東方極楽伝   作:一向一揆

13 / 14
奇跡の二話連続投稿
次は遅れる(確信)


第十話 最低な親父と原作キャラな娘

  Side 信孝

 

保延6年(西暦1140年) 山城国 京郊外

 

 俺は、あれ以来知り合いとも会うこともなく1人で旅を続けていた。

 

 この300年間で、俺の知る歴史とはかけ離れてしまった。

 

  

 

 

 

 朝廷では、藤原氏が史実通り全盛期を迎えていたが、南北式京織田の五家で政権を交代しながら統治していた。

 

 ただ、史実と違い橘氏や菅原氏などの藤原氏以外の家も排斥されることなく朝廷の中枢にいるのだ。

 

 後で知ったことだが、かつて房前が「我ら藤原の者以外でも、才あるものは積極的に登用すべし。」と家訓を残したことでこんな感じになっているとのことだった。

 

 

 房前、お前は立派だよ! どっかのメタボ野郎とは大違いだよ本当!!

 

 

 外交面では、史実通り新たに出来た宋と友好関係を結んで積極的に銅銭を輸入しつつ、こっちも陶芸品や刀などを輸出して、巨額の利益を出したりしている。

 

 

 

 

 

 そして軍事面では、北は陸奥の奥地まで征服して俘囚と呼ばれた人々を服属させ、南では王国成立前の琉球地域を制圧しているという手の速さっぷり。

 

 

 西では史実通り1019年に満州方面にいた女真族が対馬方面に攻め込んできたが、当時既に摂政を辞めて楽隠居の身として対馬守となって任地にいた藤原道長(何で貴様がここにいる!)が、甥の藤原隆家と共に兵を率いて撃退してしまった。

 

 さらにその勢いにのって、当時兵部卿(軍部のトップ)であった織田信勝(俺の11代後の子孫)が、藤原氏、源氏、平氏、織田氏などの軍を合わせて何と5万5000もの兵を率い、報復として満州方面に兵を差し向けてしまったのだ。

 

 これに、当時朝鮮を支配していた高麗が便乗して、なんと満州方面一帯を日本の支配下にしてしまったのだ。

 

 

 

 

 

  …なんか、まだ11世紀なのに「こいつら大日本帝国作るんじゃね?」みたいな状況になっててワロス。

 

 まぁ、その後当時満州から華北地域で力を持っていた遼王朝が失地奪還のため攻め込んできた結果、軍はあっさり満州を放棄して日本に帰って来てたけどな。

 

 しかも、その際に当時式家の当主だった藤原明衡《ふじわらのあきひら》が、

 

 

 

「たとえ遼が攻めてきても、共に攻め込んだから後に引けない高麗が盾になってくれますからね。

 そのために高麗を誘ったのですから、せいぜい彼らには頑張ってもらいましょうか。

 少しくらいなら援助してあげてもいいでしょうし・・・ね?」

 

 

 なんて真っ黒なことをほざいてたとかいなかったとか。

 

 明衡、あんた立派な宇合の子孫だよ(褒め言葉)。

 

 

 

 

 とまぁこんな感じで日本が愉快なことになってたりするが、そんなことは俺には関係なく各地を旅しながら修業したり、たまたま知り合った平将門と勝負したり、藤原秀郷の百足退治に参加したり、安倍晴明に陰陽術を教わったり、最近全く情報が入らなくなった妹紅や慧音の情報を探したり、他に東方キャラがいないか探してみたりして見事に見つからず絶望したりしていたが、それよりも歴史上の人物の暴走振りに俺は目を疑うこととなる。

 

 

 平将門は重さ1トンはありそうな岩を100mもぶん投げ、討伐軍を圧死させた上、槍を咽仏で受け止めるっていうどこの鉄人?みたいなことしていたくせに何で流れ矢が額に当たると死ぬという弱点持ち。

 

 俺にはお前の体のスペックがよく分からねぇよ…。

 

 

 

 

 そして藤原秀郷。 奴が討伐したあの百足はもう見るのも勘弁だ。 体長が100m単位の百足がいるのも謎だが、それを弓だけで倒すとかどんだけチートだよ? 

 

 しかも幾ら弓を当てても効いてなかったのに、最後の一本にお前の唾をつけて当てたら一撃で倒すとか、お前の唾には即効且つ致死性の毒でも混じっているのか?

