫に走り寄る。

「スネ夫大丈夫か!」

 のび太はスネ夫にそう呼び掛ける。するとスネ夫は安心した表情を浮かべる。

「おかげで助かったよのび太」

「何とか間に合ってよかったよ。さっきの職員室の件と合わせてこれで貸し借りなしだな」

「はは、そうだな。まあ、これからもよろしく頼むよ」

 のび太とスネ夫はそう会話する。すると、のび太があることに気付く。

「あれ、そういえば聖奈さんは?」

 のび太がスネ夫にそう尋ねると、スネ夫は今まで忘れていたのか、思い出したように言う。

「あ、そうだ! 聖奈さんもゾンビに追われていたんだ」

 スネ夫は懐から通信機を取り出し、聖奈の持っている通信機に通信を掛けた。しかし、聖奈が出ることはなかった。

「聖奈さんが出ない……もしかして」

 スネ夫がそう言い掛けるとのび太が話す。

「いや、ゾンビに追われていたっていうなら、もしかしたらどこかに落としてきたってだけかもしれない。とにかく周辺を探してみよう」

 のび太がそう話すと、のび太の通信機とスネ夫の通信機から同時に声が聞こえてきた。

「こちらジャイアン、この通信は全員に送っている。一旦全員の調査結果をまとめたい。調査はある程度のところで切り上げて保健室に集合してくれ。以上だ」

 二人の通信機から聞こえてきた声は間違いなくジャイアンのものだった。ジャイアンはそれだけ告げ、通信は切られた。スネ夫はのび太に尋ねる。

「どうしようか? 聖奈さんを捜さないといけないし」

 のび太はスネ夫のその言葉に答える。

「ここはジャイアンの言う通り一旦保健室に集まろう。僕たちだけで行動するのは危険だよ。幸い、全員が保健室に集まるのはそんなに時間はかからなそうだし、全員集まってからどうするか決めても遅くないはずだ。南舎中央部一階を一通り見回った後に保健室に待機しよう」

 のび太はそう話し、スネ夫はのび太のその提案に賛成する。のび太とスネ夫の二人は資料室を出ると、南舎東部一階の廊下と南舎中央部一階の廊下を見て回った。すると、南舎西階段付近にあるものが見つかった。それはのび太たちが使っているのと同じ通信機だった。のび太はそれを拾い上げて観察する。

「これはどうやら聖奈さんの持っていた通信機で間違いなさそうだ。周辺のゾンビの状況と落ちてる空薬莢の状態から察するに、ゾンビを射殺しながらここから二階に上がっていった可能性が高い。ジャイアンたちが何か知っているかもしれないし、一旦保健室に待機しよう」

 のび太がそう話すと、スネ夫はのび太のその提案に賛成する。のび太は聖奈が持っていた通信機を懐に入れ、のび太とスネ夫は保健室の中に入る。

 

 その暫く前、ジャイアンと静香の組は北舎中央部二階を調査し始めようとしているところだった。

「そろそろ、北舎中央部二階の調査を始めるか。しかし、しずちゃんがあんなに簡単に銃を扱えるとは思わなかったよ」

 ジャイアンが感心してそう言う。

「実はパパの友達が銃の扱いに関して精通している人で、その人から銃の扱い方を教えてもらっていたの。まさかこんなところで役に立つとは思わなかったけれど」

 静香がそう話すと、ジャイアンは納得する。

「へえ、そうだったのか。よし、早いとこ探索を始めるか」

 ジャイアンがそう切り出すと、静香はジャイアンの提案に賛成する。

 北舎中央部二階は廊下の形は北舎中央部一階と同じL字型であり、西端の南側に渡り廊下に続く扉がある。そこから北側に十メートル程進んだ先の突き当りには北舎西階段があり、その東側に四十メートル程進むと、廊下は行き止まりになっており、その北側に北舎東階段がある。北舎西階段と北舎東階段の間の廊下には、四年生の教室と相談室、音楽室がある。四年生の教室は三組あり、全て廊下の南側に位置している。また、廊下の南側には四年生の教室しかない。廊下の北側には東から相談室、音楽室と並んでいるが、相談室と音楽室の間は教室一つ分程度離れており、十二メートル程度離れている。

