恋する乙女と最凶の大剣   作:nasigorenn

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結構スランプが続いて参ってますよ。


第百五話 手の打ち所

 さて、イチカの野郎の物を盗もうとするストーカーは捕まえた……ってよりもクソオヤジの逆鱗に触れて使いモンにならなくなったわけだが。取りあえずはこれで会長の思惑には沿った通りの形になったわけだ。

だが、まだこのゲームは終わりってわけじゃねぇ。延長戦ってナイトゲームが残ってやがる。

内容はそのストーカーを本来回収する予定の部隊の捕縛、もしくは迎撃。

さっきまで主演を演じてたイチカのリベンジに丁度良いシロモンだ。

せっかくこの一週間、頑張ってきたんだからちゃんと発表しねぇとなぁ。クソオヤジの癇癪の所為で台無しなんて可哀想だろ。

そんなわけで、オレはお嬢様とイチカを連れて外へと出て行く。

会長は悪いがお留守番だ。念の為って奴だが、実際はクソオヤジに誰か一人付けとかねぇと不安で仕方ねぇからってのが本音だよ。誰か一人でもIS学園の奴がいた方が何かと都合が良いってもんさ。会長ならそこのところ、丁度良いだろ。

何せ生徒の長で、学園でも教師以上の権限を持ってるらしいからなぁ。

 外に出て、まず最初にすべきはっと……。

 

「お嬢様、イチカと一緒にISを展開して周囲を警戒してくれ」

「はいですわ!」

「あぁ」

 

お嬢様とイチカの二人は早速ISを展開して上空に飛び上がる。

イチカは念の為で、お嬢様は本命だ。遠距離型ならそのセンサーは遠くまで正確に調べることが出来る。イチカに上がって貰ったのは、既に近づかれてる場合の警戒と、お嬢様が見つけたタクシーに声をかけてもらうためだ。

やっぱりここは主演がいかねぇとなぁ。

オレは正直、働く気はねぇんでな。

此処まで来て何でだって? おいおい、そうは言うが、今回のオレはどんな立場だい? そう、ボランティアだ。手伝いはするが、そこまで。報酬もでねぇのにやる気はねぇよ。依頼を改めてして即金だって言うなら考えなくもねぇがね。

そんなわけで、ボランティアの範囲で動き、お嬢様達に動いて貰うつもりなわけさ。

そして早速お嬢様が何かを発見したらしい。

オレ等に大きな声で知らせてくれた。

 

「西南の方角、距離700から此方に高速で接近する機影を確認! 速度とサイズからISだと思われます!」

 

お嬢様はハキハキとした様子でオレとイチカにタクシーのことを伝えてきた。

この様子からかなり張り切ってることが窺えるねぇ。

 

「ビンゴだ。お嬢様、挨拶替わりに一発見舞ってやんな。イチカはスタンバっとけ。もうそろそろ再公演の幕が上がるぜ」

「了解ですわ!」

「あぁ、わかった! でもレオス、お前はどうするんだよ。手伝ってくれないのか?」

 

イチカがオレに何か期待してるような目を向けてきたが、そいつに応えてやれるほど、世の中ってのは甘くねぇのさ。

 

「そいつはお前さん達が不味くなったら考えてやるよ。まずは自分で頑張ってみろ。なぁに、最悪死にはしねぇだろ」

「そ、そんなこというなよ。さっきの事を思い出しちゃうだろ!」

 

どうやらあのクソオヤジは青少年にトラウマを刻み込んだらしい。

まったくもって可哀想ってもんだぜ。ありゃあ一般人には刺激が強すぎる。

もう少しあのクソオヤジは慎みってもんを覚えてもらいてぇモンだねぇ。

まぁ、ともかくだ。せっかく来た劇のキャストだ。イチカが頑張ってきた分、精一杯仕事をしてもらわねぇとなぁ。それに付き合った俺達の割に合わねぇんでなぁ。

だが、そこで一つ、予想外のハプニングが起こった。

さっきまで息巻いていたはずのお嬢様だったが、何やら様子がおかしい。顔が幽霊でも見たって感じの面に変わってやがった。

 

