恋する乙女と最凶の大剣   作:nasigorenn

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やっと書いていた別の作品が完結できたので、これからはこれの作品主体で書いていこうと思います。
できればささやかなことでも感想に書いていただけると嬉しいです。読者様からいただいた感想を活かせるように頑張りたいです。


第二十九話 お嬢様との特訓 その1

 さて、お嬢様がある程度復帰したところで早速作戦会議と特訓に行くかねぇ。

お嬢様はまぁ、見た目ほど酷いってわけじゃないようで翌日にゃあ普通に動いていたよ。これなら特に問題無く行えそうだ。

そんな訳で俺はお嬢様と一緒に放課後、グラウンドに来ていた。

何でアリーナじゃないかって? 

そいつはまずISを使うことが前提だろ。生憎これから行うことにISは必要ねぇからなぁ。

それに最近はどこもかしこもタッグトーナメントの練習でアリーナは満杯なんだよ。

これからする話は聞かれないことにこしたことはねぇのさ。まぁ、聞かれたからってどうということじゃねぇし、見られても困らねぇんだけどなぁ。

どっちにしても今、お嬢様のISは修理中だからISの訓練は出来ねぇしな。

 

「それで、何をすれば良いのでしょうか?」

 

お嬢様は連れてこられた所で何をするのか不安になってるみてぇだから、早速説明するとするか。

 

「まぁ、そん気張るようなことじゃねぇよ」

「ですけど、訓練のために来たのですからちゃんとしないといけませんわ」

「ま、お嬢様は真面目だからな。そういうのは堅苦しいが、真面目な奴は嫌いじゃないぜ」

「ぁ、ぁぅっ!?」

 

お嬢様は褒められたのが嬉しいのか顔を赤くなった。

何というか、初心だなこりゃあ。弄りがいがあってお兄さんは嬉しいぜ。

 

「それで早速だが、セシリア。お前さん、戦いに勝つのに必要な物って何か知ってるかい?」

「戦いに勝つのに必要な物…ですの? そうですね……やっぱり技術や精神ではないでしょうか。勝利への気迫がない者はまず戦いになりませんもの」

 

先程褒められたので上機嫌になってるお嬢様は、少し考えた後にそう答えてきた。

さすが英国、紳士淑女の国の出だ。騎士道精神ってやつが見えた気がするぜ。

だが、まぁ……今回はそういうことじゃねぇんだよなぁ。

 

「確かに二つとも正解なんだが、今回はちっと違ぇなぁ」

「そ、そうですの」

 

オレから不正解を告げられてしゅんとなるお嬢様。

別に間違っちゃいねぇんだから、そこまでへこまなくてもいいんだがねぇ。

 

「そうへこみなさんな。別に間違っちゃいねぇんだからよ。今回の正解は『情報』だ」

「情報でしたか。確かに、勝つには必要ですものね」

 

そう、今の世の中情報社会ってやつだ。

情報を制する者が全てを制すると言ってもいいってやつで、こいつの有無が戦況を分けると言っても過言じゃない。

つっても、そこまで気にすることでもねぇ。要は知っておいたほうがお得ってだけだ。

情報は確かに必要だが、それに依存しすぎると予想外の事態に対応出来なくなるからなぁ。

そんなわけで、まずオレは簡単に調べたことをお嬢様に話す。

 

「まずオレ等が知らなきゃならねぇのは、これから戦うであろう奴等の規模だ」

「規模と言うと?」

「今回戦うトーナメントは学年別ってわけだから、オレ等が戦うのは同じ一学年だ」

「それは当たり前ですけど…」

 

お嬢様は当たり前の事を言われていることに首を傾げていた。

その当たり前ってのが大事なんだぜ、こういうのはな。

 

「その中で特筆する物と言えば何だと思う?」

「それは当然専用機持ちですわね。専用機を持っているということは、代表候補生かそれに準ずる能力の持ち主ですから、当然その能力は高いですわ。そして専用機である以上、量産機よりもその性能は上ですわ」

「そう、正解だ。偉いぜ、お嬢様」

「そ、そうですか」

 

再び頬を赤らめるお嬢様。

お嬢様は感情表現が素直だねぇ。そいつは良いことなんだが、賭け事はできそうにねぇな、こりゃ。

 

「んじゃお嬢様。一学年にいる専用機はどれくらいだ?」

「まず、私達一組に五人。それに二組の鈴さんに後、確か四組に一人いましたね」

「そうだ。そこで更に追加情報だ。ファンは先日の模擬戦の所為でISがしばらく使えねぇから参加しねぇ。それと確か四組は代表候補生だが専用機は持ってないって話らしく参加しねぇ。まぁ、こいつについては突っ込んでも仕方ねぇからなぁ」

「確かに気になりますけど、今はそれどころではありませんものね。つまり専用機持ちは一組だけということになりますわね」

 

別に代表候補生じゃなくたって強いってやつはいくらでもいるが、それでもお嬢様に勝てるとは思わねぇからなぁ。そこにあるのはISの慣れだな。どうしても専用機持ちと一般生徒との差はここで出ちまう。まぁ、イチカの野郎みたいな意外性満載な奴と、お嬢様が油断しなきゃ苦戦はしねぇ。

 

「さて、そこで今分かってるのが専用機持ちでのタッグだ。一組にいる専用機持ち五人。そのウチタッグはオレとお嬢様、イチカとデュノアの二組だ。あの子ウサギは協調性ってもんがまるっきりねぇからなぁ。たぶんくじ引きだろ」

「確かにそうですわね。特にボーデヴィッヒさんは周りから隔絶していますから」

 

