恋する乙女と最凶の大剣   作:nasigorenn

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かなり無理矢理終わらせた感が否めませんよ。


百五十二話 これで京都とオサラバだ

 露天で実にテメェらしからぬラブロマンスをやったオレだが、だからといってそのままお嬢様とベットインってわけじゃねぇ。何せ今は『学園の御仕事中』だからなぁ。

そのことについてお嬢様はイケズだって言うんだが、顔から火が出るんじゃねぇかってくらい真っ赤になってる辺り、まだそいつは早いんじゃねぇかなぁ。

いや、オレだって男だ。好きになった女を自分のもんにしたいって欲求くらいはあるもんさ。まぁ、だからといって畜生よろしくに飛びつくほどがっつりもしてねぇ。何せ時間なんてもんはまだまだあるんだからなぁ。

え? 若いのに随分とドライじゃねのかだって? 普通の思春期のガキならこういうのには何も考えずに飛び込んで、貪り尽くすようにするもんだって?

まぁ、そう言うなよ。ガツガツと貪欲に行くのが若いモンの特権だが、だからって女を前にがっつくのはみっともねぇことこの上ねぇのさ。男足る者、優雅たれってか? いや、そんな気取ったモンじゃねぇさ。要は勢い任せはよろしくないってことだよ。そこんところ、もっとお嬢様のことを考えてしねえとなぁ。女ってのはそういうのに夢を見るモンらしいからぁ。

そんなわけで、その日はとっととご就寝だ。

お嬢様は少し膨れてたが、オレはチフユ達が居る前でそういうのを見られるつもりはないんでね。

 そして翌日になったわけだが、周りの空気がいつもとかなり違っていたよ。

具体的にいうのなら、実に幸せそうに笑うお嬢様。そんなお嬢様を見て羨ましそうな目をするホウキ達。イチカの野郎は何も分かってないようで首を傾げ、マヤは真っ赤な顔で俯きチフユは青筋を立てて睨んできた。

 

「おい、ハーケン………学生の身分で淫行とは、随分な真似をしてくれるじゃないか」

 

何で睨んできたのかと思ったらそんなことかよ。

そう思いながらオレはチフユにニヤリと笑い返す。

 

「オレはお嬢様を『まだ』抱いてないぜ。そういうチフユこそ、そろそろお相手を見つけた方がいいんじゃねぇかい? あまりにもそういうのがないとイチカの野郎が安心してあそこに居るホウキ達の誰かを抱けねぇってよ」

「っ!? そ、そういうか、貴様………」

 

余計に怒りを昂ぶらせるチフユ。おっかないからあまりからかうのは良くないが、たまにはいいだろうさ。

何故そんなことが飛び出て来たのかと言えば、何でもお嬢様が一緒の部屋になったホウキ達に幸せそうな面を突っ込まれてゲロしたらしい。

片や幸せのあまりに浮かれまくるお嬢様。そんなお嬢様の話を興味深そうに聞くホウキ達。女ってのはその手の話が大好物で、そいつを聞いては大ハシャギだったそうだ。それを帰ってきたチフユが聞きつけ、そして説教タイム開始だ。

お嬢様は勿論怒られたんだが、まったく応えてねぇらしく幸せそうな空気を思いっきり出しまくってたとさ。だからこっちに矛先が向いたのだろうよ。

オレはチフユにそう応えつつお嬢様に目を向けると、お嬢様はオレの目を診た途端に顔を赤らめた。

 

「うふふふふふ…………」

 

何とまぁ可愛らしいこって。

まさに恋する乙女ってのはああいうのを言うんだろうさ。そんなお嬢様を見るのは嫌いじゃないがね。オレもある意味ガキだってのが昨日の一件で分かったわけだし、ここは年相応にするのもやぶさかじゃねぇところかね。

まぁ、なんだ。そんな周りの奴等に囲まれつつ、本日の予定ってもんを見直してみようか。

と言ってもだ、正直そのままIS学園に帰るだけなんだがねぇ。

だからチフユのお説教を躱しつつ皆で駅まで向かおうと歩き始めたわけだが、そんなオレ達の前に現れた奴が居た。

あぁ、ここまで来ればもう分かるだろ? 美しい黒い長髪に藤色をした着物を纏った儚げな印象をうける大和撫子の名がふさわしい美少女だ。

そいつはオレを見るに、オレに向かって飛びついてきた。

 

「レオスさん、おはようございま~す!」

 

そしてオレの腕に抱きつこうとするそいつを、オレは顔面をアイアンクロウで掴んで止めた。

 

「あぁ、おはようだ。朝から随分と熱烈でオレは目が覚めたよ」

「あぁ~ん、レオスさんのイケズ~。そのまま僕の抱擁でドキドキして貰いたいのに~」

 

朝も早からテンションの高いこの女装野郎にオレは笑顔で返し掴んだ手に力を込める。

 

