MH tie cycles   作:アローヘッド

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交錯の行方は 四

 目下に佇立する野獣への畏怖に、僕の心臓が警鐘を鳴らす。今すぐ逃げろ、と生存本能が肩を揺さぶる勢いで訴えかけてくる。

 だが、迷いは無かった。混乱も無かった。大型モンスターが出現し小型モンスターを駆逐した瞬間、僕を縛っていた苦手意識は彼方へと消えていった。

 イーオスとの交戦中に変に力が入っていたのだろうか、自然と両手の剣がぶらりと下がった。そのまま僕は静かに歩き出す。

 それが死合いの合図だと悟ったのだろう、ジンオウガが前足という巨大な凶器をたわめた。

 草を散らし、土煙を巻き上げ、ジンオウガが僕に突進する。だが奴の足のたわみを見た瞬間、突進が来ると判じた僕はすでに駆け出していた。

 ジンオウガの胸部を覆う純白の体毛が、僕の眼前に迫る。すぐさま僕は左方、ジンオウガの右わきへ、低空姿勢で飛び込んだ。

 前足と胴体の隙間を抜けるその刹那、左の剣を前足の裏側に走らせた。

 裏返った叫び。僕が隙間を抜けてすぐ後ろを向くと、巨大な前足から血が噴出し、辺りの草を次々と朱に染めていた。

 

(これでもう動けない……わけでもないな)

 

 一瞬の期待を裏切り、ジンオウガが左前足を振り上げて飛び掛かった。僕が後ろに跳ぶと、もと立っていた位置を凶器が踏み潰し、大地を震撼させる。

 瞬間、碧色がぶれた。中央ギルドで僕の肩に尾を見舞った時と同じように。

 そう、同じだ。それさえ分かっていれば多少速かろうと瑣末なことでしかない。

 後ろに着地したと同時、僕は柄を握り締めたままの右拳を支点に、後方倒立回転に移っていた。後頭部で、ジンオウガの尾が切り裂いただろう空気音。

 

(………)

 

 着地する寸前、驚きに僕は小さく口を開けた。ジンオウガが消えており、地平線に伸びる広原しか映らない。

 つまり、上だ。

 着地と同時、さらに後ろへステップした。数泊後、紫電を纏ったジンオウガの背殻が、轟音とともに地面に叩きつけられる。恐ろしいまでの衝撃に、だが僕は冷笑した。

 そんな暴挙に出た以上、すぐには次の行動に移れない。

 僕は駆け出す。危機を感じ取ったらしく、ジンオウガの翡翠の目が大きく剥かれる。咄嗟に胴体を左に傾けた。無傷な左足を支点に体勢を整えるつもりだろう。

 あまりに分かりやすく読みやすい行動だった。

 瞬時に僕は左へと走路を変えた。奴の左足の着地点へと。

 左足が地に着く。それを見た僕は、右の剣を振りかぶり、さらに左の剣も右へ振りかぶった。治りきっていない左肩に鈍痛が刺すが、今は構っていられない。

 両足、両肩、腰を右に回転させ、勢いを乗せた二連撃を左足に見舞う。一撃目で甲殻を切り裂き、二撃目で内部の肉を深々と抉った。

 両足を切断されたジンオウガが、横転の勢いを抑えられずうつ伏せに倒れこんだ。頭部が横向けに、僕の足元に落とされる。

 僕は片膝をついて座り込み、右の剣を上に掲げ、逆手持ちに切り替えた。切っ先の先には、ジンオウガの額。

 状況を飲み込めていないのだろう、横向けとなった頭部の片目が、呆けてその剣を見つめていた。

 

「じゃあな」

 

 振り下ろす。刀身全てが額に突き刺さった。

 一瞬、ジンオウガの総身が大きく揺れ、次には静寂が広原に舞い降りる。微動だにしていないジンオウガの頭部から剣を抜き、立ち上がると、退って死体を見回した。

 生き残れた。そう判じた瞬間、僕の額を一筋の汗が伝った。大きく息を吸い込み、限界まで吐き出す。

 

