流れる青い光りの波に流されながら、小さなイカダはまるで別次元に浮いているようだった。
光りの大きなうねりに乗って流されているにもかかわらず、ぼく達を乗せた小さなイカダは緩やかに上下をくり返す。
落とさないようにと胸に抱き握りしめた木槌は、用途がわからないほど小ぶりだが、それ以外は何の変哲もない。水月は口をきくことなく、イカダを包むように盛り上がっては沈む光りの波を見詰めている。
ぼく達を押し流していた青い光りの波が、イカダを追い越すように速度を上げて流れ始めると、霧が晴れて前方が見渡せるようになった。
「墓標だ」
呟いた水月の言葉通り、晴れた霧の先には以前見た時とまったく変わらぬ様子で、無数の墓標が立ち並び、その背後には佇む人々の姿があった。
先を行く光りの波は、終着点を見つけたとでも言うように穏やかにその身を潜め、平らに切り出された岩の床を流れる光りの川は、床に光りの塗料を塗ったように平坦に煌めいている。
「降りるか?」
水月に頷き返し無数の墓標の前に降り立つと、小さなイカダは元来た道を辿って静かに戻っていった。足元にある光りの川で足踏みしても、やはり水の感触は得られない。
「これを皆さんの希神から預かってきました。皆さんに渡して欲しいと」
胸に抱えていた木槌を差し出すと、静かに佇んでいた人々の表情に笑みが浮かぶ。
「良かった。やっと渡してくれたか」
端の方に立つ若い男が、ほっとしたように息を吐く。
「希神は迷っているようでした。こんなことの為に使うはずじゃなかったと。みんなを自由にするための木槌だったのにと」
「あの子の気持ちはわかっています。これは、わたし達の我が儘ですから」
長い黒髪の女性がやわらかな微笑みと共に言い、すっと前に手を差し出すと、ぼくの手の中から木槌が浮かび上がり天井高くへと昇りだす。
空中で止まった木槌を中心に、光りが爆ぜた。眩しさに一瞬目をそらした隙に爆ぜた光りは収縮し、木槌は姿を消していた。
「これで少しは、あの子の助けになれる」
誰かが囁くようにいった言葉は、安堵と希望に満ちている。
光りに眩んだ目が徐々に視界を取り戻すと、人々の手には持ってきたのと同じ木槌がひとつずつ握られていた。
「我らには何の力もありはしない! だが、蟻とて群れを成せば城をも崩す。我欲を捨てれば無駄な情動も湧かぬ。かつて我らの手を取った、幼きあの笑顔だけを胸に抱こうではないか!」
誰が叫んだのかはわからない。奥の方から響いた男の声に、木槌を手にした人々の腕が一斉に頭上に翳された。
合わせたように振り下ろされた木槌が墓標を叩く。
木槌が岩を打った音だというのに、耳に響いてきたのはグラスを指先で弾いた音を重ね合わせたみたいに澄んだ音色。
岩に反響する音色に人々の姿が揺らぎ、立ちのぼる煙のように消えて行く。
「まるで肉体を捨てて、魂だけを残したように見えるな」
「きっと、彼らの魂そのものなんだろうね」
墓標の上には、ちりちりと光りを放つ細い糸が浮いていた。ひとつとしてまったく同じ色はなく、光り具合も太さ長さも違っている。初めて来たときに白い雲にも似たトンネルの中、水槽を泳ぐ魚のようにぼく達の周りに姿を見せた色とりどりの糸。
「もう世の中の仕組みがわからんよ」
首を掻いて水月が呻る。
色とりどりの糸がそれぞれの墓標に吸い込まれたかと思うと、音を立てて墓標が岩の床に沈み始めた。地鳴りにも似た音と共に、足元から振動が迫り上がる。
「まずくないか? このままだと、闇の中に閉じ込められることになりそうだ」
