のび太のBiohazard[The Nightmare]-Reconstruction-   作:青葉郷慈

4 / 8
Area3[散弾銃]

 のび太とスネ夫は会議室の戸を開ける。スネ夫は周辺を見回し、のび太に話し掛ける。

「ぱっと見たところゾンビは見当たらないけど、気をつけろよのび太」

「解ってるよ。どこかに身を潜めてるかもしれないからね」

 のび太はそう応える。二人は周囲を警戒しながら、書類などがある棚の前まで移動する。するとスネ夫がのび太に話し掛ける。

「よし、僕は左半分を調べるからのび太は右半分を調べてくれ」

「ああ、さっさと調べよう」

 のび太はそう応え、二人は棚を調べ始める。しかし三分の二ほど調べ終わったところで異変は起きる。急にゾンビの唸り声が聞こえ、スネ夫とのび太は驚いて振り返る。部屋の両端に一体ずつ、長机の向こう側に一体、計三体のゾンビが現れた。

「やっぱりここにもいたか。のび太、慌てずに一体ずつ処理していこう」

「ああ、解っている」

 スネ夫とのび太はそう話すと、のび太はベレッタM92FSを構えて両端にいるゾンビの内、のび太たちから見て左側のゾンビに向かって発砲した。弾丸は額に命中してゾンビは倒れる。スネ夫がそれを見て感心する。

「おお、流石だなのび太。こっちも片付けるか」

 と言うなりスネ夫は、スネ夫の右方向から彼目掛けて向かって来ているゾンビに向かって十三年式村田銃を発砲する。少量のペレット弾がゾンビの腹部に命中し、ゾンビはその場に沈む。

「よし、あと一体だな」

 スネ夫はそう呟きながら十三年式村田銃の排莢と再装填動作を行ったが、その最中に残りの一体のゾンビが行動を起こし、そばの机をのび太に向かって突き飛ばした。のび太は飛んできた机に飛ばされ、棚に激突した。激突した衝撃で、棚の書類は一斉に落ちた。スネ夫は十三年式村田銃の再装填を終え、銃口をゾンビに向ける。スネ夫はゾンビの頭部を狙って撃つ。ゾンビは頭の上部が陥没し、行動を停止してその場に倒れる。ゾンビを始末したことを確認すると、スネ夫はのび太に話し掛ける。

「大丈夫かのび太」

「ああ、なんとか大丈夫だよ。――ん、これは何だ?」

 のび太は手元にある一枚の紙に目を惹かれた。その紙をスネ夫も見た。するとスネ夫が呟くように言う。

「6358? 何かの暗証番号かな?」

 その一枚の紙には算用数字で〈6358〉と書かれていた。

「……四桁の暗証番号、どこかで――あっ!」

 その瞬間、のび太は校長室に四桁の暗証番号で開く金庫がある事を思い出した。すると、のび太の様子を見たスネ夫がのび太に尋ねる。

「どうしたのび太?」

「そういえば、校長室に四桁の暗証番号でロックされている金庫があったんだ。この四桁の番号で開くかもしれない」

「なるほど、試す価値はあるかもしれないな。さっそく行ってみるか」

 スネ夫とのび太はそう会話すると、急いで校長室へ向かう。校長室に着くと、のび太が金庫の前にしゃがみ込み、暗証番号を入力した。すると、金庫の戸が開く。

「おっ中身は何だ?」

 スネ夫はそう喋り、のび太は中に入っていた物を慎重に取り出す。中に入っていたのはフィックスドストックの曲銃床がある一般的な散弾銃だった。その散弾銃は光学照準器が取り付けられておらず、マガジンも六発装填式のチューブラーマガジンである。のび太がそれを見ると話す。

