恋する乙女と最凶の大剣   作:nasigorenn

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今回は改めて主人公が周りにどう思われてるのか少し出ますね。


第二十八話 上手なダンスの誘い方

 あの後もそれなりに大変だったんだぜぇ。

何せ念の為にお嬢様達の様子を見に行ったら、二人ともやけにお怒りでデュノアのことを押さえてやがった。イチカの野郎ならいざ知らず、まさかデュノアが何か口を滑らせるとはねぇ~。

一応イチカに二人の怪我について聞いてみたが、二人ともそれなりってところか。

まぁ、『女の子』がしていいような怪我じゃねぇけどなぁ。

 

「レオス、あの後ボーデヴィッヒとはどうなったんだ!」

 

イチカは二人のことを聞き終えた後に、オレに食って掛かるように聞いてきやがった。

どうもオレ一人に任せたことに負い目って奴を感じてるみてぇだ。そいつはもうちょっと強くなってからもてもらいたいものだがね。

 

「別に何もねぇなぁ。少しお遊びに付き合ってたんだが、奴さんは上手くあやとりが出来なくてこんがらがったんだよ」

「なんだよ、それ?」

「そのまんまの意味だよ」

 

イチカはオレの言ったことをイマイチわからねぇって首を傾げていたが、別に言った通りだぜ。

あの子ウサギは文字通り、こんがらがったわけだからなぁ。

 

「それでお嬢様。身体の方はどうだい?」

 

セシリアにそう聞くと、こっちに顔を向けて若干膨れながら答えた。

 

「この包帯を見てそういいますの?」

「そいつはすまねぇな。生憎と火傷や切り傷はねぇんだろ」

「それはそうですけど……」

 

今回の乱痴気騒ぎで二人がした怪我ってのは打ち身に打撲つったところだ。

なら大丈夫だろ。何せ……

 

「せっかくの美貌の肌に跡が残ったら大変だからなぁ」

「っ………!?」

 

少しからかい半分でそう答えたんだが、どうやらお嬢様は真に受けたらしい。

顔を真っ赤にして可愛いもんだ。これが見たいからついついからかっちまうんだよな。

そんな風にお嬢様を見てニタニタ笑ってたんだが、どうやらファンはそいつが不服らしい。イチカを思いっきり睨んでやがった。イチカも何で睨まれてるのかわからねぇって感じだ。

それでしばらく話してたんだが、廊下辺りで騒々しくなってくる気配が近づいてきやがった。

この感じは確か……あぁ、そうそう。確かサバンナでヌゥの群れに追っかけられた時に似てるんだ。あの時はマジでやばかったなぁ。厳しい自然の摂理って奴を間近で感じたよ。こっちも食いんがねぇもんだがら一匹拝借したんだが、そいつが良くなかった。彼奴等、群れの一匹がいなくなったことにカンカンでよぉ、そりゃもう追っかけてきたよ。御蔭で余計体力は食うはめにあったなぁ。いつまでも追っかけてくるもんだから、避けるためにライオンやらハイエナやらの群れに突っ込んでそいつ等に押しつけたんだよ。

それ以来、オレはサバイバルで群れを成す生きもんは食わねぇようにしてる。

そんな昔の記憶を思い出させるくらいにこの気配はすげぇ。

 

 

ドドドドドドドドドドッ…………!!

 

そう思ってるうちに保健室が揺れてきやがった。ここの耐震強度は大丈夫なのか心配になるなぁ。

それで扉が勢いよく開きゃあ、そこからヌゥの群れ、もとい女子の群れが雪崩込んで来やがった。

それで入って来た奴等は瞬く間にイチカとデュノアを包囲しやがった。

 

「「「「「私とペアを組んでくださいっ!!」」」」」

 

いきなり何を言ってんのやら。

包囲された二人は何が何やらわからねぇって面で慌ててやがった。

いきなり来たもんだからウチのお嬢様とファンもビックリしてるなぁ。

この大勢にいきなり追われる恐怖ってのはそうそう味わえねぇから、良い経験になんだろ。

それで何がこいつ等をこんなに湧いてるのやら、と思って辺りを見たら、全員プリントを持っていたよ。こいつが原因か。

何が書いてあるのか気になったんで、取りあえず近くにいた奴から借りるとするか。

 

「ちょいと借りていいかい?」

「え? きゃあっ!?」

 

声をかけた奴がこっちを見たら顔を青くして叫びやがった。

そういう反応をされると、やぱり傷付くねぇ(笑)

そいつが放り投げたプリントをキャッチして中身を見てみると、

 

「えぇ~何々。『今月開催する学年別トーナメントではより実戦的に行うため、二人一組での参加を必須とする。なお、ペアが出来なかった者は抽選により選ばれた生徒同士で組むものとする』……成る程ねぇ。それでこのお祭り騒ぎか。まぁ、そりゃここなら納得できるわな」

 

