恋する乙女と最凶の大剣   作:nasigorenn

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遂に100話に到達しました!
お気に入りもこんなに増えて……感動です。


第百話 遠距離での銃の避け方

 さて、イチカの野郎をケチャップマンに変えた翌日。

いくらイチカがケチャップマンになろうが血みどろホラーになろうが学園祭は確実に近づいてくる。

クラスの出し物の準備も当然行わなけりゃならねぇ。奴さんは兎も角、周りの奴等がイチカの保有権が掛かってるってんでやる気満々だ。

そんな訳でさらに学園内は騒々しく姦しくなっていく。

明らかに浮ついた空気は若い証拠かねぇ。オレはついていけそうにねぇなぁ。

そんな浮ついた教室で、今チフユから学園祭の来客についての話がされていた。

 

「学園祭の来客について、企業や政府の人間以外にはお前等に渡された各自一枚の招待券が必要となる。それを誰に渡すのか、よく考えて渡すように。場合によっては違法な売買がされる場合があるからな。その場合、渡した張本人にも何かしら罰が下る」

 

「「「「「は~~~~~~~~~いッ!!!!」」」」」」

 

それを聞いても物怖じせずに明るく返事を返す周り。

どうやら周りの連中はそんな不安事項よりも目先の祭りに夢中らしい。

もともと祭り好きな連中だ。祭りを前にしてはしゃぎまくってるってところだろうよ。

しっかし、招待券ねぇ。オレには渡す相手がいねぇなぁ。

しかも売るのも禁止となると、こりゃ本当にただのゴミにしかなりそうにねぇよ。

そう思いながらオレはチフユの話を聞いていた。

 そして放課後になり、お嬢様と一緒にイチカの様子を見に行くことに。

昨日の時点で決まったことだが、イチカの訓練は会長との訓練をメインに、オレが稀にサブで教えるってことになった。

一応サポートはしろって事だからこれもサポートなんだが、金もでねぇのにこうも面倒臭ぇことをやらされるとは……災難としか言いようがねぇ。

そんな所為で少しばかり憂鬱なわけだが、そんなオレにお嬢様は上目使いで話しかけてきた。

 

「あの……レオスさん。実はお願いがあるのですが……」

「ん? 何だい、お嬢様、そんな改まった様子で」

 

お嬢様は恥ずかしそうにはにかみつつ、オレの目を見つめてきた。

そう見つめられると照れちまうねぇ。

だが、そこでもどかしい様子を見せるお嬢様。そんな言い辛いことなのか?

仕方ねぇ、少し船でも出してやるかな。

 

「そんな気難しそうに考えんなよ。まず話してみな。話すことと聞くことは無料なんだからよ。そいつに乗るかどうかは別問題だがね」

 

それを聞いてお嬢様は意を決したらしい。

オレの目を見て、顔を真っ赤にしながら口を開いた。

 

「あ、あの……レオスさんは……招待券を誰かに渡しますか?」

「あ。招待券? いや、誰も渡すような奴なんていねぇよ」

 

何でそんなことを聞いたんだ?

オレが誰か呼ぶとでも思ったんだろうかねぇ。お生憎様、オレの周りにいる連中は皆碌でなしの人でなししかいねぇから、呼ぶ気なんてサラサラねぇんだよ。

呼んだらあっという間に不審者で捕まるような奴等しかいねぇからなぁ。

お嬢様はそれを聞いて、少し甘える様な声でお願いをしてきた。

 

「で、でしたら……わたくしに譲っていただいても……よろしいでしょうか……」

「あぁ? チケットをか? 別にいいけどよ。どうせ持ってても無駄になるからなぁ。だったらお嬢様にやるよ」

「は、はい! ありがとうございますわ!」

 

