恋する乙女と最凶の大剣   作:nasigorenn

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あまりきついこと言われると作者のメンタルが砕けるの控えてくれると有り難いです。


第十話 再戦

織斑 一夏は苦心する。

自分のISがまだ来ないということに苛立ちと焦燥感に苛まれながらも、自分の代わりに先に戦いに行ったレオス・ハーケンの試合を見ていることに。

相手はISのプロである代表候補生。

いくらレオス・ハーケンが現役の傭兵だからといっても、ISを使う女性との戦いは初めてかもしれない。

自分と同じで慣れないISでの戦闘にどうなるかわからない。

だからこそ、目に焼き付けようとモニターに喰いいる。少しでも対戦相手の情報を得るために。自分の代わりに先に戦いに行ったレオスの戦いぶりを見るために。

 

そして・・・・・・驚愕した。

 

試合は可笑しな雰囲気になったいた。

最初こそレオスの行動に声が上がったりしていたが、次第にその声は出なくなっていく。

最初はレオスの善戦に興奮して声を上げていた観客だったが、試合がおかしくなっていくのをだんだんと理解していき声が上がらなくなっていた。

レオスは一切攻撃を受けず、また一切攻撃していなかった。

攻撃する隙が無いとかそういうことではない、する気が無いのだ。その証拠にレオスは武器を展開していない。

レオスのISはリラックスした感じに、動きそのものはそこまで速く感じないのに確実に相手のレーザーを回避している。

余計な動きが一切無く、最低限の動きしかしていない。

何よりもその態度には余裕が感じられた。

 

「千冬姉、これって・・・・・・」

「はぁ・・・あの馬鹿は・・・・・・」

 

千冬は片手で額を痛そうに押さえていた。

 

「こんなことって出来るのか? 一発もくらわずに躱すなんて」

「ISなら出来ないこともないが・・・・・・たぶんそうではないな」

「どういうことですか?」

 

箒もさすがにこの状態について聞きたいらしく、話に加わる。

 

「確かにISならそういうことも出来る。だが、あいつはたぶんだがハイパーセンサーの反応よりも速く動いている」

「なっ!? そういうことが出来るんですか!?」

 

箒はさすがにことのおかしさに気付いた。しかし一夏はまだ気付けずに頭を傾げていた。

 

「所謂戦場の感というものだろう。確かに射線と発砲タイミングが分かれば避けれるものだが、そんなものは理論に過ぎず実際にそうそう出来るものではない。それを奴はやっているのだろう。ハイパーセンサーでも同じように相手の動作を察知して警告を出しはするが、それよりも速い。これが人を相手にした戦場のプロの動きと言うやつかもしれんな。まったく・・・・・・遊びすぎている」

 

その証拠にレオスはどこからかタバコを取り出すと、試合中だというのに吸い始めた。

レオスの反応には皆明らかに異常を感じた。

 

「「なっ!?」」

 

箒と一夏はいきなり吸い始めたタバコに驚いた。

 

「はぁ~・・・・・・さては轡木さんだな。あの人は・・・・・・」

 

千冬はさらに頭を痛そうに押さえる。

代表候補生の攻撃を余裕で避けきって見せている。

そう、ISのプロである代表候補生の攻撃をISの素人が見事に避けきっているのだ・・・タバコを吸う余裕をみせながら。

セシリア・オルコットの表情からは焦りが嫌と言うほど見えており、そのせいもあってか息を切らしていた。対してレオスは表情こそ見えないが、タバコを吸うために開けた口元からは余裕が見て分かる笑みを浮かべていた。

その明らかにふざけた態度に激情したセシリアが非固定ユニットから小型のビットを展開してさらにレオスの襲いかかるが、それでも戦況が全く変わらずレオスはタバコを吸いながらその猛攻を余裕で避けきっていた。

その映像をまるで信じられないようなものを見る目で一夏は見入っていた。

そしてそれは自分のISが来るまで続いていた。

副担任の慌てた声に気がつき、視線を画面からやっと引きはがせた。

そして来た自分の専用機、『白式』と相対した。

副担任がレオスに連絡を入れている間に一夏は白式を装着していく。

それが終わり次第に試合終了のブザーが鳴った。

結果は・・・・・・レオスが棄権したためにセシリアの勝ちとなった。

そのことにまた驚く全員。

そしてレオスは此方のピットに帰ってきた。

 

 

 

「んじゃイチカ、後はよろしくな」

「何がよろしくだよ!」

 

ピットに戻ってそうそう怒られちまった。

俺は別になんも悪いことはしてねぇってのにな。

 

