恋する乙女と最凶の大剣   作:nasigorenn

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ちょっと変わった感じですかね~。


第七十七話 馬鹿に付き合わされたツケは払って貰うのは当然のこと

 さて、馬鹿丸出しなオペラを堪能したわけだがこれで終わりって訳にはいかないらしい。政府のお偉いさん方が捕まってた観客の保護やら事態の収拾やら死体の処理やらでバタついてる中、オレは帰ってきたクロード達に早速お説教を喰らっていた。

 

「レオス、会話は聞いていましたが……あれはあまりにもお粗末でしたよ」

「餓鬼~、聞いたぜぇ! 交渉に失敗して危うく人質殺されかけたってなぁ」

 

クロードが呆れたって面でこっちに目ぇ向けると、クソオヤジが爆笑して腹を抱えてやがった。

クロードに説教されんのは毎度のことだが、クソオヤジ、テメェが笑うのはどうにも我慢ならねぇなぁ。

 

「うっせぇよ。元々向いてもいねぇ仕事をやらせる方が悪いってもんだろ。最初から上手くいったら努力なんて言葉は存在しねぇよ。それとクソオヤジ、テメェも人のことを言えないくらい交渉ベタじゃねぇか。二年前にやった交渉は今でも覚えてんだぜ。あの爆笑もんのやつをよ。人の揚げ足取る前にテメェの残念なお脳をどうにかしな」

「ほう、よく覚えてやがったな餓鬼。あれは寧ろ味があるっていうんだよ、このボケが。そいつがわかんねぇからまだ餓鬼なんだよ、この童貞」

「はいはい、お互いになじるのもいい加減にして下さい。私からすれば二人とも残念ですので」

 

オヤジと睨み合っていたところでクロードに止められちまった。

こいつもこいつだ。こんなクソオヤジ、とっととぶっ殺した方が絶対に世界が平和になるってもんなのによぉ。

とは言え、流石にこの上司様の前で暴れようもんなら、減俸という名の断罪が下されちまうからなぁ。流石にこれ以上されちまったら、ケツの先まで干上がっちまう。

そいつだけは死ぬよりもゴメンだね。

仕方なく黙ってると再び始まるお説教。そいつはさっきのオペラなんかよりよっぽど聞き応えがあるってもんさ。

 

「いいですか、交渉というのは………………………………………………」

「あぁ~、そう言うなよ。確かにその通りなんだが、オレは始めてなんだぜ。引き延ばしが出来ただけでもまだマシだろ」

「そういう問題ではありません。引き延ばすことなんていくらでも出来ます。寧ろ私が駄目だと言っているのは、相手に引き金を引かせようとしてしまったことです」

 

流石は我が部隊一の真面目。聞いててうんざりするくらい正しいこと言って来やがる。

御蔭で聞いてるこっちはげんなりしちまうよ。

はぁ、お嬢様の顔でも見て癒されたいねぇ(笑)。

そのまま小うるさいお説教ってBGMをしばらく聞いた後、戻ってきたダニガン達も合流した。後はこのまま帰れば良いだけなんだが、それだけじゃねぇそうだ。

クロードは帰ってきたダニガン達を見て笑うと、周りに聞こえない様に小声で話し始めた。

 

「皆さん、まずご苦労様でした。今回の依頼も無事完了です」

 

いつも通り丁寧な挨拶をするクロード。

だが、それならこんな風に周りに聞かれないように小声で話すわけがねぇ。

そいつが分かってるからこそ、周りの奴等もオレ同様にニヤリと笑う。

 

「クロード、別にそいつが言いたいがために集めたわけじゃねぇだろ。あまりもったいぶらねぇでくれよ。焦らすのは女だけで充分だ」

 

オレのその言葉を聞いてクロードは仕方ないですねぇと苦笑する。

そう言うなよ。周りの奴等もオレと同じような面して待ってんだからよぉ。

クロードもそいつを理解しているからこそ、真面目な顔にから少しだけ含みを持った笑みを浮かべた。

それを見た皆も笑い、オレが代表してそいつについて聞く。

 

「おいおい、クロード、そいつはどうしたんだ? その面、そいつはお前さんが『悪い事』を考えてる時の面だ。そいつぁ実に………よろしくねぇなぁ」

「心外ですね。別に私は悪い事なんて考えいませんよ。ただ……新しい『お仕事』が入っただけです」

 

クロードはそう言うと皆を見回して、その新しい『お仕事』とやらについて話し始めた。

 

「新しい依頼は………この騒動の黒幕の討伐です」

 

それを聞いたオレ達はニヤリと笑みを深める。

あんな生温い仕事させられたんだ。働き足りねぇと思うのは当然だろ。

そう思うオレ達ってのは余程の働き者だろうさ。この勤務態度を他のサラリーマンも見習って貰いたいねぇ。

 