水月に言われてはっとした。光源を失い暗さを増した空間に気づかなかったのは、目の前の光景に目を奪われていたから。いつの間にか壁と床の岩間を筋となって満たしていた青い光りは力を失い、ぼく達をイカダに乗せてここまで運んだ青い光りの川も、低い方に流れるように両側からぼく達の足元へとその範囲を狭め始めていた。
「どうしよう、明かりがないと記憶の泉がある場所へ辿り着くことさえ難しいよ?」
肩を竦めた水月が、片腕でぐいとぼくを引き寄せる。墓標は完全に呑み込まれて光りの代わりに静寂が、がらんとした空間を満たしていた。光りの川はぼく達の足元にまるで水たまりのように寄せ集まって動きを止め、ぼくと水月は暗闇の中互いを見失わないようにと腕を握り合う。
「これじゃ青白い水たまりだ。少しでも離れたら何も見えなくな……うわ!」
固い感触しかなかった青い光りの底が抜けた、としか言いようがない。明らかな水の感触に足先から沈んでいく。最後に吸い込んだ空気を胸一杯に溜めて、ぼくはぐっと目を瞑った。
沈んで行く感覚は直ぐに途絶え、体温にも似た水の中自分の体の存在は失われて、心だけが取り残された気分だった。しっかりと握りしめていた筈の、ごわついた水月の袖も本当に手の中にあるのかわからない。
少年を信じていたから、身の危険は感じなかった。
体に収まっていた心の裾野が、垣根を越えて広がっていく不思議な感覚に身を任せる。
心がどこまでも広がっていく開放感の中、延びた心の触手に何かが触れた。
触れたのは誰かの過去でもなく自分の過去でもない、透き通る少年の囁き。
『憎しみの刃は、鬼神にかすり傷さえ負わせることはないよ。君に必要なのは、刃を支える柄だから。手にする柄にどんな刃を据えるかで未来は変わる。切り裂くのは必ずしも、鋭い切っ先とは限らないもの』
心を澄ませていたが、あとは何も聞こえなかった。ぼくの手に眠るナイフは彩ちゃんから受け継いだものだから、ぼくはそれ以外に代わりになりそうな刃などもっていないよ。そう伝えたかったが、伸ばした心の触手に、再び何かが触れることはなかった。
ひんやりした冷たさに、突如肌が感覚を取り戻す。少しだけ感じる息苦しさに目を開けると、直ぐそこにうっすらとした明かりが丸く見える。
手で搔き足を蹴るとぶわりと体が浮き上がった。
「はあー!」
息を吸い込んだ目の前に、同じく口を開けて息を吸い込む水月がいた。
「嫌だな、オッサンとふたりで五右衛門風呂」
「ならさっさと出ろよ」
水月に体を押し上げて貰い、ふたりで入るには狭すぎる小さな泉からなんとか這い上がる。手を引いて引き上げると、勢い余って水月はごろりと転がった。
「今回はべちゃべちゃだな」
犬のように頭を振っていう水月に、濡れたシャツを絞りながらぼくも頷く。
「この泉には、もう少年の力が及んでいないってことだよね。ここを通って少年に会いに行くことは、できないらしい」
少年が意図して力を引いたのかはわからないが、目の前にあるのは小さなただの泉だった。もう二度と、記憶を見せることも少年への道を開くことも無いのだろう。
「寒いね、とにかく小屋に戻ろうよ」
歩き出したぼくの肩を水月が叩く。
「なあ、和也は苦手なことってあるのか?」
ずいぶんと脈絡のない問いかけに一瞬思考が止まったが、ゆっくりと歩きながら頭を巡らせる。
「苦手っていうか、好きなのに上手くできないことならあるよ。料理のセンスかな? あんまり認めたくはないけどね」
「料理?」
「あっちの世界では喫茶店で働いていたから、色んな組み合わせの料理のアイデアは底なしに浮かぶんだ。でもそれに評判がついてこないっていうか、人気がでなくて裏メニュー化っていうか」
くくっと水月が喉を鳴らして笑ったのが聞こえたが、ここはあえて無視。
