恋する乙女と最凶の大剣   作:nasigorenn

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この作品、評価は余り良くないのにお気に入りは増えて……。
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第四十二話 フォローも中々苦労する。

 お嬢様と変わった喫茶店で一服しようと思ったんだが、そこでちょっとしたハプニングに見舞われちまったよ。

いやはや、日本って国は平和ボケしてると思ってたんだが、中々にガッツがある奴もいるらしい。

そいつ等の頑張ってるドキュメンタリーを見てるのは中々に面白そうだが、そうだといつまでもお嬢様の楽しみにしているオムライスがこねぇんでなぁ。

あれだけ楽しみにしてたんだ。オレとしても叶えてやりたくなるってのが日本で言う人情って奴なんだろ。だから別の場所でやってもらえるようお願いしたんだが、奴さん達は動きたくねぇんだとさ。

さて、ここで軽くクイズだ。

お嬢様が楽しみにしているオムライスはこのままじゃ来ることは絶対にねぇ。

なら別の場所で似たようなサービスを頼むしかねぇわけだが、店を出ようにも通せんぼしていて通してくれそうにねぇわけさ。

なら……どうする?

答えなんて決まってんだろ。

このかくれんぼのオニにこいつ等を差し出せば済む話だ。

こいつ等には可哀想な話だが、退く気がねぇんじゃあ出れねぇからなぁ。

てなわけで手早く済ませて店を出るわけだ。

あんな所に留まってたんじゃ、こっちにまで飛び火しちまうからなぁ。バレると色々とうるさそうだ。特にクロードには説教されそうだ。そいつが怖くてガタガタ震えちまうよ。

そんな訳でお嬢様の手を引いて店から離れたわけだが……

 

 

 

 店を出て少し離れた公園で一休みしようと思ったんだが、さっきからずっとお嬢様がだんまりなんだよなぁ。どうしたものかねぇ。

一息入れようと思ってお嬢様に自販機で買ったコーヒーを買って渡したんだが、一口も付けずにベンチに座ってるんだよ。

 

「お嬢様、コーヒーが冷めちまうよ。飲まねぇのかい?」

「……………」

 

軽く話しかけるが、何も返ってこねぇ。何かしたかねぇ、オレ?

それでしばらくお嬢様が何かを話すのを待つこと二十分くらい。

やっとお嬢様が顔を上げてくれたよ。

その面は何やら複雑な顔になっていた。泣きそうな怒りそうな悲しそうな、怖がっているような。それでいて信じたいと願っているような……そんな面だった。

 

「……な、何で……」

「ん?」

「何で、あんなにまでしたんですの? そんな必要なんてありませんでしたのに」

 

お嬢様はオレの顔を見ながらそう聞いてきた。

喋ると同時に目から涙が零れてきてるあたり、相当な事なんだろうさ。

で、ここで『あんなこと』っていうのは勿論、さっきオレが遊んでやったことなんだろうな。

 

「あんなことっていうのは、あの強盗の皆さんのことかい?」

「ええ、そうですわ! 確かに彼等のしたことは到底許せた物ではありませんが、ですけど、それでも……アレはやり過ぎだと思いますわ! もっと無事な解決策が……」

 

必死な感じにそう話すお嬢様にオレは感動しちまうねぇ。

だってアレだぜ? 自分達に銃向けてきた奴の安全すら考えてやってるんだ。まさに聖女様って感じじゃねぇか。オレなら絶対に出来ねぇ考え方だ。

でも、ここはお嬢様のためを思って話すとしようかねぇ。

 

「お嬢様は本当に優しいねぇ。その優しさを向けられた奴が羨ましいぜ」

「ちゃ、茶化さないで下さい! わたくし、本当に怒ってますのよ!!」

 

場を和ませようと思ったが滑っちまったようだ。オレにはそういう才能がねぇからなぁ。こういうときの話術こそ学びてぇもんさ。

 

「すまねぇって、ちょっとしたジョークだ。それでお嬢様の質問だが、単純に言えばあれが手っ取り早いからだよ」

「手っ取り早い?」

「ああそうだよ。国際的な話だが、基本はテロなんかには屈しちゃいけねぇからなぁ。あの場で大人しく待ってたっていつ終わるかわかったもんじゃねぇ。お嬢様は三人を無力化しようと考えてたみてぇだが、素手で武装した三人を倒すのは難しいもんだ。それもやり慣れてねぇお嬢様なら尚更なぁ。そこでやり慣れてるオレなら問題無く出来るってわけだ。実際ににお嬢様は銃に少しびびってたみてぇだしなぁ」

「そ、そんなことはっ」

 

オレの言葉にお嬢様は慌てて返すが、あん時のお嬢様、少し怯えてたんだぜ。自覚してなかったみてぇだけどなぁ。

 