 ジャイアンと静香はまず相談室から調べることにした。相談室の通路はコの字を九十度左に傾けたような形状をしている。相談室は入り口が二つあり、西側の入り口から入って、右側の壁には丸椅子が四つ並んでおり、西側の入り口の戸から七メートル程北に直進した所で通路は右に折れており、そこを右に曲がって一メートル程の所の右側に扉がある。その扉の先は相談スペースになっており、相談スペースは正方形の形状をしている。相談室の通路から相談スペースに入ると、左側の奥には西側を向いて設置してあるソファーがあり、その手前には、デスクトップパソコンが乗っているパソコンデスクと椅子があり、パソコンデスクの上にあるデスクトップパソコンは南側を向いている。また、ソファーの西側、相談スペースの中央の位置に一つの机があり、その机を挟んで二つの椅子が、北側と南側に向かい合って設置されている。相談スペースと相談室の通路を繋ぐ扉付近から東に八メートル程相談室の通路を進むと、その通路は右に折れている。そこを右に曲がり、七メートル程進むと、相談室の東側の戸がある。また、相談室の東側の戸から見て左側の壁には資料や小冊子が収納されている棚がある。

 ジャイアンと静香は相談室の東側の戸から相談室に入る。

「じゃあ、私は相談スペースの方を探索するわ。武君は通路の方の棚をお願い」

 静香がそう提案すると、ジャイアンはそれに賛成する。ジャイアンは入ってすぐの場所にある棚を調べ、静香は相談スペースに入っていく。ジャイアンは棚を暫く調べているが、その棚にはカウンセリング用の資料や小冊子、児童書しかなく、一向に成果はない。

 ――ここには脱出の手掛かりになりそうな物は無さそうだな。調べる所も少ないし、しずちゃんの所に行ってみるか。

 ジャイアンは棚を調べ終えると、静香のいる相談スペースに向かう。相談スペースに続く扉を開けると、静香はパソコンを操作していた。

「手掛かりの探索を進めたけど、こっちでは何も成果なしだ。しずちゃんの方はどう?」

 すると、静香はジャイアンの言葉に応える。

「こっちも何も成果なしね。このパソコンに何か手掛かりがあるかもしれないと思ったけれど、パスワードロックが掛かってて操作できないわね」

 すると静香が何かを懐に仕舞い、その動作がジャイアンの目に入った。

「しずちゃん、今何を仕舞ったんだい?」

 ジャイアンがそう尋ねると、静香は答える。

「さっき仕舞ったのは、この銃の予備マガジンよ」

 静香はパソコンデスクの上に置いてある『Ingram M10』を持ち上げて示す。それを見てジャイアンは納得する。

「そうか、何か見つけた物があったのかと思ったよ」

 ジャイアンがそう言うと、静香は部屋を軽く見回しながら話す。

「この部屋はあらかた調べたけど、何も無かったわ。このパソコンのパスワードが解ればいいんだけれど、多分無理ね。この状況じゃパスワードを知っている人に会える可能性はかなり低いと思うから。とにかく、ここにはもう何も無さそうだから次の場所に行きましょう。音楽室なんてどうかしら?」

 静香がそう話すと、ジャイアンは静香の言葉に賛成する。ジャイアンと静香は相談室を出て音楽室に向かう。

 

 その頃、南舎中央部二階でも健治と太郎が調査を進めていた。南舎中央部二階の廊下の構造は南舎中央部一階と同じであり、長方形型に円を描いたような形状になっている。東西に延びている南側の廊下の南側には三年生の教室が並び、そこの北側の壁には、東側と西側に南舎東階段と南舎西階段がある。東西に延びている北側の廊下には東から男子更衣室、女子更衣室、視聴覚室と並んでおり、開閉の扉や戸は全て北側の壁にある。北側の廊下にはその他の部屋は無い。南側の廊下を突き当りまで西側に進み、その突き当りを右に曲がって三メートル程進むと、廊下は丁字路のようになっており、廊下は正面方向と左方向に延びている。そこから左に進むと、二メートル程で行き止まりになっており、その行き止まりの右側には、渡り廊下に繋がっている扉がある。二階には南舎西部は無い為、南舎中央部二階と北舎中央部二階の間に渡り廊下がある。南舎中央部二階の南側の廊下を突き当りまで東側に進み、突き当りを左に曲がって三メートル程進むと、右に簡素な扉がある。その扉の先は南舎東部二階になっている。

