恋する乙女と最凶の大剣   作:nasigorenn

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お気に入りが増えますが、評価が下がっていく現状。如何しがたいですね。


百二十五話 市街地なりの暴れ方

 さぁ、役者が揃った所でこのパーティーも終盤だ。

え? 役者が揃って直ぐに終わりはどうなんだって? そいつは司会進行の次第ってやつだろ。もう相手はカードを出し終わったし、こっちの手札も揃ってる。なら後は互いに持ってるモン出し合ってどっちが上か決めりゃぁいい。

今回の話はそういうもんだ。

オレはお嬢様に顔を向けつつ通信を入れる。

 

「ここから先は選手交代だ。今度こそ見せつけてやれよ、お嬢様。オレもサポートしてやるしよ」

「えぇ、盗人に見せつけてやりますわ! 本物というものを! レオスさんが作ってくれたこのチャンスのためにも!」

 

お嬢様、滅茶苦茶に張り切ってやがる。どうやらあの手品が成功したことが嬉しいらしい。その感想を是非とも聞かせてもらおうじゃねぇか。

 

「お嬢様、さっきの手品はどうやってやったんだ? あれだけ苦戦しまくってたってのによぉ」

「はい。アレもそれも全部レオスさんのおかげですわ! あの曲がる弾道をイメージすることで多少は曲がるようになりました。それで重要だと思ったのは空気抵抗と回転ですわ。野球のカーブも同じ原理で曲がりますし、ただ曲がるのをイメージするのでなく、回転と空気抵抗をイメージすることで曲がるようになりましたの!」

 

嬉々とした様子でハシャぎながら種明かしをするお嬢様。

お嬢様は一度掴んだ感覚を物にしたらしく、もう完璧に使いこなせるんだと。こりゃますます強くなったもんだ。クロード仕込みの狙撃に手品師みてぇなトリックを併せ持つ。こりゃマジで気を付けねぇと墜とされそうだ。怒らせたらおっかねぇのも増し増しって感じかねぇ。

完璧に物にしたんで実に嬉しそうだ。これで御国も五月蠅くは言わねぇだろ。

 

「くそっ、まさかそんな雑魚に一撃貰うとはな!」

 

奴さんは起き上がるなりライフルを構えつつ飛行し始めた。

どうやら完璧には壊れなかったらしい、あのでけぇスラスター。それでもその前と比べれば、まるで弾丸を仰け反って避ける某映画のワンシーンよりのろまで遅せぇ。

オレはそんな奴さんに向かって話しかける。

 

「おいおい、お嬢様を雑魚とか言うなよ。だったらそんな雑魚とやらに思いっきり背中をブチ抜かれて地面にキスさせられたお前さんはなんだい? あぁ、それこそお前さんが大嫌いな雑魚かぁ」

「っ~~~~~~~~~~!?」

 

奴さんは言葉こそ吐かねぇが、それでも充分に伝わってくるくらい怒ってるようだ。

まったく……見た限りからわかったが、まだまだお子様だねぇ。こんな軽い引っかけに見事に食い付くんだからよぉ。駄目だぜ、もっと冷静にならねぇと。

でねぇとこんな御仕事、続けられねぇよ。

奴さんはお怒りな様子でこっちに向かって突っ込んで来た。

 

「さぁお嬢様、出番だぜ」

「はい、行きます!」

 

奴さんに向かってお嬢様も飛び出し、ライフルによる射撃戦が繰り広げられ始める。

 

「はぁあぁあぁあぁあああああああ!!」

「くそっ!」

 

奴さんは怒ってはいてもそれなりにはやるらしい。

お嬢様を近づけさせねぇようにビットで対応しつつ、手前の持ってるライフルでお嬢様を撃ち抜こうと狙い撃つ。

お嬢様も負けじとティアーズで応戦しつつ、此方もライフルで奴さんに追撃をかけようとお嬢様は引き金を引く。

奴さんはスラスターが半壊して性能がかなり落ちたってのに、中々の動きでお嬢様の射撃を避けていく。まぁ、此処辺りは腐っても処女かどうかの違いって奴だな。お嬢様は初々しい未体験なんでね。生憎と捨てさせる気はねぇがな。

お嬢様にはずっと綺麗な身体でいて貰いたいんだよ、オレとしてはね。

そのまま激戦を繰り広げるお嬢様。

さっきも同じようにやり合ってたが、今度はこっちが押してる。

何せ向こうはスラスターが壊れてるせいで機動力が落ちてる上に、お嬢様に背中を当てられたのがかなり腹が立ったらしい。御蔭で怒りまくり攻撃が単調になりつつある。

お嬢様はその様子を見て好機と見たようで、さっそく面白い事を仕掛けていた。

 

「そこ、甘いですわ!」

「ふん、嘗めるな!」

 

ティアーズで牽制しつつ本命のライフルで狙い撃つってのは先程までとかわらねえが、ティアーズの牽制は三基だけ。残り一基はお嬢様と奴さんから離れると、それからゆっくりと奴さんの背後にある建物に侵入した身を隠した。

奴さんは気付いてねぇだろうよ。今はお嬢様に夢中になりすぎていて、まさか挟撃されるなんてなぁ。

そして狙い通り、タイミングを見てお嬢様の隠し札が牙を剝いた。

 