「結局は作れなかったけれど、最後に思いついたのは肉じゃがとオムレツのコラボ。潰した肉じゃがをふんわりと卵で包んで、紅ショウガを散らしたら美味いと思うんだ!」
背後で笑っていた水月が静まりかえって、どうしたのかとぼくは振り向いた。
水月は呆気に取られたように目を見開き、呆けたように唇を半開きにしている。
「水月さん? そんな呆れた顔をするんなら、食べてから文句をいってよね」
少しだけむくれたぼくが足早に歩き出すと、水月も歩調を合わせて後を追ってくるのが足音でわかる。
「それだけは止めたほうがいい。肉じゃがとオムレツは別々に食った方が美味いし、紅ショウガはいなり寿司に散らしとけ」
「何だよ、食べたこともないくせに。ぜったい美味いと思うよ?」
水月がぼくの肩に腕を回して、ぐっと自分に引き寄せる。
「味音痴はなかなか直らんぞ?」
「どうしてさ?」
「三つ子の魂百までって言うだろ?」
「こら! 水月さん! まて水月!」
ぼくの反撃から逃げるように、坂道をかけだした水月を追ってぼくも走った。まともに勝負しても引き離されるのが落ちだが、何だか可笑しくて、ぼくは全力で水月の大きな背を追った。
町の様子は何一つ変わっていなくて、相変わらずぼんやりと立ち尽くす黒い布の面を付けた人々で溢れていた。もう姿を偽る必要も時間もないだろう、という水月に従って顔を隠すことなくぼく達は人々の間をすり抜け進んだ。
戸を叩くと内側から開けられた小屋の中には、雪も含めて全員が顔を揃えていた。なぜがそれぞれに難しい表情を浮かべ、ぼくと視線を合わせようとしない。いつもなら正面から見据えてくる響子さんさえ、なぜか視線を落とし気味にして、帰ったか、とだけ言葉を漏らす。
「どうかしたの? なんだかお葬式みたいだ」
口を開こうとしないみんなに大きく息を吐き、ぼくは水月と見聞きした全てを話した。
「その者達はいったいどう動くつもりかのう」
ようやっと寸楽がぼくの話に合いの手を入れる。その者達とは、墓標と共に居て姿を消した大勢の人々のことだろう。
「さあ、今度はそっちの番だよ」
暗い空気を追い払うつもりで、わざと明るい調子で言ってみる。互いにきょろきょろと目を合わせて、仕方無しという風に最初に口を開いたのは佐吉。
「悪いが動物の化身達のことは調べきれなかった。というより、他の情報を先に掴んじまって、話の裏を取るのに手間取った。雪と響子もそれぞれに別の情報を得たが、まずは俺から話そう」
ぼくは水月の隣に腰をおろし、佐吉の重たい口が開くのをじっと待つ。
「まずはひとつの結論だ。たとえ鬼神を倒して魂を解放しても、解放された魂は己の道に迷う。いや、迷うらしい」
「誰から得た情報なの?」
「町を走っていたら、不意に肩を掴まれてな。そいつは顎の下まである黒い布の面を半分捲って、まっすぐに俺を見た。正気なんだと思ったよ。若い男だったが、さっきの内容をひとしきりしゃべると、突っ張り棒が外れたみたいに呆けちまってな。あとは何を聞こうが答えやしない。だがな、最初に布を捲った時に俺を見た目は、間違いなく人の物じゃなかった。薄らとした残欠の小径の明かりを受けて、奴の目ん玉は細く縮んだ。ありゃ、化身だよ。動物の化身だ」
幼い少女の存在が消えたことを知って、動き出した者のひとりだろうか。やわらかな少女の小指の感覚が蘇って、ぼくはそっと自分の手を包む。
「それじゃ、鬼神を倒しても本質的には誰も助からないってことか?」
落胆の溜息を吐き出した水月の肩が下がる。たしかにそれでは意味が半減するだろう。新たに呼び込まれる犠牲者は防げても、今ここに居る人々の救いにはならないのだから。
「他にもまだあるのでしょう? 次は誰?」