 健治と太郎はまず三年生の教室を調べることにした。しかし、三年生の教室には特に脱出の手掛かりになりそうな物は無かった。健治は諦めて、太郎を連れて視聴覚室に向かう。健治は二つある視聴覚室の戸の西側の戸を慎重に開ける。視聴覚室にはゾンビはいなかった。視聴覚室は戸の反対側の壁にホワイトボードがあり、その天井には収納されたスクリーンがある。戸から見て、そのホワイトボードの左側にはノートパソコンが置いてある机がある。ホワイトボードの手前には教卓があり、その手前には机と椅子が規則正しく並んでいる。その机と椅子は、五行八列で並んでおり、四十組ある。健治はまず四十組ある机と椅子を調べることにした。健治は、太郎と手分けして机と椅子を調べる。暫くすると、太郎が健治に話し掛ける。

「健治兄ちゃん、こんなのが机の中に入ってたよ」

 太郎はそう言いながら、束ねられたA4用紙の束を健治に渡す。それは警察の資料のようであり、その資料の一枚目にはこう書かれていた。

〈8月9日詳細不明暴動事件における作戦要綱〉

 健治はその資料をめくる。そこにはこう記載されていた。

〈概要

 8月9日午前8時頃より、東京都練馬区月見台芒ヶ原にて詳細不明の暴動事件が発生。暴徒の年齢、性別、素性に一貫性が見られず、犬などの動物の狂暴化が見られるため、接触感染タイプの病原菌を用いたバイオロジカルテロリズムの可能性あり。暴徒の数が比較的少ない為、空気感染の可能性は低く、仮に空気感染であっても感染力、伝染力は低いと思われる。暴徒との接触があった場合は速やかに情報共有をすること。準備でき次第、航空自衛隊大型輸送ヘリコプターCH-47Jをピックアップに向かわせる。その時までに芒ヶ原小学校の屋上を使える状態にしておくこと。今回の案件ではテロリズムの可能性と災害の可能性が考えられる為、SAT、自衛隊、所轄の共同で作戦を行う。特別な事由がない限り、作戦の指揮権はSATに委ねられる。

 一般市民の避難場所は芒ヶ原小学校の体育館を始めとした各教室とし、SAT或いは自衛隊の隊員数名で常に監視を行い、非常時には速やかに対処が行える状態にしておくこと。また、一般市民に対する『銃砲刀剣類所持等取締法』を一時解除し、自らの身を護れるようにする。一般市民に対してそれを伝えること。〉

 更にそう書いてある下には殴り書きでこう書いてある。

〈暴徒との接触の結果、基本的に統率はとれておらず、一つまたは複数の目的を持って個人が勝手に行動していると思われる。ただし、生命力は非常に高く、拳銃弾でも一発では絶命しない。筋力が高く、格闘戦では暴徒が有利であり、肉弾戦はリスクが極めて高い。〉

 その資料を見た健治は太郎に話す。

「どうやらここには警察がいたらしい。ゾンビとも戦闘したみたいだが、ここにいないってことはどこかに移動したってことかもしれないな」

 健治がそう話す。

「でも、そうだとしたら一体どこに行ったんだろう?」

 太郎がそう疑問を投げ掛けた。健治はそれに対して答える。

「どこに行ったかまでは判らないな。もしかしたら、この学校に集まっていた市民を安全な場所まで輸送した後に俺たちがここに来たのかもしれない。真相は判らないけどな」

 健治がそう答える。

「じゃあ、また警察の人が来るかもしれないね!」

 太郎は嬉しそうにそう言った。しかし、健治は懸念を拭い切れなかった。

 ――もし本当に市民を輸送したなら、こんな所に作戦資料がある訳ない。予測できる状況はいくつかあるが、決して楽観視できるような状況じゃないな……。

 健治はそう思いながらも、太郎にそれを話す訳にはいかないと思い、口には出さなかった。視聴覚室には他には何もなかったが、スネ夫が使うかもしれないと思い、健治はノートパソコンを持っていくことにした。太郎と健治は次に南舎東部二階にある五年生の教室を調べることにした。南舎中央部二階と南舎東部二階を繋ぐ扉を開けると、廊下は一直線に延びており、突き当りで行き止まりになっている。健治たちから見て右側の壁にのみ教室の戸があり、そこにある教室は五年一組と五年二組と五年三組の三つである。

「教室の中にも何かいるかもしれないから気をつけろよ」

 健治は太郎にそう注意を促すと、太郎は頷いた。二人はまず、手前側にある五年一組の教室から調べることにした。戸を静かに開けて中を確認すると、数体のゾンビがいた。健治は落ち着いてベレッタM92FSでゾンビの頭部を狙って射撃する。ゾンビの数が少ないこともあり、特に被害もなく終わった。健治は安全を確認すると、太郎を教室の中に入れ、二人で探索を開始する。五年二組と五年三組の教室も同様にして調べる。各教室にゾンビが数体いた他、〈9mmparabellum〉と書かれた赤と白のツートンカラーの箱二つと〈12gauge 2.3/4inch〉と書かれた深緑色と明緑色の迷彩柄の箱一つを見つけた。〈9mmparabellum〉と書かれた箱の中には9mmパラベラム弾が数十発あり、〈12gauge 2.3/4inch〉と書かれた箱の中には12番径ショットシェルが十数発入っている他、何かが書かれている紙切れがあった。健治はそれを確認する。