「いけぇっ!!」

 

お嬢様の叫びとともに、隠れていたティアーズが奴さんの背後へと攻撃を始めた。

 

「なっ!? いつの間に!」

 

背中を撃たれたことに驚く奴さん。おいおい、今更気付くなんてもう駄目だぜ。

その動揺がバレバレなもんだから、更にお嬢様は攻め立てる。

 

「まだまだいきますわっ!」

 

そこから始まったのは、謂わばティアーズを用いての市街地ゲリラ戦だ。

構造物を使って逃げ隠れ、不意打ちだまし討ちは勿論、囮にティアーズを使ったり時には自分を囮に使ったりしてティアーズに攻撃させたりしてる。

お嬢様はいつの間にこんな戦い方を覚えたんだかねぇ。こんなISの戦闘メソッドにはねぇような事。どうもクロードの野郎に仕込まれたって感じが臭うぜ。一体お嬢様に何教えてるんやらねぇ、あの副長様は。

しかもお嬢様自身、この狭い住宅街っを上手く飛び回ってやがる。

比較的動きやすい空間を確保してそこからティアーズに指示を出して応戦してる。下手に動き回るよりはお利口な方法だ。

そして奴さんはお嬢様と同じように動きたいところだが、それをさせねぇようにティアーズが阻害するように仕掛けてるって訳だ。

したたかで騎士道からはかけ離れちゃいるが、より実践的な戦い方にお兄さん、感心しちまうよ。

だが、相手も黙っちゃいねぇ。プライドってもんが高いんだろうよ。

お嬢様の攻撃を凌ぎつつ応戦し、虎視眈々と制空権っを取ろうと粘ってる。

ここで奴さんがオレ等から逃げるかオレ等を叩きのめすには、どうしたってこの狭苦しい住宅街から離脱する必要がある。

だからこそ、奴さんも必死って訳だ。

それで? さっきからオレは何もしねぇのかだって?

おいおい、そいつは野暮ってもんだろ。お嬢様の大舞台で横から茶々入れるほどオレは無粋じゃねぇよ。

 

「くそ、くそ、くそっ!!」

 

奴さんは吐き捨てながらお嬢様の相手をしていくわけだが、やっぱり条件が悪かったなぁ。すでに流れはこっち側だ。ここから流れを変えるには、それなりにでかいことをしねぇとなぁ。

奴さんもそれには気が付いてるだろうさ。だからこそ、こうして可愛いと思えるくらいに焦ってる。

もうそろそろ終わりかねぇ。これ以上続けてもジリ貧だ。このまま行けば消耗戦になってお嬢様に押し負ける。

だからこそ、お嬢様は勝者の余裕ってもんを顔に滲ませつつ奴さんにお優しいお言葉をかけた。

 

「これ以上やっても貴方に勝機はありませんわ。大人しく投降しなさい」

 

それに対し奴さんは口元にニヤリと笑みを浮かべた。

お嬢様の優しさは届かなかったらしい。いやはや、お可哀想にってか?

 

「そんな甘い戯れ言を聞く馬鹿が何処にいる!」

 

奴さんはそう言って一気に距離を詰めてきた。

それも目にも止まらぬ速さってやつでだ。確かイチカの野郎の十八番だったか。

 

「なっ!? 瞬時加速ですって!」

 

お嬢様はまさかここで奴さんがそいつを使ってくるとは思わなかったんだろうさ。目を見開いて驚いてる。中々に悪く無い可愛らしい顔だが、出来れば別の時に見たいもんだ。

それで奴さんが何をしたかと思えば………強行突破だ。

お嬢様の脇を猛スピードで通り抜け、それでオレのほうに突っ込んで来る。

 

「貴様さえいなければ!!」

 

ライフルの銃剣を展開して突っ込んで来る様はまるでテレビで見たサムライみてぇだ。所謂、せめて一矢報いてやるってやつだろうさ。

だが、それを受けるのは流石に嫌だね。

 

「レオスさんッ!!」

 

お嬢様は突破されたことで焦りつつ、オレに向かって突進する奴さんを止めようと攻撃を仕掛けるが、速い上に奴さんも上手く避けるもんだから掠りもしねぇ。

偏向射撃も曲がる角度に限りがあるらしく、追いつけねぇようだ。

絶対絶命ってか? 残念だったな。

オレは向かってくる奴さんに向かって笑いかける。

 

「せっかくお嬢様とダンスしてたってのに、そいつを投げ捨てたのはいただけねぇなぁ。だからこそ、お仕置きだぜ」

 

そしてオレは近くにあったワイヤーをデルフィングで断ち斬ると、急いで横に跳び退いた。

その途端、オレの後に隠してあった『レーバテイン』が轟音を起ててグレネードを連射した。

その雨に飲まれた奴さんは………。

 

「!?!? ぐあぁぁあぁあぁあぁあああぁああぁあああぁあああ!!」

 

見事にグリルチキンになってこんがりってわけだ。こんな終いかたは好かねぇが、これも仕方ねぇってか。

後はお嬢様と一緒に回収するだけだよ。本当、面白くもねぇ仕事だった。


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