ハイスクール ワン×パンチ   作:アゴン

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今回は特に動きなし。やはりワンパンないと物足りない。


21撃目 レーティングゲーム

 

 

 

 禍の団達による襲撃から数時間後、特設ステージでこれから行われるレーティングゲームを観戦する為、アオヤマは北欧の主神、オーディンとアザゼルと共に特別観戦室に案内される事になった。

 

その道中、二つの組織のトップ二人に挟まれながら通路を歩くアオヤマは一人愚痴る。

 

「なぁ、ホントに俺も行かなきゃダメ? ぶっちゃけ俺部外者だろ? 絶対浮くから辞めた方がいいって」

 

「何言ってやがる。二度にも渡ってテロリスト共を撃退したお前さんは良くも悪くも目立ち過ぎちまったんだよ。そんな奴を今更はいそうですかと帰すわけにもいかねぇんだよ。つか、文句ならそこの爺に言うんだな。お前さんに会いたいと強請っていたのはそこの糞爺なんだからよ」

 

「全く、相変わらず口の悪い鴉じゃわい。ちっとは目上の者に対する敬意を払わんかい」

 

ゲンナリしながら帰ることを要求するアオヤマをアザゼルが一蹴する。めんどくさい。そういう態度を隠そうともしない彼の態度をオーディンの後ろで控えている女性が鋭い視線でアオヤマの背中を射抜く。

 

だが対照的にオーディンは神の前でも態度を改める処か素のまま対応するアオヤマに興味を示した様に語りかけた。

 

「そう言えば小僧、アオヤマと言ったか? 主は二度にも渡ってテロリストを撃退した訳じゃが……それはどうしてじゃ?」

 

「は? 何だよいきなり」

 

「一度は鴉達の和平協定の場、そして二度目は悪魔の催し場、どちらも人間であるお前には関係のない話じゃったみたいじゃが、何故そんな戦場にワザワザ駆り出す?」

 

そう言って尋ねてくるオーディンの問いは純粋にその疑問の解消をしたいが為のモノだった。あらゆる知識に精通する北欧の主神、オーディン。そんな知識欲の塊とも呼べる神は、些細な疑問も解消したいと飢えていたのだ。

 

そんな主神の思惑など知る由もなく、アオヤマはそんな事かと溜息をこぼし。

 

「俺はヒーローだからな。テロリストをぶっ飛ばすのもヒーローとしての役割みたいなもんだろ」

 

そう、あっさりと返す。

 

「ほう? ヒーローとな? 普通ヒーローというのは悪魔や堕天使とは敵対するものばかりかと思っていたが……違うのかの?」

 

「んな事しらねぇよ。つかなんで誰かを助けるのに一々悪魔や堕天使の事を気にしなきゃならねぇんだよ。おかしいだろ」

 

「ふむ、その心は?」

 

「俺がやりたいからやった。そもそも趣味でヒーローやってるのに、そんな難しい事を考える必要なんてないだろ」

 

あっけらかんと答えるアオヤマにオーディンの目が丸くなる。悪魔に対する思惑や恩を売る事などではなく、趣味だから、やりたいからやったと言い捨てるアオヤマの一言に北欧の主神は当時噂を耳にした時よりも遙かに興味を湧かせていた。

 

「フフフ、中々面白い小僧ではないか。気に入ったぞ。そんなお前さんにはウチの戦乙女から一人譲ってやりたいのだが……どうじゃ? このロスヴァイセなんて性格は生真面目でアレじゃが、器量は良いぞ?」

 

「ちょ!? オーディン様!?」

 

突然の前振りにロスヴァイセは顔を赤くしながら慌てふためく。いきなり女一人を寄越すと言い出す北の主神にアオヤマは呆れたように溜息を吐き。

 

「いや意味わかんねぇよ。どうしていきなりそんな話になった?」

 

「なんじゃ? 女には興味ないのか? 幾らヒーローといってもお前も男、女に飢えるのは必然かと思うがの」

 

「そういう事じゃねぇだろ。確かに俺は男だしそういうのにも興味はあるけど、俺はまだガキだ。独り立ちも満足に出来ていないガキが女性と暮らすと言ってもその人に余計な不安を煽るだけだろ」

 

「あぁ、金の話か? 別にお前さんが気にする必要はないぞい。今回の働きは冥界側にとっても借りができた様なものだし、たんまりと礼金が貰える筈じゃ。なんならワシからも幾らか報酬を支払ってもよいが……どうじゃ?」

 

「あのな、さっきも言ったけど俺はやりたくてやっただけで、別に見返りを求めて闘った訳じゃねぇの。なぁ爺さん、アンタは自分の家の庭にいる害虫を頼んでもいないのに勝手に乗り込んで害虫を駆除した見ず知らずの相手に一々金を渡すのか? つーか、そんなんで一々礼金とかで騒がれたら俺が面倒なの。いい加減分かれ」

