まぁ、書いてる自分自身、感想が書きづらいとは思ってますが……
朝に景気良く一杯といったところで早速学生らしく学業に専念するとしますかねぇ。
そんなわけで教室に着いたら自分の席に着こうとしたら、さっそくウチのお嬢様に話しかけられた。
「レオスさん、今朝はどこに行ってたんですの。せっかく朝食をご一緒にしようと思ってましたのに」
少し残念そうな顔をするセシリア。
せっかく景気よく飲んできたばかりなのにお嬢様がこんな顔してたら、ちとシラけちまうぜ。
オレはそんな面をするセシリアの頭に頭を載せてくしゃくしゃと撫でる。
「そんな面してると美人が台無しだぜ、お嬢様。ちっと用事があって出かけてきただけだ。また誘って貰えりゃ、そんときは一緒に行ってやるから」
「きゃっ!? な、何するんですか、いきなり~」
お嬢様は顔を赤くしながらくしゃくしゃにされた髪を直し始める。
しかし、その割には嬉しそうだなぁ。まぁ、このお嬢様の可愛い面が見られたんだから良いとするかねぇ。
そのまま席に付いて少し待つと、早速チフユとマヤが入って来た。
「お前等、席に付け」
チフユの言葉を聞いてクラスの奴等が急いで席に付いていく。
流石は我等が鬼担任つったところか。
そう思った瞬間にオレ目がけて出席簿が飛んで来やがった。そいつが当たる前に掴んで止める。
「おいおい、チフユ。いきなりじゃねぇか。オレ何かしたかぁ?」
「貴様が何やら良からぬことを考えていたみたいだったからな。それと『織斑先生』だ、馬鹿者」
うわぁ、おっかねぇなぁ。その睨み一つでソマリアの海賊が逃げ出しそうだぜ。
その後チフユに向かって出席簿を投げ返してやると、チフユはフリスビーよろしくにそいつをキャッチしてマヤに話をさせるよう促す。
「はーい皆さん、静かにして下さい」
マヤがそう言うが、流石にチフユとの差ってのはでかいねぇ。
まったく聞く耳をもたねぇよ。おいおい、お前等。別に好きにしていいとは思うがよぉ……
そろそろ静かにしねぇと我等が担任様の青筋が切れる頃合いだぜ。是非とも花火を見たいって奴は放置をお勧めするぜ。きっと真っ赤な花火が見れるだろうからよ。
まったく静まらない教室に業を煮やしたチフユの一喝で皆だんまりを決め込んだようだ。ウチのクラスのチームワークってのは良いぜ、本当に。
「こほん、それでは……今日は何と、転入生が二人も来ます!」
勿体ぶった言い方をして頑張るマヤ。
そいつは似合ってると思うが、そんなんだから甘く見られるってことを自覚しねぇとなぁ。
その言葉にまた騒ぎ始めるクラス。
それを気にしながらマヤがさっそくその転入生を教室に呼ぶと、二人入って来た。
まぁ、言われなくてもオレはもう今朝に情報を貰ってたからなぁ。別に驚くようなことなんざ何もねぇよ。
最初に金髪の方、『シャルル・デュノア』がにこやかに笑って挨拶し始めた。
「フランスから転入してきたシャルル・デュノアです。ここに僕と同じ境遇の方が二人いると聞いてやって来ました。よろしくお願いします」
その自己紹介すると共に、
「「「「「「キャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」」」」」」
クラスの連中が一斉に湧き出しやがった。
どうせそんなんだと思って事前に耳を塞いどいて正解だったぜ。
イチカなんてそいつが間に合わなかったばかりに目をバッテンにしてやがった。彼奴はとことん表現って奴がうめぇよなぁ。そのうち顔文字なんかも出来る様になるんじゃねぇか?