ここの学園ってのは色恋沙汰に飢えてるのが多いからなぁ。

よく言えば年頃のガキらしい。悪く言えばまさにハングリー精神が悪い方向にしか向いてねぇとしか言えねぇなぁ。

このプリントによると、どうやら急遽決まったらしい。

そんな急に決まるとなれば、それなりに原因が必要だ。思い当たる節があるとすりゃあ、さっき子ウサギと遊んでたことぐらいかねぇ。

大体の事情を把握出来たんでプリントを持ってた奴に返すと、

 

「ありがとよ」

「ひ、ひぃっ!?」

 

そいつはその場で腰を拭かしやがった。

何度も言うが、そういう反応は人を傷付けるんだぜぇ。オレはそこまで危なくねぇって言ってるのになぁ。

それでこいつ等の目的である二人に目を向けりゃあ、どうやら二人とも話を聞き終えたみてぇだ。

 

「そういうわけなんで、私と組んで、織斑君」

「デュノア君、一緒に戦おうよ」

「いや、私と組んで下さい、織斑君!」

「私なら、デュノア君と一緒にもっと戦えると思うの」

 

おぉ、流石我がクラス1,2を争う男達(一人は男装してる女子)だ。

モテモテで羨ましいねぇ。これだけ来てんのに、オレには誘い話は一件も来てねぇあたり、余程怖がられてることが良く分かるよ、まったく。

そこまで怖いことなんざぁしてないんだがねぇ。

それで包囲されて組んでくれと言い寄られてる二人は滅茶苦茶困った挙げ句の果て、イチカがデュノアと組むって答えたら全員残念がって引き下がっていったよ。

その様子は敗残兵に見えなくもねぇが、寧ろ引き分けに持ち込んだフットボールの選手みてぇな面をしてやがった。

やっと部屋が落ち着いてきたと思ったら、ファンがイチカに食って掛かってきた。

 

「一夏! 私の方があんたと付き合い長いんだから、私と組みなさいよ! その方が連携だって上手くいくでしょ」

 

流石イチカのぞっこんのファンだ。自分に正直だねぇ。

そう言われたイチカは戸惑ってるみてぇだな。それでデュノアの方を見りゃ、顔を赤くしてイチカの面に見入ってやがった。もうバレバレじゃねぇのか。

そんなことを思ってたらまた保健室の扉が開きやがった。

 

「あれ、マヤじゃねぇか。こんな騒々しいところに何か用かい?」

 

部屋に入ってきたのは、我等がマスコット…おっと、我等が副担任のマヤだった。

マヤはオレにそう言われるなり、少し涙目になりながらオレに言う。

 

「私、先生なんですからちゃんと呼んで下さいよ、ハーケン君」

「ちゃんと呼ばれたいんなら、もうちょっとクラスの荒くれ者共のことをちゃんと締めるんだな。そうすりゃ敬意を持って呼んでやってもいいぜ」

「うぅ~」

 

涙目で唸るマヤはいつまでもそうしていられないと切り替え、ファンの前まで行くとファンを見つめながら告げた。

 

「あの…ですね。鳳さんは駄目ですよ」

「え? それってどういうことですか、先生!」

 

言われたファンが若干キレながらマヤに詰め寄る。

おいおい、先生を怖がらせちゃ駄目だぜ。

御蔭で怖がってマヤの奴、泣きそうじゃねぇか。

 

「鳳さんのIS何ですが、ダメージレベルがCを超えています。当分は修理させないとあとあと重要な欠陥を生じさせますよ。そんなことになったら困りますよね」

「うっ、そ、それはそうだけど…」

 

さっきの試合でファンのISはかなりイッちまってたらしい。

一応借り物って手前もあるからなぁ。流石に無茶は出来ねぇわけだ。

 

「ちなみにマヤ、ウチのお嬢様の方はどうなんだよ?」

「あ、はい。オルコットさんの方は辛うじでそこまでいっていなかったので修理すればトーナメントには参加出来ますよ。でも、まずはそのお体を治すことが先決ですけどね」

 

それを聞いて安心するお嬢様。

まぁ、よくあれだけやられてそれで済んだもんだ。しぶといのは褒められるいいことだからなぁ。

それでファンに釘を刺した後、マヤは仕事つって戻って行ったよ。

その事を意気消沈してるファンを一夏が慰めてるのを放置して、オレはお嬢様にこの件を聞くことにした。

流石にさっきので分かると思うが、このままじゃオレがボッチになっちまう。

別にそれでもいいんだが、このまま行くとくじ引きで当たりを引いた奴が卒倒しちまうよ。

それで怒られてもオレは責任とれねぇしなぁ。

 

「どうやらお嬢様のISは無事らしい。なら、オレと一緒に踊ってくれねぇか」

 

わざとらしくダンスに誘うポーズをしながらお嬢様に聞くと、お嬢様は顔を赤くしつつも仕方ないつった感じで笑う。

 

「ちゃんとエスコートして下さるのでしたら、踊って差し上げてもよろしくてよ」

 

そう答えてお互いの顔を見合うと、笑い合った。

こうしてオレのタッグが決まったわけだ。

 

 

 ただ、翌日にゃあチフユに怒られて反省文を書かされるハメにあった所為でお嬢様とその件について話し合う暇がなかったんだがね。

 

 

 

 


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