「どうした、お嬢様?」

「そ、そんな……あれは………キャァッ!!」

 

その応答が返って来る前に、お嬢様に向かってレーザーが飛んで来た。

そいつを喰らって墜落するお嬢様。

イチカはその光景に驚いたみてぇだが、あの程度でぶっ壊れるようなら世界最強の兵器なんて看板は出せねぇもんだ。お嬢様は大丈夫だ。

 

「イチカ、予定変更だ。お嬢様の歓迎が失敗した、お前が代わりに行ってこい。何、あんなもん、さっきのクソオヤジの方が何倍も怖ぇだろ」

「あぁ、そうだな! 行ってくる!」

 

イチカは意気込みも顕わにお嬢様にぶっ放してきた奴に向かって飛び出していく。

確かに行くように言ったのはオレだが、殆ど接近戦しか出来ねぇんだから少しは近づき方ってモンを考えようぜ、イチカ。

それは兎も角、せっかくイチカが行ったんだから今度はお嬢様を見ねぇとなぁ。

 

「大丈夫かよ、お嬢様」

「あ、はい、すみません………」

 

お嬢様はオレに話しかけられて気落ちしたような面になった。

どうやら何かあったらしいなぁ。でなけりゃ、さっきまで張り切ってたのにここまで様子が変わるわけもねぇ、女の子の日って奴だったとしても、ここまで急には変わらねぇよ。

 

「どうかしたのか、お嬢様? 何だか信じられねぇってもんを見たような面をしてるぜ」

「いえ、そんな…………」

「そんなことないだろうよ、お嬢様。さっきまであんな意気込んでたんだ。それが今じゃこんなに滅入ってるってのは、どう見たって何かあったってモンさ。言っちゃまずいもんだったのかい?」

 

そう聞くと、お嬢様は言い辛そうに顔を顰める。

この感じから何か特殊な事情ってもんがあるらしいなぁ。

そう察するとオレはお嬢様の頭に手を置き、優しく撫で始める。

クロード直伝の精神を落ち着ける方法って奴だ。まぁ、そんな小難しいもんじゃねぇ。今更恥ずかしがるようなもんでもねぇしなぁ。

 

「ふぁ……」

 

お嬢様はいきなり撫でられたことで驚いたらしい。

顔が赤くなってきたが、それなりに落ち着き始めたってところか。

それを見て、大体落ち着いたかを確認する。

 

「どうだい、落ち着いたか、お嬢様?」

「は、はい……すみません、ご迷惑をかけて……」

 

お嬢様は顔を真っ赤にしたままこくんと頷き反した。

これでもう大丈夫だろ。

 

「それでお嬢様。何があった?」

「はい……。実は、此方に向かってきた襲撃者なのですが……その者が使っていたISが………イギリスで強奪された機体なのです」

「イギリスで強奪された機体? そいつはまた穏やかな話じゃねぇなぁ」

 

どうもお嬢様の様子からして、何かしらありそうな感じだ。因縁でもあるのかねぇ。

 

「はい。非常に恥ずかしい話なのですがイギリスで開発しているISで、私のブルーティアーズの姉妹機に当たる物ですわ。ブルーティアーズ二号機『サイレント・ゼフィルス』それが強奪された機体」

 

お嬢様は真剣な面でオレに説明してくれた。

どうやらイギリスはお嬢様の機体の二号機を制作したが、そいつを間抜けなことに奪われたらしい。世間様にバレて馬鹿にされることが嫌なイギリスはその事が知られないように情報封鎖。自分達だけで内密に解決しようって腹だが、お嬢様には同じ機体ってことで情報が来たってことらしい。