「これは、『レミントンM870』だな」

「『レミントンM870』? 何だいそれ?」

所謂(いわゆる)散弾銃(ショットガン)だよ。知名度でも性能でも有名な散弾銃だったはず」

「へぇ、そうなんだ。僕は猟銃を持っているからのび太が持っていけよ」

「ああ、解った。正直ハンドガンだけじゃ心許(こころもと)なかったからね。これは結構な戦力増強になるよ」

「よしっ、ここら辺の調査も終わったし、一度保健室に戻ろう」

 のび太とスネ夫はそう会話を終え、校長室と職員室を後にして保健室に入る。保健室に入ると、聖奈が話し掛ける。

「二人ともどうしたんですか?」

 聖奈がそう尋ねたので、スネ夫が答える。

「調査が一段落終わったからちょっと休憩に来たんだ」

「そうですか。私は治療薬の準備がもう少し掛かります。粉末状にするだけなので本来なら時間は掛からないはずですが、慣れていないので少し時間が掛かってしまって」

 聖奈はそう話しながら、ミルサーでハーブを粉末状にしていた。

「いや、大丈夫だよ。こういう知識があるだけでも嬉しいしね。僕らも休めて丁度いいし」

 のび太がそう言うと、聖奈は微笑んだ。その後、のび太たちは少しの間保健室で休憩していた。休憩中、誰もが無言だったが、聖奈が最初に口を開いた。

「ハーブの粉末化も終わりましたし、そろそろ調査を再開しましょう」

 すると、のび太が聖奈に質問する。

「それはそうと聖奈さん。そこにあるミキサーみたいな物はここにあったの?」

 のび太がそう質問すると、聖奈はいままでハーブの粉末化に使っていたミルサーをのび太に見せながら答える。

「ええ、これはこの保健室にあったミルサーですね。なんでこの保健室にミルサーがあるかは解りませんが、よく手入れはされているので、使われていない物ではなさそうですね」

 のび太は聖奈のその言葉に納得する。すると、スネ夫が言い出す。

「じゃあそろそろ調査を再開しよう。僕と聖奈さんは南舎東部一階にある図書室と資料室を調査する。のび太は南舎西部一階の給食室や家庭科室、余裕があれば北舎中央部一階の方も調査してくれ」

 スネ夫がそう話すと、のび太はそれを了承した。

「すみませんのび太君。人数が足りないばっかりに一人で調査させてもらって」

「そんなことないですよ」

「だけど一人だと危険なんじゃ――。やっぱり三人で行動した方がいいんじゃないですか?」

「大丈夫ですよ。こう見えても射撃の腕前は自信があるからね。僕の狙った標的には必ず弾丸が当たりますから。それに、二手に分かれたほうが効率がいいですよ」

「それはそうですが――。気をつけてくださいね。危ないと思ったら退いていいですから」

「うん解ってるよ。そっちも気をつけて」

 のび太と聖奈がそう会話を交わすと、聖奈とスネ夫は南舎東部一階に向かう。

 

 

 のび太も動き始め、南舎西部一階に向かう。保健室から出て西側に進み、突き当りを右に曲がる。三メートルから四メートル程先の左側に、南舎中央部一階と南舎西部一階を仕切っている簡素な扉がある。その扉を開けると、三十メートル程延びた後クランク型に南北二股に分かれている廊下がある。二股に分かれている廊下の内、北側には家庭科室と渡り廊下への扉があり、南側には給食室がある。のび太はまず家庭科室から調べることにし、家庭科室の扉を開けようとするが、錠が掛かっており開かなかった。のび太は気を取り直し、給食室の方に向かう。給食室の扉は、金属製の重量感がある観音開きの扉であり、のび太はそれを慎重に開く。扉は重々しい音を鳴らしながらゆっくりと開かれる。のび太が開けた扉の前には壁があり、左側に通路が延びている。七メートルから八メートル程延びていった所で通路は突き当たり、右に通路が折れている。のび太はベレッタM92FSを構えて周囲を警戒しながら給食室の中を進んでいく。突き当たりで右に折れている通路の所を右に曲がると、通路の真ん中には苦悶の表情を浮かべて仰向けに倒れている、給食室の中年の女性職員がいた。その女性職員は腹部から大量出血しており、生きているようには見えなかった。のび太は現実感のある死体を直視し、思わず目を背けた。のび太はなるべく死体を見ないようにして死体を通り過ぎた。死体を通り過ぎると右側に開けた空間があり、その空間には冷蔵庫、ガスコンロ、シンクがあり、調理スペースだと解る。まっすぐ延びている通路は突き当りで左に折れていた。のび太は調理スペースを調べるのは後にし、先に通路の先を調べる。突き当たりを左に曲がると、すぐそばで右に曲がっている通路と、まっすぐ延びている通路がある。まっすぐ延びている通路の先にはトラック搬入口がある。しかし乗用車が激突した痕が見られ、見るも無残な姿になっており、そこからの出入りはできない。のび太は通路を右に曲がり、その先を調べる。その先は一つの扉があり、その扉には〈控え室〉と書かれたプレートが付いている。のび太はその扉を慎重に開け、内部の様子を窺う。内部には特に異常はなく、何かの書類などが入っている棚やロッカーがあるスペースと、右奥の方にはソファーやテーブルや給湯器や食器棚、ガスコンロなどがある休憩スペースがある。のび太はこの控え室も念入りに調査する。

