恋する乙女と最凶の大剣   作:nasigorenn

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今回は少しセシリアを弄ります。


第八十三話 せっかくだから観光に その2

 上司の命令こと、勝手な押しつけでお嬢様とデートに行くことになっちまった。

まぁ、あんなムサい所に一週間も詰め込まれりゃ誰だって逃げたくなるってモンさ。それをお嬢様ったら真面目なもんだからなぁ。我慢がよく出来ることで。

最後くらいはアメリカらしいところを見せてやらねぇと可哀想ってもんだ。

つってもここはアメリカの片田舎だ。首都みてぇな賑わいのあるオシャレなもんがあるわけでもねぇ。せいぜい近くの都会化の進んだ街でデートするのが関の山。

そんなデートでお嬢様が満足してくれるとは思えねぇが、そこは勘弁だ。

クロード達と別れると一端出掛ける支度をするってんで部屋に戻ったお嬢様を待ち、来たお嬢様を連れてオレ達は外のハンガーに入った。

そこに置かれてる万博みてぇな様々なもんから、奥に置いてある厳つい二輪の方へと近づいて行く。

 

「こ、これは……大きなバイクですわね」

 

お嬢様はこの厳ついバイクを見て驚き、何やら感動した声を上げる。

どうやらお上品なお嬢様は間近でバイクを見たことがないらしい。実に興味深そうな面をしてるよ。

 

「こいつはハーレーダビッドソン。アメリカが誇るバイクメーカーのもんで、ごつくて中々にイカしてんだろ。こいつはクロードが趣味で買ったもんなんだが、奴さんは忙しくてあまり移動することがねぇんでな。御蔭で新品とそこまでかわらねぇ」

 

そうお嬢様に言いながら跨がってエンジンをかける。

すると腹に響くいい感じの振動が走り、噴かせばお嬢様がビクッと身を萎縮させるくらい派手な爆音がハンガーに響き渡る。

 

「び、びっくりしましたわぁ……レオスさん、ひどいですわ。せめてやる前に声をかけて下さればいいのに」

 

驚き過ぎたのか、少しばかり涙目になってるお嬢様。

ついつい弄りたくなるってもんだが、こいつはいけねぇなぁ。今日はデートだからよ。紳士にいこうか、上司様には負けるがねぇ。

 

「悪かったな、お嬢様。久々なんで少し様子を見たかったんだ」

「そ、それなら仕方ありませんわね」

 

寛大な御心のお嬢様はお許しになさって下さったことで。

まさか初っ端から泣かせただなんてことが知れ渡っちまったら、オレは明日からクロードにエスコートの仕方を一から叩き込まれそうだ。そいつは本当に勘弁だ。

それならまだあのクソ親父と殺り合ってる方が数倍ましってもんだよ。

そのまま軽く動かすと、お嬢様の方に手招きする。

 

「後ろへどうぞ、お嬢様」

「は、はいですわ」

 

お嬢様はオレの誘いに初々しく顔を赤くしてバイクの後ろにちょこんと腰掛けた。

それは実に可愛らしいもんだが………。

 

「それじゃあ落ちちまうよ。ちゃんと跨がってくれ」

「そ、そんな! はしたないですわ……」

 

どうもお嬢様は足を広げて跨がることがはしたなく感じるらしい。

流石は女の子ってやつだ。野郎ならそんなことは一切気にしねぇからなぁ。聞いててこっちも初々しい気分になるってもんだ。

だが、それを許しちまうとお嬢様はバイクから振り落とされて地面とキスしちまう。そいつは避けねぇとならねぇんでなぁ。

 

「お嬢様、我慢してくれよ。もしお嬢様に怪我でもさせちまったら一大事なんだからなぁ」

「わ、わかりましたわ(レオスさんが心配してくれましたわぁ!)」

 

お嬢様は恥じらいつつもバイクに跨がった。

その際スカートがめくれ、白い御御足オレの目に入る。それが何とも扇情的で眼福だ。

まぁ、言わぬが花って奴だな。誰だって火花はくらいたくねぇ。

そしてお嬢様はオレの身体に軽く手を回す。

そうでもしねぇと落っこちるってのは流石に分かってるらしい。

 

「よし。んじゃ、しっかり捕まってろよ、お嬢様!」

 

景気よくかますとしますかねぇ。

一回マフラーを思いっきり噴かすと、一気にアクセルを入れた。

そこからはご想像の通り、凄い勢いでバイクが走り始めた。

 

「きゃ、キャアッ!」

 

お嬢様の驚く声に満足しつつ、更に加速しながら突っ走って入り口まで向かう。

その最中、何人かに叫ばれたが無視だ。

どうせ、殺す気か! だの危ねぇじゃねぇか! だのとそんなところだろ。

寧ろこんなんで死ぬんだったらそいつはこの仕事を辞めた方が良いぜ。それに文句を言いつつも全員ちゃっかり避けてるんだからいいだろ。

そのまま野次を聞きつつゲートを潜り、街に向かって荒野を爆走する。

流石に田舎だけあって車なんて走ってねぇからなぁ。飛ばしたい放題だ。

するとお嬢様がオレの身体に思いっきりしがみついてきた。背中に当たる胸の感触がこれまた良い感じだ、まさに役得ってなぁ。

 

「れ、レオスさん、速いですわ! もっとゆっくり!」

 

後ろからお嬢様の声が上がる。

この速さで聞き取るのは結構難しいが、出来ねぇわけじゃねぇ。

 