「そうかい。なら、オレは握力で直にお前さんの心臓をドキドキとさせてやるよ」

「痛たたたたたたたッッッッッッッッッッッ!! レオスさんの愛が重くて痛い!」

 

腕の中で藻掻く青龍院 顎にオレは呆れてると、少しばかり腕が痛みを感じてきた。

まだ治療し終えたばかりで治ってねぇんで結構響くのさ。

それを察してか、お嬢様はそっとオレの反対の包帯だらけの腕に手を添えた。いつの間にこっちに来たのかねぇ。お嬢様はオレの手を優しく支えつつ、顎に向かって微笑み挨拶する。

 

「おはようございますわ、顎さん」

「おはよう、セシリアちゃん」

 

取りあえず奴さんの顔面から手を離すと、奴さんは軽く顔の筋肉の調子を確かめつつお嬢様に笑いかけた。この二人、結構ウマが合うらしいからなぁ。

そう思ってたんだが、今回は少し違うらしい。

 

「レオスさんに少し近すぎじゃないですか、顎さん」

「あれ、昨日も同じ感じだったけどどう違うのかな、セシリアちゃん?」

 

二人の間で火花が散るのが見える辺り、相当にオレの疲れも溜まってるらしいぜ。

するとお嬢様がオレの右腕を労りつつもそっと腕に抱きついてきた。

 

「私、昨夜にレオスさんに告白しましたの。それにお返事もいただきましたし、これで私達は正式な恋人同士。いくら顎さんでも恋人にすり寄るのは許しませんわ」

「ふ~ん、そうなんですか。でも、その様子じゃまだ抱いては貰ってないですよね。だったら僕にだってまだまだチャンスはありますよ。僕、一生懸命頑張って勉強してるし、いつでも使えるように綺麗にしてますから」

 

そう言いながらオレの腕に抱きつく顎。流石に野郎にくっつかれたって嬉しくねぇよ。

お嬢様はそんな奴さんを見て羞恥で真っ赤になりつつも顎に言い返す。

 

「わ、私はそんなふしだらではありませんので、そんな簡単にはいたしませんわ! そういうのはもっと二人っきりで邪魔が入らないところで……」

「そういうことに拘るのって、相手を焦らしてますよね。殿方にそんな仕打ちはあんまりじゃないですか? 僕なら絶対にそんな可哀想な真似しませんよ」

 

そのまま二人で妙な笑みを浮かべつつ張り合う二人。

周りはそんなオレ達を見て、

 

『これが本物の修羅場なのね』

 

だとさ。

いやいや、そんな修羅場なんて御免だよ。

そもそもオレは野郎に興味はねぇんだからよぉ。悪いが後ろの処女は例えお嬢様でもくれてやる気はねぇ。

イチカもそんなオレを見て何を思ったのか『仲が良いな』だとよ。お前さんは一遍『ハッテン場』にでも行って掘られてみればいい。そうすりゃ多少はそういうのにも理解ができるようになるだろうさ。ただし、その際にはもう手遅れかもしれないがね。

そんな周りが騒がしい中、オレ達はIS学園に帰るべく、京都駅へと向かっていった。

顎の野郎が来たのは見送りとオレにアタックだと。両方とも御免だがね。

チフユは顎の野郎が男だと知って驚いた挙げ句、あの裏切り者の一人を刀一本で斬り捨てたのがコイツだって教えたら表情が驚きのあまり固まっちまってた。

そいつはこの旅行の中で一番笑えるもんだったよ。

 

「レオスさん、僕はいつでも待ってますからね」

 

帰り際に潤んだ瞳でそう言われたが、オレの答えは決まってる。

 

「オレは二度と御免だよ。お前さんみたいなおっかない奴には二度と会いたくないね」

 

そう答えてオレは電車に乗り込んだ。

何せああふざけちゃいるが、奴の本音はあの神父と似たようなもんだからなぁ。

 

『愛し合い(殺し合い)ましょう』

 

だからな。二度と会いたくないのも分かるだろ。アイツ相手はかなり危険だからなぁ。誰だって危険な目には遭いたくネェ。

帰りの電車の席に座りながら今回の下見旅行を振り返ると、まぁ悪く無いと思った。

確かに右腕がおシャカになっちまったが、それ以上に得たモンもある。

そう…………。

 

「えへへへ~、レ~オスさ~ん♡…………むにゃむにゃ」

 

オレの身体に身体を預けながらそんな可愛い寝言を言う恋人を得たんだからなぁ。

これが普通の幸せってもんらしい。

そのままハッピーで終われば良いんだが、どうせこの後は爺さんに呼ばれて報告書やら何やらがくることだろうさ。そう考えると辟易しちまうよ。

でも、まぁ…………。

 

今はこうして過ごすのも悪くはねぇと思うよ、オレはね。


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