出来れば書いて欲しいです。気軽でいいので。
現在、オレはバスに揺られてとある場所に向かう際中だ。
目的地は海。つまりは臨海学校の旅館にこのバスは向かっているのさ。
今日はIS学園の若者達がお楽しみにしている臨海学校の初日ってことでこうしてバスで移動してるんだが、いやはや、流石は十代の少女達ってところかねぇ。
バスの中はやかましいくらいに賑わってやがる。このテンションを何もなしに維持できるってんだから、女ってのは驚きだよ、本当。
初日は自由で海で泳ぐなり温泉に浸かったりってぇ遊びたい放題だが、二日目は一般生徒はIS動かして専用機持ちは御国や企業が送ってきた武装とかの試運転とかなんでな。精一杯このバカンスを楽しめるのは今日だけなんで、全員こんなにはしゃいでるんだと。
オレの方も確か企業から試作兵装が送られてくるらしいが、一体今度はどんな頭のぶっ飛んだ物が送られてくることやら。それに試運転出来るか謎だねぇ、その時間にその場にいるかわからねぇんだからよぉ。
どっちにしろ、一度下見に行ってる身としちゃぁ、そこまで楽しみにはならねぇなぁ。しかも、今回のこいつがバカンスだってんなら両手を挙げて喜ぶが、お生憎様お仕事なんでね。まぁ……ここ最近鈍ってたんで張り切って楽しませてもらうけどなぁ……。
「レオスさん、レオスさん!」
隣からご機嫌に話しかけてきたのはお嬢様だ。
初めての集団でのお泊まりって奴にかなりテンションが上がってるようで、昨日は中々寝付いてなかったよ。
いやはや、こんなことでもそこまで喜べるお嬢様ってのはかなり純粋だねぇ。
「どうしたんだい、お嬢様」
「見て下さい! 海がそこから見えましたわ! 日本の深い蒼の海……感激ですわぁ!」
そんな風に目を感動で輝かせるお嬢様を見て苦笑しちまうよ。
そんなことで感激するってのはどれだけだよってなぁ。まぁ、喜んで楽しんでるんだから、水を差すのは野暮ってもんだろ。
「あ、このお菓子は美味しいので、是非レオスさんも食べませんか?」
「んじゃ貰うとしますかぁ」
上機嫌に笑いながら菓子をオレに勧めてきたので、そいつを貰って口に入れる。
口の中にゃあ甘い味が広がって、どことなく女子が好きそうな味だって事が分かる。
別にオレは甘党じゃねぇが、嫌いでもねぇんでなぁ。
せっかくのご厚意って奴何でね。有り難く受け取っとくさ。
それにこっちはまだお嬢様一人だから見てて和む程度だが、後ろのようにはなりたくねぇなぁ。
「一夏、これ美味しいんだ! だ、だから、はい、あーん」
「何をしているんだ、シャルロット! ええい、一夏、私の酢昆布をやる! ほら、口を開けろ!」
「嫁よ! 二人よりも私のドーナッツを食べるがいい!」
「い、いきなりそんな向けられても食べられないよ。と、取りあえず一人ずつくれないか、順番で」
「「「私が先!!」」」
とまぁ、このバスで間違いなく一番盛り上がってヒートアップしてる後部座席にくらべりゃあ、お嬢様が楽しそうにしているのを眺めている方が心地良いってもんさ。
試しにちょっとお嬢様にふっかけてみるもの面白いかもねぇ。
「お嬢様も後ろみてぇにはしゃがねぇのかい?」
「そ、それはそうなのですけれど……あまりみっともない姿は見られたくありませんし……」
顔を赤くして恥ずかしそうに言うお嬢様。
どうやらお嬢様にはちゃんと恥ってもんを分かってるようで何よりだ。
テンションあげて騒ぐのは結構だが、醜い争いはするするもんじゃねぇよ(笑)
人間やっぱりそういう分別は付けねぇとなぁ。フッとボールのフーリガンじゃねぇんだから。
そんなわけでテンションをさらに高めつつあるバスは旅館へと向かっていくわけだ。
これでまだまだ序の口だってんだから、末恐ろしいもんだぜ。
