ハイスクール ワン×パンチ   作:アゴン

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投稿遅くなってすみません。

諸事情により、今回はかなり短めとなりました。




26撃目 ヒーローの一撃

 

 

 それは、突然の事態だった。

 

何の前触れもなく、唐突に、そして劇的とも呼べた瞬間、それは現れた。

天よりも高い宙(ソラ)から飛来した超級の巨大な物体、隕石。

 

いっそ星とも呼べるそのソレは全ての組織、全ての神話、全ての生命にとっていきなりの死刑宣告とも呼べた。星と星との激突、それによる被害は予想こそ出来ても、想像する事すらはばかれる。

 

当然、各勢力は隕石を破壊する為に様々な手段、あらゆる手段で迎撃し、守りを固めた。三大勢力を中心に構成された迎撃部隊の中には魔王や総督、北欧や須弥山の神々の姿があり、形振り構わず各々が各々のやり方で隕石に向かって攻撃していた。

 

確かに彼等は強い。悪魔や堕天使、天使といった存在は勿論、魔王と神、二つの存在が同じ目的の為に共闘する光景は圧巻とさえ呼べた。

 

しかし、そんな彼等の熾烈な攻撃も超巨大物である隕石には通じず、氷山の一角の如く一部を削り取る位が精一杯だった。

 

何故魔王や神々の攻撃が通じないのか、それを疑問に思った当時のアザゼルは同時に思いつく。

 

“加護”古き聖書に記された世界を創造したとされる神、隕石からはそんな古の神と同類の“神聖”が感じられたのだ。

 

だとすればこの隕石が神の“意思”である事は予想するに容易い。そしてそれは今頃他の魔王や神にも勘付いている頃だろう。

 

だが、原因が分かった所で解決する術がない。コレだけの加護を付与された隕石など、破壊するには圧倒的に火力が足りない。

 

千年の水滴が岩を穿つにしても、現状にはそんな猶予はない。“絶望”その場にいる誰もがそんな言葉が過ぎった時。

 

『────必殺、ガチシリーズ』

 

 それは起こった。隕石と同様に前触れもなく、予兆も見せず、前兆のそぶりなど微塵も感じさせずに。

 

“隕石が砕けた”その事実に衛星軌道上に滞在する総ての神魔の思考が停止した。隕石が現れた以上の衝撃に、神すらも呆気になる様は神を信仰する人々にとっては到底見せられない姿だろう。

 

何が起こった? どうにか現実を受け止めたアザゼルが我に返ると、砕けた隕石の残骸を更に細かく砕きながら周囲の者達に声を掛けた。

 

他の者も混乱しながらも、アザゼルの呼び掛けに呼応し、周囲の隕石の欠片を更に砕いていく。加護の付与も消えたのか、あっさりと砕けていく隕石の残骸。

 

どうにか被害を最小限に抑える事が出来た。過程は兎も角、結果として世界を救う事の出来た事実にアザゼルが安堵した時。

 

───奴がいた。

 

重力に捕まり、地球に引っ張られながら落ちていくのは眩い頭部が特徴的な自称ヒーローことアオヤマ。

 

隕石をガラス細工の様に砕きながら降下していく彼の姿を目撃したとき、アザゼルは総てを察した。

 

「アザゼル」

 

「サーゼクスか。……どうしたよ?」

 

「彼は……一体何者なんだろうか」

 

隣に佇むのは自分と同様に指揮を担当していた魔王の一角、サーゼクス=ルシファーだった。困惑しながら訊ねてくるサーゼクスにアザゼルはハッと笑い飛ばしながら落ち行く人間を見つめ。

 

「───ヒーローだよ。英雄でも勇者でもなく、この世界を救ったのは、たった一人のヒーローさ」

 

それはどことなく嬉しそうな口振りだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は、はは、まさか、本当にやってしまうなんて……これがヒーローか。成る程、俺程度では敵う筈もなかったか」

 

 砕けた隕石が大気圏に突入して燃え散っていく様を見て、曹操はいっそ吹っ切れたように清々しい笑みを浮かべている。

 

完敗だ。戦いも、在り方も、その全てを打ち負かされた曹操は悔しがる様子もなく、ただ空を見上げて笑っていた。

 

「──曹操」

 

声を掛けられ、後ろを振り返る。見ればそこには心身共に疲れ果てた英雄の子孫達が、懇願するように曹操を見ている。

 

「これから……どうする?」

 

ゲオルクが今後の行動を訊ねてくる。酷い顔だ。拠点を潰され、此方の攻撃を全て理不尽な一撃で沈められたのだ。そんな顔をするのも当然と言えるだろう。

 

けれど、対照的に曹操の心境は晴れやかだった。世界を混乱に陥れるという野望が砕かれた今、拘りもプライドもなく、一人の人間として生きる楽しさをこの時曹操は初めて理解した。

 

だから。

 

「───そうだな。取り敢えずここを離れよう。そして……皆で考えよう」

 

生きよう。自分のしてきた事に対するケジメを付けながらひとまず前に進もうと言い出す曹操に英雄派の面々は一瞬呆けた後。

 

「……くは、そうだな。取り敢えず進むとするかぁ」

 

「やれやれ、こんなボロボロにされてまで前を往くか。厳しい事を言うな。我等の大将は」

 

「だが、困難を乗り越えてこそ英雄だ。──進もう」

 

それぞれがそれぞれの支えになりながら立ち上がり、曹操に付いていこうとする姿勢を見せる。そんな彼等に曹操は満足そうに笑みを浮かべながら。

 

(俺も、やりたい事を見つけてみるよ。だから、その時は改めて────)

 

アンタの前に、現れてもいいかな。

 

そんな言葉を胸に秘め、英雄達は流星が降る空の下、確かに歩き始めるのだった。

 

そして、そんな英雄達を変えた我等のヒーロー、アオヤマはというと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダメだよ君、幾らもうすぐ夏休みが終わるからといって羽目を外しちゃあ、学生だから多めに見たけど、次やったらホントに逮捕するからね? 全く、全裸で外出歩くとか、何考えてるんだか」

 

「………スイマセン」

 

絶賛、警察のお世話になっていました。

 

隕石の破片による被害額……国家予算。

 

英雄派によるアオヤマのアパート全焼……ウン百万円。

 

大気圏突入で燃えたアオヤマのヒーロースーツ……五万円。

 

燃え散った課題、それによる補習確定となったアオヤマの心境……アンラッキー。

 

今年の夏、アオヤマにとっては散々な夏となった。

 

 

 

 

 




世界を救った主人公が一番不遇なのはもはや鉄板な気がする。

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