恋する乙女と最凶の大剣   作:nasigorenn

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スランプが脱せ無い自分が苛立たしい今日この頃です。


百十四話 血風呂の入浴にはご用心を

 お嬢様にご自慢の足技を見せつけて恰好を付けるオレと若頭。

そんなオレ達をお嬢様は信じられないような目を向けてきた。

 

「手榴弾を蹴り飛ばすなんて、正気ですのっ!? 少しでも間違えれば自分達が爆発に巻き込まれるというのに!」

 

まぁ、お嬢様の言いたいこともわからなくもねぇが、そいつは呆れるくらいにつまらねぇ意見だ。

オレはニヤリと笑いながらお嬢様に話しかける。

 

「確かにそうだが、そうならなかっただろ。手榴弾ってのはピンを抜いてから炸裂するまでに多少のタイムラグがあるんだよ。だからああやって蹴っ飛ばしても時間内だったら巻き込まれねぇ。いいかい、お嬢様……こういうのはびびった方が負けだ」

「~~~~~~ッ、もう! あまり危ないことはしないで下さい!」

 

あらら、怒られちまったよ。

まぁ、その反応を見る限りだと心配してくれてのことだろうよ。嬉しいねぇ。

そのままお喋りに興じたいわけだが、まだまだパーティーは終わらねぇ。

上手く踊れなかった脱落者が床に転がってるわけだが、そのおかわりが来るのも速ぇもんさ。

どうやら奴さん達、自分で投げた花火が自分に返ってきて尻をローストされたもんだから躍起になったらしい。

テンション上げるのが遅すぎるぜ。それに悪いのはそっちなんだから八つ当たりは止めて貰いたいねぇ。

玩具ってのは使用用途を守って正しく遊ばねぇとなぁ。何? 手榴弾を蹴っ飛ばすのは正しい使い方じゃねぇって? そいつはあれだ。そもそもオレ等は手榴弾で遊んじゃねぇ。飛んできたボールを蹴り飛ばして戻してやっただけなんだからよ。

遊んでる連中に返してやっただけ有り難く思って貰いたいもんだ。

妙に騒々しくなってる通路の先にオレと若頭は目を向けると、二人して同時に笑う。

 

「連中、花火が上がったんでテンション上がったらしい。ここは一つ、ボーナスゲームといこうぜ、若頭」

「ふん、いいだろう。連中が如何に間抜け面を晒しているのかが楽しみだ」

 

さぁ、やる気も漲らせたところでオレと若頭は早歩きを始める。

おっと、ここでお嬢様は留守番だ。ただでさえ辺り一面見せられねぇもんが転がってるってのに、その上血風呂は駄目だろうよ。見たら流石のお嬢様でも気絶しちまうよ。

だからこそ、楊とお嬢様に話しかける。

 

「楊、お嬢様と留守番よろしく。悪いがこの先は刺激が強すぎる。戻って来たころには終わってるだろうが、お嬢様は目を瞑っておけよ。見た瞬間にさっきまで喰ってたモン吐き出すかもしれねぇからよ」

「レオスさん!」

 

少しばかり上品じゃねぇって怒られちまったよ。

まぁ、女にゲロるとは言えねぇよなぁ。

 

「大哥に何かあったら貴様をコンクリートに詰め込んで上海の海に沈めてやる」

「そいつはおっかねぇ。寧ろオレの方を心配してもらいたいもんだ。若頭にもしもなんて言葉はほぼねぇだろ。奴さんはオレが知る限り、クソオヤジの次に図太いんだからよ」

 

楊は心配性だねぇ。少なくとも若頭をどうにか出来る奴なんて、片手で数えられる程度しかいねぇよ。

逆にこっちの方を心配してもらいたいねぇ。オレはか弱いんだからよ。

どっちにしろこれでお嬢様は大丈夫だろ。楊だってかなりやるんだ。余程のことがなけりゃぁたぶんどうにかなるもんさ。

そんなわけでお嬢様の無事も確保したってわけだ。

なら後は存分に遊んでくることにしようか。

お嬢様と楊に留守番を頼んだら、後は連中の驚く面を見るべく歩き出す。

角を曲がればミンチになった客が4人ほど。

中には呻き声を上げて未だに生き残ってる奴もいるが、ほっとけば死ぬだろうよ。

そんな奴を一々相手にするのも馬鹿らしい。ここで慈悲深い奴なら御慈悲でこれ以上苦しまないようにトドメの一発をくれてやるもんだが、そんな弾の無駄遣いをするような趣味なんてオレは持ち合わせてねぇ。大人しく苦しみながら死んでくれ。それによ、その方が生きてるって実感が湧くってもんだろ。残りの時間を有意義に過ごしてもらいたいもんだ。

そいつ等を気にもかけずに更に進めば、そこから先はより自分達が踊るための曲を準備してる連中が待ってた。

そいつ等はオレ等を見た途端にダンス開始の合図を出して来た。

 

「「「「「「死ねぇえぇえぇえぇえぇえええええええええええええええええええええええええぇええええええええええ!!!!!」」」」」

 

何とまぁ聞き飽きた台詞か。

もう少し捻りが欲しくなるのは当然だと思うぜ、オレは。

まぁ、こんな仕事ばかりしてると語彙ってもんは減るのかもしれねぇが。

まだイチカの野郎のほうが面白ぇことをいうもんだよ。

そんな毎回聞き飽きた台詞と共にオレ達に降りかかる弾雨。

その中でオレはそれを気にすること無く若頭に笑いかける。

 

「んじゃ、先いくぜ! 遅れんなよ、若頭」

「先は譲ってやるが、それだけで覆せるなどと思うな」

 

