恋する乙女と最凶の大剣   作:nasigorenn

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やっと終わりますよ、これが。
後はお嬢様との………げぶんげふん。


百七十一話 大剣の本当の意味

 せっかくすこしでもマシになるようこうしてバッドステイタスになりそうなことをしてやったってのに、連中はそれでも及び腰らしい。

まったくもってシャイな連中だよ。こっちは情熱的にアタックをしかけてるのによぉ。

でもまぁ、そんな反応も嫌いじゃないんだぜ。そうされるとなぁ…………。

 

もっとアタックしたくなるからなぁ。

 

だからオレはもっと笑う。

笑って嗤って爆笑する。

目の前で怯える奴等に愛憎をもってして話しかける。

 

「おいおい、もっと構ってくれよ。こっちはわざわざアメリカくんだりからお前たちにラブコールしに来たんだぜ。その返事を聞かせてくれねぇと、もっと熱烈になっちまうだろがよぉ!」

 

そのラブコールとともに発砲。

一番怯えていた野郎の眼球を弾け飛ばした。

その事実に周りが追いつくとともに声にならない断末魔が室内に響き渡る。

それがさらに連中の恐怖を煽り、悲鳴とともに逃げ出していく。

 

「おいおい、がっかりだぜ。こうまでされて逃げ出すなんざぁ本当にお前等男か? 女にいじめられて玉無しになっちまったんじゃねぇか。その股間にはもう何もないってか? だったらこんな所にいないで『オカマバー』にでも働きにいけよ。日本にゃぁそういう仕事もあるらしい。なんだったらそれ専門の変態共を紹介してやる。仕事柄、そういう奴等と面識があったりするもんでね。連中なら喜んでお前等を可愛がってくれるだろうよ」

 

呆れかえりつつも追撃に出るオレ。

そのまま建物内を進んでいく。オレは上から下に向かって行き、他の奴等は下から上を目指す。だから連中は上に下にてんやわんやだ。

挟み撃ちにされた可愛そうな子犬がいきつく先は、文字通り『死』だけだよ。

もう結果は出ちまっているもんさ。連中の状況ってのは、既に振るった賽の目が出ちまった後だよ。その目は小さく、オレ等が出した目はそれ以上だった。

だからどうあってもこの状況は変わりようがねぇ。変えるにはイカサマをするか、このゲーム自体をなかったことにするしかねぇのさ………そんなことはさせないがね。

そう言えばオヤジの方はどうなってるかねぇ……あ、考えるまでもねぇや。

さっきから建物がぶっ壊れまくる音と振動がこっちに伝わってきた。この犯人はもう決まってるだろ。あっちは順調らしい。あまり派手にやられて建物ぶっ壊されると瓦礫に埋もれかけて出るのに苦労しそうだから辞めてもらいたいもんだがね。

さて、順調なのは結構だが、先を越されたとなれば馬鹿にされるのは目に見えている。

それを許せるほどオレは寛容じゃぁない。つまりは………。

 

「あのクソオヤジに負けるのは癪に障るから、もう少し急ごうか」

 

軽くそうつぶやき、口元に良くない笑みを浮かべながら話しかけた。

 

「ってわけだ、これからもっと早く動くぞ。だから速くオレをどうにかしねぇとお前等全員血風呂行きだ。はりきって行こうかぁ!」

 

そして駆け足で駆ければ、あっという間に前にいた連中とかち合い、オレは嬉々とした面で連中の首を撥ね飛ばしミートパテへと変えていく。

中にはまだ玉がある奴もいるようで、必死な面でランボーよろしくに雄叫びを上げながらアサルトライフル片手に連射しながら向かってくる奴もいた。

 

「意気が良い奴もいるようで何よりだ。弱い者いじめは趣味じゃねぇんでなぁ」

 

そういう可愛い奴には微笑みとともに鉛玉を脳天にプレゼントだ。受け取ったプレゼントが嬉しかったらしく、そいつは床に盛大に頭のもんをぶちまけたよ。

そういう奴はまだいいんだが、中には命乞いもしてくる奴もいた。

あぁ、勿論それを聞き入れる気はねぇよ。

 