お嬢様の様子から察するに、当然強奪された機体の確保と操縦者の捕縛も命じられてるってところか。

まさかこんな時に来るとは思ってなかったんだろうよ。

このISの業界ってもんも案外狭いもんだ。

 

「成る程。つまりお嬢様はまさか盗まれたもんが目の前に現れて驚いちまったってわけか」

「お、お恥ずかしながら……動揺してしまって……申し訳ありませんわ……」

 

少しばかり涙目になるお嬢様。

まぁ、お嬢様にゃあぁ酷な事は言えねぇなぁ。人間、驚くなってのは無理がある話しさ。

 

「なら、しょうがねぇ。お嬢様、取りあえずもう向こうの正体は半分掴んだんだ、だったら後は捕まえるだけってもんだ。幽霊じゃねぇんだ、実体があるんだったらどうにだってなる。違うかい?」

「は、はいですわ!」

 

お嬢様はそう言われて顔を晴らした。

そうそう、こういうときにこそ笑わねぇとなぁ。動揺してたりしてブルってる面なんて、相手に調子こかせるだけだからよ。

 

「よぉし、だったら速くイチカを助けにいかねぇとなぁ。アイツじゃ悪いが、役不足かもしれねぇんでなぁ」

「はい! 行きます!」

 

お嬢様は落とされる前と同じくらい意気込んでイチカの応援に向かって行った。

やっぱり元気が一番ってなぁ。だが、どうにも相手がよろしくねぇようだ。

お嬢様が動揺してるとはいえ、一撃で墜とすとは……中々にやりやがる。

念の為オレもISを展開しておこうかねぇ。

『スカイウォーカー』を展開してオレも上空に上がると、中々に愉快なもんが繰り広げられていた。

 

「くっそッ! 接近できれば……うわぁっ!」

「やらせませんわ!」

「っ!?」

 

イチカは接近戦しか出来ねぇんで接近しようとしてはサイレント・ゼフィルスのライフルやお嬢様と同じBT兵器で迎え撃たれる。

だが、それでも回避をお嬢様に扱かれたイチカはそれを何とかやり過ごしては果敢に攻めていく。そのため、距離は一定だが依然としてイチカは墜とされてねぇ。それにお嬢様がライフルやティアーズで援護射撃ををしつつ本命も狙うものだから、奴さんは厄介そうに口を食いしばってやがった。

当然お嬢様にも反撃するんだが、そっちにばかり気を取られてるとイチカに接近を許しちまう。接近を許せばイチカのでかいのを喰らっちまうからなぁ。

向こうもそれでも負けてねぇあたり、結構な腕前って奴だ。

そこにオレも加われば、より戦況は有利に傾くわけだが……敢えてしねぇ。

結構前から言ってるだろ。オレはボランティアで手伝うだけだってなぁ。

それにイチカもお嬢様もあんなに頑張ってるんだ。それに茶々を入れるってのは、駄目ってもんだろうよ。ここは高みの見物とさせてもらうさ。

そのまま戦況は膠着状態へと陥ってるようだ。

お嬢様の精密な射撃に互いに苦労しつつ、イチカの接近戦をいなす。

それに段々と焦れてきたんだろうよ。

奴さん、悪態を付いて距離を取りやがった。

 

「ちっ、こんなところで雑魚相手に!」

「その雑魚相手に押されてる自分は何だっていうんだ!」

「大人しく捕まりなさい! そしてその機体を本国に反しなさい!」

 

相手の焦りを感じてか、お嬢様とイチカで奴さんに降伏勧告を行う。

さっすがお嬢様、実に様になってるねぇ。

だが、そいつを聞き入れるようならこんな真似はするわけねぇわなぁ。

奴さんはそれを聞いて調子付かれてると思ったのか、怒りを込めながら叫ぶ。

 

「舐めるなッ!!」

 

それと共にニヤリと明らかに嗤い、ティアーズに指示を出してレーザーを発射した。

それを避けるお嬢様とイチカ。距離が離れれば回避するのに苦労はしねぇ。

しかし、それなら奴さんがあんな愉快そうな面をするわけがねぇなぁ。

その予想通り、そいつは起きた。

 