奴さんはこの反応に戸惑ってるみてぇだが、もうちょっとは『男らしく』した方がいいんじゃねぇかい。その反応は迷子になった少女みてぇだぜ。
「三人目の男子、キターーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
「金髪の王子様みたい!」
「織斑君とはまた違った美形! しかも安全そう」
「ハーケン君よりも……」
そう喜ぶクラスの女子共。
喜びたい気持ちってのは分かるが、その比較でオレの扱いってのがひでぇなぁ。
まぁ、否定なんざしないがね。
するとウチのお嬢様だけがプンスカと怒ってやがった。
「………レオスさんの方がワイルドで格好いいですわ……」
そう言ってくれるってのは嬉しいもんだねぇ。
さすがお嬢様、有り難いもんだぜ。
そんな感じに騒いでたら、チフユが青筋たてて一喝して黙らせた。
確かに効果はテキメンだが、あまり眉間に皺ばっか寄せてると美人が台無しだぜ、チフユ。
そう思ってたらイチカの野郎の頭に何かが当たって吹っ飛びやがった。
そしてチフユの手元にくるくると回って戻ってくる出席簿。どうやらイチカの野郎も似たようなことを考えてたらしい。オレに無理だからって標的をイチカに変えんのはどうかねぇ。
「お前達、もう一人いるのだから静かにしろ!」
チフユの一喝に皆静かになる。
さすがは我等が女帝様だ。一声で皆を黙らせるそのご意向にはオレも舌を巻くぜ。
そんなふうに静まっったところで、銀髪の方が教壇の前へ一歩出た。
「次はお前の番だ。自己紹介しろ」
「はい、教官!」
そう言って敬礼する姿は流石軍人と言うべきなんだろうが、何とも初々しい感じがするねぇ。
チフユの奴なんて、敬礼されたら眉間を押さえてやがった。どうせ呆れ返ってるんだろうよ。
「教官はよせ。私はもうお前の教官ではない、お前の担任だ。織斑先生と呼べ」
「わかりました」
そして銀髪は周りに聞こえるように声を張って手前ぇの名を言う。
「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」
それだけをはっきり言うあたり、とことん真面目な軍人ってやつだな。
不用意な情報を周りに与えない。そいつは軍人としちゃあってるんだが、面白味はねぇなぁ。
お堅いだけじゃぁ人生は謳歌できないぜ。
そんな真面目なボーデヴィッヒは言いたいことを言い終えると、爺さんに聞いてた通りにイチカの野郎を睨み付けながら向かって行く。ありゃ何かしでかしそうだな。
別にこのまま見てるってのも面白そうだが、オレも個人的に挨拶しておきたいところだしなぁ。
いっちょ助けてやるとするかねぇ。
「貴様がっ!!」
そのままイチカに手を振ろうとするボーデヴィッヒ。
その前にオレは持っていたモンをボーデヴィッヒに向かって投げた。
そいつは高速で飛んで行き、イチカの野郎の横を縫ってボーデヴィッヒの顔へと向かう。
「っ!? ちっ!」
ボーデヴィッヒは目の前に来たそいつに気づき、身体をそのまま横に倒して転がりそいつを避けた。
オレの投げたそいつはそのままボーデヴィッヒの顔があったところを通り過ぎて教壇に深々と刺さる。
金属のひしゃげる音が教室に響いて、マヤが肩をビクっと震わせた。
「キャッ!? い、一体何が! え……シャーペン?」
マヤは教壇に刺さったオレの投げたモン……ただのシャーペンを見て信じられないようなものを見た面をしていた。
こうして驚いてもらえるってのはやっぱり嬉しいもんだねぇ。
オレのまわりじゃこんなの当たり前で誰も驚いてくれないからよぉ。こういうのは中々に新鮮だねぇ。
そのままオレは笑顔でボーデヴィッヒに話しかける。
「イチカに会えて感激だってのは分かるが、出来ればオレも挨拶したいからよ。どーも。レオス・ハーケンだ」
オレの紹介を聞いてボーデヴィッヒの顔が忌々しげな面に変わる。さっきまでイチカに向けていた物とは少し違う物で、中々に殺気の籠もった軍人らしい面だ。
「貴様があの……。貴様の事は知っている」
「あれ、そうかい?」
「我等ドイツ軍のブラックリストの筆頭に乗っているからな」
「そいつはまた、光栄だねぇ。デーゲンハルト・ブランク中佐は元気かい?」
「中佐ならば貴様に凄く会いたがっているらしい。何でも、顔に刻まれた傷が毎晩疼くそうだ。すぐにでも殺したいといつも言っていると聞いている」
「なんだよ、あのおっさんまだ根に持ってるのか。まったく、手前ぇのミスでケチが付いたのに人の所為にしやがって。あのおっさんに連絡とるようなら伝えといてくれ。自業自得を人の所為にすんなってな。あまり馬鹿言ってんなら今度こそ、その緩いお味噌を地面にぶちまけてもらうってな」
「ふん!」
殺気の籠もった返答にこちらも殺気を込めて答える。
いやぁ、最近はどうもゆるゆるだったからなぁ。この身を刺すような殺気が心地良いのなんの。
ボーデヴィッヒはイチカの野郎への攻撃が失敗したと判断すると、イチカに向かって吠える。
「私は認めない!! 貴様があの人の弟であるなど!」
そう吠え終わると、今度はオレを睨みつけた。
「貴様は軍人として絶対に許さん! ドイツ軍の名誉のために、貴様はこの手で倒す!」
そうオレに言うと、静かに席に付いた。
これからイチカの野郎はま~た面白い騒動に巻き込まれてるのは目に見えて分かるが、そいつをどうにかする気はねぇからなぁ。寧ろオレも『逆恨み』で睨まれてるみてぇだしなぁ。
まぁ、あんな『子ウサギ』にヤラれるほどには鈍っちゃいねぇよ。
だからそんな事よりイチカの野郎だな。
どうせこの後デュノアがちょっかいかけてくるんだろうしなぁ。そこであの鈍いイチカだ。どんなことが起こるのかまるっきり想像がつかねぇよ。
だからこれからもオレを楽しませてくれよ、イチカよぉ。
まぁ、この後チフユに怒られてセシリアに突っ込まれちまったけどな。