その言葉と共にオレは連中のダンスに飛び込みを決める。

連中に向かって突っ走り、弾雨をかい潜るが速度は落とさねぇ。避けられるモンは避け、当たりそうなモンはオルトロスで弾を切り落とし、ヤバそうなのは撃たれる前にこっちから撃って黙らせる。

そして一気に連中の懐まで飛び込めば、後はオレの独壇場だ。

 

「let's dancing♪」

 

そこからは好きにやらせて貰ったよ。

近くにいた奴をオルトロスの銃剣を使って首をはね飛ばし、もう一丁を呆けてるアホの喉に突き刺して盾の代わりにする。

乱戦になったことで慌てた馬鹿が誤射も考えずにぶっ放すが、そんな間抜けな弾が当たるわけもねぇ。盾代わりにしてるアホで防いでお礼をそのままぶっ放す。

盾代わりの奴は首が吹っ飛んで使い物にならなくなったが、少しでも役に立ったんでもういらねぇ。

間抜けの胸を撃ち抜いた後、更にオレは連中へと斬り掛かり銃弾を浴びせていく。

間抜けな奴等は絶叫を上げながらも床に色々なモンをぶちまけていったよ。こんなに汚れたんじゃ、クリーニングでも落ちねぇんじゃかな。悪いがそいつのお代をオレは払う気はねぇからな。

連中はオレっていうダンス相手に満足に踊れなかったらしい。

次々に脱落していき、残るは一人。

このゲーム、もらったな。大体30人くらいなら、もう半数近く潰してる。

そのトータルで考えれば、若頭がオレを逆転するためには残りを全部喰わねぇといけねぇからな。そんなことを許す程オレは甘くねぇ。

 

「残り1、もらったっ」

「させるか、阿呆」

 

残り一人の頭を吹き飛ばそうと思ったんだが、その前に先に奴さんの頭が吹っ飛んで床や壁に脳漿や血肉がぶちまけられた。

オレは少し舌打ちしつつも後を向けば、若頭がしたり顔でこっちを見て来やがった。

 

「全く……随分と食い荒らしおって」

「そう言うなよ。遅れた若頭が悪いんだ。それに最後の獲物を横取りしやがって」

「流石に全て持って行かれるのは我慢ならないのでな。ちょっとした嫌がらせだ」

「嫌な大人だねぇ、まったく」

 

そこは寧ろ若者に華を持たせるのが年長ってもんだろうによぉ。

若頭も随分と大人げないもんだ。

これで此処に集まってた奴等は皆おねんねだ。

最初にお嬢様に言った通り、実に刺激的な光景になってた。床一面が真っ赤な水たまりで染まってるよ。歩けばバシャバシャ水音がする辺り、如何にぶちまけたのかが良く分かる。その上連中の身体は転がってるわ床以外にも壁とかに色々な血肉がこびり付いてるとかなぁ。

 

「これは酷いものだ。気が確かな者ならば即座に吐いて卒倒するだろうよ」

 

若頭は周りを見てそう言うが、平然とそう言える若頭は気が確かってことじゃねぇってことなんだろうか。

 

「この騒動が終わったら焼き肉でも食いに行くかい? 勿論若頭の奢りで」

「冗談を抜かすな、まだ火鍋の方がマシだ。それに小遣いをくれてやるのだから自腹でいけ。奢る気は無い」

「つれないねぇ」

 

互いにそんなジョークを言い合いながら来た道を戻る。

その際に足下の水たまりをかき分けて歩いて行くのは当たり前だった。

そしてお嬢様の所まで戻ると、オレは少し笑いながらお嬢様を弄くることにした。

 

「お嬢様、この先刺激が強すぎる光景が広がってるんでな。悪いが目ぇ瞑ってじっとしていてくれよ」

「それってどういうことですの? でも、わかりましたわ。レオスさんの言うことでしたら従いますわ」

 

信頼されてるってのは嬉しいもんだ。

素直に目を瞑ったお嬢様を笑いながらオレは……お嬢様を抱き上げた。

 

「え、キャァ!? レオスさん! 一体何を!」

「なぁに、一人にさせて寂しい思いをさせちまったお嬢様にご褒美だ。目瞑ってっててもちゃんとしっかり捕まってろよ」

 

そいのままお姫様だっこって奴をしてやると、お嬢様は顔を真っ赤にして慌て始める。そのまま更に弄ることにした。

 

「あんまし暴れるなよ。ジッとしていてくれたんならご褒美にキスしてやるからよ」

「キ、キスぅ~~~~……んぅ……」

 

ちょっとした冗談だったんだが、真面目なお嬢様は直に受け止めたらしい。目を瞑って白雪姫よろしくに構え始めた。

おかしいなぁ、ここはもっと慌てふためくところが見たかったんだがなぁ。

そんなやり取りをしていると、若頭と楊から声がかけられた。

 

「貴様の負けだ。素直に渡った後にその『ご褒美』とやらをしてやることだ」

「純粋な少女を弄ぼうとは、下衆な奴だ。何故こんな輩に大哥が目を置いているのやら……」

 

からかいが籠もった声でそう言われるオレ。

どうもここに来てから調子がでねぇなぁ。オレは弄る側のはずなのによぉ。

そう思いながらオレはお嬢様を抱きかかえて血風呂になった通路を通過した。

その後は若頭に冷やかされつつ、仕方なく額にしてやったよ。

そうしたらお嬢様は真っ赤になりつつも不服そうだったけどなぁ。

そこから先は……ここを出たら考えてやるよ。

そう思いながら先へと進むことにした。


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