〈この文を読んでいる者がどういう立場の人間かは判らないが、一つだけ伝えることがある。もしこれを読んでいる時にこの学校及び周辺の施設に警察がいなかった場合、諸事情により我々警察がこの場にいないということである。現在のこの非常事態は警察でも前代未聞の事態な為、状況把握ができていない状態だ。現在の事件の最中は、各自が自分の身を護れるよう銃刀法を一時解除としている。この学校は避難所に指定されたが、決して安全なわけではない。極めて危険ではあるが、別の施設に移動することも必要だろう。この学校の裏の山にある旅館である『裏里』は山中にある為、暴徒の脅威は比較的少ない。この学校が危険になったときは『裏里』に避難することも視野に入れてほしい。この紙が入っていた箱にはショットガンの弾薬であるショットシェルがいくつか入っている筈。防衛手段として役立ててくれ〉

 その紙を確認した健治は太郎に話す。

「どうやらこれを残してくれた人は警察の人みたいだな。あと、避難所としてこの学校の裏山にある『裏里』って云う旅館を指定してきている。ここに行けば何かあるかもしれない」

 それを聴いた太郎は表情が明るくなった。しかし、健治は依然として懸念が抜けきらなかった。

 ――普通に考えれば、この非常事態に警察がいないとは考えられない。暴徒ともゾンビとも云える奴らに全滅させられた可能性もあるが、警察があの程度の奴らに全滅させられるとは考えにくい。何か別な勢力かあるいは、また別の特別な事態が起きたと考えられるな。

 健治は現在の状況から事態を推測しようとしたが、情報が少なく、結論までには至らなかった。南舎中央部二階と南舎東部二階の調査が終わった為、健治と太郎の二人は南舎中央部二階と南舎東部二階の間をつなぐ扉を開けて南舎中央部二階に進んだ。すると、扉を開けた先にはジャイアンと静香がいた。

「おお、健治か。そっちの調査は終わったのか?」

 ジャイアンが健治にそう訊くと、健治は答える。

「ああ、あらかた終わったな。更衣室は錠が掛かってそうだったからまだ調べてないな」

 健治がそう話すと、ジャイアンは言う。

「こっちに来てから健治たちを捜していたから、ついでに男子更衣室は調べたぜ。ロッカーを見てみたけど、サポーターしかなかったな」

 ジャイアンがそう話すと、健治はジャイアンに尋ねる。

「サポーターってその拳につけてるやつか?」

 健治がそう尋ねると、ジャイアンは答える。

「ああ、そうだ。素手で殴り過ぎるとさすがに傷ができるかもしれないからな。これでいくらかは遠慮なく殴れるはずだ」

 すると健治は驚く。

「……まさか今までずっと素手で戦ってたのか?」

健治がそう尋ねるとジャイアンは淡々と答える。

「ああ、そうだぜ。あまり数は多くなかったけどな」

 そのジャイアンの言葉を聴いた健治は驚いていた。

「よくあんなやつらに素手で対抗しようと思うな。俺だったら無理な気がするぜ。それに、素手で倒せるもんなんだな」

 健治は驚きつつも冷静な口調でそう言った。

「俺も最初の頃は不思議に思ってたんだがな。戦っている内に気にならなくなったな。火事場の馬鹿力ってやつかもな」

 ジャイアンは砕けた口調でそう答えた。そして、続けて話す。

「そうだ。そろそろ調査の進展状況を確認したい。全員保健室に集まるように招集をかけようぜ」

 ジャイアンはそう言うと、通信機を取出し、複数の周波数に同時に通信を掛ける操作をする。そして通信機に向かって声を掛ける。

「こちらジャイアン、この通信は全員に送っている。一旦全員の調査結果をまとめたい。調査はある程度のところで切り上げて保健室に集合してくれ。以上だ」

 そう言うと、ジャイアンは通信機の通信を切り、通信機を懐にしまう。

「じゃ、俺たちも保健室に向かうか」

 ジャイアンがそう声を掛けると、ジャイアン、静香、健治、太郎の四人は保健室に向かう。


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