見回すと、視線をあげたのは雪だった。
「わたしがお話しします。残欠の小径の全てを知る者は少ないですが、一番古くからの記憶を留めているのは、ここの住人達に草陰のギョロ目と呼ばれている者達です。彼らが誰の味方なのか、正直言ってわたしにもわかりません。ただし一度口にした情報に関して、嘘を吐くことは無い者達だということはいえます」
確かにそうだろう。草陰のギョロ目は信用を重んじる。信用が自分達のこの先の商売に大きく影響することを知っているから。
雪は珍しく口を開けては閉じをくり返し、話しかけた言葉を幾度も口の中で呑み込んでいる。
「雪さん、ゆっくりでいいよ。どうしても言いづらいなら、後だってかまわない」
見かねて声をかけると、すっと手を上げたのは宗慶だった。
「雪殿の代わりに、わたしが話しましょう。雪殿はやさしいゆえ、口籠もられてもいたしかたあるまい。和也殿、水月殿、話とは響子殿のことでござるよ」
ぼくと水月は顔を見合わせ、不安から互いに眉根を寄せる。いつもなら自分から口を開きそうな響子さんは、俯いたまま話に加わろうとはしなかった。
「響子殿の屋敷は、大木の根の下にあると聞いた。それは立派な木であるとか。どのような世界も空間も、雲が湧くように突如現れたりはしないもの。この残欠の小径とて同じでござろう。残欠の小径と呼ばれるようになった、この世界が生まれた一点とは、必ず存在するのであろうよ」
残欠の小径が生まれた理由など、考えたこともなかった。それと響子さんに、いったい何の関係があるというのか。
「もともとはこれほど広い空間ではなかったであろうが、出来上がった空間は様々な者を引き寄せ、やがて残欠の小径と呼ばれるようになった。信じられぬであろうが、残欠の小径を造りだしたのは、一本の大木。大木の意思が形を成したのが、響子殿でござるよ」
響子さんがあの大木そのものだと? そもそも木に意思があるなど思ったこともない。御神木という言葉が脳裏を過ぎる。
「響子さんは知っていたの?」
響子さんはゆっくりと首を横に振る。
「幼稚な破壊者と不名誉な名を付けられた、和也と関わったあの日に抜け落ちた記憶のひとつだろうな。草陰のギョロ目の話では、鬼神から魂の欠片を守るためにわたしが器と成ったわけではないらしい。当初は、訪れる者の魂を単純に守り解き放つために己の内に抱え込んでいたというのだが、わたしには何の記憶もない」
ぼくが奪った記憶なのか?
「響子殿は何もない場所に、独り立つただの木であったらしい。長い年月が、大木に眠る魂を呼びさましたのか、大木は春先に僅かに芽吹く命と触れ合い孤独を知った」
見たこともない荒野に独り立つ大木を思った。何もない平地を風が吹き抜け、自分の葉だけがかさかさと音を立てる。寂しくて、悲しいと思った。
「何もない荒野だというのに、迷い鳥が大木に巣を作ったのでござるよ。日が暖かい内は良かったが、自然の恵みなど無いに等しい荒れ地のこと。寒さが押し寄せる中、小鳥は次第に弱っていった。小鳥から魂が抜け落ちるのを目にした大木は、目の前に迫った孤独に耐える自信などなかったのであろうな。己のまわりをぴぃちく鳴きながら飛ぶ姿は、大木を孤独から救い出し、孤独へは戻れぬ心を大木に植え付けた」
言葉を切った宗慶の先を、引き継いだのは響子さんだった。
「記憶にはないが、草陰のギョロ目にかつてわたしが話したことは本当だろうな。孤独を恐れるわたしの心は、ある種空間を歪ませた。まだ命ある者と、肉体から抜け落ちた魂た共にある空間を生みだした。わたしは、蓮華と離れることに耐えられなかったのだろう」
「蓮華さんが?」
それ以上の言葉は出てこなかった。何度も手を触れ言葉を交わした二人の、存在の境目が曖昧になっていく。