(けどな……)

 

 ラージャンに勝った時と同様、一度ジンオウガの戦いを目の当たりにして知識を得ていたから勝てたようなものだろう。上級モンスターの中にはまだまだやり合ったことのない野獣が山ほどいる。これから先も、今回のように予備知識を持って戦いに臨める保証などない。

 一頭目のジンオウガにやられた左肩に、煮るような痛みがまとわりついている。これ以上使うことは避けた方がいいだろう。

 ふと、エステルのことが脳裏を掠めた。もうイーオスの駆除を済ませていてもおかしくないと思うが、手こずっているのだろうか。

 彼女の走っていった方向を追って僕も歩き出した。

 

 

 

 しかし、エステルはどこにもいなかった。後を追っている間に踏破した広原にも、森林にも彼女の姿を認めることはなかった。

 行方不明になったことを報告するためにギルドに戻った頃には、すでに夕方だった。狩猟の結果を待っているだろう難民達が一斉に問い詰めてくるだろうと予期していたが、だが正門をくぐってもこちらを一瞥する者が数人いただけで、一人も詰問してくることは無かった。

 僕は訝しげに歩き出して、すぐに横から呼び止められた。

 

「お疲れ」

 

 見やると、難民達の間からクラウスさんがこちらへと歩いていた。

 

「悪いな、俺も行かなくて。エステルが行くなってうるさかったんだ」

「いや……それより」

 

 僕はすぐに本題を口にした。

 

「そのエステルがいなくなった」

 

 瞬時に、呆けた表情になるクラウスさん。次には大慌てでまくしたてるだろう、はずだった。

 

「何言ってるんだ? あいつならとっくに戻って宿舎の中だぞ」

 

 今度は、僕が呆ける番だった。

 

「……戻った? とっくに?」

「ああ。あいつが言ってたけど、お前は狩猟が終わった後採取をしてたんだろ?」

 

 否定しようとして、咄嗟に僕はそれを飲み込んだ。

 

「他に、なんて?」

「イーオスはほとんどあいつが倒したらしいけど、お前もお前でおとりになって注意引いてたんだってな。おかげで戦いやすかったって言ってたぞ。難民達もちょっとはお前のこと見直したんじゃないか?」

「………」

「それと、またジンオウガが現れたんだってな。みんなびっくりしたよ。もちろん俺も」

 

 疑念が体中で膨張する。

 ジンオウガが出現してから僕がこのギルドに戻るまで、彼女が姿を見せることはなかった。だが、ジンオウガの発見報告。まさかあいつは傍らで見ていたのか。

 

「でも」

 

 続けるクラウスさん。ふいに、嫌な予感が僕の背筋を掠めた。まず、イーオス相手に僕がおとりとして立ち回ったなど真っ赤な嘘だ。

 

「とんでもないよな。結局倒しちまったんだから」 

 

 だとしたら、ジンオウガとの戦いも脚色されているのかもしれない。

 

「エステルが」

 

 それが、答えだった。

 無意識に想像する。僕がジンオウガと戦っている間、どこかでそれを傍観しているエステルを。僕が勝った瞬間、手柄を自分のものにせんとほくそ笑み、素早くギルドのもとへ戻る。彼女を探していた僕などお構い無しに。

 そうして正門をくぐって、嬉々として皆に狩猟結果を報告する。イーオスは僕がおとりになっていたおかげで戦いやすかった。ジンオウガは私が倒した。その後僕は採取していた。

 ここまで凄まじい怒りを覚えたのは何時以来だろうか。灼熱の激憤が総身で脈打っている。その心中を知らず、クラウスさんが何も言わない僕を覗き込んだ。

 

「おい、どうした? まさか話が違うのか?」

 