 

 などと、最後辺りは半分いい加減な態度で返す。そんなアオヤマにオーディンは益々その顔に笑みを綻ばせながら。

 

「そうか、ならば仕方ないの。今回は大人しく引き下がろう」

 

「何だよ今回はって……」

 

「ふぉっふぉっふぉ」

 

自分の質問にも笑って誤魔化すオーディンにアオヤマはこの時を持って敬うのをやめ、後ろに控えたロスヴァイセと呼ばれる戦乙女に視線を向ける。

 

同情の籠もったアオヤマの視線にロスヴァイセも苦笑いを浮かべ、困ったように頬をひきつらせている。

 

困った上司がいると部下は大変。まだ社会というものを理解していないアオヤマだが、何となく分かった気がした瞬間だった。

 

 そして、観戦室に到着したアオヤマ達が大きな扉を潜って部屋へと入ると……。

 

先程のフロアと同規模の広々とした空間がアオヤマ達を迎え入れた。VIPルームなだけにその場にいる貴族悪魔達は数人ほどしかおらず、本来なら静かなものなのだが、アザゼルとオーディン。二人のトップに挟まれながら入室してくるアオヤマを見ると、途端にざわめきが起こり始めた。

 

奇異な視線。好奇な視線に晒されながらまるで動じないアオヤマにアザゼルはやはり大物かと認識する。

 

本当はそんな視線など気付いていないだけなのだが、どちらにしても同じ事なので割愛しておく。

 

レーティングゲームの観戦室。座る所はどこかと辺りを見渡すアオヤマ達に一際目立つ格好をした女の子が駆け寄ってくる。

 

「ヤッホー! アザゼルちゃんにオーディンのお爺様。お久しぶりー! 今日はお忙しい所ワザワザって、あー! アオヤマ!」

 

にこやかに微笑みながら迎えてきた魔法少女のコスプレをした魔王セラフォルー=レヴィアタン様は出迎えの最中、一緒にいたアオヤマを見ると最初の笑顔とは一変。憤慨した様子でアオヤマを呼び捨てにしながら指さした。

 

「え? 誰?」

 

しかし、そんな彼女をアオヤマは割と真面目な表情で訊ねた。アンタ誰と聞き返してくるアオヤマにセラフォルーは指さしたまま固まる。

 

「お前、幾ら何でもそれは酷いだろ。駒王学園の協定会議でいたろ。魔王レヴィアタン。一応こんなでも悪魔界のトップの一人だぞ」

 

アザゼルのフォローとも呼べないフォローがアオヤマの耳元で囁かれる。それを聞いた瞬間、アオヤマは納得したようにあー、と間の抜けた声を出し。

 

「そう言えばいたなぁ。会長のお姉さんだっけ? その格好していたら知り合いのミルたんしか思い浮かばなくて……ていうか、あんまし印象になかったわ」

 

魔王に対してまさかの発言に周囲のざわめきも大きくなる。セラフォルーも自分が忘れ去られるとは毛程も思わなかったのか、指を差した姿勢のままワナワナと震えていた。

 

けれどそこは魔王。アオヤマの天然な言葉の刃にもめげず、気を取り直して咳払いをして再びアオヤマに指を差し。

 

「アナタ、リアスちゃんの所で厄介になっているそうじゃない! ソーナちゃんとのレーティングゲームを前にして! どうしてそんな意地悪ばかりをするのかしらプンプン!」

 

私怒っています。頬を膨らませながら怒りをアピールしてくるセラフォルーにアオヤマは訳が分からないと言った様子でアザゼルに説明を求めた。

 

「……どゆこと?」

 

「あー、実は今日のレーティングゲームな。リアスとソーナが闘うんだわ。んで、お前さんがリアスの所で修行を見てやってると聞いてあぁして怒ってるって訳だ」

 

成る程、つまりこのお姉さんは妹と同級生でありながらリアス達ばかりに贔屓している自分を狡いと言っているのか。

 

どうしてそこで自分か起こられるのか見当つかないアオヤマだが、取り敢えず言い訳だけはしておくことにした。

 

何故言い訳しなくてはならないのか、そんな疑問を胸に抱きながら……。

 

「あー、まぁその辺は認めるけど、別に大した貢献は出来なかったぞ。俺がしたのは精々筋トレの助言位だからな」

 

「ふーんだ! 仮にそうだったとしてもリアスちゃん達に手を貸したのは事実じゃない。ズルいわズルいわ!」

 

この人は本当に魔王なのだろうか。子供のように駄々をコネるセラフォルーにアオヤマは半分呆れながら困っていると、向こうの方から赤い髪を靡かせる男性。セラフォルーと同じ魔王に就くサーゼクスが歩み寄ってきた。

 

「どうしたんだいセラフォルー。もうすぐゲームが始まる頃合いだ。早く席にご案内して差し上げなさい。オーディン様。お久しぶりです」

 

