恋する乙女と最凶の大剣   作:nasigorenn

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上手く書けなくて焦っちゃいますよ、これ。
どうにかならないだろうか。


第二十話 クラス代表戦 前編

 あれからあったことを言りゃあ、さすがイチカの野郎っつーところだろうかねぇ。

アイツ、さっそくあの嬢ちゃんにやらかしやがったようだぜ。

校内一のトラブルメーカーは伊達じゃねぇってな。

それで次の日からイチカ野郎を見てみりゃ、何とも言えねぇって面してやがったよ。

他の奴等が話してる話に聞き耳を立ててみりゃ、大体は分かるわなぁ。

んで当人にも聞いてみりゃ、

 

「昨日鈴を怒らせちゃったんだよ。何で怒ってるのか分からないんだけどさ」

 

だってよ。

セシリアもそれを聞いてイチカを怒ってやがった。

セシリア曰く、『女性との約束を覚えてないなんて最低ですわ!』だってよ。

まぁ、約束なんてもんは互いに覚え合って初めて効果を発揮するもんさ、口約束なら尚更なぁ。破られたくなきゃ、それこそ契約書に血判でも押させるくらいした上に証拠写真とボイスレコーダーで録音するくらいしねぇとなぁ。

それぐらいして初めて相手に約束を確実に守らせることが出来るんだぜ。

まぁ、オレ等なら足を椅子に固定して動けなくした上で効き手じゃねぇほうの手をナイフで机に串刺しにして差し押さえた上に、生爪を剥いだり指の骨を一本ずつへし折ったりして眉間に拳銃突き付けてさっき言ったとおり契約書に血判押させるがねぇ。

 それからイチカの野郎はまったくそんなこと気にしてねぇって面で過ごしてたよ。

アイツはそこまで意識してねぇみてぇだが、傍から見たらニヤニヤしてしかたねぇぜ。何せそんな野郎のことを気にしつつも不機嫌に怒ってるファンが毎回イチカの野郎の様子を見に来てるってんだからなぁ。

何のかんのと言いつつ気にする辺り、やっぱりこいつもイチカに夢中だと。

そんな様子のファンをセシリアは結構気にしてるみてぇだな。

少し相談とかにも乗ってるらしいぜ。

女って連中はこういう話が好きだねぇ~、まったく。

まぁ、オレも毎回問題を起こすイチカを見てる分に面白れぇからいいけどよ。

 それでしばらく放置していたら、あの野郎、さらにやらかしてくれたぜ。

ファンに謝るよう言われたら、あの野郎は納得いかねぇって口論なったらしくてなぁ。

それで奴さん、ファンが一番気にしてる『貧乳』って言っちまったようだぜぇ。

それを聞いたファンはカンカンにぶち切れたとさ。いやぁ、オレもその場にいたかったぜ。さぞ面白れぇことになってたことだろうよ。

んでファンの野郎は初日同様部分展開して床をぶん殴ってへこましたってよぉ。

そいつは後でチフユに怒られるってことをわかってんのかねぇ~。

チフユはキレるとおっかねぇからなぁ。ありゃ半径15メートル以内には近づきたくねぇ。

オレの知ってる限り、おっかねぇ女ベスト5に入るぜ、あの怒り様はよう。

それで更に彼奴等の仲は悪化。

ファンは見に来なくなるくらいキレちまって、イチカの鈍感野郎でも流石に気にしてるみてぇだ。

こいつぁ………どこのコミックスだ?

こんなの、オレのいたところじゃまず見れなかったから新鮮でしかたねぇよ。

オレの所じゃここまで言ったら実力行使だぜ。どっちの言い分が正しいかなんて、ド突き回した後に決まるモンさ。にらみ合いはありえねぇよ。

 そんな感じに楽しんでたら、あっという間にクラス代表戦になった。

オレは何でか知らねぇが、チフユ達がいる管制室に連れてこられた。

セシリアとホウキも一緒に連れてこられたあたり、あいつと連んでる奴等ってことかねぇ。

まぁ、今回も賭けさせてもらったんだからイチカの野郎には勝ってもらわねぇとなぁ。そう考えりゃあ特等席ってのも悪くわねぇ。

それでさっそく試合発表が行われたら、なんと奴さんは初っ端からファンと当たるっていうじゃねぇか。

幸先がいい辺り、アイツは運がいいぜぇ。

それで少し待ちゃあ、あっという間に二人がピットから出てきた。

 

「一夏……頑張れ…」

 

すぐ近くでホウキが祈るような呟きが聞こえたが、まったく……恋する乙女ってのは大変なもんだねぇ。

そしてさっそく試合開始の合図と共に、二人がぶつかった。

 

「レオスさん、この試合はどう見ますの?」

 