 

 

 

 

 極めつけは安倍晴明。 超一流の陰陽師で「俺は鬼すらも使役できるのだ!」なんて言ってたから、その使役しているという鬼を呼んでみてもらったら、

 

「ん~~? あれ晴明じゃんか?」

「何だ晴明か、どうした? それにこれは誰だ?」

 

 …なんかロリッ子鬼(伊吹萃香)とブルマ鬼(星熊勇儀)が現れた。

 

 

 何で貴様等がここにいる!!

 

 晴明に事情を聞いたら真顔で、

 

「小っさくて可愛らしくて愛らしいじゃん。 それにあの格好、妙に興奮するし」

 

 とか言いやがった。

 

 

 コイツ…ロリコン要素もあったのか!

 また一つ、偉人の残念な面を垣間見てしまった。

 

 

 その後、萃香との飲み比べに勝って2人に妙に気に入られたりしたが、そのまま連れ去られそうで怖かったから逃げることにした。

 

 

 

 

  閑話休題

 

  

 

 

 そんな感じで俺は過ごしていたが、ここ最近は藤原俊成や佐藤義清達といった和歌仲間と和歌をすることを趣味としている。

 

 藤原俊成は、藤原定家の親父で新古今和歌集の選者としても有名な人物だ。このとき(保延6年、西暦1140年)27歳。 

 

 それに、まだ若いのに一歩引いた態度で相手を持ち上げたりすることのできるかなりの人格者だ。

 

 どこか房前に通じるところがあるんだよなこの人。

 

 

 

 佐藤義清は秀郷の野郎の子孫で、上皇の護衛である北面の武士をしているが和歌の腕もかなりのものと貴族の間で評判の人物である。 このとき23歳。

 

 ただ、こいつはどういうわけか尊敬するって気持ちが全然湧かない。 なんというか、不比等のおっちゃんを相手にしているみたいな感じがするのだ。

こう、才能があって位もあるのにどこか残念な面があって帳消しにしている感覚が…

 

 

 

 

 そして、俺は主にこの面子や他の奴らも集めて度々和歌会をやったりしている。 

 

 流石に本名を名乗ったらまずいので、〇長の野望最弱スキル所有者の1人から名前をあやかって「藤原兼定」と名乗っているが、この2人には俺の正体については既に話している。

 

 というより、この名前を名乗った時に即答で「偽名だろ(ですね)?」って言われ、そのまま気づいたら俺の身の上まで話してしまった。

 

 こんな突飛もない話を何の抵抗もなく受け入れるってのは正直どうかと思うが…。

 

 

 

 

 

 

「しかし、信孝殿もまだお若いのになかなかのものですな…」

 

 いえ、本当は貴方たちのはるか年上です。 というか貴方俺が不比等の甥ってこと知ってるでしょうが?

 

「そうだぞ。 万葉集から引用し、それを今風にした和歌は素晴らしいものだからな」

 

 

(そりゃその時代を生きて、教養として歌は学んでいたんだから、似たようなのが出来て当り前だろうが)

 そう俺は心の中で呟いた。

 

 

 

 

「それほどでもありませぬ。 俊成殿や義清の方が素晴らしいものでございましょう」

 

「ご謙遜なさらずともようございます」

 

「そうだぞ信孝。 それよりも俊成には「殿」付けで何で俺は呼び捨てなんだ?」

 

「それが貴方の仁徳だからです」

 

「そんな仁徳いらねぇよ……」

 

 こんな風に軽口をたたける仲間ってのもいいもんだよな。

 

 

 

 

 

 

「そうだ信孝、よかったら明日我が家へいらっしゃいませぬか?」

 

「ちょっと待て義清、お前敬語で話したいのか普通に話したいのかどっちなんだ?」

 

「此処は敬語でいくべきかと思ったんだが、やっぱ俺には無理だったわ」

 

「なら最初っから普通に話せ!」

 

 

 それはともかく、義清の家か…。 こいつの家庭環境も気になるし、行ってみようかな?