「おいおい、お嬢様! この程度の速さ、ISなら普通に遅いだろ」

「ISとは違いますから! 危ないですわよ! って、キャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

お嬢様が喋ってる最中にさらに速度を思いっきり上げると、お嬢様から何とも綺麗な悲鳴が上がった。そんな風に驚いて貰えてオレは嬉しいよ。

そんなお嬢様を楽しみながらしばらくドライブは続いた。

 

 

 

 そのまま飛ばすこと30分弱。

オレ達は多少はマシになってる街に着いた。

 

「さて、到着っと。どうだい、お嬢様。ドライブの感想は?」

「ぐす……ひどいですわ、レオスさん。速くしないでってあれほどお願いしましたのに……」

 

なんともまぁ可愛らしく涙目になってるお嬢様。

そこまで怖がる必要もねぇと思うのはオレだけかねぇ。

 

「悪かったよ、お嬢様。こんな田舎だが、それでも遠いんでなぁ。早く着くに越したことはねぇのさ」

「それでも~……うぅ……」

 

力なくその場でしゃがむお嬢様は、どうやらさっきのドライブで力が抜けたらしい。

そんなお嬢様に喝を入れるべく、オレはニヤリと笑ってお嬢様に話しかける。

 

「どうしたよ、お嬢様。さっきまであんなに人の身体にしがみついてたってのに。その時のガッツは何処に行ったんだ?」

「っ!? っ~~~~~、酷いです……(さっき必死だったとはいえ、レオスさんの身体に思いっきり抱きついてしまって……キャァーーーーーーーーーーー!!)」

 

お嬢様は顔を赤くして恥じらいつつも怒るという何とも面白れぇ顔をした。

だからお嬢様を弄るのは楽しいんだよなぁ、こういう表情がみれるからねぇ。野郎でやったらぶっ殺したくなるもんだけどな。

そんなお嬢様に笑いかけながら抱き起こしてやると、お嬢様は短い声を上げて驚いた。

 

「それじゃ動けなさそうだからなぁ。捕まってろよ、お嬢様」

「は、はぃ………」

 

お嬢様は差しだした腕にしがみつく。

その腕から伝わる胸の感触が何とも心地良いもんだ。

それが分かってるからなのか、お嬢様の顔は更に赤くなっていく。

まったくもって可愛いもんだよ。

 

 

 

 そして始まったお嬢様とのデート。

つってもこんな田舎じゃ出来ることなんて限られてるからなぁ。

まずは買い物といったところかねぇ。

それなりに高そうな服屋に入ると、お嬢様に向かって店員が殺到してきた。

流石はモデル顔負けの美人ってだけあって服屋の店員は黙ってなかったようだ。

 

「お客様、これなんて如何でしょう!」

「いや、あの、その……」

 

テンション高めの店員に戸惑うお嬢様は口籠もると、オレに向かって助けを求める視線を送ってきた。

それを受けたオレは笑顔を浮かべると、店員に向かって話しかけた。

 

「せっかくのデートなんでなぁ。このお上品なお嬢様にいつもと違う大胆な恰好をさせてくれねぇか」

「あ、はい! 彼氏さんがそう言うのなら!」

「レオスさん~~~~~~!」

 

お嬢様は更に鼻息を荒くした店員に服を勧められオレをキッと睨んできた。

そこでオレは知らぬ存ぜぬで口笛を吹いてスルーする。

その反応にお嬢様は裏切られた~って感じに恨みがましく見てきたが、ハイテンションの店員に強引に連れてかれて結構な服の量と共に更衣室に押し込められた。

そのまま待つこと約10分。

更衣室のカーテンが開くと、そこにはいつものお嬢様からは考えられない姿のお嬢様が出てきた。

着ているのは上は白いノースリーブシャツに下はマイクロデニムのショートパンツ。それに足には黒いニーソが合わせられ、頭に日本で使われてる麦わら帽子を被っていた。

 

「こ、こんな恰好、恥ずかしいですわぁ……あぁ、鈴さんはいつもこんな恰好で

恥ずかしくないのかしら」

 

お嬢様は恥ずかしそうに尻に食い込みそうになるショートパンツを直しながら一人愚痴る。そんなお嬢様を励ますかのように店員はオレに向かって聞いてきた。

 

「どうでしょう? 清楚な方だったので。ここは思い切って活発な感じに仕立ててみました。やはり美人は何を着せても似合いますからね。カウボーイのイメージで、じつにアメリカらしいかと」

「あぁ、いいんじゃねぇか」

 

店員にそう答えると共に服の値段を聞き、お嬢様が恥じらっている内に会計を済ます。

 

「あ、そんな! わたくしが払いますのに……」

 

お嬢様はオレが金を払っているのに気付き、慌ててオレの方に来た。

そんなお嬢様にオレは帽子に手を置いて、軽く撫でながらお嬢様にこう言ってやった。

 

「いいんだよ、これで。デートで男が払わねぇってのは一番最低なんでなぁ。それに……こんなに似合ってるんだ。これぐらい払わせてくれよ、お嬢様。可愛いぜ」

「あ、あぅ…………」

 

お嬢様はそのまま真っ赤になって何も言わなかったが、オレの上着の裾をちょこんと摘まんで離れないように歩き始めた。

なんとまぁ、可愛らしいことで。

そう微笑ましいもんが見れたんで喜ばしいんだが………。

 

どうもさっきから臭うんだよなぁ……ドブネズミの臭いが…なぁ。

 

 

 

 


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