戦う二人を見て、セシリアがオレに意見を聞いてきた。

こうも頼ってもらえるってのは逆にちょっと萎縮しちまうねぇ。

 

「どうもクソもねぇと思うがなぁ。イチカの野郎は相変わらず真っ直ぐに突っ込むだけだし、ファンはファンで律儀に受け止めてっからなぁ。強いて言やぁ、どちらも真っ直ぐに律儀で脳筋ってところさ。あれだな、ガキの喧嘩と大差がねぇ」

「そ、それは流石に言い過ぎではないですの」

 

セシリアは少し怒った感じに言うがよぉ、戦うってのは真正面からぶつかるだけじゃねぇ。

腹芸は当たり前、引っかけやら何やらを組み合わせて確実に敵を倒すのが戦うってことだぜ。

 

「そう怒るなよ、セシリア。いいかい、戦うってのはスポーツじゃねぇんだ。銃器を人に向けてぶっ放すってことは、どんなに取り繕ったってスポーツにはならねぇ。そいつはもう殺し合いと同意義だ。ならスポーツマンシップなんてお優しい言葉は当てはまらねぇよ」

「それは………」

 

オレにそう言われたセシリアは口を紡ぐ。

まぁ、今の世でそんなことを意識してる奴なんて表にゃそこまでいねぇよなぁ。

ISは絶対防御があるから安全ってわけだが、それとは別に人に銃口を向けるって時点でその行為そのもの自体の意味はぬぐえねぇ。

と、そこまで言うとウチのお嬢様が沈んじまうからなぁ。

 

「まぁ、強いて言やぁどっちも正々堂々って奴だからなぁ。オレなら開始前に煽って怒らせるけどよ」

「怒らせる…ですの?」

「どっちも単純な奴だからなぁ。ああいうタイプの奴は、キレると周りが見えなくなって冷静な判断ってやつが出来なくなるのさ。そうなると単純な手しか出せなくなる。そんな奴はちょっと横からやりゃ、あっという間に墜ちるんだよ」

「何というか、えげつないですわね」

「そいつが『戦う』ってことだよ、お嬢様」

 

そんなふうに会話してる間にイチカが見えない何かに吹っ飛ばされた。

 

「な、なんだアレは!?」

 

ホウキがそれに驚いてると、それをセシリアが横から説明し始めた。

どうやらファンのISには特殊な兵装が積まれていてそいつをぶっ放したらしい。

『衝撃砲』だってさ。

まぁ、読んで字の如くってやつさ。

しかも砲身がねぇ上に射角も制限がねぇんだと。結構便利な武器だぜ。

 

「でも、実際に見るのは初めてですわ。もし、あんな攻撃をされたらどうしてよいことやら」

 

真面目な面で考え始めるセシリア。

そんなに難しいことでもねぇと思うけどなぁ。

 

「別にそこまで難しいことでもねぇよ。確かに砲身が見えねぇってのは厄介だが、それだけのことだぜ」

「どういうことですの、レオスさん?」

「確かに避けづれぇとは言え、ファンはやっぱり馬鹿正直だからよ。撃つときに撃つって面してやがる。あれじゃ撃つのが丸わかりだぜ。それこそ、お前さんよりもなぁ。それにイチカの野郎にだって分が悪すぎるわけじゃねぇ。確かに衝撃砲の弾が見えねぇってのはきついかもしれねぇが、そもそも弾丸が見える奴なんて稀でその殆どが化物だけだぜ。見えないのが当たり前なんだよ。見ようとするから動きが硬くなる。それを踏まえた上でどうにか接近すりゃマシにはなるだろうよ。少なくても、そいつをぶっ放してるのがどれかはわかってんだからよ。そいつを壊せりゃ戦局は変わるさ」

「まさかレオスさんがそこまで見てるとは思いませんでしたわ……」

 

まったく、お嬢様は案外失礼だぜ。

オレの説明を聞いてポカンとしてやがった。別にこんなもん、誰だって考え付くもんだろうよ。

戦場でスナイパー複数人相手にするにくらべりゃましだ。

そんなふうにセシリアと話しながら試合を見てると、イチカが何か決意を決めてファンに突っ込もうと構えた。

ここで逆転したら盛り上がるぜぇ、イチカ。オレの財布のためにも、ここで踏ん張ってもらわねぇとなぁ。

そう思ってたらいきなりアリーナに眩しい光と衝撃が走った。

その途端に破壊されるアリーナのシールドバリア。

 

「一体何事だ!?」

 

チフユの奴が焦った感じに叫ぶと、マヤが慌てて調べ始める。

その手際は慌てながらもしっかりしてる辺り、さすが教師ってやつだぜ。やることはちゃんとやってるみてぇだ。

 

「何か高熱源体がアリーナに直撃してバリアを破壊された見たいです。それにこれは……IS!?」

 

