のび太のBiohazard[The Nightmare]-Reconstruction-   作:青葉郷慈

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のび太のBIOHAZARDの二次創作小説です。更新は遅めになるかもしれません。


オープニング
[街の異変]


 ――僕たちは夏休みも後半に差し掛かってきた頃、ドラえもんに無人島に連れて行ってもらえることになった。僕たちだけで遊んだ毎日はとても楽しかった。無人島で遊んだのは三日間だけだったけど、とても充実していた。帰った後、ママとパパに自慢するのも楽しみだ。でも、この時から僕たちの人生は狂い始めたのかもしれない。

 

 無人島でのバカンスも終わり、のび太たちは『どこでもドア』でのび太の部屋に帰った。野比のび太、骨川スネ夫、源静香、ジャイアンというあだ名で呼ばれている剛田武、ロボットのドラえもんの五人は興奮冷めやらぬ様子で無人島での楽しい日々を話している。野比のび太は黄色の襟付き半袖シャツと紺色の短パンを穿いており、靴は青の運動靴。骨川スネ夫は水色の襟付き半袖シャツと黄色の短パンを穿いており、靴はのび太と同じ色の青の運動靴。ジャイアンは薄めの黒の長ズボンと、横方向に一本の太い白のラインが入ったオレンジ色のトレーナー、靴はのび太たちのより濃い色の青の運動靴。源静香は襟付きの長袖と一体型のスカートを穿いており、色は桃色、靴も桃色の運動靴である。ロボットのドラえもんは青を貴重としたボディに顔と手と足は白色、先端が赤色になっている尻尾、赤色の首輪に黄色の鈴をつけていた。ドラえもん以外の四人は、靴を脱いで手で靴を持っている。

 会話を終えると、ドラえもんは『タケコプター』を頭に付け、机の上の窓から外に出た。そしてジャイアンとスネ夫と静香は、脱いだ自分の靴を持ったまま一階に下りて玄関から外に出た。のび太はバックの中の荷物を少し整理すると、のび太の母親である、『野比玉子』にまだ顔を見せていない事に気づき、一階に下りていった。

 ――ジャイアンたちが一階に下りたのにママが僕を呼ばないのは珍しいな。

 のび太は不思議にそう思いながら、階段を下りて一階のキッチンへ向かった。

 のび太の母親――野比玉子はのび太の思った通り、キッチンにいた。

「あれ、ママどうしたの?」

 のび太は、野比玉子がキッチンの壁際でしゃがんで何かをしている事に気づき、声を掛けた。しかし、野比玉子は気づいていないのか、振り返りもしない。

「ちょっとママ!」

 野比玉子が気づいていないようだったので、のび太はそう叫んだ。すると、野比玉子はゆっくりと振り返り、のび太の方を向く。野比玉子は人間のものとは思えない変な唸り声を挙げる。野比玉子であることは間違いなかったが、顔は見るも無残な姿になっていた。所々皮膚が破けていて、肉や骨が見えている所もあった。のび太はその光景に不快感を感じ、吐き気を催した。

「ま……ママ? い……一体どういうこと!?」

 のび太は野比玉子の変わり果てた姿を見ていられず、野比玉子の顔から目を逸らした。すると振り返った野比玉子の後ろにある人影がのび太の目に入った。……それはのび太の父親――野比のび三の変わり果てた姿だった。胴体と頭は離れており、のび太はその光景を見ると、それ以上見ることができずに目を逸らした。すると、重量のある【物体】が転がってくる音がのび太の耳に聞こえた。のび太は何が転がってきたのか恐る恐る確認すると、それは変わり果てた野比のび三の頭部だった。頭の左半分が無くなっており、そこから頭蓋骨が露出していた。のび太はあまりの出来事に強烈な吐き気を催し、その場にうずくまった。嘔吐はしなかったが、今にも吐きそうな表情をしていた。

「ああー」

 変な唸り声でのび太は我に返り、目の前に誰かの足があることに気がついた。それが変わり果てた野比玉子だと気づくのに時間は要しなかった。

 ――ママが変だ! ここは逃げないと。

 のび太は転がりながら必死で玄関に向かった。しかし下駄箱付近であることに気がついた。

 ――しまった! 靴を忘れた!