 

 

 

「折角誘ってくれたんだし、行こう」

 

「おお! 来てれるか! なら明日待ってるぞ!」

 

 

 そう言い残し、義清はハイテンションで家へ帰って行った。

 

 

 

「俊成殿、すみませぬが私もこれでお暇いたします」

 

「ああ、今回も素晴らしい和歌をありがとう」

 

 俺は俊成殿に挨拶をして帰宅した。

 

 

 

 

  ~翌日~

 

 

 

 

 俺は義清の屋敷へやってきた。

 

 すると、屋敷の入り口で何故か義清が槍を構えて待っていた。

 

 

 

「よく来たな信孝。 お前を歓迎しよがぼぁ!!」

 

 

 

 突然目の前にいた義清が遥か彼方へ吹き飛ばされた。

 

 そして、そこに女性とその女性に抱っこされた女の子がいた。

 

 

 

「あらあらすいません信孝様。 うちの亭主がとんだご迷惑を。 申し遅れましたが、私義清の妻の沙織と申します。 そしてこちらは私たちの娘の幽々子と申します。 ほら幽々子、ご挨拶を」

 

「は、はじめまして信孝おにいちゃん! 佐藤幽々子です」

 

「!? こ、こちらこそよろしく」

 

 

 

 俺はなぜこの2人が「兼定」ではなく、「信孝」と言ったかにも驚いたが、それよりも義清の娘の名前が幽々子だと!?

 

 そう言えば今まですっかり忘れてたけど、西行法師って俗名佐藤義清だった!

 

 …たとえ覚えていても、あれが将来の歌聖だとは誰も信じないだろうけどな。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと待て沙織、俺を置いて話を進めるな!」

 

「黙りなさいあなた」

 

「ハイ…モウシワケアリマセンサオリサン……」

 

 

 

 

 怖ぇ…。 なんか夜叉と化した妹紅を見てるみたいだ。

 

 

 

 

「では信孝様、ご案内いたします」

 

「おにいちゃん行こう!」

 

「ああ。 行こうか幽々子ちゃん」

 

「ちょっと待て俺を置いてくな!」

 

 

 

 

 

 

「それでは此処でおくつろぎください」

 

「はい、わざわざありがとうございます」

 

 そう言って沙織さんは部屋から出て行った。

 

 

 

「それで、俺を呼んだ理由は何で義清?」

 

「実は俺、出家しようと思うんだ」

 

「はぁ!? お前まだ23だろ!? それに北面の武士っていう立派な役職持ちな上に殿上人にまで上り詰めた癖にあえてそれを捨てるなんて…、それほどまで歌道を極めたいのか?」

 

「ああ。 それでお前に沙織と幽々子のことを頼みたいんだ」

 

「ちょっお前…何言ってんだ?」

 

「何も言うな信孝。 俺の意思は変わらない」

 

 

 

 

 俺が何かを言う前に、義清は自らの意志の強さを示した。

 だが、史実ではこいつ泣いて引き留めようとする娘(ここでは幽々子)を蹴り飛ばして強引に出家したんだよな。

 

 ロリ幽々子を足蹴にするなんてやり方は俺の正義(ジャスティス)が許さない。

こいつには相応の報いがあってしかるべきだよな。

 

 

「なぁ義清、沙織さんと幽々子ちゃんの説得とかちゃんとしたのか?」

 

「そんなの決まってるだろ? お前に任せた!」

 

「よし表出ろ義清。 俺が直々に修正してやろう」

 

「ま、待て信孝! 俺が悪かったから落ち着ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

 

 俺は泣き叫ぶ義清(ゴミ)を無視して裏庭へ連行した。

 

 

 

 

 

 

  ~義清(バカ)粛清後~

 

 

 

「さて義清、しっかりと沙織さんと幽々子ちゃんの説得をして来い」

 

「ぐはっ!! あ、ああ…」

 

 俺はボロクズと化した義清を蹴り飛ばして無理矢理行かせることにした。

 

「さて、ああは言ったがどうなるかねぇ。 沙織さんならいけるかもしれないが、幽々子はまだ4歳だからきついだろうなぁ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ~翌朝~

 

 

「さてと、どうなったんd「お父さまいっちゃやだぁ!」「すまない幽々子! 俺はどうしても行かなければならないんだ!」って…、聞かなくても結果が分かるな」

 

 おいおい、結局幽々子の説得には失敗したのかよ…。

 

 

「どうして!?」

 

「っ! すまない幽々子!」

 

「あうっ!《バタッ》」

 

 ちょっ! 足蹴にはしなかったが、自分の娘に手刀入れて気絶させるなんて何やったんだよ義清!!

