恋する乙女と最凶の大剣   作:nasigorenn

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スランプが全然終わらない!


第百十話 珍しい組み合わせ

 若頭の挨拶を終えて、オレとお嬢様は奴さんの案内でエレベーターの乗って最上階へと上がる。

 

「いや、まさかこいつがこんな美しい女性と知り合いだとは思いませんでしたよ」

「いえ、そんな……お上手ですわね。王さんも凄いですわ、その若さでこんな大きなお店の総支配人だなんて」

 

お嬢様をそう褒める若頭。

お嬢様は褒められて顔を真っ赤にしながら若頭を逆に褒め称えると、若頭はそんなことはありませんよ、だってよ。

随分とまぁ、恰好付けていることで。

なのでお嬢様にバレないよう中国語で突っ込みを入れることにした。もしこの場にファンがいたら確実にバレるけどよ。

 

『そうそう、謙虚にしなくてもいいじゃねぇか。今の地位掴むのにどれだけ他の組織潰したって話なんだからよ』

 

お嬢様はオレがいきなり中国語なんて話し始めたもんだから驚いてやがった。

別に驚くようなもんじゃねぇよ、これぐらい。世界で見りゃ中国人は結構いるからなぁ。大体英語、中国語、ドイツ語、日本語の四つが使えれば外を出回っても何だかんだと言って会話は出来るってもんさ。

すると如何にもな営業スマイルを浮かべていた若頭が笑顔はそのまま、でも目はまったく笑ってねぇ顔をしながら同じように中国語で返事を返してきた。

 

『彼女に分からないからと言って不躾な事を言うな、たわけめ。次に無礼なことを言うのなら、この後の食事は流動食しか受け付けない身体にしてやろうか?』

『おぉ、こわ。そうカリカリすんなって、ただのジョークなんだからよ』

 

お嬢様はオレと若頭の会話を聞いてもわからねぇもんだから首を傾げる。

あまり聞いていいもんじゃねぇぞ、こいつは。下手に聞いたら身体の中のモンをいくつか引っこ抜かれて売り飛ばされそうだ。

そのままジョークも交えて少し話をしていると、お嬢様は少しばかりむくれちまったようだ。

 

「むぅ、レオスさん、一体何を話してますの?」

「おっと悪いな。ついつい久々だったんで盛り上がっちまった。何、お嬢様が美人なもんだからイイだろって自慢してたんだよ」

「なっ……ぁぅ、そんな、美人だなんて……」

 

お嬢様は顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしてた。そいつは恰好もさることながら、中々にグッとくるモンがある。

実際にはそんな話じゃねぇんだけどな。

 

『ところで今日はいるのかい、楊の奴』

『当然居る。あれは私の右腕だからな。貴様と馬が合わないことは知っているが、一々そんなことに構ってはいられん』

『そういうなよ。オレは寧ろ気に入ってるんだぜ、楊の奴。真面目で真剣でさ。なんでこんな仕事してるのかって突っ込みたくなるくらいだよ』

『それについては私も同意だ。仕事は丁寧で確実、本人の跳ねっ返りも気もない服従心には寧ろ感心させられる。右腕として充分以上に良くやってくれているが、何故こんな因果な仕事をしているのか私も分からない』

 

と、こんな感じな話だよ。

若頭の側近の奴がオレの事を妙に毛嫌うんだが、オレとしては寧ろ気に入ってるんだがねぇ。

片思いってのは辛いもんだよ(笑)

 そんな話題を話していれば、あっという間にエレベーターは最上階へと到着した。

エレベーターの扉が開いた先には、実に豪勢な装飾に飾られた見事な中国風の部屋が広がっていたよ。

流石はVIP向けつったところか。豪華で気品が溢れる部屋だが、金持ち特有のいやらしさってもんが感じねぇのがイイ感じだよ。

すると早速出迎えらしく従業員が全員で部屋の前に並んでた。

 

「「「「「ようこそ、おいで下さいました!!!!」」」」」

 

その光景は壮観って言葉に尽きるってもんだ。

そのまま若頭は軽く従業員に労いの言葉をかけると、オレ等を席に案内するよう指示を出した。

そいつに従って席に付こうとしたんだが、そこで何を思ったのか若頭がお嬢様に話を振ってきやがった。

 

「オルコット嬢、そのドレスも大変美しいが、この場では少々浮いてしまっているかもしれない。よければここでお色直しをしてはどうだろうか。ここにふさわしい衣装ならば、レンタルで貸し出しているのでね」

「た、確かにこの御部屋にこのドレスは少し浮いてしまっていますわね。わかりました、そのご厚意に感謝しますわ。さっそく着替えてきますね」

 

そしてお嬢様は女性の従業員に連れられて別の部屋へと移動し、オレと若頭は席に付く。

 

「おい、若頭。こいつはどういうことだ?」

 

勿論、聞いたことが何なのかはわかるよなぁ。

その質問に対し、若頭は何かを企むような悪どい笑みを向けて来やがった。

 

「どうも何も言ったとおりだ。あの少女は確かに美しい。お前の連れだとはとても思えないくらいにな。だが、あのドレスは少々浮いてしまっている。その場にはその場にふさわしい服装というものがある。だから勧めただけだ」