「レオス、今回の騒動をどう思いますか?」

 

いきなり話題を振ってきたクロードにオレは笑い返しながら答える。

 

「頭のぶっ飛んだ連中が喉自慢をしたいってんで開いたカラオケ大会ってんならまだ笑える所だが、そんな奴等ならそれこそここまでお馬鹿で杜撰なことはしねぇだろうさ。ってなると……当然そんなお馬御一行をそそのかした詐欺師がいるんだろ?」

「えぇ、大体あってます。その通り、今回の騒動は彼女達単体で行ったものではありません。彼女達は元々はただの女性利権団体の構成員に過ぎず、その立場も下の方です。それが黒幕にそそのかされ、武器を渡され今回の騒動を引き起こした。それが今回の騒動の全容ですね」

 

世の中悪い奴ってのはいるもんだねぇ。

人を騙すってのは良くないことだ。『善良な人』ならなぁ。

逆に言やぁ、悪い奴はいくらでも騙してるわけだけどなぁ。オレも人のことは言えねぇかねぇ。

そこでクロードはクイズを出す司会者みてぇな面でオレに問いかける。

 

「レオス、貴方ならこの犯人がどのような人物かわかりますか?」

 

その問いにオレは即座に答えた。

こんなもん、考えるまでもねぇよ。

 

「クロード、流石にそこまでオレはガキじゃねぇよ。そんなelementary school(小学生)でもわかる問題につまずく程お脳が腐っちゃいねぇ。ここでお馬鹿な奴なら女性利権団体が暴走した、なんてあまりにもつまらなさ過ぎてシラけたことを答えるんだろうが、そいつはハズレだ。こんなお粗末な事件を起こすこと自体が目的。女性利権団体に風当たりを強くしたいって闘魂逞しい奴が今回の黒幕……だろ」

「正解です」

 

教師ヨロシクにオレに微笑みかけるクロード。

こんなんで褒めて貰っても嬉しくなんてねぇなぁ。

 

「今回の件を調べていた合衆国政府機関から別口の依頼です。犯人は合衆国政府オクラホマ州議員のマクガレッド・バーレン氏です。彼は表ではそれなりに有名な政治家ですが、裏では現在の思想を変えるべく動く活動家のようです。それも過激派らしく、過去に何度か同じようなことを行った事があるとか」

 

いつの世も政治家ってのは必ず黒い奴がいるもんだ。

その頑張りってもんは認めてやりたいところだがねぇ。

 

「今まではアメリカ政府も今の思想を苦々しく思っていたので目を瞑ってきたようですが、流石に今回のはやり過ぎだと判断しました。ですが、ここでアメリカ政府が表立って動けば世間がそれを察知してしまい、さらにアメリカその物の風当たりは悪くなってしまうでしょう。そこで我々が『匿名』で依頼を受けた、と言う訳です」

 

身から出た錆って奴らしい。

これ以上は生かしておいても碌なことにならねぇってところだろうさ。

それで処分しようだなんて、国家ってのは怖いねぇ。

それに匿名なのにアメリカだって言ってる辺り、もうクロードは依頼主が誰なのかも突き止めてるだろうよ。

 

「さて、我々が今回受けた仕事。こう言っては少々アレですが、随分とやりがいのない仕事でした。お金さえもらえれば良いと考えるのは三流。プロなら、充実感が得られる仕事をしてこそです。ですので、この追加の依頼では好きなようにしていいですよ。『存分の暴れて下さい』、後始末はアメリカ政府が持つそうですので」

 

クロードにしては珍しくニヤリと笑う。

格好いい面の奴ほど悪どいう顔をすると、おっかねぇもんだ。

こいつがそんな面をするってことは珍しい。それだけこいつも不満だったんだろうよ。

何せこんな馬鹿騒ぎに担ぎ出されたんだからよ。

利用し利用されるのは世の常って奴だが、ここまでお馬鹿なことに付き合わされるのは流石に我慢出来ねぇってところだろう。こいつはこの仕事にそれなりにプライドを持ってるからなぁ。

巨人の大剣にこんなちんけな仕事をさせたんだ。そのケチは付けさせてもらおうかねぇ。

 

「では皆さん、思い知らせてあげましょう。こんな下らない事に我々を付き合わせた愚かな政治家に。どんな目に遭うのかを……ね」

 

黒い笑みでそう言うクロードに皆が賛同した。

 こうしてオレ達はその場から移動を開始した。

 

 

 

 数時間後、オクラホマ州のとある屋敷が盛大に爆発し、跡形もなく吹き飛んだのは言うまでも無い。


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