お嬢様はたかがチケットに本当に喜んだみてぇだ。

そんなに欲しかったのかねぇ。それほど呼びたい奴がいるって事になる訳なんだろうが、いやはや、お嬢様は交友関係が広そうだ。

別にチフユも『同じ学園の奴に譲渡しりゃいけねぇ』とは言ってねぇからなぁ。怒られはしねぇだろ。

お嬢様の携帯にチケットを送ると、お嬢様はそれを見て満面の笑顔を浮かべていたよ。

まぁ、ただ捨てるよりは、こうした方がまだ役に立つってもんだろ。

こうしてオレに渡されたチケットはお嬢様の手に渡った。

 まさか、これが後々とんでもねぇことを引き起こすとはこの時は思わなかった………。

 

 

 

 

 アリーナに着くと、早速イチカが飛び回ってターゲットに向かって左手の火器をぶっ放していた。

 

「うん、そう! 一夏君、イイ感じよ! もっと速く行ってみようか」

「はい!」

 

会長から褒められたイチカは嬉しそうに笑いながら返事を返す。

もうすっかり飼い慣らされ始めてるって感じだ。

それが分かってるからこそ会長も笑ってるわけだが、中々に悪い女だねぇ。餌にするって分かってて鍛えてるんだからよぉ。

 

「よぉ、会長。精が出てるようで何よりだ」

「ごきげんよう、楯無さん」

「あ、二人とも来たわね」

 

会長はオレとお嬢様の姿を見て笑顔を向ける。

この様子だと昨日に比べ、イチカはかなり成長してるって感じか。

 

「その様子だと上手く行ってるらしいなぁ。どうよ、ウチ一番の優男の調子は?」

「えぇ、昨日に比べて格段に成長しているわ。吸収速度が速いのね。あっという間に学んで直ぐに自分の力に出来てる。まぁ、まだまだ甘いのは仕方ないけど」

 

会長はイチカのことを結構気に入ってるようだ。

教え子が優秀なのは教官としても鼻が高いらしい。

御蔭で楽しんでいるんだと。そいつは結構なことだ。どうもイチカの野郎は年上が好みのようだからなぁ。向こうも喜んでるだろうよ。

そんな年上好きの我等がヒーローは地面に着陸すると、こっちに向かって歩いて来た。

 

「よぉ、二人とも。どうだった、さっきのシューター・フロー。結構上手く出来たと思うんだけどさ」

 

汗を掻きつつも爽やかな笑みを浮かべるイチカ。

まさに青春って奴を感じさせるねぇ。オレだったらむさ苦しさしか出せそうにねぇよ。

そんなイチカにお嬢様は笑みを浮かべつつ感想を述べ、オレは適当に答える。

生憎オレのISはシューター・フローとかがあまり関係ねぇからなぁ。

 それで今度はオレとの訓練って事になってるのか、イチカの野郎は昨日滅茶苦茶に撃たれた銃を持って息巻いてやがった。

 

「今度はそう簡単に撃たれないぞ! 返り討ちにしてやるよ!」

「そのガッツは大したもんだが、そう簡単に返り討ちに出来るほど、オレは甘くねぇぞ」

 

オレもニヤリと笑ってイチカから拳銃を受け取る。

さぁ、再びお遊びの時間といこうか。今日はもうちょっと長持ちさせてくれることを期待したいねぇ。

だが、それに待ったをかけた奴がいた。

 

「あの、レオスさん。この時間をわたくしに預けていただけませんか?」

 

何と待ったをかけたのはお嬢様だった。

そのことに驚くイチカ。お嬢様は不思議そうにしている会長にその理由を周りに聞こえないように話すと、会長は感心したように笑った。

 

「確かにその通りよね。逆からのアプローチも必要になってくるわ。ナイスよ、セシリアちゃん」

「いえ、これもレオスさんが教えて下さったことですから……」

 

恥ずかしそうにするお嬢様、それと会長が何やらニタニタとした笑みをオレに向けてくる。

何やら面白いことを考えてるらしい。会長の面はどうにも人をからかう気でいるようだが、あのお嬢ちゃんにからかわれる程甘くもねぇ。

だが、お嬢様のその提案は少しばかり面白そうだ。ノッてみようかねぇ。

オレはお嬢様に笑いながら返事を返す。

 

「いいぜ、お嬢様。好きにしな」

「はいですわ。ありがとうございます」

 