 数分後、のび太はこの控え室を調べ終えたが、脱出の手掛かりになるような物は無かった。しかし書類が保管されている棚にて、とあるフロッピーディスクを発見した。

 ――中に何が入っているか解らないけど、これは何かの手掛かりになるかもしれないな。後でスネ夫に調べてもらおう。

 そう思ったのび太は、懐にそのフロッピーディスクを仕舞った。次にのび太は給食室の調理スペースを調べることにした。まずのび太が注目したのはダストシュートである。のび太が以前読んだ漫画でダストシュートで脱出するシーンがあり、今回の件でそれが実際に使えるかもしれないと思ったからである。しかし、ここのダストシュートはのび太が思っていたのよりもずっと小さく、人が入れるような大きさはない。のび太は今度はガスコンロ付近を調べる。ここのガスコンロは着火装置が無く、ガスのみを噴き出すタイプのガスコンロだ。シンク付近も調べるが特におかしい所はない。のび太は給食室を出ようとして踵を返すと、天井から金網が落ちてきた。のび太は突然の事態に驚いたが、ベレッタM92FSを構えながら金網が落ちてきた場所の真上を見た。金網が落ちてきた場所の真上の天井には正方形の穴が空いており、そこから金網が落ちてきたと推測できる。のび太は暫く穴を睨む。やがて、その穴から六本脚の昆虫の様な異形の生物が現れた。その生物は成人男性並みの身長はあった。その生物は天井から床に着地すると床に這いつくばった。それから間髪入れずに二本の脚で直立すると、のび太に向かって走ってくる。のび太は咄嗟にベレッタM92FSの引き金を絞り、発砲する。数発の弾丸が当たったが、その生物はそれをものともしないで走ってくる。のび太は発砲を止め、左に身をかわす。その生物はのび太を掴みかかろうとしていたのか、のび太が元いた場所に掴む動作をしていた。その生物はのび太の方に向き直る。

「KISHAA!」

 その生物は奇声を挙げながら二本の腕を振り上げつつ、のび太に向かって走る。のび太は既にベレッタM92FSを懐に仕舞っており、両手には何も持っていない手ぶら状態だった。その生物はのび太の両肩を掴む。それと同時にのび太もその生物を掴む。のび太は右手でその生物の顎を掴み、左手でその生物の中央の右腕を掴む。のび太は自分の左足をその生物の股下に潜らせて立っている。その生物はのび太を捕食しようとしているのか顔をのび太の頭部に近づけてくる。のび太は顎を掴んでいる右手でそれを制止しようとしている。少しずつその生物の顔がのび太の頭部に近づいてきている。その生物の顔とのび太の頭部の間が数センチメートルくらいまで縮んだ瞬間、のび太は体を左に捻りながら、その生物の股下を通り抜けさせた自分の左脚でその生物の右脚を払う。その生物は体勢を崩す。のび太はそのまま右手でその生物の顎、左手でその生物の中央の右手を掴んだまま、体を左に捻ってその生物を転倒させる。のび太は右手でその生物の顎を掴んだままにし、左手は放す。右足でその生物の胴を踏みつけると右手も放し、背中に掛けていたレミントンM870をその生物に向けて構える。のび太はその生物の上半身付近を狙って発砲する。

「GISYAA!」

 二発程撃つと、その生物は奇声を挙げてもう動かなくなり、のび太は安堵の息をつく。のび太は続いて冷蔵庫も調べる。その中にはいくつかの食肉と野菜などの食料があった。しかし、食肉は生肉な上、調理された料理は一切無い為、誰かが調理しないと食糧として機能しなさそうな物ばかりだった。

 ――一応食料と云えば食料だけど、調理しないと食べられそうにないな。金田さんならできるかもしれないから後で訊いてみるか。

 のび太はそう考えると、一旦冷蔵庫を閉める。そして踵を返し、今度は北舎中央部を調査する為、渡り廊下に向かう。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。