「なっ!?」

「これはっ!?」

 

何と二人が避けたはずのレーザーが空中で歪曲して二人にUターンしてきやがった。

お嬢様は驚きつつも避けたが、イチカは物の見事に喰らっちまった。

まさか曲がるとはねぇ……予想外だ。

お嬢様はその事実に更に驚きを顕わにする。

 

「そんなッ!? 偏向射撃だなんて………BTシステム適性Aである私でさえまだ出来ないというのに!」

 

お嬢様の話を聞く限り、イギリスのISはレーザーを曲げる技術とやらを開発してるらしい。その適正が一番凄いお嬢様でも未だに出来ねぇことを奴さんは余裕でやってきたと。

確かに驚きもんだなぁ。

こりゃぁ……ちっとばかし不味いかも知れねぇなぁ。

そこから始まったのは、そんな曲芸めいた射撃のオンパレードだ。

お嬢様とイチカは必死に避けるんだが、曲がるレーザーは軌道が読み辛いんで避けきれねぇ。形勢が逆転しちまってる。

 

「ふはっはっはっは! さっきまでの威勢はどうした!」

「くっ!」

「っ!」

 

奴さんの台詞に悔しそうな顔をする二人。

まぁ、そろそろここら辺だろうよ。これ以上は面倒なことになるんでな。

オレはゆっくりと上がり、二人の前に出る。

 

「レオス!」

「レオスさん!」

 

二人からそんな声がかけられる。そんなヒーローを見たガキみたいな声をかけないでくれよ。照れるじゃねぇか。

急に現れたオレに警戒を顕わにする奴さん。

そんな奴さんにオレは口元の装甲だけ解除して話しかける。

 

「そろそろいいんじゃねぇか。お互いに怪我しない内にここいらで手打ちってことでどうだい?」

 

ニヤリと口元で笑みを浮かべながらそう聞くと、奴さんは動きを止めてオレの方を見る。だが、その面にはやる気ってもんがありありと浮かんでるのがわかるってもんだ。

 

「お前さんが回収すべきお土産はもうこっちで押さえてる。無理にでもそいつを取ろうとすれば、お前さんだって無傷じゃすまねぇだろ。このまま引き下がるってんなら、オレ等は手を出さねぇ。だからお互いに得な方を選ぶんだったら……わかるだろ?」

 

その声に対し、奴さんはやっと返答を返してくれた。

 

「…………断ると言ったら?」

「そいつは勿論単純だ。お前さんが捕まった馬鹿同様にゴミ屑にされるだけだ」

「……そうか……」

 

奴さんはそう答えるなり返答は無い。

だが、その変わりに、ティアーズを動かそうとしてみてぇだ。悪いがあんた以上に腹芸が得意な奴は世の中ごまんといる。わかりやすいぜ、あんた。

奴さんがオレに笑みを返す前に、先に奴さんの周りを飛んでいるティアーズが全機火を噴いて弾け飛んだ。

 

「っ!?」

 

いいねぇ、その面。

優位に立ってると思い込んでる奴が驚いた時にする面だ。

そのまま奴さんはオレの方を見ると、実に忌々しいって感情を口元で表す。

 

「オイタはいけねぇなぁ。さっき言っただろ、このまま帰るなら手は出さねぇって。どうせ今から行ったって間に合わねぇのはお前さんだってわかってんだろ。だったら考えるようなことじゃねぇ。答えなんて分かりきってるんだからよ。それにだ……こんな芸にも気付かねぇお前さんに、この先勝機があるとでも?」

 