お嬢様はオレに嬉しそうに返事を返すと、更衣室の方へと向かって少し急ぎ足で歩いて行った。

さて、何が始まることやら……楽しませてもらおうかねぇ。

 そして待つこと約10分。お嬢様はISスーツに着替えて此方へと戻って来た。

そしてイチカにISを展開するよう言うと、自分のISを展開する。

久々にお嬢様のブルー・ティアーズを見たが、前よりも凜々しく見えるのは、よりお嬢様が成長したからかもしれねぇなぁ。

そして二人は対峙すると、お嬢様から説明が入る。

 

「これから織斑さんには約10分間、ひたすらわたくしの銃撃を回避して貰いますわ。ただ、それだけのことです。『よく考えて避けて下さい』」

「え、それってどういう……」

 

イチカが何かを言う前にお嬢様は動き、文句を言わせねぇような早撃ちでイチカへとライフルを撃った。

発射されたレーザーは見事にイチカに当たり、奴さんは後ろへと仰け反る。

そこに浴びせられるのは、お嬢様の叱咤激励だ。

 

「何をボーっとしていますの! もう始まっているのですから、避けて下さい。泣き言や文句は聞きませんわ! 今の貴方はひたすら避けるだけしか許されていないのですから!」

「えっ、ちょっ、まっ!?」

 

お嬢様の猛攻に慌てて上空へと逃げるイチカ。

そしてお嬢様はその場から動くことなく、ひたすらにイチカに向かってライフルの引き金を引き続けた。

最初こそ戸惑って何発か喰らったイチカだが、上空に逃れれば少しはマシになると思ったのかも知れない。だが、それでも………。

イチカは避ける先々で見事にレーザーに当たっていた。

 

「くそ、何でこんなに避けられないんだ!」

 

悪態を付くイチカを見て、オレは笑っちまう。

アイツなりに必死なんだが、やっぱりねぇ……アイツは素直だよ。

それに対し、お嬢様は本当に成長したもんだ。その成果が見せたくてオレの時間を貸してくれと言い出しても可笑しくないくらいになぁ。

きっとイギリスに帰っても練習してきたんだろう。前よりも格段にキレが良くなってやがる。

避けられないで撃たれ続けるイチカ。

そんなイチカにお嬢様は檄を入れる。

 

「いいですか、織斑さん! 楯無さんとレオスさんの訓練のおかけで貴方は自分の射撃攻撃を把握しつつあります。ですが、それだけでは駄目なのですわ! 銃を撃つというのは、ただ的に当てるだけではありません! 相手の動作、表情、癖を見て相手の行動を予測し、先回りして当てる。これが重要なのです! ですが、貴方はその経験がまるっきり無い。だからこそ、逆に相手の気持ちになって下さい! 撃たれる側として、どう避ければよいのかを考えて下さい。撃つ側がどう撃つのかを予測してあらがってみせて下さい。それがこの訓練の最重要点ですわ! さぁ、どんどん行きますわよ!」

「そ、そんなこと言われたって! わぁあぁあああぁああぁああぁああ!!」

 

お嬢様の猛攻にイチカはさっき言われたことを噛み締めつつやろうとしてるんだが、これが中々上手くいかねぇもんさ。あ、また喰らった。

成る程ねぇ、お嬢様はそう言う意味でイチカの野郎に教えたって訳だ。

オレと会長は攻撃を、お嬢様は防御のために教えたってわけさ。

銃撃戦における基本的でありながら極意とも言えるもんをよ。

流石はお嬢様だねぇ。感心しちまったよ。

そんな姿を見ると改めて思わされるねぇ。

お嬢様はこの夏、確かに成長した。それでもっと『イイ女』になったってなぁ。

 

そんなお嬢様に鍛えられてるイチカを笑いながら、オレはお嬢様の活躍を見届けていた。

ちなみに、この後一夏はズタボロになるまで滅多撃ちにされたよ。ご愁傷様。

だが、美女にされたんだから男としては本望だろ。得だと思とっきな。

 

 

 

 

 

 


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