あの子ウサギはどうも自分から離れてるんだよ。まったく、もうちょっと自分の環境に有り難みってもんを持って貰いたいもんだ。オレなんて何もしてないってのに避けられるんだからよ。ボッチ同士仲良くしたいもんだが、奴さんの上に怨まれてるからな。そうもいかねぇ。

ここでオレはお嬢様にクイズを出すことにする。

 

「んじゃここでクイズだ。この5名、正確にはオレとお嬢様を抜いて3名だな。その中で一番厄介な奴は誰だと思う?」

 

そう聞かれたお嬢様は少し考える。

考える仕草も絵になるってのはいいねぇ。オレじゃ考えても碌な絵にならねぇよ。

 

「やっぱりボーデヴィッヒさんだと思いますわ。戦ってみて分かりますが、あの戦闘技能とAICが脅威としか言いようがありません」

 

お嬢様の答えを聞いてオレは笑う。

いや、普通に考えればそうなるのかもしれねぇが………

 

「残念、外れだ」

「えっ!? ですが!」

 

オレの返事に驚くお嬢様に、オレは愉快そうに笑いながら答える。

 

「あの子ウサギは確かに戦闘技能はあるのかもしれねぇが、頭が幼稚だ。あれじゃせっかくの技能の腐っちまって半分も出せねぇよ。それにアレは周りを見下しすぎだ。お嬢様もそうだが、何かしら立場やアドバンテージを持ってる奴はよく人を見下しやすい。そういう奴はよく油断するんだよ。そんな奴は三流だな」

「うっ……それは……」

 

自分のことを挙げられてショックを受けるお嬢様。

少し慰めてやるかねぇ。

 

「だが、お嬢様はオレとイチカと戦って少しは考えを改めたろ。それでいいんだよ。反省して臨機応変に考え方を変えられるんなら、それは学んでるってことだからな。けど、あの子ウサギはオレとのあやとりで失敗したってのにまったく学んでねぇようだ。だから子ウサギは三流でお嬢様は二流なんだよ」

「そ、そうですの……ちなみに一流というのは?」

「そいつはそうだな……戦うに当たって一切の躊躇や油断なく力を振るい、目的を遂行するやつだろうよ。相手が百人二百人いようと、全員殺して生き抜いていくような奴だな」

「そ、それは……確かに凄いような気がしますわ。ちなみにレオスさんはどうなんですの?」

「オレかい? オレはなぁ……秘密だ」

「むぅ、勿体ぶって答えないなんてイジワルですわ」

 

少し溜めを作った後にそう答えたら、お嬢様は少し笑いつつもイジワルだと言ってきた。別にイジワルじゃない。ただ、答えると引かれるってだけなんでな。

 

「まぁ、そんなわけでオレからしたら子ウサギは相手じゃねぇ。アイツみたいな一人で何でも出来るって思ってペアを信用しねぇ奴は弱ぇからな」

 

そう答えたらお嬢様はオレを見つめて聞いてきた。

その目が若干潤んでいるような気がするが、目の乾燥は身体に悪いぜ。

 

「でしたら、レオスさんは信用していますの?」

「ああ、それはもちろんだ。いいかい、お嬢様。確かにオレは仕事で単独での殲滅戦ばかりしてるが、そいつは仲間を信用してねぇからじゃねぇ。信用しているからこそ、背中を任せられるのさ。仲間ってのは大切だからな。当然お嬢様だって信用してるんだぜ。じゃなきゃこんな話はしねぇよ」

「は、はい!」

 

お嬢様は元気よく返事を返す。

まぁ、これには実際裏があって、オレが戦うと周りに被害が出まくるから誰も近づかねぇってだけなんだがな。

それに基本『巨人の大剣』の奴等は一人一人が化け物クラスの異常者ばかりだ。必然的に一騎当千状態になるんで、単独なのは通常状態だ。

 

「てなわけで一番厄介なのは………『デュノア』だ」

「デュノアさんですの? ですが彼女のISはカスタマイズしてあるとはいえ第二世代…」

 

ここで世代差を考えちまうあたり、まだまだお嬢様は甘いねぇ。

 

「ISの世代差なんて戦力にはそこまでの差がねぇよ。寧ろ第三世代ってのは実験要素がでかい分実戦向きとは言えねぇ。その点、第二世代は完成度が高いから安定した強さが出せる。それに特筆すべきはデュノアの器用な所だろうよ。射撃、格闘何でもそつなくこなす。器用貧乏と言えば聞こえは悪りぃが、オールラウンダーな奴は距離を選ばずに戦える。その点をトータルで考えりゃあ、一番デュノアが厄介なのさ」

 

オレにそう聞かされたお嬢様は感心したらしく、ほう、と息を吐いた。

そこまで感心されてもなぁ。

 

「あれ? では織斑さんは?」

「確かに意外性は高いが、アイツはそもそも戦い方ってもんがまだなってねぇ。悪いが子ウサギ以下だな」

「そ、それはきついですわね……」

「だが、アイツは成長の余地は一杯あんだろ。これからの成長に期待ってところだろ」

 

そう答えたらお嬢様はオレを見て笑った。

 

「何だかんだと言いつつ、レオスさんも甘いんですのね」

 

それを受けてオレも笑う。

 

「ただオレはああいう面白い奴が好きなだけだよ」

 

 まずトーナメントに当たって、ペアであるお嬢様との情報共有はこれで終わったわけだ。ってことで、今度は勝つための『訓練』をすることにしようかねぇ。

 

 

 

 

 

 

 


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