「何で急に棄権したんだよ! 勝ってたじゃないか」

「別に勝たなきゃいけねぇ理由はねぇだろ。こいつはお前等の喧嘩であって俺のじゃねぇしな」

「発端はお前だろ!」

 

そう言われるとちっとは痛てぇなぁ~。

 

「俺はただの付き添いってやつさ。それになぁ、報酬もでねぇのに戦えるかよ。俺はお前さんとお嬢様の試合が楽しみで手前の試合なんざぁどうでもいいのさ。クラス代表なんて面倒だしな。ほら、さっさと行ってこい。またお嬢様の機嫌が悪くなっちまうだろ。会場は暖めて置いたからよ、全力で戦ってこいや」

「不機嫌なのはお前のせいだと思うんだけど・・・・・・それに棄権した理由って後半が本音だろ」

「ご明察ってな。そんなわけだから張り切って行ってこい・・・・・・手前ぇには賭けてるんだからなぁ」

「今、賭けてるって言わなかったか!?」

「気のせいだろ、んなことより速く行けって。レディを待たせるのはよくねぇぞ」

 

そう無理押ししてイチカの野郎を発進させる。

いちいちあいつは細かいねぇ~、詮索屋は嫌われるぜ。

ISを解除しようと思ってたらいきなりプライベートチャネルが鳴り出したと思ったらあの爺さんだった。

 

「どうしたんだよ、爺さん。何か用かい?」

 

まぁ、大体言いたいことについては予想が付くんだよなぁ~・・・・・・どうせさっきの試合に付いてのいちゃもんだろうよ。

 

『大体言いたいことも予想が付いてるんじゃないですか』

 

相変わらず温和な笑顔ってやつを浮かべてるんだろうがよぉ、声があまり笑ってねぇなぁ。

 

「俺はイチカのISがくるまでの間に合わせだぜ。それに試合で勝つ必要はねぇだろ、勝ったら勝ったで面倒臭せぇ仕事が待ってんだしよぉ。なら棄権したって別に問題ねぇだろ」

『それもそうなんですけどねぇ~。でもさっきの試合じゃ皆納得しないですよ。それに彼女のプライドもズタズタになったんじゃないですか? 駄目ですよ、女の子をいじめちゃ』

「そいつは誤解だぜ、別にいじめちゃいねぇだろ。それに爺さんが言いたいことはそんなことじゃねぇだろ? 別にお嬢様がへこまされたからってそこが問題ってわけじゃねぇだろ」

『そんなことは無いですけどね~。ただイギリス政府に怒られそうなんですよ。『我が国の代表候補生になんて屈辱を!』とか言いだしかねないですから。IS学園って言っても完全にシャット出来るわけじゃないんですよ、とくに苦情なんかは。だから・・・・・・真面目にもう一回彼女と戦ってもらえませんか』

 

ようは周りを納得させるためにもう一回やれってことか・・・・・・ご免だな。

 

「そいつはご免だな。何より俺に得がねぇ」

『そう言わないで下さいよ。助けると思って』

 

別に爺さんの願いを聞いてもいいが・・・・・・得がねぇとやる気が起きねぇ。

報酬でも出してくれりゃぁやる気も出るもんだが、ここで下手に金なんか手に入れるとうちの奴らにばれちまうからなぁ。バレるとうるさそうだ。最悪減俸もあり得るってな。

用は金じゃなきゃバレねえわけだ。

 

「そう言えば爺さん。理事長室の奥の棚に確かアードベクブロヴナンスがあったよなぁ。そいつで手を打とうか」

『おやおや、いつの間に見つけたんですか? 結構奥にしまっといたはずなんですけどねぇ』

「あんだけ入り浸ってりゃ気付くさ」

『そうですか。大事に取っておいたんですけどね~・・・・・・わかりました。それで手を打ちましょう』

「毎度」

 

爺さんはそう満足そうな声でプライベートチャネルを切った。

まぁ、報酬も出るんだったらやるとするか。

久々に酒が飲めるだけにテンションも上がっちまうぜ。

やる気も出てきたところでモニターを見たらイチカの野郎がちょうど負けてるところだった。

 

ちっ、賭は俺の負けか・・・・・・まぁいい。

 

それよか酒だ。

こっちの方が俺には楽しみで仕方ねぇ。

イチカがふらふらしながらこっちに戻ってくると、俺とお嬢様の再戦のアナウンスが流れる。

あのお嬢様には悪りぃが、今度は『真面目』に行かせてもらうぜ。

 

そう酒のために俺は意気込んで、またお嬢様と戦うことにした。


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