ギルダーツと別れた俺はマグノリアに向かっており、旅は順調に進んでいた。
残り距離にしてあと半日ほどで着くだろう。
しかし空が徐々に黒さを増しており、雷の音が僅かに聞こえてくる。
そのため俺は移動を早々に切り上げ、寝床を作り上げることにした。
木判で晴らす事もできるが自然は出来るだけ自然のままにしたい。
幸い依頼の期限もあと2日と余裕があるので問題も無い。
岩壁を
一日分の薪は確保したし、火も起こせた。
食事は買っておいた保存食や集めた果物で済まそう。
うん、準備はオッケーだ。
あとは寝るだけなんだが、空が暗いとはいえ時間はまだだいぶ早い。
刀でも研ぐか。荷物の中から砥石を取り出し、コップに水を入れて、刃物を研ぐ。
しばらく集中していたためか、気がつくと外は雨がだいぶ強くなっていた。
あらかた刃物は研いだし、そろそろ寝るか。寝袋を取り出し中に入って目を閉じる。
数分がたっただろうか、夢の世界に旅立とうとしていた俺の意識は、
グオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!
きゃあああああああああああああ!!
轟く咆哮と女性と思われる悲鳴によって一気に覚醒した。
すぐさま体を起こして辺りの気配を探る・・・・・・あっちか!!
察知した方向に向かって走り出す。その間も重厚な咆哮は続き、辺りの獣たちが逆方向へと逃げていく。どうやら方向は間違っていないみたいだ。
・・・・・・見えた!! 何だありゃあ。2m程ある巨大な赤毛の獣。昔みた緑ゴリラの様に二足歩行をしており、その腕はとてつもなく太い。そばにうずくまる女性の胴の2回りは太い。そこまで考えてようやく俺は弾かれたように動き出す。
マズい、女は動けないようだった。獣がその太い腕で叩きつけようとする。
ぎりぎり割り込んだ俺はその腕を何とか受け止めた。
そこであらためて後ろを振り返り確認すると女性は二人いた。
近くで見ると思ったより若い、少女か?
一人はキャミソールを着たつり目のポニーテール。
如何にも気が強そうだが今はボロボロで呆気に取られた様にこちらを見ている。
もう一人は赤を基調としたワンピース姿で、同じように傷を負っていた。
痛みがあるのか顔をしかめている。
二人共良く似た顔立ちをしており髪色も白髪で同じだ。姉妹だろうか?
まだ少し幼い感じがするが将来は大層美人になるだろう。
・・・・・・というか見覚えがある、時間が経っていたのですぐには思い出せなかったが、いわゆる原作メンツだろう。まあ今はそんな事関係ない。取り敢えず声をかけるべきか。
「大丈夫か?」
△
私のせいだ。
私が二人を連れ出したから・・・。
いつもS級のクエストに行く時は一人だった。
今回もそうするべきだったんだ。
自信を持たせるためにエルフマンを誘った。
本人は嫌がったけど無理やり連れ出そうとした。
そしたらリサーナも付いて行くと行った。
私はS級になったばかりだ。
二人も連れて行って大丈夫かと少しは思った。
けど私はお姉ちゃんだ。
弟達に弱気な所は見せたくなかった。
だから了承した。
私がいれば大丈夫、全部任せておけと見栄を張った。
しかし討伐目標の獣が強かった。
みんな疲労し、傷ついた。
エルフマンがそれまで成功していない全身テイクオーバーを行った。
その結果討伐対象は逃げ出し姿を消した、安堵した。
でもその後に問題が起きた。エルフマンが暴走したのだ。
野獣と化した弟は凄い力で暴れた。
私とリサーナで止めようとしたが、疲弊していた私達ではたちうち出来なかった。
もう足が動かない。このままでは二人共やられる。
とっさにリサーナを後ろへ突き飛ばし、私は振り下ろされる腕に対して目をつぶった。
・・・・・・・衝撃がこない?恐る恐る目を開けるとそこには信じられない光景があった。
私と同じくらいの歳であろう男が、両腕で攻撃を受け止めていた。
黒いコートを着た銀髪の男。出血しているのか左腕が赤い。
重い攻撃を受けたであろうその男の足は地面にめり込んでいた。
首だけでこちらを見た男は何事もなかったかの様に口を開いた。
「大丈夫か?」・・・・・・・・・・・・と。
今回は別視点をひとつ書いてみました。
うまく書けてますかね?
隣人の鐘がしれっと登場。
出せる場所が思い浮かばないのでせめてここでとw。