 全く違う。だが、それを言ったところで信じてもらえるか怪しいうえ、こちらにはやっておくことがある。ここで話をこじらせたくはない。

 

「いや、全部合ってるよ。見事なくらいだ」

 

 自分でも驚くくらい冷静に落とした口調で応じ、歩き出した。宿舎へと。

 

「オレ、礼を言ってくる」

「了解」

 

 

 

(今ごろ、私の作り話がギルド中に広まってるんだろうな)

 

 黒ずんだ板に囲われた古めかしい一室の一隅に、使い古されたよれよれのベッドが宛がわれている。

 その上でエステルは、片腕で両目を覆い仰向けになっていた。目は覚めてはいるものの指一本動かず、物寂しい静けさだけが部屋に横たわっている。

 ドアノブの回る音が聞こえ、エステルは両目から腕をはがし、ドアの方へ首を向ける。

 それは客人ではなく、ロロという同居人だった。首から小さな布のポーチを垂らしている。

 

「いいもの持ってき……」

 

 言いかけて、ロロは表情を曇らせた。

 

「……大丈夫かニャ? 元気なさそうな顔だニャ」

「誰が元気ないって?」

 

 ロロの指摘に、エステルは軽い笑顔で応じた。

 

「それより、何を持ってきたの?」

「昨日、エステルさん普通に寝てたから渡さなかったんだけどニャ」

 

 ロロは首からポーチを取り外し、エステルに差し出した。

 

「ネムリ草ニャ」

 

 エステルは受け取り、中を覗き込むと、青色の草が数本あった。

 

「エステルさん、モンスターと戦う前の日はよく使ってたからニャ」

 

 ロロの言う通り、エステルは度胸が据わっているようで、実は怖い時は人一倍怖がるのだった。危険なモンスターを討伐する前夜は眠れない日も多く、故にネムリ草で睡眠をとっていた。そんな彼女にとって、恥ずかしながらロロの差し入れはとてもありがたい。

 

「私、別になくたって眠れるわよ」

「恥ずかしがることないニャ。ちょっとは女の子らしく怖い怖いって言ってもいいニャ」

「……まあいいか。わざわざ取ってきてくれたんだね」

 

 言うと、だがロロは目を落とした。

 

「いや、ボクじゃないニャ」

「じゃあ、誰?」

「ジョウイさんニャ」

「………、そっか」

 

 エステルはネムリ草を見つめる。やがて、ゆっくりと頭を振った。

 

「ロロ、ごめん。これは使わない」

「……取ってきた人、言わない方がよかったかニャ」

「そうかもね」

 

 エステルが布包みを差し出し、ロロが受け取る。

 どこかにしまいにいくのだろうロロが背を向けた、瞬間、ドア越しに剣呑な騒ぎがあがった。

 

「な、何かあったのかニャ」

「多分、あいつよ。ネムリ草をとってきた人」

「ジ、ジョウイさん? いきなり男の人がここに入ったらまずいんじゃないのかニャ?」

「それだけ、私に腹を立ててるってことか」

 

 エステルはベッドから立ち上がり、ドアへと歩き出した。

 

「ロロ、しばらく箪笥の中に隠れてて」

 

 

 

「何やってるのよあんた! さっさと出てってよ!」

 

 左右に広がる女性達が、僕に非難の声を浴びせてくる。女性貸しきりのこの施設にこんな男が、それも鎧どころか腰に二対の刃物をしつらえて上がりこんでいるのだから当然の反応だろう。

 分かっているのだからなおさら立ち去るべきだと、頭では理解している。だが憤りを抑えきれず、女性達の静止も構わずにどんどん奥へと足が進んでしまう。

 

「出てけって言ってるのよ!」

 

 とうとう腕を掴まれ、後ろへと引っ張られる。だが僕は力尽くでその手を振り払い、さらに前へ歩き出す。正面にそびえる、〇〇四という札の掛けられたドアへと。

 今度は、複数の女性達が僕の目の前に回りこんだ。僕を抑え込もうと腕を伸ばす寸前、

 