 

 

「さらばだ幽々子。 縁があればまた会おう」

 

 

 

 

 そして義清はそのままどこかへ行ってしまった。

 

 あの野郎…、まだ修正が足りなかったみたいだな。

 次会ったときには、もっと念入りに調教…もとい教育してやる必要があるな。

 

 それよりも今は幽々子の方を優先しないといけないな。

 

 

 

 

「ん…」

 

「おっ、やっと目覚めたか幽々子ちゃん」

 

「信孝おにいちゃん…?」

 

「すまない…。 義清を止めれなかった」

 

「……」

 

「次に義清にあったらしっかりと言い聞かせて(修正して)こっちに来させるから」

 

「…いいもん」

 

「え?」

 

「お父さまなんかもうしらないもん! お母さまと信孝おにいちゃんがいればいいもん!」

 

「義清、お前とうとう実の娘から全否定されたな…。 ウッ…」

 

「?」

 

「幽々子ちゃんは知らなくていいことだよ。 さて、沙織さんのとこに行くか!」

 

「うんっ!!」

 

 

 

 ~義清邸前~

 

 

 

「あら、信孝様」

 

「どうも沙織さん。 あの、ひとつ聞きたいことがあるのですが…」

 

「…わかりました。 幽々子、ちょっと向こうの部屋で遊んでなさい」

 

「はぁ~い!」

 

 

 

 そう言って幽々子は部屋を出て行った。

 立ち直り早いな幽々子…

 

 

 

「さて、お尋ねしたいことは大体わかっています。 貴方の正体のことでしょう?」

 

「…そうです。 何故俺の正体を知っているのですか? 義清には余人には知らせないようにと念を押したのですが…」

 

「…あの人が以前酔っぱらって帰ってきたときの話です。

 あの人、『俺の親友の藤原兼定なんだがよ、実際は偽名で本当は藤原信孝というそうだ。 これがどれだけすごいことか分かるか?

 あの藤原不比等公の甥で、今の朝廷の中枢にいる織田家の祖に当たる人物だぞ!

 理由は知らないがあいつは不老不死の身になって、450年前に行方不明になった不比等公の娘で、同じく不老不死となった藤原妹紅姫の行方を追っているそうだ』 

 と言っておりました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「義清ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!! 次会ったらぶっ殺す!!」

 

 

 

 あいつにお話(物理)することが増えたな。

 人の隠したいことを簡単に漏らしやがって…!

 

 

 

「ならその際はこれを使ってください」

 

 

 そう言って沙織さんが懐から取り出した者は、俺にとっての黒歴史の1つでもある宇合特製自白剤入り柏餅があった。

 

 

 

 

 

 

「…何故貴女がこのようなものを持っているのか聞いてもよろしいでしょうか?

 これは、この世に存在してはならないものですが…?」

 

「私の実家に伝わっていた書物に書かれていたものです」

 

「誰が書いたんだそんなもの!?」

 

「言い伝えでは、私の実家の祖であられる藤原宇合公が書かれたものとされております」

 

「またあいつか…」

 

 

 

 

 俺は目の前の柏餅を見下ろし思わず身震いした。

 死んでからもう400年も経ってなお、俺に対する嫌がらせを続ける気なのかあいつは…。

 

 

 

「それで、折り入って信孝様にお願いしたき儀があります」

 

「何だ? 俺が出来ることならいいぞ」

 

「しばらくの間、幽々子の相手をしていただけないでしょうか?」

 

「へ…? 俺が、ですか?」

 

「はい。 どうやら幽々子も貴方様に懐いているようなのでちょうどいいかと…」

 

「…分かりました。 引き受けましょう」

 

 

 

 

 

 

 断ったらあの柏餅を食べる未来しか見えなかった俺は、頷くしか道はなかった。

 

 

 こうして俺と幽々子の共同生活が始まった。

 よく考えたら、俺がうまく誘導したら妖々夢フラグ壊れるのか?

 




前書いた簡単な人物紹介も修正します。
色々矛盾が出てきそうなので…

そして此処1年ほど感想返信出来ず誠に申し訳ないです…
一件一件感謝の念を込めながら読んでいることは此処に誓わせてもらいます。
次回以降はなるべく感想返信するよう勤めますので今後ともよろしくお願い致します

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。