「つまりはこうだ。和也が取り替えっ子のようにあっちの世界へ追い遣られたのも、鬼神が無謀な欲を満たすための空間を造りだしたのも、もとはといえばわたしの責任」
響子さんの目は、まっすぐにぼくを見る。自らの逃げ道を塞ぐような実直な眼差しに、ぼくはふっと笑みを漏らす。なんだ、簡単なことじゃないか。
「なぜ笑う?」
訝しげに眉を顰める響子さんと、その背後で俯く蓮華さんにぼくはにっと笑って見せた。
「器に物を入れるのはいつだって他人だ。蓮華さんが淹れてくれる美味しい紅茶が入っても、毒が入っても、それは器を造った者の責任じゃない。だろ?」
寸楽はけけっ、と顔中に皺を寄せて笑い、佐吉は肩眉を持ち上げちげぇねえ、と顎を搔く。宗慶は穏やかな笑みで蓮華さんの肩に手を置き、水月はどうでもいいと言うようにのんびりと欠伸をした。
「まったくの馬鹿だな! わたしが居なければ、おまえが無駄な苦労や苦しみを負うこともなかったのだぞ? 少しは怒るなり、憎まれ口を叩くなりしたらどうだ!」
少し怒ったように語気を荒げる響子さんに、ぼくはくいっと顎をあげた。
「ばーか、考えることがちっちぇーんだよ! 怪力のくせに! 懺悔とか後悔なんて言葉、どうせいま知ったんでしょう?」
ふっと俯いた響子さんが顔を上げる。にたりと響子さんの口の端が、持ち上げられたのを目にした時には遅かった。疾風のごとく間合いを詰めた響子さんの右手が、躊躇うことなくぼくの首目掛けて襲いかかり、反動でぼくは仰向けに床へと叩き付けられる。
「ぐえ、やっぱり響子さんはこうでなくちゃ」
かなり苦しかったし痛かったから、これは単なる強がりだったけれど、響子さんはにやりとした笑みを引っ込め、ふわりと緩めた目元で優しく微笑んだ。
「やっぱりおまえは大馬鹿だ。だが、阿呆の塊は嫌いじゃないよ」
にっこりと笑った響子さんにほっとする暇もなく、ぼくにまたがったまま首にかけられた手がすっと引いた。
響子さんの表情から笑みが消え、何も読み取れない瞳の光りが、ぼくを不安にさせる。
「響子さん?」
「和也、これは今日得ることのできた最後の情報だ」
「誰から聞いたの? 町の人?」
響子さんがゆっくりと首を横に振る。心なし、部屋に重苦しい空気が立ち籠めた気がした。
「お前達が少年と会って異変が起きてから、わたしの内側でも少なからず変化があった。飛び飛びの記憶だが、ふっと蘇るものもある。情報源は、わたしだよ」
響子さんが僅かに唇を噛みしめる。何を、と聞けなかった。しんとした空気が、ぼくと響子さんの間を流れた。
「鬼神のことだ。オリジナルと今の鬼神という考えは捨てろ。オリジナルを乗っ取った人格の後に台頭したのが、今の鬼神だ。今の鬼神はおまえと……」
響子さんが話す言葉を、耳が拒絶する。
――そんな……そんな馬鹿なことって。
響子さんの言葉が霞む。大きく口を開けて息を吸い込んでも、肺に穴が空いたように苦しくて苦しくて、藻掻いた手で響子さんのスーツの襟を鷲づかみにした。
息苦しさに、意識が薄れ始める。
すごく遠くで、水月がぼくを叫ぶ声を聞いた気がした。
なんだ、やっぱりぼくのせいだった。
図々しくも、普通に生き抜こうなんて思ったからいけないんだ
薄れる意識の中、残欠の小径に関わった人達全ての悲しみと憎しみが、ぼくというただ一点に向けて、濁流のように押し寄せる夢を見た。
覗きに来て下さった皆さま、今日もありがとうございます!
何とかまともに終わらせられないかと、わたしの頭はパンパンです((+_+))
もう少しがんばりますので、どうぞ最後までお付き合いいただけますように(╹◡╹)
では!