オレは両手に展開したオルトロスを見せつけるように振ってみせる。

そう、オレがやったのは単なる早撃ちだよ。オレの十八番ってやつだ。

さっきまで奴さんが浮かべてたのと同じ笑みを浮かべて見てやると、奴さんは実に悔しそうな雰囲気を出して来た。

そして何も言わずに反転し、一気に加速してこの場を離脱し始める。そうでなくちゃなぁ。

奴さんが去るのを見送ると、お嬢様とイチカの二人が怒った面でこっちに来た。

 

「何で逃がしちゃったんだよ、お前!」

「そうですわ、レオスさん。せっかく発見したというのに」

 

二人はオレの判断が気に喰わなかったらしい。

まぁ、そう起こらないでくれよ。一応理由はあるんだからよ。

 

「そう怒るなよ、二人とも。いいか、良く考えて見ろよ。奴さんの狙いはさっきクソオヤジにボロ雑巾にされたお馬鹿だ。オレ等の今回の目的はあくまでもそのお馬鹿の確保。既に目的は達成してるってわけだ。なら、それ以上に奴さんに付き合う理由はねぇ。別にヤリ合うことは出来なくもねぇが、そいつをしたら、学園祭にこれ以上の被害が出る。そいつは会長も望んじゃいねぇだろうさ。なら、互いにとって一番ベストな所で手を打つのが、常識だよ。奴さんは目的を達成出来ないが命は助かる。オレ達は被害を出さずに目的を完遂出来る。万々歳だ」

 

それを聞いて納得がいかないって面をするイチカ。

悪いが、世の中ってのはそう簡単にどっちか選べるって訳じゃねぇのさ。それにな………あのままやり合ってたらお前さん……死んでたぜ。

だから退いて貰ったんだよ。オレも気に入ってる奴が死ぬのは見たくはねぇんでなぁ。だからといって、無料で戦うのは気に喰わねぇしな。だからこそ、ボランティアの出来る限りで解決したってわけだ。寧ろ感謝して貰いたいもんだが、そいつを押しつけるのは筋違いだろうよ。オレからの頑張ったご褒美ってやつだ。

お嬢様は仕方ないって面でオレをジト目で見てきた。

分かっちゃいるが、不服って感じだな。

 

「レオスさんは随分と大人ですのね」

 

含みがある物言いに苦笑しちまうよ。

なんともまぁ、気難しいお嬢様だ。

仕方ねぇなぁ。オレはそんなお嬢様にだけプライベートチャネルを繋いだ。

 

「そう膨れるなよ、お嬢様」

「で、ですけど……悔しいんです! あれだけ押されてその上偏向射撃まで! 私が一番適性が高いのに!」

 

結構悔しがってるらしい。

お嬢様は頑張り屋だからなぁ。先を越されたのが悔しいんだと。それも正規の適正では一番上なのに、泥棒に先を越されて苛立たしいんだとさ。

 

「そう焦るなって。そうだとしても、射撃の腕はお嬢様の方が上だったよ。そいつはオレが保証する。どうだい、それでも奴さんの方が上だって思うかい? 純粋な射撃戦だったらお嬢様の方が上だったとオレは思ってる。それでも不服か?」

 

そう言うと、途端に顔を赤くするお嬢様。

 

「い、いえ、そんな……………」

「そんなお嬢様にはご褒美だ。この後やるキャンプファイヤーで一緒に踊ってやるよ」

「え、良いんですの!」

 

途端に顔を赤らめたまま反応するお嬢様。

まぁ、このぐらいならいいだろ。

 

「せっかく美女と踊れる機会だ。お誘いしたのは迷惑だったかな、レディ」

「い、いえ、そんな………(レオスさんに誘っていただけるなんて……最高ですわぁ!)」

 

お嬢様の面を見る限り、もう大丈夫だろ。後はイチカの野郎だな。

 

「早く戻るぜ、イチカ。もう奴さんは去ったんだ。今更考えたってどうしもうもねぇんだからよ」

「あ、あぁ……」

 

片や浮かれた様子のお嬢様。もう片や、何とも言えないイチカの二人を連れて、オレは会長達の所へと戻ることにした。

 

 

 


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