バスに揺られること早数十分後、目的地である旅館に到着した。
バスから出てくる生徒達は皆テンション高めに声を上げているようだ。ウチのクラスだけじぇねぇようで、この異様に高ぇテンションは女子全般のもんらしい。
「本日からお世話になる旅館の方だ。皆、ちゃんと挨拶をしろ!」
全員が下りたのを確認し終えてチフユが周りの緩んだ気を引き締めるようにでかい声で言うと、一瞬で静まりかえる辺りウチの担任様のご威光は健在だねぇ。
そして言われた通りに全員挨拶するんだが、
「「「「「「はーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!」」」」」
もうちょっとちゃんとした挨拶ってもんはなかったのかねぇ。
まぁ、この歳ならそんなモンなのかもしれねぇが。
挨拶を終えた後は注意事項の説明が始まるんだが、どこもかしこもそわそわした感じがして仕方ねぇなぁ。
基本的には当たり前の話ばかりだが、夜間の外への外出は禁止って話が出てた。
そいつは重要な事なんで是非とも皆には聞いて貰いたいねぇ。火傷されても困るからなぁ。オレは責任とれねぇしよ。
それで解散宣言をチフユがした途端、弾けるように皆部屋へと向かったよ。
その目は今にでも海で遊びてぇって輝きで満ちてやがる。
それでオレも遊びはしねぇが腰は据えたいからなぁ……と思って移動しようとしたところでチフユに捕まっちまった。
「何だよ、チフユ? オレの部屋はもう決まってるのは知ってるぜ。何か問題でもあるのか?」
「ハーケン、貴様と織斑は改めて女将に挨拶しろ。突然のことに急遽部屋を用意してもらったのだからな」
だとさ。
それでオレはイチカと一緒に女将の前に連れてこられた。
女将は相も変わらねぇ感じで、大人のしっとりとした色香ってもんを放っていたよ。そいつに当てられてか、イチカの野郎は顔を赤くしてやがった。
「この度は本当にありがとうございます」
チフユが畏まった感じで頭を下げると、女将もにこやかに応じる。
「いえいえ。あら、其方達が」
「ええ、不肖の弟と世界有数の碌でなしです。ほら、挨拶をしろ、お前等」
おいおい、そいつはあんまり……とは言えねぇなぁ。
間違ってはいねぇんだし。
「お、織斑 一夏です! よろしくお願いします」
イチカが緊張した感じで挨拶した後はオレの番だな。
ここは『わかりやすく』言わねぇといけねぇ。
「レオス・ハーケンだ、よろしく頼むよ。そうそう、オレはここら辺の『植物』に興味があるんだよ。女将さん、そういった『資料がある部屋』を後で教えてくれないかい」
そいつを聞いて女将も何が言いたいのか分かったようだ。
『植物』はオレが前に来たときの研究対象って設定。『資料のある部屋』ってのは文字通り『オレの荷物が置かれている部屋』ってのを指してんのさ。
こういう少しの情報で察してくれるのは本当に有り難いもんだ。
「まぁ、そう言わずに。お二人ともしっかりとした感じですよ。あと、そこのお客様はこの後『ご案内』させていただきますので、少々お待ち下さい」
女将にそう挨拶を終えると、イチカとチフユは自分達に宛がわれた部屋へと向かって行ったよ。奴さん達は同じ部屋らしい。
何でも、イチカ目当てにくる女が多いだろうってんでチフユと同室にしたんだと。
これならまず近寄れねぇなぁ。チフユに立ち向かえそうな勇者はこの学校にゃぁいねぇだろうさ。
「では……『轡木 啓介』様、御部屋にご案内させていただきます」
「ああ、よろしく頼むよ」
こうしてオレは女将に案内されて部屋に向かった。
ここで普通ならそのまま水着に着替えて海にダイブってのが年相応って奴なんだが、オレは最初に点検だろうさ。
まぁ、これもお仕事、仕方ねぇってことだねぇ。
その分………夜は楽しませてもらうとするさ。