「うむ。此度のレーティングゲームは赤龍帝が出るらしいからの。色々期待しておるよ」

 

主神に頭を下げて挨拶をし、サーゼクスはセラフォルーへと近付く。未だ怒りの収まらぬ彼女に耳打ちすると、セラフォルーはぐぬぬと呻き、次にアオヤマに向き直ると。

 

「アオヤマ君! 私もあまりしつこいのは嫌だから手短に聞くわよ」

 

「あ、はい」

 

「リアスちゃんとソーナちゃん。どっちに勝って欲しい?」

 

「え? 会長だけど?」

 

即答。ビシリと指を突きつけながらのセラフォルーの質問にアオヤマは言葉を濁すことなく言いはなった。

 

「そ、その心は!?」

 

「会長には以前から世話になりっぱなしだからな。本当なら何らかの手助けをしたかったけど、今はもう無理だからなぁ。だからせめて会長達への応援だけはさせて貰うわ」

 

アオヤマにとってソーナは学生生活に於いて恩人とも呼べる人物である。はぐれ悪魔との戦いで怪我を負い、学校を休んで授業に遅れた所を彼女は親身になって助けてくれた。

 

もし彼女が手助けを願うなら、それこそアオヤマは駆けつけるつもりでいた。彼がソーナの負担になるまいとテロリスト達を進んで撃退したのもこの理由が大きい。

 

嘘のないアオヤマの返答にグゥの音も言えなくなったセラフォルーはプルプルと震え、顔を赤くしながら……。

 

「ふ、ふーんだ! そんな事言ったってお姉ちゃんは認めないもーん!」

 

そんな台詞を吐き捨て、フロアの奥へと逃げていった。

 

逃げていく彼女の背中を眺めながら、深い溜息を吐き出し、アオヤマ達はサーゼクスの案内の下、席に座りレーティングゲームの観戦に勤しむのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結果的に言えば、ソーナ達は敗北した。序盤から中盤に掛けてソーナの策略によってリアス達の眷属を退けていく様子は流石生徒会長だと思った。

 

しかし、それからはリアス達の火力によって押され、遂には王同士の一騎打ちに持ち込んだリアス達はその持ち前の爆発力によってソーナを撃破したのだ。

 

ソーナ達は頑張った。副会長を始め、多くの眷属達が力の及ばない状況で策を巡らせ、リアスの眷属達を一人一人追い込んでいく様は玄人好みの見事な手腕だと高く評価された。

 

特にソーナの兵士、匙元士郎の奮闘は圧巻だった。禁手化を果たしたイッセー相手に引き下がる所か撃破一歩手前にまで追い込む様子は主神のオーディンですら評価した程だ。

 

アオヤマも格上相手に食らいつく匙の戦い振りは昔の自分を見ているようで少し懐かしい思いもした。

 

「けどなぁ、アレはないだろ。何だよあのパイリンガルってのは。兵藤の奴、段々と何でもアリに成ってきたな」

 

レーティングゲームで新たな力、乳語翻訳とやらに目覚め、ソーナの策を見抜き、逆転の一手を刻んだ。

 

当初兵藤がこの技を使った時は観戦していた全員が止まった程だ。無論、アオヤマも。

 

その技の反則振りと卑猥さから今後は乳語翻訳はレーティングゲームでは封印され、今頃イッセーはリアスから折檻を受けている事だろう。

 

「さて、会長に声を掛けてみようと来たのはいいけれど、これは……今はよした方がいいかなぁ」

 

 そう言ってアオヤマは控え室と書かれた部屋の前で待ちぼうけを食らっていた。

 

レーティングゲームの終了後、アオヤマはソーナに一言挨拶をしようと控え室に向かっていたが、そこには現在匙とサーゼクスが同席されており、何やら匙を誉めているようだ。

 

赤龍帝を追い込んだという奮闘が上の貴族悪魔達にも評価され、今回のゲームのMVPである匙に表彰を送っているのだとか。

 

これでは自分の出る幕はないな。そう察したアオヤマはその場をクールに去ろうと一歩前に出た時。

 

「アンタが、アオヤマさん……だな?」

 

「あ? どちら様?」

 

アオヤマの行く手の先に屈強の男が立っていた。

 

「俺はサイラオーグ=バアル。アオヤマさん、アンタに一つ頼みたい事がある」

 

「いきなりだな。まぁ別にかまわないけど」

 

いきなりの登場に加えいきなりの頼みごと。急な申し出に面食らうアオヤマだが、特に予定はないのでサイラオーグと名乗る青年になんだと訊ねると。

 

「俺と、勝負してほしい」

 

「………は?」

 

サイラオーグの申し出に、アオヤマは目を丸くした。

 

 

 

 

 

 




セラフォルーはアオヤマの前ではツンデレ(確定)

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