「何してるんですか?」

 

 女性達の向こうから、凛とした声。女性達が一様に後ろを振り向く。

 やはり、その視線の先にはエステルが立っていた。背後には〇〇四という札のかけられたドアがある。

 

「この子、何も言わないでいきなり上がりこんできたのよ! なんとかしてやってよ!」

 

 女性の一人がそう言うと、エステルはきょとんとした。

 

「大丈夫ですよ。彼は私が呼んだんです」

 

 再び、事実でもない発言。だが、こちらとしても話が早い。

 

「ほ、本当に……?」

「今日の狩猟の反省をしようって彼に言ったんですよ」

 

 女性達が、こちらに猜疑の視線を投げかけながら、ゆっくりと道を開けた。

 僕は歩き出す。エステルに冷めた視線を送りながら、エステルの部屋へと。

 エステルに次いで敷居を跨ぐと、まだろくに使われていないような、無骨な一室が広がった。

 

「隠れててって言ったのにな」

 

 前に立つエステルが向く先に、ロロが立ち尽くしていた。戸惑いと困惑の入り混じった様相を僕に向けている。

 僕は、小さな声でロロに言った。「ごめん」と。

 僕がここにいる時点で、ロロを苦悩させていることは分かっている。だが、積もりに積もったこちらの懊悩と激憤がもはや抑えられない。

 僕は客人であるにも関わらず、勝手にエステルの横を通り過ぎて、一室の真ん中にあるテーブルへと歩き出した。静かに椅子を引いて座り、そのまま黙り込む。僕が来ることを最初から分かっていたかのように、テーブルの上には紅茶が二人分置かれていた。

 エステルの方から、ため息が漏れた。

 

「ほら、ロロ、今は外にいて。後で私が呼ぶわよ」

 

 しかし、ロロは曇った表情のままゆっくりと首を振った。再び、エステルの方から小さなため息が漏れる。

 

「まあいいか」

 

 エステルが僕の向かいに座り、目と目が合う。そのまま殺伐とした沈黙が一室の中を流れていく。

 やがて、エステルは口火を切った。

 

「飲まないのかい? それ」

「いらない。飲んでほしいんなら、毒見頼む」

 

 エステルは楽しげに笑った。

 

「なんでもいいけどね。さっさと本題に入ろっか」

「本題、か」

「そうだよ。君はさ、私にむかついてむかついてしょうがないんでしょ?」

「ああ」

「せっかく命がけでジンオウガを狩ったのに、それが全部私の手柄になったんだからね」

 

 今度は、僕が楽しげに笑った。

 

「誰がそんなことで怒ってるって言った?」

 

 この返答は予想外だったらしく、エステルはきょとんとした。

 

「じゃあ、何? 普通はそこで怒ると思うけどな」

「自分に聞けよ、そんなこと」

 

 エステルは紅茶を啜りながら、黙考する。しかし、すぐに小さく鼻を鳴らした。

 

「分からないな。というか、どうでもいい」

 

 エステルは紅茶を空にすると、僕の分を手にとって立ち上がった。片付けるつもりらしく、立ち上がり部屋の奥へと歩き出す。

 

「君が私にどんな不満を抱いてるかなんて」

 

 その言葉に、僕の中で脈打っていた怒りが、轟音をあげて爆発した。

 静かに立ち上がり、彼女の方へゆっくりと歩行を始める。徐々に足を速めていく。

 

「ジ、ジョウイさん……」

 

 ロロの静止にも似た躊躇いがちの声に、エステルは異常を感じ取ったのだろう、こちらを振り向いた。

 だがその時はもう一メートルにも満たない距離に僕は迫っていた。

 エステルの胸倉を思い切り掴んだ。そのまま部屋の奥へと押していった。向こうの壁に確実に近づいていく。しかしエステルは興味のない目をこちらに向けながら、歩調を合わせて退っているだけだった。