「あ? 妻と娘のための出稼ぎ? そいつは結構だし関心だよ。でもなぁ……そもそもまっとうな仕事をしていればこんな目には遭わなかっただろ。こうなることも織り込み済みでこの仕事をしてきたんだろ。だったら文句は言えねぇよなぁ、えぇ?」

 

そいつの生首は泣いていたよ。

身体から離れても泣く辺り、それなりに真面目だったんだろうさ。

だが、それだけじゃいけねぇ。結局のところ、日の当たる所に居たいんだったら『こんなこと』はするもんじゃねぇってこった。

え? オレはどうなんだって? 勿論わかってるさ。覚悟なんてする必要もねぇ。普通は覚悟を決めるもんじゃねのかって? おいおい、それはおかしいだろ。

逆に聞くが、お前等は飯を食う時に一々慎重になるか? トイレで糞をした時に尻を拭くのに覚悟を決めるか?

そう言うことだよ。オレにとって殺す殺されるなんていうのは、その程度の意味合いでしかねぇ。そんな『当たり前』のことに一々考えてられるかよ。

ただオレはそれが日常生活で、だから当たり前のようにこうして殺しまくってる。

学園に行き始めてからは薄れてきているが、それでもやっぱりこっちが普通なんだよなぁ。

だからオレは普通にしてるわけだ。普通に殺して殺して殺し尽くす。

それがオレ等の世界だろ。一々覚悟なんてもんを決めるまでもない当たり前。それが分かってない奴等は即刻退場願おうか。

だから命乞いをしようが容赦なく殺していく。

今回はそこまで楽しくねぇなぁ。駆けて殺して弾けさせ、死体の数は数えない。ただ行った後には生きてる奴はいねぇ。あるのはただの肉の塊だけだよ。

先を急いで行くと、稀に集まりながら怯える集団もいた。

そんな可愛そうな奴らにゃぁとあるプレゼントを贈らせてもらった。

 

「可愛そうなお前等にゃぁフルーツをプレゼントだ。こいつでも喰って元気だしな」

 

そんな連中に上げたのは林檎だ。

アップルってあだ名がついた『手榴弾』だよ。

そいつを見て顔を真っ青にした連中は笑えそうなくらい大慌てになって、そんでもって皆仲良くグリルチキンに早変わりだ。

 そんな風に連中を料理して更に下に降りていくこと数分。

オレは最後の扉を前に、クソオヤジとの合流を果たした。

 

「よぉ、クソオヤジ。ご機嫌はどうだい?」

「よぉ、クソガキ。あまり良くはねぇなぁ。何せ退屈だからよぉ」

 

オヤジも同じように感じたらしく、その面は不完全燃焼も良い所って面だった。

仮にも悪の巣窟たる亡国機業様なんだから、もっと頑張って欲しいもんだ。

まぁ、もうここまで来たら頑張ろうが終わってるけどな。

そしてオレ達は最後の扉………この組織の中枢が集まっているであろう部屋へと優雅に入った。

 

「ひ、ひぃぃぃいぃぃぃいいいいいいいいいいいいいいいい!!」

 

もう何度も聞き飽きるくらい聞いた台詞が部屋に響く。

そんな悲鳴を上げてるのは、約15人の大の大人達だ。皆挙って悪そうな面をしているもんだが、今は怖くてチワワみてぇに震えてやがる。

え、何で逃げてないのかだって? あぁ、勿論そりゃ簡単さ。

逃げる前にこうしてオレ等が来たからだよ。それこそが本当の電撃作戦ってやつだからなぁ。相手に逃げる隙すら与えずに一気に懐に飛び込むのがこの作戦ってわけさ。

だから奴さん達は逃げる準備中に鬼に見つかった憐れな仔羊ってわけだ。もう逃げられないことは確定だね。

連中は死神に見つかったって真っ青な顔でどうにかしようと必死に考えを廻らせようとするようだが、その前に終わらせるとするか。

 