マヤがそう言うと共に砂煙が晴れてきた。

その晴れた先には、真っ黒いISが浮いていた。

自身の体と同じくらいありそうな太い両腕を持った全身装甲のIS。それはどこの国で開発したISなのかまったくわからねぇ姿をしてやがった。

そのISはイチカ達を見ると、その太い両腕から太いレーザーをイチカ達に撃ち始めた。

イチカ達はそれを必死に避けつつISから距離をとった。

それを見てマヤが避難するようイチカ達に通信をいれるが、イチカ達は教員が来るまで押さえると言って聞かねぇようだ。

しかもあのISのせいか、アリーナのシールドバリア出力を挙げられた上にクラッキングで扉もロックされたようだぜ。

こりゃあ明らかに出来すぎだ。狙いはイチカなのが丸わかりだ。

このせいで教員の鎮圧部隊も送り込めねぇし、扉が開かねぇから逃げられもしねぇってわけか。

袋の鼠ってわけだ。

その事実に慌てるマヤに、チフユは落ち着くよう言ってコーヒーを入れるが、おいおい、落ち着いてねぇのはどっちなのやらなぁ。間違えて塩入れやがった。それを茶化すのも大層面白れぇが、それをやったら大層おっかねぇ目にあいそうだ。触らぬ神に何とやらだな。

そんなことを思ってたら、セシリアがイチカを助けるべきだとチフユに言い出しやがった。

まぁ、このお嬢様は友達思いだからなぁ。

だが、チフユにメタクソに言われて引き下がりしょげることに。

事実だからしゃーないってなぁ。

そう思ってたら、オレのISにプライベートチャネルで通信が入って来た。

勿論、言わなくても見なくてもわかりきってるって奴さ。

オレは面倒ながらに出ることにした。

 

「はいはい、爺さん、聞こえてるよ」

『そうですか。では、さっそくお願いしますね』

「あいよ」

 

そう短く爺さん…轡木 十蔵からの通信を切ると、オレは軽く肩を回す。

 

「さてと……どうやらお仕事みてぇだからオレはいくぜぇ、チフユ。それをセシリア、ちょいと一緒にいかねぇか。お前さんに面白いもん見せてやるよ」

「どこにいくんですの、こんな時に」

「貴様、仕事だと?」

 

セシリアは少し分からないって面でオレに聞き、チフユが怪訝そうな顔で聞いてきた。

まったく…もうりょっとチフユはセシリアみたいな柔和さを学んで貰いたいもんだぜ。

 

「なぁに、爺さんから外で暴れ回ってる獣を黙らせろって言われてね。これから猛獣狩りってわけだ。文句があんなら爺さんに言いな」

 

そうチフユに言うと、チフユは爺さんの命とあって何か言いたそうだが黙るしかない。

しっかし、その面はさっき以上にヤバイ面になってやがった。おいおい、教師がして言い面じゃねぇぞ、そいつは。寧ろ殺人鬼にしか見えねぇ。戦場でかなり見たことのある面じゃねぇか。

懐かしいがあまりすると皺が取れなくなっちまうぜ、チフユ。

そんなおっかねぇチフユから逃げるようにオレはチフユから離れ、セシリアを連れて管制室を出た。

 

「れ、レオスさん、一体どうするつもりですの! 先程先生が言っていた通りアリーナには近づけないんですのよ」

「なぁにちょっとやんちゃするだけさ」

 

廊下を歩きながらセシリアとそう話してると、さっそくアリーナへの扉へと当たった。

勿論、ロックされてて開けることは出来ねぇしオレはクラッキングとかは得意じゃねから無理だ。

ならどうするか………決まってんだろ。

オレは鼻歌を歌いながら上機嫌に扉に『四角い粘土のような物』を貼り付ける。

そうそう、言い忘れたけどよぉ、イチカの護衛を引き受けてからオレの荷物は全部返却されたんだ。

後から送られてくる『危険』なものも大丈夫にしてもらったしなぁ。

オレはそれを終えるとセシリアひ話しかける。

 

「んじゃ、これがオレの答えってやつだ。少し離れるぜ、お嬢様」

「は、はぁ…?」

 

不思議そうな顔をするお嬢様の手を引いて離れた所で、オレは懐からスイッチを取り出す。

そしてそれを軽く押した瞬間、

 

ロックされた扉が爆発して吹っ飛んだ。

 

「なっ、なっ、なっ……」

 

その事態にセシリアは驚き表情を固める。

それを見てニヤリと笑いながらぶっ飛んだ扉の先へと歩いて行く。

 

「さぁ、猛獣狩りのお時間だ。楽しませろよ、猛獣」

 

そんな言葉と共に、オレは笑いながらセシリアの先へと歩いて行った。

目指すはアリーナである。

 

 

 

 

 

 

 

 


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