 とうとうエステルの背中が壁に激突する。紅茶が音を立ててあふれ、エステルの衣服に大きく張り付いた。沈黙が続き、衣服から紅茶のしずくが床に滴り落ちる。

 ロロが、短い悲鳴を上げた。無理もないだろう、僕は右の剣を抜いたのだから。だが命の危機を感じ取っているはずのエステルは、顔色一つ変えずこちらを見据えたままだった。

 僕は剣を彼女に差し向ける。

 柄の方を。

 もしエステルがその気になれば、すぐに柄を取って僕を殺せる状況を、僕自身が作っていた。

 喉の奥底から絞ったような声で、僕は言った。

 

「……殺したいなら、殺せばいいだろ」

 

 エステルは、一つも返答しない。

 

「お前はさ……お前は、文句があるなら直接相手に言う奴だった。ろくに言葉も喋れないオレの代わりにも、気がついたらなってくれてた。嬉しかったよ。憧れた。なのに……」

 

 僕は、俯く。

 

「……今のお前はなんだ……? これじゃお前はただの……」

 

 それでも、エステルは返答しない。興味のない目でこちらを見つめているだけだった。

 やがて、エステルは言った。

 

「そんなに私が嫌か。それなら、出ていけ」

「………」

「これから私は、南に蔓延ってる危険度の高いモンスターを狩り尽くす。まずは食物の豊富な南の脅威を潰す。君はその安全地帯で大人しくしてればいい」

 

 再び、沈黙が二人の間に舞い降りる。

 左足が、温かいものに抱かれる感触。見ると、ロロがこちらを見上げて、僕を治めるように左足を掴んで軽く引いていた。

 僕は俯き、静かにエステルの胸倉から手を放した。

 二人の距離が離れると、エステルは台無しとなった衣服を気にも留めず、続けた。

 

「それと、もう殺したくても殺せないのよ」

「殺せない?」

「難民達の何人か、少し有名な兵士なんだけどね、彼らから脅されてるのよ。君を殺したら、即、私を処分するって。君のギルドマスターの知り合いなんだって?」

 

 クラナさんの顔が脳裏に浮かんだ。恐らくはあの人の仕業だろう。

 束の間の頼もしさが心に広がるが、だがそれはすぐに靄のように消えていった。

 

「だから、今度は嫌がらせに移るっていうのか?」

 

 エステルは何も答えず、箪笥へと歩き出した。

 

「これで終わりにしよ。広場に戻って」

 

 もう何も言う気力もない僕には、それに従うしかなかった。

 

 

 

 もはや馴染みの景色となった森林に辿り着き、僕は立ち止まる。どこかから聞こえる鳥のさえずりが気楽なものに聞こえて、ひどく羨ましく感じる。

 過去の記憶が蘇る。異様な環境で育った結果、言葉も表情もろくに表現できなくなった自分。ある村に拾われたが、友達などできるわけもなく、案の定すぐに孤立していった。

 しかし、それに対して寂しいと思ったことはほとんどなかった。普通の人間が持つ感情さえ、異様な環境の中で麻痺していたのだ。

 ……エステルが現れるまでは。

 

「――っ!」

 

 右の剣を抜き、振りかぶって地面に投げると、それは土に突き刺さった。このまま武器を捨て、戦うことを捨ててしまえばどんなに楽になれるだろう。

 だが、駄目なのだ。戦わなければ次に犠牲になるのは難民達。エステルという一流のハンターが現れたところで被害を全部抑えられる保証はない。

 なにより利用価値がないと判じられ、今度こそエステルが僕の命を奪いに来るかもしれないのだ。今度は直接的にではなく間接的に。それを防ぐためには戦い、生き残るしかない。

 分かっている。戦わなければならないということくらい。だが……。

 

「疲れたな……」

 

 その声は自分が思っていたよりも弱々しく、か細かった。

 

「疲れた……」


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