「オヤジ、半分こっちな」

「あいよ、すぐに終わらせるぞ、こんなつまんねぇ仕事」

「あぁ、そうだな。オレもそう思う。お嬢様の笑顔が恋しくなってきたからなぁ」

 

そして一気に仕掛ける。

悲鳴が上がる前にオルトロスの銃弾が顎から上をふっ飛ばし、オヤジの拳が一撃で人間をミンチに変えていく。

それが早技で行われ、この部屋が血で真っ赤に染まっていく。

これで終わり………じゃねぇんだよなぁ。

実は一人だけのこしてるんだよなぁ、これが。

何でかって? そうだなぁ……せめてものレクレーションってやつだ。退屈しのぎの暇潰しとも言えるがね。

最後に残った一人………どうやらこの中で一番偉いであろう奴らしい肥満気味の中年。そいつは顔に付いた血と周りのまさに血まみれな光景に顔を真っ青にしながら腰を抜かしていやがった。

その怯えっぷりときたら、チワワだって可愛く見えるくらいガタガタ震えてやがる。寧ろ振動してバイブレーション機能があるって言ったら信じられるくらいの震えっぷりだ。自分の手に付いた血の感触にさらに間抜けな声を上げてるしなぁ。

そんな憐れな『最後の一人』に対し、オレとクソオヤジはニコニコと笑いながら名乗り上げる。

 

「どうも亡国機業さん、巨人の大剣だよ」

「有名な組織の相手をさせて貰って光栄だったよ」

 

明らかなお為ごかしなんだが、奴さんはそれに返事を返す余裕はねぇらしい。

 

「きょ、巨人の大剣!? あの最悪最強の!」

「知ってもらえていて光栄だねぇ」

「そんなに怖がられるとは、仕事慨があるもんだ」

 

まるでいじめをしてるガキみてなぁ気分でそう言うと、奴さんはそれが更に怖かったのか、それはもう見事な震えっぷりを見せてくれたよ。

 

「た、頼む、私だけは助けてくれ! か、金だったら幾らでも払う。一生遊んで暮らせる額だって約束しよう。それに私なら、お前たちの組織のスポンサーだって喜んで…………」

 

何やら喚き散らすように命乞いをしてきた奴さん。

確かにこんな組織のトップをしてたんだから金なんて余るくらい持ってるんだろうよ。その申し出は確かに垂涎物って奴だなぁ。一生遊んで暮らせる金ねぇ~……将来安定って奴だ。きっと仕事でへまして修理費を請求されようとも、何も困らずに片付けられそうだ。

きっと毎日がブルジョワな日々なんだろうさ。

だが……………。

 

オレはその提案の返事変わりに奴さんの股間ギリギリに銃弾を撃ち込んだ。

 

「悪いがお断りだ。賄賂なんかを受け取ると兄貴分から叱られちまうし、何よりもそんな『つまらなそう』な提案はごめんだね。悪いが金には困っても、人生金よりも大切なもんは一杯ある。オレはそっち優先なんでね」

 

世の中金じゃ買えないもんって一杯あるだろ。愛に恋に命にそして何より殺し合いの興奮ってのは、金じゃ買えねぇからなぁ。

股間から水を垂らし始めた奴さんを傍目に、オレはオヤジに話しかける。

 

「オヤジ、どうするか?」

 

その問いかけにオヤジは少し考えた後、何か思いついたらしく豪快な面で笑った。

 

「だったらアレでいいんじゃねぇか。賭けようじゃねぇか」

 

アレが何なのかってのは、すぐに思いついた。確かにアレなら面白そうだ。

そう思いながらオレも笑う。

そしてその道具として、奴さんのすぐ側にオレはオルトロスの片割れを放り投げた。

その意味が理解できない奴さんに、オレ達は笑いながら説明してやった。

 

「せめてもの情けって奴だ。こいつで自殺しな。それぐらいの慈悲は与えてやるよ」

 

自害用に渡したわけだが、実はそれだけじゃねぇんだよなぁ。

銃にゆっくりと手を伸ばす奴さんを見つつ、オレはオヤジと話し合う。

 