「で、オレはさっさと片付けようと思ったわけさ、時間は有限だからなぁ。良くドラマなんかじゃ当て身やら何やらして気絶させてるが、実際にあんな上手くいくことなんて難しいんだよ。確実性を考えるんならとっとと殺すことだが、それをしちまうと流石にお縄になっちまう。オレだってそこら辺の分別ってもんはつく。となれば次は相手が確実に戦意を失うようにすることさ。気絶させてもすぐ意識を戻して襲ってこねぇともかぎらねぇからな。だから一人の腕を外して使いモンにならないようにした後に見せしめがわりに両膝を撃った。もう一人は邪魔だったんで銃を奪うと共にオニのいる方に速攻で送った。んで最後の奴もとっととやろうと思ったんだが、奴さんがこれ以上するんならここで花火大会始めるっていうんだよ。流石にそいつは溜まったもんじゃねぇからよぉ。だから奴さんの戦意を完璧にへし折るためにそうしたのさ」

「た、確かにそう説明されれば分かりますけど……」

 

納得するに微妙って面のお嬢様。

お優しいお嬢様はどうやら効率と道徳で板挟みに悩んでるらしい。可愛いことだねぇ。

そんな様子のお嬢様を見てオレはニヤリと笑う。

 

「それにな……もう一つだけ、理由があったんだぜ」

 

それを聞いたお嬢様はオレの目を見てきた。

そいつに内心で笑いながら答える。

 

「せっかくお嬢様があんなに楽しみにしてたんだ。邪魔されたのが気にくわなかったんだよ、オレは」

「え? それって……」

 

呆気にとられてポカンって面したお嬢様にオレは笑いながらさらに言う。

 

「お嬢様、行く前から楽しみにしてたじゃねぇか。そいつを邪魔されたのが少し気に障ったんだよ。だからぶっ飛ばしたってだけだ」

 

お嬢様はオレの言ったことを理解すると共に……

 

ボンッて音が鳴るくらい顔が真っ赤になった。

 

そしてあうあう言いながらもオレを見つめる。その面はさっきまでの怒ってるような悲しんでいるような面じゃなくなってた。

 

「わ、わたくしのため……だったんですの?」

「せっかくのお嬢様とのデートだ。水は注されたくねぇんだよ」

「そ、そうですの………」

 

お嬢様は真っ赤にした顔で笑い始めたのを見て、オレも少しは落ち着いたよ。あんまり気落ちしたお嬢様は見たくねぇからなぁ。

何? 随分と嘘臭いって? おいおい、そんなこというなよ。

オレは嘘なんて言ってねぇんだから、『どっちも』本心だっての。オレは正直者なんだ。

実際にお嬢様が取り押さえに言っても危ねぇからなぁ。

まぁ……ああいう『暴力的』なのはオレが大好きなものだからなぁ。つまみ食いしたくなったのも否定しねぇけど。

 

「お嬢様、せっかく奢ったんだからコーヒー飲んでくれよ。もう冷えちまってると思うけどなぁ」

「す、すみません! せっかく買って下さったのに。そ、それでは……いただきます」

 

機嫌を直したお嬢様にコーヒーを進めると、慌ててお嬢様はプルタブを開けた。

コーヒーとかの暖かい飲みもんってのは、こういう時に精神を落ち着かせる効果があるんだよ。よく災害救助なんかでも暖かいものが出るのは何も冷えた身体を温めるだけじゃねぇってことさ。

そしてお嬢様はコーヒーを一口飲んだんだが、途端に口を離して顔を苦しげに顰めた。

その目は涙目になっている。

 

「に、苦い……ですわ……」

 

苦々しくそう言うと、持っていた缶に目を向ける。

そこに印刷されてる文字は『コーヒーブラック 無糖』だ。

オレは基本こだわらねぇが、どちらかと言えばブラック派なんだよ。オレからしたら正直眠気覚ましにしかならねぇからなぁ。

お嬢様は涙目でオレを睨んできたが、オレは笑うだけさ。

 

「な、なんでミルクやお砂糖が入っておりませんの」

「悪かったな。まぁ、そいつが人生の味だと思ってくれ、お嬢様。世の中そんなに甘くねぇのさ」

「も、もぉ~、レオスさん!」

 

さてと。

怒るお嬢様に追っかけられながら俺達はIS学園まで帰ることにした。

 翌日のニュースで少し騒ぎになったみてぇだが、流石は爺さんと言うべきかねぇ。

物の見事にオレがしたことだけぼかしやがったよ。まぁ、そうでなくてもあの覆面三人組は精神を病んで病院行きになったんだけどよ。

さぁ、今度は本番の臨海学校だ。

存分に楽しませて貰うとするかねぇ。オレは『仕事』熱心なんでね。


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