 のび太はキッチンに行ったときに自分の靴を持っていた。しかし、あまりの出来事の所為でキッチンに靴を忘れてきてしまった。のび太の後ろにはおかしくなった野比玉子がいる。

 ――今から戻ってもかなり危険だ。下駄箱に予備の靴があったはず――。

 のび太は急いで下駄箱の戸を開け、靴を探した。……幸い、さっき履いていたのと同じ色の靴を発見した。サイズも十分だった。のび太は靴を履き、玄関の扉を勢いよく開けた。

 ――――!

 しかし、外も同様に……いや、外の方が悲惨な状況だった。周りには血だらけで倒れている人、それに群がる人々、四つん這いになって、倒れている人を食べている人がいた。それにあちこちで火災が起きていた。のび太はおぞましい光景に驚いて悲鳴を挙げながら尻餅をついた。すると手元で小さな金属音がのび太の耳に聞こえ、のび太の手には金属の感触があった。のび太は恐る恐る手元を見てみた。するとそこにあったのは拳銃だった。その拳銃は黒光りしており、おもちゃじゃない事は容易に判断できた。その拳銃はベレッタM92FS――世界でも相当有名な自動拳銃だった。

 ――すぐそばに警官が倒れてる。この警官の拳銃か?

 のび太はそう思いながら『ベレッタM92FS』を持ち上げた。しかし、悠長に構えている暇はなかった。先ほどのび太が悲鳴を挙げた所為で、変な人たちが集まってきたからだ。

 ――とにかく逃げないと! 何処か大きな建物…………学校だ! 取り敢えず学校に逃げ込もう。例え学校に生存者が一人もいなくても学校に逃げ込む。僕に選択の余地はない。

 のび太は無我夢中で走りだした。途中、悲鳴や怒声がのび太に聞こえたが、のび太は止むを得ずそれを無視した。構っていられる時間的余裕も精神的余裕も全くなかったのだ。更に、所々で火災が起きていたり、自動車が放置されていて、道が塞がれている所が多々あった。

 ――いつも通っている道が相当制限されてる。……後はデパートの倉庫を横切るルートしかないか。

 のび太は倉庫を目指し再び走り出したが、倉庫の前には相当な数の変な人たちがいた。――しかし、ここを通らなければ学校には行けない。覚悟を決めるしかない。

 のび太は覚悟を決め、できる限り姿勢を低くして全速力で駆け抜けた。変な人たちは掴み掛かろうとしてきたが、のび太は運よくすり抜けられた。そして倉庫の扉にたどり着いた。のび太は扉を勢いよく開け、逃げ込む様に倉庫の中に入った。

 ――何とか凌げた。……でもここも危険だ。休むのは学校に着いてからにしないと。

 のび太は重い体を動かし、先に進んだ。倉庫を出た所も火災があらゆる場所で起きていたが、一つだけ進める道路があった。

 ――よかった、学校へは行けるぞ。みんなも学校に逃げているといいけど。

 のび太は後ろを確認し、変な人たちが来てないのを確認すると、ゆっくり歩いて校門から学校の敷地内に入った。しかし、まだここも安全ではなかった。玄関のそばで二匹の犬が人の死体を貪り食っていた。二匹の犬はのび太に気づくと、のび太の方を向いて唸り声を挙げた。

 ――人間だけじゃなく、犬もおかしくなっているのか……いつだって凶暴な犬は嫌いだ。

 二匹の犬は躊躇なくのび太の方に向かって来た。――状況が解らない以上、下手に戦うと危険だ。幸い学校はすぐそばだ、逃げ込もう。

 のび太は犬の突進を右に移動して避け、そのまままっすぐ校舎の玄関に向かった。のび太は校舎の中に入ると、急いでスライド式の玄関の戸を閉めた。凶暴な犬は玄関の戸に体当たりしてきているが、学校の戸は頑丈にできていて簡単には破られなかった。やがて凶暴な犬は諦めたのか、踵を返してどこかに歩いていった。のび太は安堵すると、すぐそばの部屋に向かって歩いた。


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