「その割には随分と悪どい面をしてるぜ。何が狙いだよ」

 

そう聞き返すと、いつの間に現れたのか禿頭にサングラスをかけ、ビシっとスーツを着こなした男が若頭の側に立っていた。

 

「貴様のような低脳では理解出来ないだろう。大哥のお考えは」

 

思いっきしオレを睨みつけるこの男に、オレは親愛を込めた笑みを向ける。

 

「よう、楊。相変わらずお前さんは真面目だねぇ」

「貴様などに褒められても嬉しくなどない」

 

この如何にも辛辣な対応をオレにするのが、さっき若頭との会話で上がっていた男。若頭の腹心の『楊 四馬』だ。

実に真面目な好青年って奴なんだが、クロードとは違ったガチガチの真面目さがちょっぴり目立つ所がチャームポイントだ。

楊はオレにきつくそう言いつつ若頭の側に控えると、若頭が手を動かした途端に懐からジッポライターを取り出して若頭の前にかざす。

それを見た若頭は多少呆れ返りながらも懐からタバコを取り出して咥えつつジッポの火をタバコに着火させた。

そして一息吸ってから美味そうに煙を吐くと、オレに向かって話しかけてきた。

 

「本当に良く出来た奴だ。私の動作一つでここまで察して先に行動するのだからな」

「お褒めいただき光栄の極みです、大哥」

「だそうだ。忠臣が凄くて感心するよ、オレもなぁ」

 

良く出来た部下ってのはこういう奴の事を言うんじゃねぇかねぇ。見た感じじゃ部下っうよりも執事って感じだけどな。

オレはそのままタバコを吹かしてる若頭に明るい笑みってもんを浮かべ、そいつを指差した。

 

「なぁ、そいつをオレにも分けちゃくれねぇか。学生やってると満足に吹かすことも出来ねぇんだよ」

 

目の前で美味そうに吸われてりゃぁ、多少好みが合わなかろうが吸いたくなるもんさ。爺さんから電子タバコを渡されちゃぁいるが、あれはあくまでも学園内で我慢しろってことで渡されてるもんだからなぁ。ここは学園じゃねぇんでな、吸っても文句は言われねぇだろ。

だが、若頭はケチなようだぜ。

 

「やらん。そもそも学生なら喫煙などせんだろう、この不良め。まぁ、そもそも貴様が真面目に学生などしているわけがないことは分かっているのだがな。どちらにしろこれは私のだ、やらんよ」

「ちっ、ケチだねぇ。一本くらい寄越してもバチもあたらねぇだろうに」

「貴様にくれてやるくらいなら僻地の異人に一元で売った方がマシだ」

「大哥のタバコは貴様のような者には勿体ないものだ!」

 

まぁ、ここは仕方ねぇなぁ。それによく考えたら、お嬢様が色々と怒りそうだ。

せっかくのムードが台無しになるってな。そういうところ、女は恐いんだとよ。

そう思ってもったいねぇが引き下がることにして待つこと数分。

やっとお嬢様が戻ってきた。

 

「お、お待たせしました、レオスさん………」

 

後からしてきたお嬢様の声は妙に小さい。

何かあったのかねぇっと思って振り向いたわけだが、その途端に言葉を詰まらせちまった。

何でって? そりゃさ、誰だって見たらそうなっちまうだろうぜ。

 

お嬢様のこの艶姿はよ。

 

「ど、どうでしょうか、レオスさん……似合って……ますか……?」

 

お嬢様は恥ずかしがって顔を真っ赤にしながら上目遣いでオレに自分の恰好について聞いてきた。

そんなお嬢様が着ているのは、所謂チャイナドレスってやつだ。

お嬢様のカラーである真っ青な生地に龍の刺繍が施されてるやつで、胸の谷間が強調されてセクシーさが全面に出てる。しかも下のスリットもかなり深くてお嬢様の真っ白い御御足が見え隠れしてる。

それが気になってか、お嬢様は凄く下の方を気にしてる様子だ。

さっきまで着ていたドレスも中々に似合ってたが、こいつはこいつで実に扇情的で艶めかしい感じがいいねぇ。

だからオレは恥じらってるお嬢様に答えたやった。

 

「あぁ、凄くセクシーで似合ってるぜ、お嬢様。ファンよりも似合ってると思うよ。正直似合い過ぎて絶句したね」

「そ、そうですの! よかったですわ……(レオスさんが褒めて下さいましたわぁ! で、でも、セクシーって……うぅ、胸の所とかスリットとかが意識してしまいます……)」

 

お嬢様は華やかな笑みを浮かべて喜ぶ。

それがまた恰好とマッチして見惚れちまいそうだ。

出来ればそのまま二人でゆっくりとしたいもんだが………。

 

『ほぉ、これは………異国の人間でも着せればまた違った美しさがあるものだな』

『こんな美しい少女があのクズと同じ学校の生徒とは思えませんね』

 

この二人がいるところで贅沢は出来そうにねぇや。

まぁともかく、これで皆揃ったわけだ。

後は若頭が言う本物の中華のコース料理を食うだけだ。

せっかくのお嬢様の姿に見惚れながらオレはそう思った。

 


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