「んじゃ俺はこっちに賭けるぜ」

「おいおい、そりゃ駄目だろ。オレもこっちなんだ。賭けが不成立になっちまう」

 

互いに不成立なことにやれやれだと笑う。

そしてその結果は………。

 

「死ねぇぇえぇえええええええええええええええええええええええ!!」

 

予想通り、奴さんはオレ達に向かって銃を向けてきた。

まだ弾は入ってるし、安全装置も解除してある。喰らえばオレは流石に死んでもおかしくない。まさに公平って奴だ。

だがなぁ………分かり切ってることほど対処しやすいこともない。

 

「だからこれは賭けが成立しねぇんだよ」

 

そう愚痴りながら抜き撃ち。

憐れ、オレのオルトロスの片割れは奴さんの腕とともに宙を舞った。

その激痛に声にならない声を上げながらのたうちまわる奴さん。

オヤジはそんな奴さんの様子をケラケラ笑っているようだ。まぁ、間抜けを見れば笑いたくなるもんさ。

そのままゆっくりと奴さんに近づき、奴さんにオレは優しく話しかけた。

 

「いけねぇなぁ、人の好意は素直に受け取るもんだぜ。そいつを蔑にするってのは、人として最低なことだぜ。まぁ、人の命を掌で転がす奴に良い奴なんていないけどな………あぁ、それはオレも一緒だったか」

 

いけねぇなぁ、人に説教かます前に手前が同じじゃ話にならねぇか。

まぁ、オレ自身自分が善人だなんてこれっポッチも思っちゃいないがね。

まぁ、笑わせてもらったよ。

だからこそ、そろそろ終わらせようか。

オレはオルトロスを奴さんに突き付けつつ、最後の審判を下す死神よろしくに告げる。

 

「お前さんは知ってるかい。日本の刀にゃぁ流派があって多彩であり、西洋にゃぁサーベルによって多種多様な攻撃方法がある。だが………大剣にゃぁそんな立派なもんがない。何でだと思う?」

 

教師のように優しく問いかける。

その問いかけに奴さんはまったく答えられないようだ。オレの目から顔が話せず、なくなっていく血もあって真っ青になった顔に死相が浮かんでいた。

 

「答えはな………必要ないからだ。大剣って武器は、そもそも重くて取り回しが悪い。だから動作は決まって単純なものにしかならないんだよ。でもなぁ……そもそもそんな必要がないんだ。なんせ…………」

 

そこで言葉を一端切り、オレはきっと実に愉快そうに笑った。

これから語るのは、オレ等の組織の名の由来。本当の意味だ。

 

「大剣は破壊対象に向かって一直線にしか動かないからだ。その間にいかなる障害があろうとも、それすら破壊して対象に刃を叩きつけてぶっ壊す。それこそが大剣。一度振り下ろせば必ず殺す一撃必殺。それこそが大剣と言う名の武器だ。それはオレ等の名でもある。一度でも殺ると決めたのなら、相手が巨額の富を差し出そうが永遠の命を差し出そうが。そんなものなんて無視して絶対に殺す。それがオレ等だ」

 

そして最後に引き金を引いた。

発射された弾丸はそのまま見事に奴さんの脳天に当たり、この血まみれの部屋の一部へとなった。

それを見送るとオレとオヤジは部屋を出る。

 

「んじゃ…………帰るか」

「そうだな。オレは速く帰って…………お嬢様とデートにでも行こうか。寂しい思いをさせちまったからなぁ。その分うんと可愛がってやるかな」

「ケッ、色惚けのガキが」

「抜かせよ。幸せ者っていうんだよ、こういうのはさ」

 

そう言いながらクロード達と合流すべくオレ達は歩き始めた。

 

尚、この日、確かに亡国機業は壊滅した。

本部の所属人数約2000人。そして死者はほぼ同じ2000人。対して大剣のメンバーに一切の死傷者無し。

世界はまた一つ平和になると共に、大剣の狂名は更に深まった。

 

 

 


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